VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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観戦者達はどう見るか




歌よ響け、英雄譚を讃え 〜其の十六〜

「いや、何、これ…………?コイツの頭の中身、どーなってんの…………???」

 

 

─────────其の戦いを観ている者は呟き。

 

 

(見えてる物だけでも剣全般と、刀関係に斧含めた斬撃武器に、小鎚や大鎚、盾、籠脚、籠手等の打撃武器と、弓に銃の遠距離攻撃も完備か………。シャンフロ内の情報で高出力の純スキルアタッカーと公言していたらしいが、其れを極めると此処までの領域に至る………と)

 

 

─────────其の戦いを観ている者はこう分析し。

 

 

「…………素晴らしい!実に素晴らしい!無数の手足を一切無駄にする事無く、持て余す事もせずに振るっている!其れは文字通り、有線兵器だろうと無線兵器だろうと自分の手足として扱うのと同じ!そして其れは必然的に高い空間認識能力の才覚の証明其の物に他ならない…………!!!マルチタスクと空間認識能力に自分の身体を十全に理解している…………私も新しい、最高にイカれたネフィリムを作れる!!!」

 

 

─────────其の戦いを観ている者(ルスト)は歓喜に沸き。

 

 

(電脳世界の仮初めの身体で在りながら、現実世界と実体の挙動と遜色無く身体を動かし、己の脳髄に置ける思考と身体の反応のタイムラグが少しずつ、戦う中で縮んでいる!…………此れがペッパーというプレイヤーの、化物じみた強さの其の極一欠片に過ぎないのか…………!)

 

 

─────────其の戦いを観ている者は畏怖と共に言葉を零した。

 

 

其れはペッパー・天津気(アマツキ)というプレイヤーが培った、同一カテゴリー武器の複数同時運用時に置いての情報並列処理能力(マルチタスク)の結晶の現出であり。

 

其れはペッパーというプレイヤーが此の瞬間までの歩み、シャンフロで研鑽し続けた一朝一夕では片付けられない、絶対的な戦闘力と数多の業物たる武器達の習熟証明であり。

 

其れはペッパーというプレイヤーが持つ、シャンフロ以上にプレイヤーの操作技術を要求するネフホロでも通用した、高次元の複数腕操作技術の賜物であり。

 

そして其れ等を支え、数時間に渡る激烈極まる戦闘で己が思考を全力全開(フルスロットル)で回し続けても、留まり淀む事を知らない挑戦心という名の情熱の奔流であった。

 

別天津の隕鉄鏡を通じ、映像として仮想世界から現実世界の電子の海へと放流され。

 

此の世紀の一戦は、観戦者達に大なり小なりの影響と衝撃を与え、拡散された情報は更なる衝撃と奔流を産み出しながら、爆発的な勢いで更に広く広がっていく。

 

だが此の段階でも、オルケストラ攻略戦は未だ最終楽章の前半フェーズであり、此処からが後半フェーズという名の更なる苛烈と熾烈を極めし、そんな戦いの激化に向かう転換点に過ぎないのだから……………。

 

 

 

 

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冥響のオルケストラがペッパー・天津気に捧げる最終楽章、エリーゼ・ジッタードールからカルネ・アーヴェンハールにバトンタッチし、歌声と共に新たな世界として展開された『ロード・オブ・ザ・キャメロット』が、カルネ=103(ヒトミ)の展開した『偉大なる英雄譚(グランツ・ヒストリア)』とぶつかり合って、互いの世界の境界線で鍔迫り合う。

 

次々と城壁が地面を突き破って乱立し、本棚と本を吹き飛ばして蹂躙していくかと思えば、其の城壁を内側から食い破って現出する本棚と、零れ落ちた本による落下爆撃が城壁の巌を粉砕して粉微塵に変えていく。

 

現実世界なら石を分厚い本で殴って砕くのは容易い事では無いし、ファンタジー系のゲームで鎖と鍵による厳重封印された禁書の類いならば出来なくは無い物の、やはり世界同士の衝突故の現象なのかはペッパーにも解らない。

 

『──────!』

「『世界の理は保たれる』」

 

ペッパーと『ペッパー』、両雄共に其の身に纏うは彼(ペッパー)というアバターがシャンフロで持ち得る数多の装備の中でも、頭二つ抜ける程に相性が良いクターニッドのパワードスーツ・深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)。

 

背に展開された八本の巨剛触手(きょごうしょくしゅ)に封雲の撃鉄(タイタントリガー)の雲の巨腕二本に武器を持ち振るいて、封熱の撃鉄(ニッショウトリガー)の炎熱と共に状況改変(じょうきょうかいへん)の行使により、反転の力を解き放ち合いながら、望む世界の理で敵の世界を塗り潰し合い。

 

衝突する反転の権能による特殊な力場が放たれ、其の衝撃波は其々の歌姫達の展開した世界を揺らし、各々の武器が触手から離れて飛んで地面に刺さり、回避と差し込みに想定済みの挙動で避けて、触手で拾って振るい、投げて差し込みをペッパーと『ペッパー』は続けて。

