VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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顕現せし歌姫の鎧




歌よ響け、英雄譚を讃え 〜其の十九〜

其れは嘗てリヴァイアサンの最奥でカードキーを受け取り、ベヒーモスの第八階層に在るアンドリュー・ジッタードールのラボに在った鋼鐵の箱を開けた事で手に入れた、彼女が其の昔に歌手として昔存在したバーで歌う際に着けた、ステージ衣装と彼女愛用のマイクであり。

 

冥響のオルケストラとの最終楽章突入と忖度ガードの使用、第一フェーズはエリーゼ・ジッタードールによる楽器、第二フェーズはカルネ・アーヴェンハールによる城壁と、幾多に渡り阻んで阻まれた果ての果て、最終局面と言える此の状況にて忖度ガードをリソースとして取り込んだ此の二つの品は、何かしらの条件を満たしたのか。

 

最終フェーズに突入した此の時、此の瞬間を以て、エリーゼが使っていたドレスとマイクは、冥響のオルケストラの権能(チカラ)を内蔵した遺機装(レガシーウェポン)・永遠に響く歌姫王装(リィゾニタニティ・ディーヴァリエ)とレゾナンス・プロードマイクに変化したのである。

 

「契約者(マスター)、其れはまさか…………」

『成程。其れがオルケストラのパワードスーツ、というヤツか』

「其の認識で合ってるよ、二人共。そしてどうやら最終局面で完成した此の装備を纏う事が、此の戦いの結末に至る為に必要な鍵だった様だ」

 

雲の手で指差す先に居る『ペッパー』や『カルネ・アーヴェンハール』、そしてロード・オブ・ザ・キャメロットを集約した象徴たる騎士団達の思考(AI)に迷い(ノイズ)が生じ(走っ)ているのか、攻撃に移るか防御に遵守するか等々の複数思考で雁字搦めになって動けていない。

 

ならば今此の瞬間にやるべき事は一つ、彼女を信じて自身の声で歌を歌い、彼女自身が己という存在をオルケストラへと示す事を命ずる。

 

「ヒトミさん、歌を。貴女自身の声で、貴女という存在をカルネさんにぶつけて。其れがきっと、貴女を証明する事に繋がる。そしてオルケストラさん………カルネさんに出来た事ならば、ヒトミさんにも出来るって──────信(・)じ(・)て(・)ま(・)す(・)」

 

真っ直ぐに、ステージの下から見上げながらも、其の目に灯る強く靭やかな輝きを彼女は見た。

 

性別を変える杯を使おうが、幾多の鎧や装備が変わろうが、己という存在の内に在る信念と、自分という存在は決して変わらないと、そう教えてくれた人であり。

 

そして今も、あの時と同じ様に自分の背を押し、前に踏み出す為の声援(エール)をくれた大切な人からの声に、彼女もまた笑顔で答えた。

 

「契約者(マスター)。貴方が信じた、当機(私)を。当機(私)が信じた、貴方の為に歌う」

「御願いします」

 

彼女(ヒトミ)を信じ、視線の先に『ペッパー』と無数の騎士達を見、星帝剣(せいていけん)グランシャリオとレゾナンス・プロードマイクに、雲の巨腕で覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)と新たに覇皇獅将の両刃長剣(ネメア・キングソード)を持つペッパーは息を整える。

 

彼女(ヒトミ)は考える───────彼女(カルネ)と同じ力を行使する事、即ち自身の出力した『本棚と英雄譚の本が彩る偉大なる英雄譚(グランツ・ヒストリア)』、其れを一つに集約して『あの無数の騎士達を押し返す事が必要だと』、彼女はペッパーとの会話から自己判断に至り。

 

息を吸い、目を閉じて、そして彼女が想起せしは『何も描かれていない真っ更な一冊の本』………目を開き、其処に描くのは誰でも無い、自分自身が想い描きし………『たった一人の英雄の身姿』。

 

『「───────紡がれた物語(果ても限界も知らず)、描かれし文字が調を綴り(世界を拓き時代を創る)、指先でなぞった幼き日々は(困難を越える眩き勇姿が)、私の記憶に灯っている(私の世界を彩っている)」』

 

唇を、口を、喉を震わせ、カルネ=103(ヒトミ)が紡ぐ歌詞は偉大なる英雄譚なれど、其の歌詞は彼女が此迄見てきた『ペッパー・天津気(アマツキ)』を想い、彼女の意志を以て奏で響かせる歌。

 

同時に其の歌声は永遠に響く歌姫王装が反応し、彼女が想い描く世界をパワードスーツから放つエリーゼ・ジッタードールのソプラノボイスが、彼女の歌い奏でる歌詞とシンクロ。

 

より強く、より鮮やかに、より深みを与えながら、彼女の世界の出力を高めていき……………彼女の描く世界の一冊の本、頭上にて開かれる本の一頁毎(・)に描かれる『ペッパー・天津気の身姿が世界に現出されていく』。

 

『「────人よ謳え、高らかに(勇者よ掲げ、聖なる剣を)。────人よ叫べ、心の儘に(勇者よ翳せ、聖なる盾を)。強く、強く、強く、強く(斬れ、貫け、守れ、戦え)………!」』

 

「N」パッチこと正式名称を「Namida(ナミダ)」パッチを征服人形(コンキスタ・ドール)として一番最初にインストールし、完全なる人形(ヒトガタ)となった彼女の機巧の両眼から溢れる温かな情報であり、同時に一人の知的存在として抱いた感情からなる涙という雫が溢れ、頬を伝う。

 

頁を捲り、姿を綴り、描き記される度に現れて、ペッパーの横や後ろに集い、其の数はまるで倍増薬か何かを使ったかの様な…………正確には『ロード・オブ・ザ・キャメロットで集約した騎士団と同じ人数となる様に』、此の戦いに臨む契約者を阻む騎士達を抉じ開け、彼が進む勝利の道を作る為に。

 

『「────魂の衝動の成す儘に(気高く砕けぬ意志を宿し)、駆け抜けろ己の物語(変わらぬ信念を貫いて)────!此れは彼等彼女等の(決して消えぬペッパー・天津気の)…………」』

 

一冊の本を残し、数多の本棚と本達が解けて砕け、ペッパーと様々な装備を纏いて武器を持ったペッパー達と、『ペッパー』と無数の騎士達が崩壊する世界の中で相対する。

 

数は同じなれど、統一された騎士鎧に武器と盾という無個性の軍団と、バラバラながらも一人一人のペッパー・天津気が個性と武器や防具を持ち、一人一人が軍たる個であると言わんばかりの両陣営が出揃い。

 

『「────────英雄譚(ヒストリア)!!!」』

 

ヒトミの歌声を号砲とし、ペッパーと『ペッパー』の双方の陣営に集った者達による激突と、時代を拓く英傑たる強者による最終決戦が───────始まった。

 

 






クライマックス


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