VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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歌合戦は佳境に至る

※脳内BGMを『DIGIMON BEATBREAK』の『Answer』で御楽しみ下さい




歌よ響け、英雄譚を讃え 〜其の十八〜

「せいっ!」

『……………!』

 

戦いと読み合いの先で『ペッパー』に勝つ為の条件である、封雲の撃鉄(タイタントリガー)・極(スペリオル)を装備した右手の完全破壊を成し遂げたペッパーだったが、対オルケストラの戦局は好転したか?と言われたならば、ペッパー本人は『そうでは無い』と言い切れる状態に在る。

 

封雲の撃鉄によるリジェネが無くなった事で深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)の馬鹿げた体力が回復し続ける心配は無くなれど、『ペッパー』は右手と雲の巨腕が無くなった事で自身の身体及び巨剛触手(きょごうしょくしゅ)の制御に脳のリソースを割ける様になった為、結果として腕十二本よりも腕九本の今の状態の方が『より攻略を困難にしていた』のだ。

 

(だが其れでも、俺にはちゃんと見えている!俺が『俺』に勝つっていう確かな『未来』を!!!)

 

『ペッパー』の蛸極王装の巨腕触手と握られた武器による嵐を潜り抜け、大剣状態にした碧羅(ヘキラ)&金漆(ゴンゼツ)の斬撃から、銃口を向けて風雷の魔力弾を撃ち込み、即座に投擲して天獄に二連続の変則挙動でダメージを与え。

 

立て続けに別の方向に銃口を向け、八回タッチで魔力を吸収させて置いた双極撃銃斧(パラボラル・ガナックス)の引金(トリガー)を引き、八回の空中跳弾で死角から迫った所に「『言霊は封じられる』」と一言呟けば、状況改変の起動によって『ペッパー』の蛸極王装の状況改変を封じ、頭部を狙った帝晶の威吹たる魔力の光は新たに地面から出た城壁に阻まれ。

 

『ペッパー』を双極撃銃斧の銃撃から守って破砕された城壁は光の粒子と変わり、ペッパーのインベントリアの中へと吸い込まれて消える中で、星天秘技(スターアーツ)コスモ・ネビュラで幻影を作って目眩まししたペッパーと、巨剛触手に握られて『ペッパー』へと突き付けられるは、イムロンが作りし煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)の鋒。

 

対する『ペッパー』は既に展開済みの光帝の籠手(サナラ・ブリル)の側面で攻撃を滑らせつつ、晴天流【雲】奥義の入道雲によるカウンターを仕掛けて、ペッパーは集律視標着目(ワーナリー・スポットヘイト)で注目を向けさせ、星帝剣(せいていけん)グランシャリオを煌来連斬輝(フェイアル・スラッシュ)共に振るい、ウツロウミカガミとレーアドライヴ・アクセラレートに被せる事で飛翔龍刃(ソラカケノツメ)で首を斬り落とす覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)の一閃を補助(サポート)。

 

が、此の攻撃も出現した忖度ガードという名の城壁に阻まれて、防がれ崩れて光の粒子に変わってインベントリアに吸収されていく中を一歩踏み込んだペッパーが、混海覇印(アルカ・ク=リンゼン)の圧力を纏った状態で『ペッパー』とワンインチの距離に、展開している蛸足には『ペッパー』と同じ光帝の籠手と風雷皇の御手(サルダゲイル・アトゥヌ)が。

 

『…………!』

「超過機構(イクシードチャージ)─────!!!」

 

一つの籠手が黄金に輝き、二つの籠手が紅と翠の光を放ち、一つの籠手が風雷を纏いて雷音と突風を起こし、瞬間転移歩法(レーアドライヴ・アクセラレート)の中の残歩の内の一歩で真上を取れば、其れを読んでいたとばかりに『ペッパー』の視線が此方に向いた。

 

「……………其れも此方は既に『想定済み』だ!」

 

