武器種:大剣にして同時に魔剣たる武器、四彩属の宝魔剣はシャンフロ世界の基本四属性たる火・水・風・土を使用者が任意で対応した紋章に切り替え、魔力を注ぐ事により其の属性の力を現出し、魔剣と同様の手段を踏んで効力を執行する。
尤も武器の種類分けとして見れば、大魔剣とでも称するべき此の武器は、元となった四属素宿す神秘の小鎚がそうで在った様に、此の武器は『其の身に喰らった魔力を記憶として保持し、蓄積する効果を常時能力を備えており。
魔力を与え、各属性の魔力を高め、其の全てを最大まで溜める事で初めて解禁される特殊スキル『クォンタム・エレメント・バースト』は、其の剣身に最大まで蓄積された火・水・風・土の属性の魔力を解放し、火→水→風→土の順で其々五回ずつの合計二十回のダメージ判定を叩き付け、与えたダメージ量に応じて耐久値を回復する。
炎で熱して武器防具を柔らかくし、水で冷やして武具達に亀裂を生ませ、風に晒して傷口を撫でて乾かし、土を傷口に入り込ませて隙間を残し。火で焼き、水で冷やし、風で広げ、土で止め、巡り回る四属性による攻撃と現象を五度に渡る円環を以て、敵対存在を壊滅させる奥義こそがクォンタム・エレメント・バーストなのだ。
(宝魔剣のスキルは魔力由来の能力で、冥王の鏡盾みたいな魔法反射効果持ちには弱い!が、混海覇印が在るなら話は別だ!)
対魔法及び魔法関連職に滅法強い冥王の鏡盾では有るが、武器や防具に完璧が存在しない事と同じく、海底を泳ぐ二属性戦艦鯱の頭蓋骨を加工し作られた盾も、武器で有る以上は『耐久値』という武器故に産み落とされた時から変わる事の無い、絶対的不変の概念を備えた代物。
鏡という物体は往々にして、光の反射に屈折を利用した分身や隠蔽等の氷属性に似た挙動は出来れど、規格外の圧力や許容範囲を越える攻撃を受ければ、脆く弱く破砕されるのは別のゲームや小説等の作品と並んで『良く有る事』だったりする。
今さっき理解した事だが、此の混海覇印が齎す圧力は武器やモーションだけに留まらず、武器に搭載されたスキルにすら効果が付与されており、覇刀:龍神楽による魂魄切断にも適応された点から、混海覇印の特殊状態「禍波のアビス」は『複数属性と複数回攻撃能力持ちの武器と相性が良い』。
つまりどういう事かと言えば───────
(『効果判定一回毎に』一定のダメージを与える禍波のアビスは、ボーリングストライカーやエンジリング・ブレードの持つ『猛毒状態付与確率を爆発的に高め』、四彩属の宝魔剣の搭載スキルは威力と属性影響を『更に重い物へと変えられる』に等しい!!!)
龍神楽が迫った事で産まれた忖度ガード、現象後の僅かな空隙を貫く最速最短の刺突と共に放った宝魔剣の奥の手が、女帝城の顕壁盾で己を守る『ペッパー』の上から荒振し属性の奔流を叩き付け。
一巡目の四属性に単純な物理耐久に秀でたタワーシールドに亀裂が入り、二巡目には亀裂が決定的な罅割れを起こし、取るべき選択を間違えたと悟った『ペッパー』が蛸極王装の状況改変を使おうと─────────
「『言霊は封じられる』」
─────────冥王の盾で吸収・深厳戟響脚の機能で離脱という『ペッパー』の選択を、此の局面下で思考をブン回した果てで完全に読み切ったペッパーが、蛸極王装による状況改変を先出しで『ペッパー』の手と戦略を破綻に追い込んだ。
三巡目が再現されたタワーシールドの耐久を削り切るや罅割れを広げて一刀両断の如く砕き、『ペッパー』が宝魔剣其の物をペッパーから叩き落とさんとするも、更にもう一歩前に踏み込んだ際に放たれた圧力が世界の地面を砕き、発生した衝撃と崩れた足場がペッパーの身を更に前に押し出し。
『ペッパー』は手や脚の甲と言った部位を用い、敵の攻撃を受け流して威力を減少及び其の威力を用いて反撃するスキル:黎翼神の伝導・星雲刻印掌を用い、ダメージは避けられずとも此の局面で耐える事を重視した立ち回りにシフトから両雄の攻撃が此の瞬間に交錯。
四色の爆発、連打による衝撃、そしてブツンと千切れる音が鳴って、ペッパーと『ペッパー』が各々の歌姫が展開した世界に吹っ飛ばされ、ペッパーが地面を数回バウンドして体勢を立て直したのに対し、『ペッパー』は回転を駆使して衝撃を往なして着地する。
『ペッパー、生きているか!』
「契約者!」
「大丈夫だ!ヒトミさんは歌を歌い続けて!」
「っ…………、了解!」
飛翔龍刃で飛来して手元近くの地面に刺さった龍神楽と、心配するヒトミに巨剛触手によるサムズアップで応えたペッパーは、クォンタム・エレメント・バースト使用で最終楽章に備えて貯め続けた魔力を全消費し、一文無しな宝魔剣をインベントリアに収納から龍神楽を手に取り、逆手持ちにしながら言う。
「今ので世界をゴッソリ持っていけるかと思ったんだが………流石は『俺』であり、永世八冠の思考補強。女帝城の顕壁盾の損壊と星雲刻印掌でダメージも最小限に抑え込まれて、御返しとばかりに此方は反撃まで食らった」
だが、そう言うペッパーの視線の先に居る『ペッパー』は、一見すれば無事である様に見えながらも、実際は無事では済まされない状態になっており。
「俺が『俺』との戦いで勝つ為の絶対条件。其れは『封雲の撃鉄を装備した右手の完全破壊で使用不可に持ち込む事』。…………時間は掛かったが、漸く条件を満たすに至れた」
物理攻撃耐性と時間経過回復を齎す雲の羽衣と武器を握る雲の巨腕を生み出す、封雲の撃鉄・極を装備した右手は右手首含めて丸々消滅し、消失に伴って其の身から雲の鎧が霧散していたのだった。
『ペッパー』は超星煌耀宝珠の輝きを放てず、混海覇印による圧力を纏えないが、自分は超星煌耀宝珠の輝きを放ち、混海覇印の圧力を纏える。
『ペッパー』は回収者を、覇刀:龍神楽を、星帝剣グランシャリオを、覇濤海剣アスカロンを模倣し扱う事は出来ないが、自分は其れ等を扱える。
そして『ペッパー』は損失した部位を再生出来ないが、自分はグランシャリオに世界の真理書「天覇編」をセットし、天覇のジークヴルムの御業・超速再形成の使用で部位再生が出来る。
幾度に渡る激突と読み合いに、其の中で生まれた差異の数々は遂に、ペッパーと『ペッパー』の間に目に見える『違い』を現出させ、此処に『決定的な差』へと変えた。
「第一はエリーゼ、第二はカルネ、最終フェーズはロード・オブ・ザ・キャメロットを『何か』に収束し、殴って来るんだろう?…………覚悟を決めな『俺』、そしてカルネ・アーヴェンハールとオルケストラ。一片残さず全部引き出させてやるよ!」
不敵な笑みを浮かべ、龍神楽の刃先で『ペッパー』を指しながら、ペッパーは堂々と宣言したのである。