VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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最終楽章、堂々開演




歌よ響け、英雄譚を讃え 〜其の十一〜

荘厳なる中世劇場と、空の観客席に座る見えない観戦者達の気配。

 

スポットライトに照らされる中で舞台(ステージ)上に立ちて相対するは、歌姫(エリーゼ)と再現された『ペッパー・天津気(アマツキ)』とペッパー・天津気に覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)。

 

此の劇場(世界)ではペッパーが握り、オルケストラでも模倣不可能の金色の龍刃はスポットライトに照らされど、異物であり知性を持った機械生命体のヒトミはスポットライトに照らされない。

 

「オルケストラよ、貴女が再現された契約者(マスター)の歌姫であるならば!私は契約者(マスター)の歌姫として、私自身の意志で此処に!共に立って未来を見る!!

簡易格納機構(インスタント・インベントリ)展開(オープン)、重奏支援拡声機(ハーモニクス・スピーカー)設置完了(セットアップ)、自律浮遊照明(スポッティングドローン)起動(スタート)、光子仮想有線(ノンイグジステントケーブル)誘導接続(エンゲージ)…………全行程完了(オールコンプリート)!──────当機(私)、カルネ=103(ヒトミ)を中心として半径1メートル空間を領域指定!偶像概念舞台(アイドライズステージ)……………形成(ビルドアップ)!!!」

 

嘗ての日にファステイアで路上ライブを行った日と同じく、数多の音楽用重機材達がヒトミの周りに展開し、己の姿は己で照らすとする彼女の覚悟は、揺るぎ無い視線と共に在る事が何よりの証拠だった。

 

「カルネ・アーヴェンハールが生前に作詞作曲、並びに歌った全ての曲のインストールは完了済だ。契約者(マスター)、何かリクエストは?」

「ヒトミさんが『此れぞ!』という曲で!!」

「了解(ラジャー)!」

「さぁ…………始めようぜ『俺』ッ!!!」

 

此方の声をゴングとし、最終楽章のペッパー 対 『ペッパー』の戦いが幕を開ける。

 

奇しくも互いが初手に選択したのは、己の鳩尾に封雲の撃鉄(タイタントリガー)・極(スペリオル)を叩き付けての起動と、刀剣大神(とうけんだいしん)並びに剛鐵戴神(ごうてつたいじん)の発動で此の楽章中の両手武器を片手持ち可能にするスキルの点火。

 

そしてペッパーが勇者武器(ウィッシュドウェポン)の一振り聖盾(せいじゅん)イーディスと魚人族(マーマーン)の英傑武器(グレイトフル)・覇濤海剣(はとうかいけん)アスカロンを其の手に担い、頭上に在る混海覇印(アルカ・ク=リンゼン)・極(スペリオル)が強烈な勢いで回転を始め。

 

逆に『ペッパー』は雲の巨腕にて宝鍠趙弩剣(シャガル=ニュア)を二刀流と、空いた右手にアイテムである金晶蠍の矢(ゴルドー・アーテアリ)を握って近接戦時の防御策及び宝鍠趙弩剣の射撃に備えた準備をし、両者共に機動系スキルを点火して肉薄から近接武器の距離(レンジ)に飛び込んで、武器同士の衝突から火花が二度散った…………まさに其の時。

 

『La────La───、La、La───』

「紡がれた物語、描かれし文字が調を綴り、指先でなぞった幼き日々は、私の記憶に灯っている………!」

「!」

『……………!』

 

エリーゼが想いを込めた旋律を響かせ、其れに対抗するかの様にヒトミもまた想いを込めた旋律を響かせ合えば、激突してほぼ中央で錯綜したペッパーと『ペッパー』が立つ、其々の『領域』が。

 

即ち歌によって表現されて生まれる『世界』と言うべき現象が、其々の歌姫の紡ぐ歌声によって今此の瞬間に構築されんとしていた。

 