蛸足一本に持っておいた使い捨て魔術媒体(マジックスクロール)、考察クラン:ライブラリが用意した【瞬間転移(アポート)】の効力を解放し、ペッパーが『ペッパー』の懐に飛び込み。

 

「超(リ)ッ!排(ジェク)ッ!撃(ト)ォ───────!」

 

三つの籠手による四点ジャンケン、敵の手を読まねば『自分』が死ぬと理解する盤面と、状況改変の効力が残り五秒も有る上、混海覇印の圧力によって武器によるパリィが機能せず、ガードしようにも此処まで常に一定のダメージが確実に叩き込まれて来た。

 

天獄が破壊されれば『ペッパー』は自身が纏う蛸極王装の機能を失い、巨剛触手や状況改変の発動に必要な『一式装備を装備中』という絶対条件を満たせなくなり、装備の効力で得られた五万の体力を解除と同時に不足分を徴収されて、文字通りチェックメイトな盤面。

 

 

 

 

 

 

 

───────そして当然ながら。再現された歌姫『カルネ・アーヴェンハール』は、気高き勇者『ペッパー・天津気(アマツキ)』の危機を見捨てはしない。

 

 

 

 

 

 

 

「───────ッ!!?」

 

此処までの忖度ガードは城壁であったが、今し方ペッパーの前に現れて『ペッパー』を守ったのはロード・オブ・ザ・キャメロットの世界観から見れば、完璧に合っていると言わざるを得ない『中世の騎士鎧に身を包んだ無数の騎士達』であり。

 

彼等彼女等が其の身を重ね合わせ、手に持ったタワーシールドと槍を掲げ、ペッパーの放った四点超排撃をファランクスの要領で堰き止め阻み、無数の騎士は炸裂した絶大な衝撃波に漏れなく『ペッパー』共々吹き飛ばされ。

 

然して踏ん張った騎士の一部は『ペッパー』を受け止め、地面に足跡を擦り込ませながらも踏ん張り、吹き飛ばされた騎士達もまた地面を転がって、数回のバウンドをする者は有れど立ち上がるや『ペッパー』を守る様に戦線復帰を果たす。

 

「此れが最終フェーズ、って事で良い訳だ…………!」

 

蛸極王装を纏った状態で四点超排撃、体力が反動ダメージだけで三万も削られたが、再現『カルネ・アーヴェンハール』が展開していた巨大な城と無数の城壁という世界(ロード・オブ・ザ・キャメロット)のスケールは急速に縮み、カルネの展開する世界はヒトミが展開する世界の中で『残り一割を保持する形』に落ち着く。

 

サンラクの戦いもそうだったが、最終フェーズ突入と同時にオルケストラが再現した征服人形(コンキスタ・ドール)のモデルとなったシュテルンブルームメンバーの、彼女達が歌う世界は第二フェーズ開始からプレイヤーが世界のリソースを削り、一定のラインを超過する事により『其の世界を象徴する物』に残存リソースを回す様になっていた。

 

エルマ・サキシマの『ハイウェイスター』が、四列車線の高速道路と其の上を走るデコトラが象徴だった様に。カルネ・アーヴェンハールの『ロード・オブ・ザ・キャメロット』の象徴は、此の無数の騎士団に集約された…………そう言って良いだろう。

 

(オマケにあの騎士達、超排撃で吹き飛ばされたのに速攻で起き上がってペッパーの護衛に加わった。此れはアレだな、倒しても倒してもコンボが途切れたら全回復するタイプの、トレーニングモードでコンボ練習相手に使われるサンドバッグキャラだ)

 

此の手のタイプが護衛として着く=無限沸きの相手をノックバックやらで吹き飛ばし、敵のガードが入る前に本体を直接叩いて倒すという解答に絞られる。

 

此のままでは時間経過で此方の不利は加速し、ジリ貧に追い込まれ、最後は詰まされ、敗北する…………そんな不動不変の未来のみが待っているだけだ。

 

