VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

1175 / 1192


答え合わせの時




歌よ響け、英雄譚を讃え 〜其の二十二〜

ペッパーの持つ星帝剣(せいていけん)グランシャリオと覇皇獅将の両刃長剣(ネメア・キングソード)よるアレクトール・ピアスの一撃。

 

熟練度MAXの証明たる昇華(スタンバイ)を語尾に掲げ、最終楽章の戦い(セッション)の中で変化したエリーゼ・ジッタードールのドレスとマイクこと、永遠に響く歌姫王装(リィゾニタニティ・ディーヴァリエ)とレゾナンス・プロードマイクが持つ機能の一つ・共振共鳴(フルリエス・シンクロ)により強化。

 

星帝剣グランシャリオが持つ世界の真理書に対応する七つの最強種達の御業の発現能力で、墓守の御人が嘗て放った雷の化身、深淵の盟主の持つ反転の権能の一端、天を覇する黄金龍王の技能殺しの輝きと数多のスキルによる輝き。

 

そして己の英傑武器が宿した獅子皇の威圧宿りし剣身の、二振りの業物と持ち得る力の粋を込めて放った一撃が、遂に冥響の歌姫によって再現された『ペッパー・天津気(アマツキ)』を此の瞬間に打ち倒したのだ。

 

『ペッパー』の身体が灰燼と化して崩壊し、彼が頭に着けていた王冠らしき仮面が地面に落ちたと同時、城壁と巨大な城と本、そしてカルネ・アーヴェンハールに無数の騎士達とペッパー達が『何事も無かったかの様に』消滅し。

 

此の場にはペッパーと覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)と征服人形(コンキスタ・ドール)のカルネ=103(ヒトミ)、そして此処までの映像を偏に記録し続ける別天津(ことあまつ)の隕鉄鏡(いんてつきょう)だけが残る。

 

そして彼等彼女等が周りを見渡すと、サンラクがオルケストラと戦った果てに勝利を収め、最後に辿り着いた場所──────即ち閉店した後の静けさが残る秘密基地的な隠れた地下の小洒落たバーであり。

 

あの時観た映像と同じくカウンターとキープされた多種多様な酒類にグラスが棚に並び、レトロチックなテーブル席やホーン付きのレコードプレーヤー、そして地面に落ちた王冠の仮面とペッパーが立つ場所はバーの一区画の小さなステージの上だった。

 

「ととと、まだあの仮面は触れられないな…………」

「契約者(マスター)、ドラグマを持って来た」

「御疲れ様です、ヒトミさん。そしてありがとう、ドラグマ。二人の御蔭で何とか勝てたよ」

『オレは此れで二度目の戦いになったが、やはり血が沸き立つ戦いは魂が昂る物だ』

「其れは良かった………」

 

龍神楽がバトルジャンキー真っしぐらな気がしなくも無いが、其れは其れとして閉店して静かになったバーを見回しつつ、武器達をインベントリアに入れながらヒトミを手招き、一人と一機に一本はカウンターまで移動する。

 

「取り敢えず一回座ろう」

「契約者(マスター)、あの仮面は…………」

「まぁまぁヒトミさん。焦らず、落ち着いて。俺は動き回って喉が渇いたし、ヒトミさんも歌い続けて大変だっただろうから、水分補給をしましょう。喉がダメージを負っちゃうと回復までに時間が掛かりますから」

 

全員からオーダーを聞き、ボトルやグラスに氷を入れて飲物を提供後、各々の飲物を味わう様にして喉を潤し、苛烈な激戦で火照った身体を解したペッパーは浮遊する隕鉄鏡を思考操作で近付け、探偵の様に言葉を零す。

 

「さて…………既にサンラクのオルケストラ攻略映像を見た方々も居るでしょうし、軽くおさらいしていきます。ユニークモンスター・冥響のオルケストラは第一楽章開始前に劇場の壁に埋め込まれていた『音楽プレーヤー』であり、同時に『複数の意志によって成り立った存在』です」

 

昔話を聞かせる語り部の様に、照明がスポットライトの如くペッパーを照らしている。

 

クターニッドの聖杯によって女の姿になったペパ子ちゃんと呼ばれ、写真集すら作り上げるに至らせた色気と雰囲気が、オルケストラのパワードスーツによる神秘の輝きとマッチし、現在進行系で『新たなる風(トレンド)』を巻き起こしている様に見えた。

 

「一つ目の意志は、最初の所有者からアンドリュー・ジッタードールさんまでの、音楽プレーヤーを所持していた『人々の意志にして遺志』からなり、賢者愚者に老若男女問わず音楽を再生し、其の過程で元のパーツすら無くなる程の修繕を繰り返しながらも、今現在も『音楽プレーヤーとして存在して居る事』…………即ちオルケストラさんは『人類のバトンタッチの結晶』でも在ります」

 

思考操作によって隕鉄鏡は動き、ミステリー物の番組でよく見掛けるカメラ移動とアングルを演出しながら、ペッパーは話を続ける。

 