「────人よ謳え、高らかに!────人よ叫べ、心の儘に!強く、強く、強く、強く………魂の衝動の成す儘に、駆け抜けろ己の物語────!此れは彼等彼女等の…………英雄譚(ヒストリア)!!!」

 

エリーゼが描く世界が『中世劇場とレッドカーペット』であるならば、ヒトミが描く世界は『本棚と数多の英雄達の軌跡を綴った分厚い本達が並ぶ果ての無い図書館』と言った空間に分かれ、互いが互いの歌姫の領域に戻る中で世界は二つへと引き裂かれる。

 

「契約者(マスター)、御武運を!」

「彼女が魂と声を張るならば!俺は身体張って前線で敵を討つだけだッ!!!」

 

舞台は整った。再現された歌姫に相対する歌姫(人形)と、再現されたに己に相対する自分が、此の戦いを彩る者達となる!

 

「ドラグマ!『アレ』を何時でも使える様にしてくれ!」

『解った、負けるなよ』

「勿論!ぶっつけ本番でも、気兼ね無く行こうアスカロン!【冥氷(めいひょう)の闇淵(あんえん)】!」

 

初手両者共に覇雷轟封(サンダルダイン)を使い、御互いに被弾すればスキルが一定時間封じられるという、チェーンデスマッチじみた状態から接近戦に移行。

 

ペッパーが持つ覇濤海剣アスカロンが搭載した能力(チカラ)の一端を言霊を用いて解放し、焔と氷の相反する二つの属性の片割れたる赫焔の赤金が鳴りを潜め、変わりに冥氷の黒蒼がアスカロンを染め上げ。

 

同時にアスカロンの剣身より冷気が噴き出し、黒を内封した青い氷が刃先と刀身に纏わり付き、嘗てル・ゲネテレによって『畝ってた方が格好が良い』との理由で波の様に畝り曲げられた其の形状を、元々の『直剣』とするかの如く氷が覆い尽くして『分厚い鐵塊の大剣』へと、其の身姿を変貌させたのだ。

 

『……………!』

「知ってる、知ってる、其れも其れも其れも!其処からの攻撃も動きも全(・)部(・)!俺は俺自身の動きを全部知っているッ!」

 

再度近接武器の射程距離下に両雄突入と同時、先んじた『ペッパー』が雲腕による多重変形合体分離の弩弓剣(アーチブレイド)の乱斬撃を叩き付けるが、風に煽られて空に舞う綿毛や鳥の羽毛の様にペッパーは紙一重で躱していく。

 

オルケストラのユニークシナリオEX受注者『ペッパー・天津気』の過去の戦績を遡って構築されたトレースAIは、単純なる攻撃は空を切ったり阻まれ、防御では止められたり受け流されて切り崩せず、数手先を読んだ程度では其の深淵たる読みは越えられない。

 

だがペッパーは知っている、他者以外で自分という存在を越えられるのは、何時の時代も自分以外に有り得ないのだと言う事を。

 

「ちょやさぁ!」

『…………!』

 

オルケストラが寄越した影法師との戦いを経験したあの日から、何時かは『最新版の己と戦う事になるのを想定した』体外離脱訓練によって、自身の攻撃と其処から派生する様々な動きを予測し、相手を見て脊髄反射の要領で自身の動きのラグを限界まで縮め、今日此の日此の瞬間まで積み重ねた研鑽と修練と共にアスカロンを振るう。

 

氷で覆われたアスカロン、斬撃よりも打撃が有効だと判断し、更には何らかの付随効果をも想定している『ペッパー・天津気』は目に関わるスキル、おそらく視界補強の真界観測眼(クォンタムゲイズ)か感覚強化の局極到六感(スート・イミュテーション)。

 

或いは死に関わる光景を見るサキガケルミゴコロかフューチャー・ヴィジョンの四つの中の何れかを使った様で、どうやら『ペッパー・天津気』は局極到六感を選択・ジャストタイミングで象牙兎月(ゾウゲトツキ)【呑黒(どんこく)】による打撃スキルと共にアスカロンを殴り飛ばし、クリティカルパリィをせんとした其の直前。

