VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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『己』を越える為に




歌よ響け、英雄譚を讃え 〜其の十四〜

「理想と名声、地位に夢、野望と欲望、渇望に希望!其れは人の生きる意志…………!途切れる事無き大河の如く、繋がる道は連綿たる史の如く───────!!!」

 

カルネ=103(ヒトミ)が力強い声を高らかに響かせながら、己(ペッパー)を再現した『己(ペッパー)』を乗り越えんと戦う者へ、人形は自分自身に出来る声援(エール)を送り続ける。

 

「ちぇぃっ───────!!」

『………………!』

 

戦士にして勇者たるペッパー・天津気(アマツキ)は、己が此の世界(ゲーム)で持つ武器と研鑽に、そして此迄の技術と力を総動員し、此の戦いで全て擲つ覚悟を以て再現された『ペッパー・天津気』に立ち向かう。

 

斬り、受け流し、殴り、叩き、蹴り飛ばし。受けて、受けて、回避、跳躍、追撃にカウンターの一閃。撃って、躱し、打って避け、殴って、打って、斬って、躱して…………!

 

「はい此処ォ!!!あっ、くっそ惜しいッ!!!」

『………………!!!』

『ヌゥ、また防いだか………!』

 

鎧やらで顔が見えない上、おそらく顔が見えても元々がマネキンに肉付けをした存在なので、『ペッパー』がどんな表情をしているかはペッパーにも判らない。

 

だがしかし、今回の交錯の果てに繰り出した『変速一文字斬り 〜覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)の魂魄切断(タマダチ)を添えて〜』は、『ペッパー』からも『ヤバい』と判断され、其れを再現したオルケストラからしても『忖度ガードを使わなければ!』という判断を下せたらしい。

 

トロンボーンやチェロにバイオリンが盾として、壁を成して『ペッパー』を守った後に砕け散って光の粒子と化しながら、手首に一体化したインベントリアの片方へと吸収されていった。

 

(やっぱり此の戦いは影法師との四回戦と同じ、自分が持っていて『自分』が持っていない物を如何にぶつけるか!其れによって、オルケストラが展開している此の世界を削り切るかが鍵を握ってる…………!)

 

制圧率に換算すれば開始時点で五分五分だった領域は、目算でエリーゼ:2.8のヒトミ:7.2に広がり、此処までオルケストラに使わせた忖度ガード回数は十九回で、エリーゼの世界で六回にヒトミの世界で十一回の、二つの世界境界線で二回引き出させ。

 

其の忖度ガードの内訳は星帝剣(せいていけん)グランシャリオが七回の覇濤海剣(はとうかいけん)アスカロンが四回、覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)で今し方の一回を含め三回、後は短刀武器の秀刀(しゅうとう)【白金(しろがね)】・大太刀の黒純大刀(こくじゅんたいとう):黑鐵(クロハガネ)・手斧武器の紅暴龍魚の臥掌斧(レ・アルガ・ミティオン)・籠脚(ガンドレッグ)のボーリングストライカー・大斧武器たる歴積重大戦斧(グレイドネス・グァルックス)其々で一回ずつの計五回。

 

そして発動した忖度ガード其(・)の(・)全(・)て(・)に(・)、混海覇印(アルカ・ク=リンゼン)・極(スペリオル)の特殊状態「禍波のアビス」による特殊な圧力が由来し、其の特徴や出力も戦いの中で大方把握する事が出来た。

 

「此の圧力は見方に使い方を変えれば、色々と面白い事も出来る!」

 

禍波のアビスの効果が攻撃モーションと武器に掛かるのだが、此の効果が付与されるトリガーは『アクセサリー装備者が相手(対象)に攻撃するという意志の大きさ』に比重し、例えば足裏で地面を踏み込む際に何気無く地に足裏着けて踏んだり、単なるダッシュで道路を駆け抜けたとしても、アクセサリーの効果による圧力は発生せず掛からない。

 

が、装備者が『モンスターを倒すという意識』を己(・)が(・)意(・)識(・)の(・)片(・)隅(・)に(・)一(・)片(・)で(・)も(・)持っている場合、踏み込んだ足裏は『踏み付け攻撃という判定』が働き、其れによってアクセサリー効果が付与されて走る際の出力も爆発的になるという、一歩の移動さえ強力な物となって足首を挫いて自爆する危険性が常に引っ付いて回る。

 

そんなペッパーの持つアクセサリーの中でも一番のじゃじゃ馬な存在の混海覇印だが、手を用いた物品の投擲・脚で武器の蹴り出し・武器による物品の射出ともなれば、其の物品にも混海覇印の圧力が乗る為に『射出された物にはパリィ不可&直撃で一定ダメージ適応される事』も此の戦いの中で理解に至れた。

 

「『だから此の様な事も出来る!』」

 

ペッパーが覇刀:龍神楽を逆手から順手持ちにし、ジャイロヴォース・スローを使用から槍投げの要領で『ペッパー』へと投げ込めば、踏み込んだ際に発生した圧力が片足が接地した世界に罅と衝撃を走らせ、投げられた龍神楽は圧力を纏って空圧の壁すらも貫き、黄金の龍星の如き槍と化しながら音速に迫る勢いで飛んで行き。

 

