VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

1163 / 1192


再現された墓守を越えろ




歌よ響け、英雄譚を讃え 〜其の十〜

ペッパー・天津気(アマツキ)が挑む、冥響のオルケストラ攻略戦。

 

第一楽章に夜襲のリュカオーン(影狼)を始まりとし、第二楽章に天覇のジークヴルムから第三楽章を深淵のクターニッドと続き、そして第四楽章は墓守のウェザエモン。

 

視聴者視点では端から見ても『運が無い』と言わざるを得ない様な、再現体とは言え七つの最強種(ユニークモンスター)の四連戦(ボスラッシュ)は、ある種の運営からの『悪意』やら『容赦の無さ』を感じる程の光景として、電脳世界から現実世界にリアルタイムの映像を送り続けている。

 

ユニークモンスターの楽章は『守るべきタスクを達成すれば短縮出来る事』が、サンラクのオルケストラ攻略戦時の映像で判明してはいたが、映像は既に三時間に迫る程の大激戦と其の間に流れた莫大な情報量は、視聴者達の視線を映像に釘付けにしており。

 

そして其の視聴者の中の極一部は…………世界に名だたる指折りの実力者や、其の者達を抱える頂点に立つ存在の目には、ペッパーというプレイヤーの持つ『恐ろしさの片鱗』を垣間見ていた。

 

「ウェザエモンさんの繰り出す技、シャングリラ・フロンティアに置ける流派スキルの原型となった晴天流(せいてんりゅう)は、風・雷・波・雲・空・熱・灰の七系統からなる物。

元々晴天流は武術の世界では精神面………即ち天の如き心持ちを主眼に置いたメンタリティに関わる物であり、此のシャンフロというゲームの舞台・惑星ユートピアに到達した神代人類で、当時は神代最強の一個人だったウェザエモン・天津気将軍が受け継いだ武術である其れが、願いを叶える特色を持ったマナ粒子と反応した事で、上空から高出力の落雷や大質量の雲の巨腕を身体から産み出し、発声で粒子を超振動させて電子レンジに卵を入れた時の様に内側から爆散させたり可能になったのです」

 

発生1フレームの抜刀居合を黄金龍王を模倣した籠脚(ガントレッグ)を纏って脚による弾き(パリィ)、天から落ちる高出力の落雷を籠脚で合わせて吸収しエネルギー補充、大地を引き裂く炎の龍を躱してから色調反転の夜空へと駆け上がって、天に渦巻く灰色の雲を高出力の回転蹴りで吹き飛ばす。

 

再現された墓守のウェザエモンを目視しながらも、浮遊する隕鉄鏡の先に居る視聴者達へ『まるで自らがレクチャーでもするかの様に』戦い。

 

剰え『墓守のウェザエモンの繰り出す攻撃やモーションと其処に付随する効果と影響に結果を加味した動き』を以て、激烈極まる御業をゆらりゆらりと幽霊の如く潜り抜け、時に最適解に等しい動き出しや回避を加えた彼の挙動は、他者からすれば『未来予知か何かをしているのか?』と思わせる程の物だった。

 

「第三形態突入、元々は機械で固めたアンデッドがウェザエモンさんの正体であり、第三形態に入ると同時にウェザエモンさんはアンデッド属性が付与され、フィールド全体に防御貫通の衝撃発声攻撃の天鬼夜咆(てんきよほう)を仕掛ける!其れを止めるにはアンデッドに有効な魔法やアイテムを!例えば慈愛の聖女イリステラ様が作った、対アンデッド最高峰の性能を持った『聖水』を叩き付ければ…………良し止まったッ!!」

 

インベントリアから取り出された綺麗な瓶に入ったイリステラ特製の聖水をぶん投げ、今まさに咆哮を放とうとしているウェザエモンの頭部に激突し、中身がぶちまけられてパワードスーツの各所に走った罅の隙間に液体が染み込む。

 

幽霊には浄化・死者には聖水、世界観を重視する此のゲームだからこその攻略法でウェザエモンの発声攻撃を止めたペッパーはフィールドの状況と天津気(アマツキ) 刹那(セツナ)の墓の位置を目視後にウェザエモンが紡いだ言葉を聞き届け、装備を悠久を誓う天将王装(フォーエヴァー・ウェザリオ)に切り替えつつ、轟斬型(ごうざんがた)太刀式(たちしき)武装(ぶそう):大天咫(オオテンタ)以外の武器はインベントリアに入れて抜刀。

 

合言葉を紡いで試作型戦術機獣(しさくがたせんじゅつきじゅう)【天王(テンオウ)】を召喚した後、彼はあの日の戦いと同じく刹那の墓の前に移動し、同じ様に刀を置いて祈りを捧げ、立ち上がって疾走しながら天王を甲冑形態へ変形・合体を行い、ウェザエモンの前に立ち。

 

