『己』を越える為に
「理想と名声、地位に夢、野望と欲望、渇望に希望!其れは人の生きる意志…………!途切れる事無き大河の如く、繋がる道は連綿たる史の如く───────!!!」
カルネ=
「ちぇぃっ───────!!」
『………………!』
戦士にして勇者たるペッパー・
斬り、受け流し、殴り、叩き、蹴り飛ばし。受けて、受けて、回避、跳躍、追撃にカウンターの一閃。撃って、躱し、打って避け、殴って、打って、斬って、躱して…………!
「はい此処ォ!!!あっ、くっそ惜しいッ!!!」
『………………!!!』
『ヌゥ、また防いだか………!』
鎧やらで顔が見えない上、おそらく顔が見えても元々がマネキンに肉付けをした存在なので、『ペッパー』がどんな表情をしているかはペッパーにも判らない。
だがしかし、今回の交錯の果てに繰り出した『変速一文字斬り 〜
トロンボーンやチェロにバイオリンが盾として、壁を成して『ペッパー』を守った後に砕け散って光の粒子と化しながら、手首に一体化したインベントリアの片方へと吸収されていった。
(やっぱり此の戦いは影法師との四回戦と同じ、自分が持っていて『自分』が持っていない物を如何にぶつけるか!其れによって、オルケストラが展開している此の世界を削り切るかが鍵を握ってる…………!)
制圧率に換算すれば開始時点で五分五分だった領域は、目算でエリーゼ:2.8のヒトミ:7.2に広がり、此処までオルケストラに使わせた忖度ガード回数は十九回で、エリーゼの世界で六回にヒトミの世界で十一回の、二つの世界境界線で二回引き出させ。
其の忖度ガードの内訳は
そして発動した忖度ガード
「此の圧力は見方に使い方を変えれば、色々と面白い事も出来る!」
禍波のアビスの効果が攻撃モーションと武器に掛かるのだが、此の効果が付与されるトリガーは『アクセサリー装備者が
が、装備者が『モンスターを倒すという意識』を
そんなペッパーの持つアクセサリーの中でも一番のじゃじゃ馬な存在の混海覇印だが、手を用いた物品の投擲・脚で武器の蹴り出し・武器による物品の射出ともなれば、其の物品にも混海覇印の圧力が乗る為に『射出された物にはパリィ不可&直撃で一定ダメージ適応される事』も此の戦いの中で理解に至れた。
「『だから此の様な事も出来る!』」
ペッパーが覇刀:龍神楽を逆手から順手持ちにし、ジャイロヴォース・スローを使用から槍投げの要領で『ペッパー』へと投げ込めば、踏み込んだ際に発生した圧力が片足が接地した世界に罅と衝撃を走らせ、投げられた龍神楽は圧力を纏って空圧の壁すらも貫き、黄金の龍星の如き槍と化しながら音速に迫る勢いで飛んで行き。
投げられた龍刃が『ペッパー』の視界に迫る中、
其れは生体電流の加速による、自身の動体視力や神経伝達速度の向上を始めとし、龍神楽が
だからこそ、此処でペッパーが取った行動は『其の場で動かずに待機する事』であり、其れは今の今迄に何かしらの
当然ながら思考の空隙は、行動の動き出しを遅らせ。動き出しが遅れる事は、必然として自身の無防備を相手に晒す結果となり。そしてそんな無防備となる刹那を、ペッパーが見逃す事は断じて無い。
「やっとこさだ、漸く隙を見出だせた」
混海覇印の圧力発生の原理は『抜刀居合』と同じ、鞘より刀を抜き放つ其の瞬間までは、其の身の内にて煮え滾る殺意のマグマへ静かに蓋をし、抜き放った極僅かな一瞬に全出力を注ぎ込んで噴火させるのと良く似ていて。
故にこそ『ペッパー』は成神を使ったのだろうが…………残念ながら其れすらも、ペッパーにとっては既に『想定済みの範疇』に在った。
「『俺』よ。
『………………!』
だからこそ、ペッパーは『目を閉じていた』。
俯瞰の視点から天下の世界を見下ろし、使用者の目の在る位置に視界を向かせる此の視界コンボスキルは、一見弱点が無い様に見えて『目を持たないモンスターには効果が無く』、極論『目を瞑っていれば』効果を受けずに済む。
何よりペッパーは幕末の世界で幾多の死闘を経験し、幕末に生きるプレイヤー達の『気配察知技術』を会得したが故に、斬り倒すべき敵の位置を大まかに知る事が出来ており。
空中超速疾走&円周挙動での回り込みと万が一のブースト回避、『ペッパー』が成神を使った際に雷のエネルギーを吸収して自身の出力に変え、高出力の電撃の上から蹴り叩くべくレディアント・ソルレイアと共に扱う事で真価を発揮する、
全ては『此の瞬間を読んでいた』が故に。
「ヒトミさんの世界に吹き飛べ─────!『
電撃及び風撃吸収の合言葉と並行した、高度な思考演算と共に行った行動としては余りにも軽過ぎる、左脚による三日月蹴り。
柔らかく、軽く、殺意を乗せず…………まるで意図せず道端に転がっていた小石に、靴の爪先が接触した事で石が地面を転がる様、僅かに『ペッパー』に当てただけの行為。
だが次の瞬間、ペッパーの発動した
エリーゼの展開した世界であるからこそ強靭になった忖度ガードの強度を削ぐべく、ヒトミの展開した世界へとペッパーは『ペッパー』を引きずり込んだ。
「スパート掛けるぞ!」
装備を切り替えしは
そして残り五つの蛸足には綺羅びやかな輝きを放つ、美しき水晶を加工して洗練された作りをしている、鏃が矢と一体化した物達だったのである。
追い込む為の奇策