最終楽章、堂々開演
荘厳なる中世劇場と、空の観客席に座る見えない観戦者達の気配。
スポットライトに照らされる中で
此の
「オルケストラよ、貴女が再現された
嘗ての日にファステイアで路上ライブを行った日と同じく、数多の音楽用重機材達がヒトミの周りに展開し、己の姿は己で照らすとする彼女の覚悟は、揺るぎ無い視線と共に在る事が何よりの証拠だった。
「カルネ・アーヴェンハールが生前に作詞作曲、並びに歌った全ての曲のインストールは完了済だ。
「ヒトミさんが『此れぞ!』という曲で!!」
「
「さぁ…………始めようぜ『俺』ッ!!!」
此方の声をゴングとし、最終楽章のペッパー 対 『ペッパー』の戦いが幕を開ける。
奇しくも互いが初手に選択したのは、己の鳩尾に
そしてペッパーが
逆に『ペッパー』は雲の巨腕にて
『La────La───、La、La───』
「紡がれた物語、描かれし文字が調を綴り、指先でなぞった幼き日々は、私の記憶に灯っている………!」
「!」
『……………!』
エリーゼが想いを込めた旋律を響かせ、其れに対抗するかの様にヒトミもまた想いを込めた旋律を響かせ合えば、激突してほぼ中央で錯綜したペッパーと『ペッパー』が立つ、其々の『領域』が。
即ち歌によって表現されて生まれる『世界』と言うべき現象が、其々の歌姫の紡ぐ歌声によって今此の瞬間に構築されんとしていた。
「────人よ謳え、高らかに!────人よ叫べ、心の儘に!強く、強く、強く、強く………魂の衝動の成す儘に、駆け抜けろ己の物語────!此れは彼等彼女等の…………
エリーゼが描く世界が『中世劇場とレッドカーペット』であるならば、ヒトミが描く世界は『本棚と数多の英雄達の軌跡を綴った分厚い本達が並ぶ果ての無い図書館』と言った空間に分かれ、互いが互いの歌姫の領域に戻る中で世界は二つへと引き裂かれる。
「
「彼女が魂と声を張るならば!俺は身体張って前線で敵を討つだけだッ!!!」
舞台は整った。再現された歌姫に相対する
「ドラグマ!『アレ』を何時でも使える様にしてくれ!」
『解った、負けるなよ』
「勿論!ぶっつけ本番でも、気兼ね無く行こうアスカロン!【
初手両者共に
ペッパーが持つ覇濤海剣アスカロンが搭載した
同時にアスカロンの剣身より冷気が噴き出し、黒を内封した青い氷が刃先と刀身に纏わり付き、嘗てル・ゲネテレによって『畝ってた方が格好が良い』との理由で波の様に畝り曲げられた其の形状を、元々の『直剣』とするかの如く氷が覆い尽くして『分厚い鐵塊の大剣』へと、其の身姿を変貌させたのだ。
『……………!』
「知ってる、知ってる、其れも其れも其れも!其処からの攻撃も動きも
再度近接武器の射程距離下に両雄突入と同時、先んじた『ペッパー』が雲腕による多重変形合体分離の
オルケストラのユニークシナリオEX受注者『ペッパー・天津気』の過去の戦績を遡って構築されたトレースAIは、単純なる攻撃は空を切ったり阻まれ、防御では止められたり受け流されて切り崩せず、数手先を読んだ程度では其の深淵たる読みは越えられない。
だがペッパーは知っている、他者以外で自分という存在を越えられるのは、何時の時代も自分以外に有り得ないのだと言う事を。
「ちょやさぁ!」
『…………!』
オルケストラが寄越した影法師との戦いを経験したあの日から、何時かは『最新版の己と戦う事になるのを想定した』体外離脱訓練によって、自身の攻撃と其処から派生する様々な動きを予測し、相手を見て脊髄反射の要領で自身の動きのラグを限界まで縮め、今日此の日此の瞬間まで積み重ねた研鑽と修練と共にアスカロンを振るう。
氷で覆われたアスカロン、斬撃よりも打撃が有効だと判断し、更には何らかの付随効果をも想定している『ペッパー・天津気』は目に関わるスキル、おそらく視界補強の
或いは死に関わる光景を見るサキガケルミゴコロかフューチャー・ヴィジョンの四つの中の何れかを使った様で、どうやら『ペッパー・天津気』は局極到六感を選択・ジャストタイミングで
強化された『ペッパー・天津気』の肌の感覚がアスカロンの冷気に『何かヤバい物』を感じたのか、
「今ッ!」
『
ペッパーの声、龍神楽の言葉、次の瞬間には黄金の龍刃が、空中で急カーブを決めながら独りでに空を駆けて。
其の動きは剣士系最上位職:剣聖の固有魔法【
更に龍神楽の動きに合わせたペッパーによる、晴天流【雲】入道雲の挟撃を見た『ペッパー・天津気』は、起動から八回使用するまで
『ペッパー・天津気』が彼の予測を超えて、其の攻撃さえも想定していた『
「なっ!?」
『なぬっ!?』
ペッパーと龍神楽が声を上げ、其の刹那を突く『ペッパー・天津気』が
人の予想を越えるのは、人だけに有らず
此迄の戦いを経験し、更なる進化を求めた
世界に漂うマナ粒子を固めて道を構築し、其の道を滑る様に移動を行い、其の移動中に刃先での刺突及び斬撃を敵に叩き込むという、意志と思考を持って自己進化した黄金の龍刃の新たなる牙である。
アンドリューのシュテルンブルーム曲レビュー
アンドリュー『本日紹介する曲は、作詞作曲カルネ・アーヴェンハールの