幕末より理想郷への降臨
ペッパー・
(……………出来た)
一睡の挟んだ後に関係修復が着々と進んでいる家族と一緒に朝食を食べて、大衆が神ゲーと読んで一部がクソゲーと叫ぶゲームの
無数の初期職業から選んだのは『メイン職:傭兵(刀使い)』、初期武器は『傭兵の短刀』という幕末の錆光と同じくらいの長さの短刀、初期装備は何処にでも居る初心者装備という、ゲームを始めたばかりの
最後に自分の名前をどうするかを考えて───────最終的に『ユ
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「わぁ…………」
朝方という時間帯も有ってか夜間帯を主戦場とするプレイヤーがログアウトし、昼間帯を主戦場とするプレイヤーがログインして入れ替わり、装備だけ見れば自分と同じ新規勢に経験を積んだと思しき中級者。
そして見て暮で理解出来る高価な装備に身を包んだ上級者が往来し、向かう先を見れば超巨大な機械と鋼鐵で出来た一匹の象が…………此の
そして周りを見ればハシビロコウや馬の覆面、幕末で見た『サンラク』や『ペッパー』を捩った名前を掲げるプレイヤー達が少なくない人数居る。
(取り敢えず、筆と紙が欲しい…………)
自分という存在が『自分の中に在るペースを崩されるのが嫌いであり、其れ故に自分は会話が得意では無い』。だからこそ『筆談』という方法によってコミュニケーションが取れる事を幕末のプレイヤー達が見付け、そして教えてくれたからこそ今の自分が在る。
古来より文字とは、人が言葉を介さずとも人に想いを伝える方法として用いられ、自分のペースで文字を書き綴り、相手に自分が何を考えているのかを伝えられ、時代が進んで電子化が加速した昨今でも、今尚手紙がコミュニケーションツールとして用いられている程度には、根強く根深く浸透している。
一先ず此の街に在る露店に向かい、次々と来る客に対応して商品を売り捌いている壮年の老婆が経営する店、遠目で見ればメモ帳と羽根ペンにインクの執筆セットが売られており、一セット七百マーニという初期所持金でも充分に買える良心的な値段、購入するのに迷い無しと順番が回って来たので指で欲しい商品を示せば、老婆は此方の事情を察してかスッと商品を渡してくれた。
マーニを対価に受け取って小さく一礼、ユーラは当面の目標に拳銃の入手と自分を此のゲームに導いた『ブラッドペッパー』ことペッパー・天津気に会う事とし、次は何をしようかと考えながらファステイアを見て回り、一通り済んだら無難に次の街を目指してみようかなとも考えていた…………そんな時。
「さぁ張った張った!」
「どっちに賭ける!?」
「セスタスに四百で!」
「小鎚三百!」
「乱入者割り込みに五百ッ!」
「また始まったか。飽きないねェ………」
「立ち回りとか結構勉強になるんだよな〜アレ」
周りのプレイヤーがざわつき、別のプレイヤーが音頭を取る中、一体何だと知らないプレイヤー達が視線を向けた。
そんな彼等や彼女等の興味と視線が向く先をユーラが見れば、セスタスを腕にサラシの胸に巻いた女と赤黒い小鎚を握った中量級の男が向かい合って武器を持ち構え、何やら戦いを始めそうな気配が有る。
「今日こそルティアさんに、裸エプロンを着けさせる…………!」
「ルティアさんはスク水こそ至高なりッ!其処は絶対譲らんッッッッッッ!!!」
(…………どっちも修羅場を何回も潜ってる)
ルティアなる存在が何なのかは知らないが、相対したプレイヤー達の節々に見える所作からユーラは、彼と彼女が相当な場数を踏んだ実力者達であると見抜く。
ゲームに置けるプレイヤーの力量は武器や装備は外付けの力と、戦う前の所作や構えに位置取りと戦いの最中に見せる挙動等の内なる力の二種類が在り、あの二人は其の両方を備えた
幕末で培った感知センサーで辺りを見回し、あの二人を良く知っているプレイヤーを区分けし、其の中で一番詳しいプレイヤーを『ドンピシャ』で見抜いたユーラは、見た目が余分な脂を削ぎ落とした筋骨隆々な顎髭を蓄えた初老の男性、頭上に『ミミコ』を掲げたプレイヤーに近付き、指先でツンツンと腰回りを突っ付いた。
「ひゃあ!?ってなぁに!!?…………あ、もしかして初心者さんかな?」
「………………!?」
見た目は筋骨隆々初老の男性、飛び出した声はブラッドペッパーと同じ年頃と思われる女性の声。
幕末でもネカマで遊ぶプレイヤーは何人も居たし、今更其れくらいでは驚かないとは思っていたが、自然体で居ても驚かされる事になったのは初めての経験で。
「…………………(ススススッ)」
「…………『アレ、何?』。あぁ、アレね。えっと…………『簡単に言えば着せ替え隊ってPK集団。目的の為に内輪で対人技術を磨きつつ、特定の賞金首に持参した衣装を着させる為に執念燃やしてる』………っと」
「……………!?」
此方が紙と羽根ペンにインクで文字を走らせて謎を問えば、彼女は此方が筆談ならばコミュニケーションが取れると理解したのか、余りにも手慣れた手際でメモ帳とペンを虚空から取り出し、次の瞬間にはシュババババッ!と羽根ペンを走らせて答えを書き示した事に驚かされた。
『いざ、尋常に…………勝負!!!』
そんな折、セスタスと小鎚武器による戦いが幕を開け、観客達の声が響く中でユーラは紙と羽根ペンを走らせ、其の様子をミミコは何時でも筆談解答出来る様に備えて。
「……………(スラスラスラスラ)」
「……………『PK集団は持ち物没収を恐れないのか?』、ね。『目的達成の為なら武器やアイテムが無くなろうと関係無い、自分が推したり好きな人に会う為ならば怖くないのよ』…………ってね」
「……………(スラスラスラスラ)」
「『アレに入るにはどうするべき?』…………か。『私の知り合いに話を付けてみる?対人戦が強い人なら大歓迎なスタンスだけど』」
「……………ん、御願い」
「……………筆談が一番のコミュニケーションなのね」
話すのは苦手なだけで話せない訳では無い、ユーラというプレイヤーが一番卒無くコミュニケーションを取れる方法に、筆談を選択したのだとミミコは理解してから
ユーラのシャンフロライフ、其の記念すべき初日はインパクトの有るネカマプレイヤーのミミコとの出会いに、自分が見ている範囲では知らない事だらけの驚きが満ち溢れる幕開けになったのだった…………。
其れは旅立ちの一歩