「契約者(マスター)、敵の不自然な静止を確認」

『奴等は此方を迎え撃つ算段か』

「此方も確認した。嵐の前の静けさというか、不気味だと言うべきか…………」

 

ヒトミが作った舞台近くまで戻り、彼女と龍神楽を交えて言葉を軽く交わす。

 

敵が此方を待っているのか、其れとも最後のアクションを悔いを残させない為か、よくは解らないが『ペッパー』含めた全員が其の場に待機している。

 

仮に『ペッパー』を守っている騎士達が『MOB(モブ)判定』を持つならば、暴血赤依骸冠(ブロード=クロゥネ)等の対抗策が有るので、此方にも勝ちの目はまだ残されている。

 

「さぁて、どうするか…………ん?!」

「どうした、契約者(マスター)」

『何か有ったか、ペッパーよ』

 

其の前提で行動指針を一つ決め、回復ポーションのガブ飲みしつつも敵陣の状況を片目に、流し目でインベントリアを見たペッパーだったが、インベントリアの中に在る『ある物』を見た事で目を丸くした。

 

其れはオルケストラに挑む前までは単なる骨董品でしか無かった物で、其れを手にする前は鋼鐵の箱(タイムカプセル)の中で保管されていた物であり、そして其れはペッパーをして『冥響のオルケストラのイベントアイテム』と考えていた物で。

 

最終楽章の開始、エリーゼやカルネによる忖度ガードの使用、楽器や城壁が砕けて粒子となった後、己が付けたインベントリアへの吸収と……………此処までの断片的な情報達と此処で起きた出来事は、全て此の時に繋がったのだと確信した。

 

「……………そう言う事だったんだ。冥響のオルケストラさんが何を望んでいるのか…………漸く理解出来た」

「其れは…………」

 

インベントリアから取り出した青の聖杯は輝きを放ち、性別反転によってペッパーの姿を男から女へと一瞬で変え、彼女は其処からグランシャリオを地面に刺し、封雲の撃鉄のリジェネ含めて体力が五万ラインを超過した所で、蛸足に持った武器達含めてインベントリアに収納、装備を切り替える。

 

其の身に纏うは『大人の女性がステージにて歌う際に着けるドレス』ながらも、其の形状は『ノンスリーブのトップスと足首まで隠れるロングスカートが分かれ、腰ベルトで止めるタイプのドレス』であり、両腕には『ロンググローブ』と両足には『サイハイブーツ』、頭には『年代物のティアラ』が乗り。

 

ドレスとスカート、グローブにブーツの生地は何処か『様々な色彩を彩りし何色にも当て嵌まりながら、然して何色にも当て嵌まらない』、だが見る者によって『色が違う物』という印象を抱く。

 

左手に持つ『スタンドマイク』は数多の歌手に歌われ、其の声を唯一身に受け続け、拡声器を通じて其の音色を奏でて来た『歴戦の代物』の印象を抱かせる、そんなスタンドマイクだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行こう、エリーゼさんのドレスとマイクよ。…………いいや、其の真名(まな)を此処に改め『永遠に響く歌姫王装(リィゾニタニティ・ディーヴァリエ)』と『レゾナンス・プロードマイク』ッ!!!今此の場には居ない彼女の………エ(・)リ(・)ー(・)ゼ(・)さ(・)ん(・)の(・)歌(・)声(・)を(・)紡(・)い(・)で(・)、『俺』との決着を付けよう!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥響のオルケストラとの合唱戦の中でぶつかり合って、エリーゼのドレスとマイクに注ぎ込まれた忖度ガードという名の『オルケストラの想い(リソース)』を吸収し、其の果てに古き昔は修繕されながらエリーゼ・ジッタードールに使われ、単なる骨董品だった品達は。

 

此の日、此の時、此の瞬間……………ドレスとマイクは此処に『冥響のオルケストラの権能(チカラ)を内蔵した遺機装(レガシーウェポン)』として、堂々と生まれ変わったのである。

 

 

 






歌姫の王装、此処に顕現


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