迅速に伝達すべし
シャングリラ・フロンティアという世界で幾千の鍛冶師の中で片手で数えられる程度の数しか居ない神匠鍛冶師、其の中でも他の神匠とは隔絶した領域に立つ
或いは此の世界の真実を知っている、未だ全容が見えていない
手始めにヴァイスアッシュの友人であり、亜人種含めた様々な知的生命体から大賢者と呼ばれるポポンガを呼び寄せ、彼に『一時間後に兎御殿へ自分達とル・ジニシィを呼び寄せて欲しい』と依頼を出して。
アイトゥイルが開いたゲートを越えて、一行がやって来たのは新大陸の前線拠点に在る海上ギルドの鍛冶師組合『鐵打ち達の集い』、夜も更けて深夜帯を主戦場にするプレイヤー以外がログアウトして人口が切り替わる真っ只中、建物の中に入ったペッパーは、一仕事を終えて鍛冶道具を磨いているル・ジニシィを発見、彼女も此方に気付いた様で道具を置いて視線を向けてきた。
「おう、ペッパーか。…………何か有ったのかい?」
「夜分にすいません。一先ず此れを」
インベントリアを操作し、アトランティクス・レプノルカ"
「………
「血を得る、という大前提を熟す為に挑んだので、仕留められ無かったんですけどね。攻撃受けた反射でシバリング繰り出して来て、其れで吹き飛ばされて死にました。………正直に言うとアレは自分からしても『規格外』、としか形容出来ない存在です」
魚人族が雷輝の冥王と恐れ慄き、ペッパー程のプレイヤーが規格外と呼ぶ存在を交えた会話は、此の場で聞き耳を立てる他プレイヤー達からして一言一句に価値が有ると、そう考える程度には情報の出力が高い物で。
「其れからル・ジニシィさんに言伝が。『自分が師と仰ぐ方から、アスカロンの事に付いて話がしたいから会わせてくれ』と。今の段階に在るアスカロンの状態から、ル・ジニシィさんも解るかと思いますが…………」
ペッパーが師と仰ぎし存在、彼が連れているヴォーパルバニー達、アスカロンの状態とル・ジニシィの関係、そして此迄の歩みの変遷に数多の噂。
バラバラの情報の数々をペッパーの様に無数の線で繋ぎ合わせれば、最終的に『致命兎の国・ラビッツには鍛冶師系隠し最上位職業の神匠が居る事が確定した』という事実を此の瞬間に導き出せるのだが、果たして此の場に居る者達の中で幾人が其れに気付いたか。
「………解った、直ぐに支度するよ」
「すいません。三十分後にポポンガさんに
「あぁ、解っ…………は?召集???」
『『『『『!?!?!?』』』』』
「………………あ、えっと…………まぁ、はい」
ペッパーが思わぬ形で口を滑らせ、飛び出した爆弾情報に此の場に居たプレイヤーにNPCまでもが視線を向けた。
彼というプレイヤーが元々後衛職のバックパッカーであり、此迄にバックパッカーの隠し職業が無かった状況を
其のポポンガというゴブリンは見た目こそ年老いた仙人衣装の小鬼で有りながら、其の実態は新大陸の亜人種から『大賢者』と呼ばれるユニークNPC、そしてライブラリの極一部のメンバー達の間では『天覇のジークヴルムが最終試練を課す前に呟いていた言葉の中に入っていた名前で、ヴァイスアッシュかポポンガの何方かが未だ全容が見えていない最後の最強種、不滅を戴く存在である』との見方が有る。
困惑しながらもル・ジニシィは早速鍛冶に必要な道具含めた荷造りをするべく動き出し、他プレイヤーはペッパーが口にしたパワーワードの真意を聞き出すべく直ぐ様囲んで『オハナシ』に臨み、ペッパーは首と頭を擡げながらも教えられる部分は教え、秘匿する部分はキッチリ確りと秘匿し。
そうして二十五分後にル・ジニシィが準備を終えて戻って来て、其れから五分後にペッパー達の足元に広がる多彩色の魔法陣が展開し、彼等彼女等を一瞬の内に光で包んで鐵打ち達の集いから姿を消したのだった…………。
