VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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其の戦いを観た神々達は




インパクト・オブ・ザ・ワールド 〜戦いを見届けし神々の見る未来(さき)〜

プレイヤー:ペッパー・天津気(アマツキ)による冥響(めいきょう)のオルケストラとの一大決戦…………彼が設立したチャンネル『P・THE・C(ペッパー・ザ・チャンネル)』の生配信を通じて電子世界(ネットの海)より現実世界(リアル)へと拡散され、ペッパーというプレイヤーの持つ数多有る嘘の様な真の情報は血肉を帯び、そして最終的に冥響のオルケストラは倒された。

 

当然ながら其の戦いをシャンフロの運営元であるUES、ユートピアエンターテイメントソフトウェアの開発に携わった者達の多くも見届け、ネタバレに関わる部分には『此のシーンは配信出来ませんテロップ』でぶつ切りにしたりの根回しを行い。

 

自分達は此の戦いと待っていたエンディング………ペッパーが冥響のオルケストラの一式装備・永遠に響く歌姫王装(リィゾニタニティ・ディーヴァリエ)とレゾナンス・プロードマイクを手にした事による特殊エンディングの聖典ルートを見届けるに至った。

 

そうして一夜が明けて日が昇り始めた朝方、季節が秋から冬へと移ろう中で寒さを帯びる一つの室内に、三人の人影が其処に居り………………。

 

 

 

「はぁ…………。─────────完(・)敗(・)だ(・)わ(・)」

 

 

 

電子世界を別の視点、或いは世界其の物を構築・創造する一昔前のデスクトップ型のパソコンを前に表示された、冥響のオルケストラのシステム画面と『クリアランク:S』のリザルト表示。

 

そしてペッパー・天津気 対 冥響のオルケストラの戦いの全(・)て(・)を(・)記録した配信映像を観た神の一柱、文字通りシャングリラ・フロンティアという世界を創った継久理(つくり) 創世(つくよ)は、ペッパーにオルケストラを攻略された事に関して彼女はある種の納得とも、或いは感嘆とも言える溜息と共に言葉を零した。

 

「オルケストラのサーバーをフル稼働させといた上に、前々から準備したくせしてよく言うぜ全くよぉ。─────だがまぁ、コ(・)レ(・)を見せられちゃ完敗って言いたくはなるわな」

 

創世の言葉にシャングリラ・フロンティアをゲームとして成立させ、プレイするユーザー達が世界から離れない様に裏から様々な調整を行う神である天地(あまち) 律(りつ)は、ペッパー 対 オルケストラの一大決戦の感想を端的に述べる。

 

彼女がオルケストラの中に在った「正典」プログラムを解禁し、其の出力を対ペッパーに向けて(たった一人のプレイヤーを)狙い撃ちにした物たる「聖典」ルート。

 

移行条件としては「正典」ルート同様、隠しステータスの一種・歴戦値の一定以上の保有や、シャングリラ・フロンティア内での偉業を達成するを満たした上で、更に其処に『オルケストラの一式装備となるキーアイテム所持、音楽プレーヤー(オルケストラ)の型式番号含めて正体の把握、アンサーコード・トーカーのアンドリューからNパッチをインストール済の契約した征服人形(コンキスタ・ドール)を特定のアイテムで劇場内に持ち込み』の以上三つの条件を満たす事。

 

そして『征服人形を第四楽章終了後と最終楽章前の間幕に呼び出し、最終楽章の前半と後半の両フェーズ内でオルケストラに再現されたプレイヤーを守る忖度ガードを発生させ、其の際に発生したリソースを規定値以上ドレスとマイクに注いで、歌姫王装となった状態で最終フェーズ時にプレイヤーが使用し、再現されたプレイヤーの体力を削り切って倒す事により』、初めて聖典ルートの攻略と特殊エンディングを見届けられる。

 

当時から破竹の勢いで駆け抜けていたペッパーを躓かせんとし、数ヶ月前から緻密に厳密に準備とサーバーに観測を続けさせていた創世では在ったが、ペッパーの行動や実力を加味したサーバー達は『現時点で持つ様々な武具を駆使し、己の全力を用いれば攻略出来る』との結論を出した。

 

そしてペッパーはサーバー達の予測通り、己が持ち得る物を全てを賭けて決戦を挑んだ果て、再現されたプレイヤーのアバターに1.2倍のステータスと社内に保管されている日之鳥(ひのとり) 出流(いずる)永世八冠の思考補強を加えた『ペッパー・天津気(アマツキ)』を、彼は此の戦いで確かに越えて聖典ルートのエンディングに到達してみせたのである。

 