「二つ目の意志は、音楽プレーヤーの最後の所有者となった『アンドリュー・ジッタードールさんの意志』で、彼はシュテルンブルームという嘗て存在したアイドルグループを神格化している生粋のドルオタで、アイドルグループの歴代メンバー五十人分の征服人形(コンキスタ・ドール)を作った天才。

然しながら彼の本質は、遥か昔の…………当時の神代含めた『人類の文化の保全』に命を懸けた男であり、彼の意志もまたオルケストラを構成する意志の一つになっています」

 

『シュテルンブルームというアイドルグループを、人類が繋ぎ紡いだ文化や歴史を知って欲しい、そしてどうか忘れないでくれ』───────あの日のベヒーモスのラボで出逢い、ヒトミやノワにアイトゥイルと共に聞いた彼の叫びには、そんな想いが籠もっていた。

 

音楽プレーヤーの歴代所持者を調べ、其の中にエリーゼ・ジッタードールの名前は無く………冥響のオルケストラの本質が『複数の意志で構成されたユニークモンスター』であり、そして『アンドリューや歴代所持者の意志が未来の人類の輝きを求める中、何故オルケストラは過去の歌姫(エリーゼ・ジッタードール)を掲げているのか』?

 

─────────ペッパーは最終楽章・最終フェーズの開始時点で手にした、永遠に響く歌姫王装とレゾナンス・プロードマイクによって『答え』に辿り着いていた。

 

「……………そして三つ目の意志は、おや?」

「此れは…………」

『どうやら時間らしい。しかしアンコールをせずとも出て来たな…………』

 

そんなペッパーの雰囲気をシステムが察したのかの様に、仮面が置かれたステージの虚空に青白い炎が揺れて、炎は輪郭を作り出し、最終的にネックレスの様に『音楽プレーヤー』を吊るしたエリーゼ・ジッタードールがステージに現れて。

 

真実はペッパーが永遠に響く歌姫王装とレゾナンス・プロードマイクを持った状態で、仮面を取らずに待っていた事で正典ルート同様にルート条件を達成した事で進行したのである。

 

そしてエリーゼが、音楽プレーヤーがペッパー達を見詰める中、彼女(彼)は其の『正体』を…………彼女がユニークモンスターとしての『行動原理』を含めて、答え合わせを行った。

 

 

 

 

 

 

「エリーゼ・ジッタードールさん。…………いいや、エリーゼ・ジッタードールさんを再(・)現(・)した貴女の正体。其れは『嘗ての地球で産み出された音楽プレーヤー』であり、数多の人の手に継承されて修繕を繰り返した『バトンタッチの結晶』。

そして嘗ての人々が未来を見る中で『エリーゼ・ジッタードールという唯一人の過去の歌姫を掲げ、彼女の美しい歌声を聴いて欲しいと、忘れて欲しく無いと願いを抱える小さな音楽プレーヤー』…………『ポケットアリアG型10-82119』。

永遠に響く(10-82119)と語呂になる、其れが貴女の正体だ─────────冥響のオルケストラさん」

 

 

 

 

 

 

其の言葉に対し、エリーゼは言葉を返さず。其れでも再現された彼女の『晴々とした笑顔と力強い頷き』こそが、ペッパーの解き明かした音楽プレーヤー(自分自身)の全(・)て(・)であると『百点満点の花丸印』とも言える物で。

 

音楽プレーヤー(エリーゼ・ジッタードール)がステージに立つと同時、何時の間にか在ったグラスと其のグラスに美しい一杯のカクテルが注がれており、更にバーの内部に在る空席にも変化が起きた。

 

『無数の、人…………か?』

「…………此の、人達は…………」

「…………オルケストラさんが再現した『オルケストラさんの歴代所持者達』だね。ほら彼処にアンドリュー・ジッタードールさんやカルネ・アーヴェンハールさん、他にもシュテルンブルームのメンバー達も居る。いや其れにしても凄い人の数だ、バーの空席が埋まっちゃったよ……………」

 

エリーゼが現れた時と同じく、無数の青白い炎がバーの空席に現れ、其れが輪郭を成した先に見えた『嘗ての人々の再現体達の姿』が空席を埋め。

 

そして冥響のオルケストラは、真の最終楽章にして最後となる追加楽章(アンコール)を、此の激戦を越えて答えの到達者となったペッパー達へと送ったのだった。

 

 

 

 

 

『─────私は観測者』

 

『─────私は歌う、歌う。私は得た、得た。紡ぐ旋律は命の螺旋、叫ぶ歌声に答えが返る、響く言葉に英傑を見た』

 

『私(・)は、貴方を見届けた─────問いは、比較を経て結論に至った。だから、だから………!』

 

晴れやかな歌声を響かせ、バーの全てに聞こえる歌姫の調は紡ぎ、前へ突き出した右手に光が集まり。同時に地面に置かれていた王冠の形状を持つ仮面は、彼女の右手の光へと誘われるように浮遊し、其の手の中に収まった。

 

『─────繋ぎ、紡ぐ、世界を駆ける走者。夢幻の地平を走り、流転の運命を変える者。ならば貴方は『大英雄(ブレイバー)』………』

 