 

強化された『ペッパー・天津気』の肌の感覚がアスカロンの冷気に『何かヤバい物』を感じたのか、瞬間転移じみた移動技能(レーアドライヴ・アクセラレート)を使って右側面を取ったのを、既に此の一連の戦闘中の交錯で天空神の加護(レプライ・ウーラノス)を使っていたペッパーは、左手に持った覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)をバックスナップで背中側に投げて。

 

「今ッ!」

『飛翔龍刃(ソラカケノツメ)!!!』

 

ペッパーの声、龍神楽の言葉、次の瞬間には黄金の龍刃が、空中で急カーブを決めながら独りでに空を駆けて。

 

其の動きは剣士系最上位職:剣聖の固有魔法【従剣劇(ソーヴァント)】を彷彿とさせながら、何処か道半ばを思わせる荒々しさを残した一閃が、『ペッパー・天津気』の死角を突いて横っ腹を狙い。

 

更に龍神楽の動きに合わせたペッパーによる、晴天流【雲】入道雲の挟撃を見た『ペッパー・天津気』は、起動から八回使用するまで再使用時間(リキャストタイム)が始まらないレーアドライヴ・アクセラレートの二回分を使って、空中を駆けた龍神楽とペッパーの繰り出す龍と雲の挟撃から距離を離すと───────自分というアバターが出来る事を誰よりも、況してや『自分以上に』重々理解している彼はそう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ペッパー・天津気』が彼の予測を超えて、其の攻撃さえも想定していた『神律燼風(しんりつじんふう)による突発的な超加速と勢いを其のまま、ブリッジ体勢からバク転して挟撃回避と星天秘技 シューティングスターで突っ込んで来る』─────────そんな光景を眼前で見せられるまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ!?」

『なぬっ!?』

 

ペッパーと龍神楽が声を上げ、其の刹那を突く『ペッパー・天津気』が象牙兎月【呑黒】(ショートメイス)をタワーシールドたる女帝城の顕壁盾(ヴォーバン・ガルガンチュラ)に切り替え持つや、盾王の貫撃(ディフェンシブ・ウィリアルム)込みの大質量盾面突貫(ギガントシールドチャージ)で襲い掛かったのだった。

 

 






人の予想を越えるのは、人だけに有らず




飛翔龍刃(ソラカケノツメ)

此迄の戦いを経験し、更なる進化を求めた覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)が修正前剣聖勇者のサイガ-100が持つ剣士系最上位職:剣聖の固有魔法【従剣劇(ソーヴァント)】を学んで、ペッパー・天津気(アマツキ)の持つ星天秘技(スターアーツ)ミルキーウェイの着想を得て体得した特殊スキル。

世界に漂うマナ粒子を固めて道を構築し、其の道を滑る様に移動を行い、其の移動中に刃先での刺突及び斬撃を敵に叩き込むという、意志と思考を持って自己進化した黄金の龍刃の新たなる牙である。




アンドリューのシュテルンブルーム曲レビュー

アンドリュー『本日紹介する曲は、作詞作曲カルネ・アーヴェンハールの偉大なる英雄譚(グランツ・ヒストリア)。カルネ・アーヴェンハールの作詞作曲の曲は共通して、人類が描いた神話や英雄譚に御伽噺等の歴史に由来している物が多く、此の曲は彼女のユグドラシル含めてカルネの五大作詞作曲歌(カルネ・ザ・ファイブス・ミュージック)の一つと言われる有名な曲で、彼女の五大作詞作曲歌の中で頭三つは抜きん出ている知名度ダントツの曲でもある。彼女は人が紡ぎ繋いだ物語や歴史に人間讃歌が大好きであり、特に此の偉大なる英雄譚は人の生き様を彼女の奏でる旋律を以て証明せんとする(以下略)

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