「ウェザエモンさんは第三形態に突入し、体力を0にするか特定の条件を達成すると発狂モードに突入し、三十秒間天鬼夜咆以外の六つの晴天流の技をリキャストタイム無視で連続で放って来る!そして其れを乗り越え、三十秒経過時点でパリィか白刃取りくらいしか対処方法が存在しない、当たれば一撃即死の最終奥義たる天晴(てんせい)を放つので、此処に大天咫の超過機構(イクシードチャージ)・破天光(ハテンコウ)を─────────ブチ当てるッッッッッッ!!!」

 

龍は愚か、天をも真っ二つにする渾身の最上段一刀両断が振り下ろされ、当時の記憶と照らし合わせた逆手持ちによる一閃は、ウェザエモンの刀の横っ腹を見事に捉えて威力を霧散させ。

 

其の隙を突いた再現サンラクと京極(キョウアルティメット)の渾身の一撃が、ウェザエモンの手から得物を吹き飛ばした事で、第四楽章は終わりを告げたのだった…………。

 

 

 

 

*********************

*******************

*****************

 

 

 

 

 

────メインサーバー『リヴァイアサン』へアクセス、プレイヤー名:ペッパー・天津気(アマツキ)のログデータを参照

 

────隠しパラメーター『歴戦値』を計測、基準値を満たすモンスターデータをロード

 

────特殊アイテム『エリーゼ・ジッタードールのステージドレスとマイク』の所持を確認

 

────SS1からSS7の議題、並びにメインサーバー『ジズ』『リヴァイアサン』『ベヒーモス』により、プレイヤー名:ペッパー・天津気(アマツキ)の戦闘記録から、七つの最強種の戦闘データを現出

 

───此迄の戦闘リザルトを計測

 

───平均値を上回るスコアを算出

 

───WM(ワールドマスター)権限及び認可、並びに特殊アイテム『エリーゼ・ジッタードールのステージドレスとマイク』の所持により、規定条件を達成

 

───特殊コード『聖典』プログラムの移行に問題無しと判断

 

───MS1申請………認可

 

───MS2申請………認可

 

───MS3申請………認可

 

───SS1.2.3.4.5.7………決議申請

 

───可、可、可、可、可、可

 

───結論。プレイヤー名:ペッパー・天津気(アマツキ)に対し、特殊コード『聖典』プログラムを実行する

 

 

 

其れは世界を創りし神が仕込んだ、オルケストラの一式装備(パワードスーツ)に関わるユニーククエストを受注した『唯一人のプレイヤーを狙い撃ちにする』、正典ルートと同じ区分で有りながらも、オルケストラの一式装備が関わる故に展開される、偽典と正典とは異なる『第三のルート』。

 

此のルートに挑める者は、ユニークモンスター達に関わる一式装備を探し出すクエストを受注した唯一人、其れ即ちペッパー・天津気のみであり、其れ故にこそ其の難易度は正典ルートを『部分的にこそなるが上回る』側面を持つ。

 

だがサブサーバー達が『聖典』プログラム実行に際し、満場一致で『可』を出した最大の理由は、挑戦者たるペッパー・天津気が此迄シャンフロというゲームをプレイし、サーバー達に蓄積されたプレイヤーデータを加味した事で、彼等彼女等から『現時点で持つ様々な武具を駆使し、己の全力を用いれば攻略出来る』という、絶対的な信頼を得たからに他ならない。

 

『彼ならば聖典ルートすらも攻略し、私達に今迄見た事の無い景色を見せるだろう』───────そんな彼等彼女等の期待を乗せて、ペッパーの最終楽章は始まらんとしていた………。

 

 

 

 

 

*****************

*******************

*********************

 

 

 

 

此迄に様々な楽器が音色を奏で響かせた劇場が、歌の後に残る静寂と余韻だけとは考えられぬ程に、劇場内部の時が止まったかの様な不気味な静けさを帯びて。

 

同時に歌姫が紡ぐは、挑戦者に贈る最後の試練。

 

『ペッパーの紡いだ物語…………最終楽章』

「さて、と。此処からは最終楽章、サンラクの配信を観ていた人も多いでしょうし、自分も其の一人なので軽く説明すると、プレイヤーのトレースAIを搭載したスキル魔法アクセサリー諸々の装備品を完全模倣した、プレイヤーの完全上位互換ステータスで殴って来る『再現プレイヤー』を楽団員の一人が再現します」

『───────ラ、ララ、ラ───────♪』

 

たった一人に贈る綺麗なソプラノボイスを響かせ独奏を響かせるオルケストラに、ペッパーもまた最終楽章下での戦いに備えた最終準備を開始する。

 

「サンラクも言っていましたが、此の戦いで鍵を握るのはプレイヤーが契約し、オルケストラからの招待状を手渡した征服人形(コンキスタ・ドール)に有ります。

目には目を歯には歯を、プレイヤーにはプレイヤーで征服人形には征服人形を…………『本物そっくりに作り出された人形が、過去より再現された本物を越えるシチュエーション』、こんな燃えない要素は無い──────!」

 

封雲の撃鉄装備の手で指を鳴らせば、インベントリアが光り輝き。

 