目元はマジックミラーの如き水晶で隠れ、其の姿形は王家に代々伝わる荘厳なる王冠をイメージした物…………其れに光は注がれて、地面にフワリと置かれた。

 

『─────さぁ進んで、ペッパー。私が愛した、彼女の遺産を持つ英傑よ。そして、人ならざれど人の輝きを持つ貴女も、強き意思を持ちて己を貫く龍の刃も………』

 

 

──────本(・)当(・)に(・)、本(・)当(・)に(・)……………ありがとう

 

 

静かなる音楽プレーヤーの独奏…………其れでも自分やヒトミに、紡がれた音楽プレーヤーの持ち主達と共に、此のバーで彼女の歌を聞いて感じたのだと、ペッパーはハッキリと理解した。

 

「───────冥響のオルケストラさん。此の世界で生きて来た者達の歩みを、己すらも再現せし、遠き時代より人の遺志を紡ぐ冥響の歌姫よ。俺達は此の戦いを、貴女が紡いだ想いを、決して無駄にはしません。俺の………俺達の為に歌って下さり…………本当にありがとうございました」

 

バーから消えた冥響のオルケストラ(音楽プレーヤー)と歴代所持者達に言葉を送り、明かりに照らされ光る仮面を拾い上げれば、確かな温かさと力強さを宿しているのが掌を通じて解る。

 

そして振り返れば、ヒトミの目からは涙が溢れ、彼女の頬を伝っていた。

 

「ヒトミさん、大丈夫ですか………?」

「大丈夫………だ、少し目に埃が入った、だけの………」

「感動したら泣いたって良いんです。貴女にはそうする事だって出来るんですから」

『何時聴いても良い曲だ。音楽とは魂が奏でる旋律なのだな、ペッパーよ』

「……………あぁ。其の通りだよ、ドラグマ」

 

此の事をアンドリューに報告したら、どんな反応をするのだろう…………尽きぬ疑問が有れど空になったグラスが小さく音を鳴らし、レベルアップを告げるSEと新規習得・変化を告げたスキルの表示達。

 

そしてペッパーの前に現れた、冥響のオルケストラのユニークシナリオのリザルト画面が、此の戦いの終わりを示したのである…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『遠く、問い掛けは答えを得た』

『御来場、誠にありがとうございました』

『楽団一同、心より深い感謝を』

『ユニークシナリオEX【あなたに捧ぐ旋律(ウタ)】をクリアしました』

『勇者は歌姫との歌聲を交わし、新たな領域を創造した』

『称号【堂々終劇】を獲得しました』

『称号【聖典制覇】を獲得しました』

『称号【大英雄の唄】を獲得しました』

『称号【カルネの太鼓判】を獲得しました』

『称号【唯一つとして双つ無く(アナザー・ワン)】を獲得しました』

『称号【歌姫の遺産を手にせし者】が【世界へ旋律(こえ)響かせる者】に変化しました』

『頭装備【冥響聖典(ユア・カノン):大英雄(ブレイバー)】を獲得しました』

『アイテム【バー『マスカレード』のキープグラス】を手に入れました』

『アイテム【極奏音階(きょくしんおんかい)】を三個獲得しました』

『アイテム【戦闘記憶円盤 〜イフ・バトル・レコード〜】を獲得しました』

『正典攻略済のプレイヤーにアイテム【戦闘記憶円盤 〜イフ・バトル・レコード〜】が配布されました』

『正典攻略達成プレイヤーにアイテム【戦闘記憶円盤 〜イフ・バトル・レコード〜】が配布される様になります』

『アイテム【世界の真理書「冥響編」:聖典】を獲得しました』

『ユニーククエストEX【七星の皇鎧よ、我が元に集え】が進行しました』

 

 

 

 






此処に戦いは終劇す

※尚ペッパーの配信でもネタバレ防止の為、ペッパーがオルケストラの正体を述べる前に『此のシーンは配信出来ません』とテロップが挿し込まれました。







称号紹介


聖典制覇:冥響のオルケストラの聖典ルートを攻略した証


カルネの太鼓判:カルネ型のオリジナル、カルネ・アーヴェンハールと響き合って勝利した証


唯一つとして双つ無く(アナザー・ワン):オルケストラの一式装備を用いて聖典ルートを攻略し、特殊エンディングを見届けた事で手にした称号。

シャンフロは半年以上プレイヤーがログインしていない状態だとNPCがプレイヤーを忘れてしまうが、此の称号を持っているプレイヤーは半年以上ログインせずとも『NPCから忘れられなくなる』。

要するに此の称号持ちが起こしたイベントフラグは、ワールドストーリーのバッドエンドたる世界終焉みたいな余程の事が無い限り『消滅しなくなる』に等しい。


世界へ旋律(こえ)響かせる者:オルケストラの一式装備を用いて攻略した事で変化した称号。

類似称号は天津気の襲名者・盟主の威光を授かる者・龍王が認めし英傑で、発声や吐息に詠唱等を交えてスキルや魔法に武具の持つ能力を発動時、其の能力が更に強化される様になる。

解り易く言うと声を使って機能を発揮する遺機装(レガシーウェポン)や甦機装(リ·レガシーウェポン)の出力が高まる



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。