 

端から見れば『複数人の腕や脚を移植されてキメラじみた姿になった一人の人間が、数人分の脳髄を一纏めにしたメモリーチップを脳に埋め込まれて得た、規格外の演算能力によって敵対存在の手の内を読んで戦う』───────と言った、超未来のサイボーグ手術を受けた人間が最後に辿り着く様な、そんな極致と極限じみた光景を生み出している。

 

(サンラクの戦いを観て解ったが、オルケストラの出すプレイヤーの完コピ存在は第二フェーズに入ってから『戦闘スタイルが固まってる』。理由は征服人形(コンキスタ・ドール)というイレギュラーなんだろうけど、一番は相手が『此方のスタイルを相手が学習した』のが濃い線か………)

 

苛烈なる『ペッパー』の攻撃に対し、ペッパーは幕末世界で形を見出した『風に舞う羽毛の如く柔らかな受け流し』を用いて、絶対に受けてはならない攻撃だけを見極めつつも、『ペッパー』の攻撃や挙動の隙間に在る僅かな時を掻い潜り、其の手に持つ六道極円盾(リクドウキョクエンジュン):天獄(テンゴク)を己が持つ業物を突き付ければ、『ペッパー』は露(・)骨(・)と言って良い程に『天獄に攻撃が当たるのを避ける動きを見せた』。

 

(…………とは言えだ。此方もボスラッシュ含めた数時間の連戦で、脳のスタミナが何時切れたとしてもおかしくない。幸い俺の攻撃に対する『俺』の反応の御蔭で、既に蛸極王装攻略に『俺』への勝利の道は見えている。フィールド…………良し、吹っ飛ばされた俺と『ペッパー』の武器位置…………イケる!)

 

「ヒトミさん!!!」

「意志は時代を、世界を越える!紡ぐ言の葉を繋いだ文字は、重なり綴られ、創るは世界………!!!」

 

対オルケストラ攻略武装、征服人形達が契約者の武装やアイテムを回収する際に用いる、征服人形用装備回収パーツ「回収者」をペッパーが起動・ヒトミが制御を行い、二つの視線が一瞬の交錯の中で何を回収するのかを、言葉を介さず互いが理解して。

 

一枚のワイヤー付きメダルが世界を飛んで、刺さったまま息を潜め、其の時を静かに待っていた覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)に貼り付き、一気に引き寄せ──────途中で吸着を解除した。

 

『飛翔龍刃(ソラカケノツメ)、武器足場跳弾バージョンッッッッッッ!!!』

『………………!!!』

 

戦闘でバラ撒かれて散乱している、ペッパーと『ペッパー』の武器達を足場としつつ、刃先で跳ね返りながら回転して速度を高めた龍神楽の一閃が、ペッパーの攻撃を往なしていた『ペッパー』の脳天ド真ん中目掛けて、ペッパーが少し首を傾けた瞬間に触手達の間を擦り抜けながら飛来。

 

蛸足触手による防御も間に合わず、天獄による防御も間に合わない状態だった事で、『ペッパー』を守る様に城地面から城壁が突き出して忖度ガードが発動し、龍神楽の鋒がオルケストラに阻まれ、砕けた城壁は光の粒と変わってペッパーのインベントリアに吸収され。

 

『今だッ!!!』

「ああっ!!!」

 

龍神楽が作った此の瞬間を、此方も絶対に無駄にはしない!

 

引き寄せから離した回収者は進路上に在った四彩属の宝魔剣(エレメント・ブレイド)を引っ張り、ヒトミの操作でペッパーの蛸足の一つにジャストキャッチさせる様に吸い込まれ、勇者の一歩の踏み込みが頭上を回る混海覇印(アルカ・ク=リンゼン)の力を高め、武器と挙動に凄まじき圧力を齎す。

 

「四の光!四の彩!四なる属素!廻り廻て廻りし先に、盤上たる世界を砕けッ──────『クォンタム・エレメント・バースト』!!!」

 

火と水と風と土、魔力を与え続けて其の剣に溜め込み、円を描いて連なり放たれた四なる属性の光と力の奔流に、『ペッパー』が選択した行動は『冥王の鏡盾(ディス・パテル)でガードするのでは無く、女帝城の顕壁盾(ヴォーバン・ガルガンチュラ)で即席の壁を作り迎え撃つ』であり。

 

「……………其れは『不正解』だよ」

 

AIは完璧に非ず。どんなに優れた知能を得てプログラミングされた高性能な存在としても、其れが完璧に間違わない事を出来得る限り『無くす事』は出来ても、完全に『間違わない事』を成すのは不可能であり。

 

ペッパーの呟きの直後、襲い掛かった衝撃と四属性に由来する現象が、巨大で鈍重なるタワーシールドで隔てて身を守る『ペッパー』を、タワーシールド諸共一気に飲み込んだのだった…………。

 

 






AIだってミスはする


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