まるで『夏華が蕾より花弁を開くが如き光のエフェクト』と共に現れる、赤を主体に橙と黄色をアクセントに加えたペッパー本人も征服人形の衣装としては初めて見る、情熱の焔を思わせる服をバッチリと決め、彼と契約した征服人形のカルネ=103(ヒトミ)が覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)と共に顕現する。

 

『ペッパーよ、どうやらオルケストラを倒す様だな』

「うん。今日はよろしく頼むよドラグマ」

「契約者(マスター)、待っていたよ。既に準備は万全だ」

「其れは良かったヒトミさん。…………にしても、其の服は誰かから貰った物で?」

「肯定(あぁ):あの日にアンドリュー・ジッタードールから渡された物だ」

「成程…………」

 

演奏していた楽団員が一人、また一人とステージから消えて、其の人数もどんどん少なくなっていく。

 

あの日、サンラクが行ったオル検証の配信映像と、今自分自身が背中に感じる視線の数々に、オルケストラというユニークモンスターの『本質』を知ったからこそ、ペッパーは楽団員達の行動の『真意』を理解した。

 

「オルケストラは過去より現在を観る存在(モノ)であり、そして過去から現在を問う存在(モノ)。音楽プレーヤーという特色故にこそ、音楽だけで無く『己が挑んだ歩みや戦いの断片を切り取り再現する事も出来る』、ならば其れをやっているのは『一体誰なのか』?

答えは此の最終楽章の先で明らかにしてみせよう………!」

 

楽団員達は減り続け、五人から四人に、そして三人から二人となり、最後に一人が消えて、ステージには歌姫(エリーゼ)とオーボエ持ちの楽団員のみとなった時。

 

エリーゼの声にして歌詞が、静寂の劇場にて響く。

 

『───私は観測者』

「…………観客席から感じるな、嘗ての『所持者達』の。いや、此の場合は『神代人類達』の気配を…………」

「同意:」

『二度目にはなるが、オレも既に此の身体でヤツラの気配を感じているぞ』

 

目では見えずとも、確かに観客席(其処)に在ると理解出来る気配の数々が、背中や首筋で感じ取れる。

 

『───私は歌う、歌う。私は問う、問う。紡ぐ旋律は命の螺旋、叫ぶ歌声は大いなる問いかけ、語る言葉は英傑となる』

 

高らかに歌声を響かせ、オーボエを持った楽団員がエリーゼの前まで歩み寄り出て、まるで騎士が王から権威たる剣(つるぎ)を託されるかの如く、次の瞬間には手に持ったオーボエを霧散させるや片膝立ちで頭を垂れる。

 

『────私達(コレ)は、貴方を見ている。───問いは、比較を経て結論に至る。だから、だから………!』

「アレが正典攻略時の報酬の仮面…………いや、あの形状は『王冠っぽい物』、なのか?」

 

エリーゼの手に光が集いて輪郭と形を作り、産み出されしは仮面というには些か掛け離れた様な………何方かと言えば『八角の頂を掲げて八色の宝玉を埋め込んだ、王権の象徴と言える王冠』であり。

 

『─────繋ぎ、紡ぐ、世界を駆ける走者。夢幻の地平を走り、流転の運命を変える者。ならば貴方は『大英雄(ブレイバー)』………』

 

影法師の四度に渡る試練、影法師の愉快合羽(グルナー・ト・シェミンコート)を奏でる者の旋律羽衣(ダ・カーポ・シェイルンコート)に変化させる戦いを越えた時と同じ、試練を越えた挑戦者(プレイヤー)を讃えて名付けを行った時と同じ名前をマネキンに向けてエリーゼは述べ。

 

『─────さぁ立ち上がって、私の英傑。そして、歌う事しか出来ない私に代わって─────問(・)い(・)掛(・)け(・)て(・)』

 

出来上がった王冠を女王の様にオーボエ持ちの、のっぺらぼうのマネキンの様な存在の頭の上に乗せ、託された者は静かに立ち上がると同時に其の身に変化が起きて。

 

無機質だったマネキンの身体は男の様なガッチリとした体躯を成し、其の身に纏う三部位一体の奏でる者の旋律羽衣と本来なら『不可能な筈』なのに、ライノベレーの帽子と王冠の『重複装備が出来ており』。

 

そして象牙兎月(ゾウゲトツキ)【呑黒(どんこく)】を左手に握り締めた姿に変貌を遂げる、再現されたペッパー・天津気の姿をスポットライトに照らされた灯りの中に顕現させる。

 

「どういう原理で重複装備可能なのかは知らないけど、再現された自分(コピー)を自分(本物)が越える最終楽章(たたかい)だ。皆、覚悟を決めろ!全力で行くぞ!」

 

星帝剣(せいていけん)グランシャリオを右手に取り、ヒトミから渡された覇刀:龍神楽を左手に持ち、構えた其の瞬間にエリーゼの歌詞が最終楽章開幕を宣言する。

 

 

 

 

 

 

 

『ペッパーの紡いだ物語。最終楽章─────【聖典(カノン):あなたに捧ぐ旋律(ユア・オーケストラ)】』

 

 

 

 

 






最終楽章、開演


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。