「…………人類の知能を人工知能が超えるとはよく言ったが、逆もまた然りな現象をこんな形で見せられるとはな…………」

 

創世と律という水と油よりも尚も仲が悪い二つの神を取り持つ木兎夜枝(つくよぎ) 境(さかい)は、最近愛妻が恋愛ゲームを攻略し終えた御蔭で手作り弁当や朝夕の食事がまた気合の入った物になった事と、万が一に備えて特注品の胃薬を服用した甲斐も有り、胃痛によるダメージが極微々たる物で済んでいる。

 

其れ故にペッパーという人間の持つ潜在能力の深淵具合に、世界最高峰の棋士たる永世八冠をクソボスと呼んでいた事には驚かされたが、彼が過去に買ったゲームの調査をレトロゲームの範囲まで広げ、改めて精査し直した事によって彼は確かにゲーム内ながら、永世八冠の思考を搭載したラスボスを打倒せしめた称号を持っている事を知ったのだった。

 

「木兎夜枝の言う通りね。人間の底力とか可能性を見せられた気分だわ…………」

「……………コイツと同じ意見になったのは癪だが、コレばっかりはどうにもならねーな。寧ろ『ペッパーの全力全開(フルスロットル)の戦闘データ』って言う、上質なサンプルが取れたと考えりゃ上々だ」

「……………」

 

仮に創世が『神の裁きを下す(ブラックボックス送りにする)』と言ったのならば、境は『ペッパーというプレイヤーが今現在のシャンフロというゲームにどれだけの影響を与えたかを、用意した資料諸々含めて何とか説き伏せるつもりで居た』が、どうやら彼女は『其の気では無い』のを少なくない時間を悪友の関係として過ごした事で、彼は彼女の雰囲気から察する事が出来た。

 

そして律の立場を鑑みれば、始源存在(レイドモンスター)の一柱・嵩増(かさま)す大黒繊(だいこくせん)を相性がガッチリと嵌った事で単騎(ソロ)で屠り、冥響のオルケストラ:聖典ルートの再現『ペッパー・天津気』を弱体化込みながらも全力全開で越えた戦闘データという、今後のモンスター達の攻略難易度の調整等に於ける一つの指針………になるかは定かでは無いが、難し過ぎて攻略不可防止の為の一種の境界線にする算段を付けているのだろう。

 

尤も此の二人が『やり過ぎた時』は、宣伝部長である自分が責任を以て事に当たらねばならず、此のシャングリラ・フロンティアというゲームに深く踏み込んだペッパーというプレイヤーの動向は、運営として『今後より一層注視していく必要が有る』と結論付けた。

 

「…………で、だ。創世、律、今の『ゴルドゥニーネ達の動き』はどうなっている?」

「無尽のゴルドゥニーネの分け身をパーティーに加えたプレイヤー達が、各自前線拠点に少しずつ向かってるわ。本体は未だ最西端のエリアに居るけどね」

「ゴルドゥニーネと手を組んだのは四組、フリーのゴルドゥニーネは未だ数人居る。後『残存しているゴルドゥニーネの中の三体が倒れる』、もしくは『ゴルドゥニーネがアレを見た時』に創世(コイツ)が言ってた原典にも有る『シナリオ進行のフラグが立つ』とな」

 

冥響のオルケストラの打倒からワールドストーリーが動き、以前から生き残りを賭けた闘争をしていた無尽のゴルドゥニーネと分け身達が更に激化させ、本体の本格的な動きが起きる段階まで着実に進みつつ有る状況を、世界を作った神と世界を律する神は把握している。

 

即ち其れは、そう遠く無い内に無尽のゴルドゥニーネのユニークシナリオEX【果(は)て亡(な)き我(わ)が闘争(とうそう)】と【汝(なれ)果(は)て達(たち)の呼(よ)び声(ごえ)】の更なるフェーズの進行であり。

 

牽いては不滅のヴァイスアッシュのユニークシナリオEX【致命兎叙事詩(エピック.オブ.ヴォーパルバニー)】が本格的に動き出す事でも有ったのだから。

 

「…………本格的に大変になるな」

「そうね。PVPイベントも有るし、此処からもっと大変になるんだから」

「レイドモンスターにPVPイベント周りの調整もやんなきゃなんねぇ、まだまだやる事山積みだよ全く…………」

 

悪態を付きつつも、其々がやる事を理解しているからこそ手を抜く事は断じて無いのが、シャングリラ・フロンティアに関わる三柱の神々の結論だったのだから。

 

動き続ける世界は此の日、更なる衝撃を伴いながら前へと流転したのである。

 

 

 






世界は変わる、止まる事は無く


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