投げられた龍刃が『ペッパー』の視界に迫る中、死の光景を見定む技能(サキガケルミゴコロ)を使って自身の鳩尾を貫く光景でも見たのか、はたまた死の未来予知を使っても間に合わないと理解したのか…………『ペッパー』は此処でサキガケルミゴコロでは無く、パリィを確実に成功させる真界観測眼(クォンタムゲイズ)に局極到六感(スート・イミュテーション)、更には晴天流【雷】の成神(なるかみ)の三種類を使って回避を選択。

 

其れは生体電流の加速による、自身の動体視力や神経伝達速度の向上を始めとし、龍神楽が飛翔龍刃(ソラカケノツメ)を使って空中超速方向転換で死角から『自分』を貫くという判断と、其の行動を囮にしてペッパーが接近した際に即座にカウンター可能にすると言うべき、そんな『ペッパー』の解答なのだろう。

 

だからこそ、此処でペッパーが取った行動は『其の場で動かずに待機する事』であり、其れは今の今迄に何かしらの行動(アクション)をし続けたペッパーだからこそ、其の選択は永世八冠の思考補強が加わって強化された『ペッパー』の思考に、ほんの僅かな『思考の空隙を産むに至らせた』。

 

当然ながら思考の空隙は、行動の動き出しを遅らせ。動き出しが遅れる事は、必然として自身の無防備を相手に晒す結果となり。そしてそんな無防備となる刹那を、ペッパーが見逃す事は断じて無い。

 

「やっとこさだ、漸く隙を見出だせた」

 

宙域超速(スペース・ランウェイ)・空律歩爽(ニア・クルージング)・爆駿流疾走(ブラスタ・ファラウェイ)の三つのスキルで空を駆け、ギャラクシア・スピニングの円周挙動で相手に接近するという『唯其れだけの行為』が、圧力を発生させるアクセサリーの力を抑える。

 

混海覇印の圧力発生の原理は『抜刀居合』と同じ、鞘より刀を抜き放つ其の瞬間までは、其の身の内にて煮え滾る殺意のマグマへ静かに蓋をし、抜き放った極僅かな一瞬に全出力を注ぎ込んで噴火させるのと良く似ていて。

 

此方(ペッパー)の行動を『ペッパー』が強化された動体視力と共に視線で追って来たが、既にギャラクシア・スピニングによる距離詰めでワンアクションで届く距離に居る上に、此処まで嫌というくらいに混海覇印の圧力を当て続けた事で、此方の攻撃はパリィ不可と相手も学習している。

 

故にこそ『ペッパー』は成神を使ったのだろうが…………残念ながら其れすらも、ペッパーにとっては既に『想定済みの範疇』に在った。

 

「『俺』よ。天空の神眼(ラトゥルスカ・ゴッドアイズ)と集律視標着目(ワーナリー・スポットヘイト)の視点強制移動コンボでも使うかい?」

『………………!』

 

だからこそ、ペッパーは『目を閉じていた』。

 

俯瞰の視点から天下の世界を見下ろし、使用者の目の在る位置に視界を向かせる此の視界コンボスキルは、一見弱点が無い様に見えて『目を持たないモンスターには効果が無く』、極論『目を瞑っていれば』効果を受けずに済む。

 

何よりペッパーは幕末の世界で幾多の死闘を経験し、幕末に生きるプレイヤー達の『気配察知技術』を会得したが故に、斬り倒すべき敵の位置を大まかに知る事が出来ており。

 

空中超速疾走&円周挙動での回り込みと万が一のブースト回避、『ペッパー』が成神を使った際に雷のエネルギーを吸収して自身の出力に変え、高出力の電撃の上から蹴り叩くべくレディアント・ソルレイアと共に扱う事で真価を発揮する、光輝へと昇る金龍王装(レディアント・ドラゴニウス)をペッパーは選択した。

 

全ては『此の瞬間を読んでいた』が故に。

 

「ヒトミさんの世界に吹き飛べ─────!『蓄積せよ(Charging.up)』!!!」

 

電撃及び風撃吸収の合言葉と並行した、高度な思考演算と共に行った行動としては余りにも軽過ぎる、左脚による三日月蹴り。

 

柔らかく、軽く、殺意を乗せず…………まるで意図せず道端に転がっていた小石に、靴の爪先が接触した事で石が地面を転がる様、僅かに『ペッパー』に当てただけの行為。

 

だが次の瞬間、ペッパーの発動した不世出の奥義(エクゾーディナリースキル)の戦砕琥示(ウォールフェン)により『ペッパー』の身体に襲い掛かった強烈極まる衝撃が、再現された墓守の英雄の鎧と其の機巧の軍馬の合体で増した重量すら諸共しない、圧倒的なまでの出力と圧力によって吹き飛ばし。

 

エリーゼの展開した世界であるからこそ強靭になった忖度ガードの強度を削ぐべく、ヒトミの展開した世界へとペッパーは『ペッパー』を引きずり込んだ。

 

「スパート掛けるぞ!」

 

装備を切り替えしは深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)、片手に六道極円盾(リクドウキョクエンジュン):天獄(テンゴク)を、八本の蛸足の内三本に握るは金弓宝剛剣(ゴルト・ヴァーシュ)・鯱弩燈剣(シャドウコウケン) RE:Vil∀=TAM(リ・ヴィア=タン)・宝鍠趙弩剣(シャガル=ニュア)の三つ。

 

そして残り五つの蛸足には綺羅びやかな輝きを放つ、美しき水晶を加工して洗練された作りをしている、鏃が矢と一体化した物達だったのである。

 

 






追い込む為の奇策


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