ポポンガの持つ魔法の一つであり、其の場所を訪れてランドマークを更新した事が無い者をも呼び寄せ、自身が魔法陣を構築した場所にセーブポイントやリスポーン地点を移し替える究極転移魔法【
「成程、御嬢ちゃんがアスカロンを直しちょる鍛冶師じゃな」
「ポポンガさん、ありがとうございます」
「良いって事じゃ」
シャボン玉の様な魔力の玉の上に乗り、ホッホッホ………と呟くポポンガと襖越しの気配にル・ジニシィも生物としての本能か、息を飲んで身体がガチガチに緊張している。
「さて………。
「あ、あぁ………。っ………よし、何時でも来な………!」
緊張している者に追い打ちを掛けるのはどうかと思いたかったが、其の言葉が逆に彼女の背筋を真っ直ぐピンッと立たせる一喝になった様だ。
アイトゥイルやディアレにノワが身形を整え、ヒトミも衣装を和風の物へと変えたのを見計らい、ペッパーは襖越しにヴァイスアッシュへと声を掛ける。
「ヴァイスアッシュ先生。アスカロンを直している鍛冶師のル・ジニシィさんを、ポポンガさんの助力を頂いて兎御殿に連れて来ました」
「おぅ、よくやったぁ。入って来な」
「失礼致します」
スッと襖を開けて中に入れば、
「あ、ペッパーさんに………ル・ジニシィさん!?」
「此奴がアスカロンを直しちょる、名匠で古匠の魚人鍛冶師か………」
「……………あ、えっと…………」
名の知れた鍛冶師達と、其の鍛冶師達の頂点で極点たるヴァイスアッシュと対面し、何を言うべきか言葉が見付からずに詰まっているル・ジニシィの心境を察し、ヴァイスアッシュが「まぁオメェさん等、楽になんな」と一言述べる。
「…………は、初めましてヴァイスアッシュ、殿。アタシはル・ジニシィという者…………魚人鍛冶師で名匠と古匠に、ガンスミスライセンスを持っています。遠き祖先、偉大なる魚人族の英傑 ル・ゲネテレが振るいし唯一の得物、アスカロンをペッパーの協力を得て直している身です」
「オイラはヴァイスアッシュってんだ、よろしくなル・ジニシィ。此方に居るのは娘のビィラックで、オイラに弟子入りしてるイムロンだ」
「ん。よろしくな」
「初めまして」
ペッパーがアスカロンを取り出し、ル・ジニシィに手渡して。彼女が鞘からアスカロンを引き抜き見せれば、イムロンとビィラックは目を丸くしていた。
「…………ペッパーの協力の御蔭でアスカロンは冥王の血を手に出来ました。後は神化を行えば、アスカロンは嘗ての姿を取り戻せます」
「あぁ、こっからでもアスカロンの気配と力を感じる。良い槌筋だな」
「あ、ありがとう、ございます…………」
鍛冶師としても遥かな格上、其の存在から褒められた事はル・ジニシィからしても栄誉な事であると解る。
「さて、ビィラック。イムロン。ル・ジニシィ。…………耳を傾けなァ」
ヴァイスアッシュの一言、其の言葉からして真剣な話だと此の場に居る全員が理解した事で、視線が彼一人に向けられた。
「『厄災の足音』が近付いている………。二つの大陸を揺らし、押し潰す………。お前さん等が戦わなけりゃあならねぇ、途方も無く『でっかい敵』がな」
ジークヴルムの打倒と復活にワールドストーリーの進行と始源存在の活性化、ミレィがオルケストラを偽典攻略した事で更なる進行と変遷。
嘗てリヴァイアサンを攻略して
「さて、こっからはオイラの提案なんだが。…………お前さん等、オイラの元で『鍛冶の修行』をする気は有るかい?」
此の場に居る名匠で古匠の鍛冶師達、其れをヴァイスアッシュ自らが鍛えるというイベントを前に、一羽と二人は一瞬戸惑った物の次の瞬間にはヴァイスアッシュを真っ直ぐ見詰め、深々と頭を下げながら『御願いします!!!』とほぼ同時に答えたのである。
鍛冶師達の対面、そしてブートキャンプ