VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

1182 / 1192


世界に生きる者の会話

※今章のエピローグです




復讐者の怒りの焔は消えない、何故なら深く刻まれ滲み染み付いた物だからこそ

「片や一晩の初配信で登録者数が90万近くから現在128万、片やプライベート配信で100万の現在103万………。いやぁ〜ホント羨ましいなぁ、アメリカンドリームにも負けない配信者ドリームだよ」

「納得のクオリティってのと、此の手のVRMMOで有名人になるだけの事は有るわな。どっちの配信も見応えが有って良い」

 

10/22…………昼前の都内某所の高級焼肉店にて、二人の男が『配信前』の腹拵えに焼き肉を焼いて食していた。

 

其の近くには二人の所持品たるタブレット端末が有り、其処には其々『ある配信映像』が…………日本が世界に誇る『おま国ゲー』として知られるシャングリラ・フロンティアにて行われた、二人のプレイヤー其々の配信映像が記録・再生されている。

 

「シャンフロでフルスペックを出せれば、あそこまで映えるって知れたのは収穫かもなー。………あ、これくれ『冷泉(れいぜん)』」

「其れは俺が育てたヤツ…………戦争を所望か『妻夫木(つまよぎ)』」

「まぁ強ち間違ってないなソレ」

 

妻夫木と呼ばれる男は相対する冷泉が焼いていた特選カルビを掠め取り、店特製のタレに絡めて頬張って。そうして冷え冷えとした視線を向ける冷泉へ、箸の鋒を突き付けて問う。

 

「で、ウチの腕(・)担当さんから見た感想は?」

「行儀が悪いぞ妻夫木………。そうだな───────片や超が付く機動力特化、もう片方は装備込みの超対応万能型と見て良いが………。何方にも『付け入る隙は有る』、とだけ言っておく」

「おぉ〜………って、ちょっと『自信無さげ』じゃん。どったの冷泉?」

 

突きつけられた箸をトングで弾き、冷泉は特選カルビとは別で焼い(育て)ていた牛タンを網から上げて皿に取り、軽くレモンを搾り掛けて口に含んで咀嚼し、嚥下の後に答えた冷泉に妻夫木は首を傾げた。

 

「………素人でも多少ゲームをやっていれば解るが、あんな無茶な動きは万能の其れじゃない。尖ったビルドをするなら、当然何かを削ってる。特に『サンラク』に関しちゃ顕著だからな」

「まぁUMA君の場合は『めちゃくそ解り易い』けどな〜」

「まぁ、そうだな。アレだけの速度とクリティカルの連続、其れを別のゲームに当て嵌めると体力と耐久を削ったビルドだ─────────つまり『食い縛り込みで数回攻撃を当たれば勝てる』」

「………いや冷泉、ア(・)レ(・)に数回当てるの?」

「あぁ、そうだ。ア(・)レ(・)に数回攻撃を当てる、其れでサンラクに(・)は(・)勝てる」

 

二人の脳裏に思い浮かぶのは、数日の時間が流れようとも記憶に刻まれた光景にして、配信者としても『そんなんアリかよ』と言いたくなる大躍進を見せたチャンネル…………『Sun(サン) Luck(ラック) Channel(チャンネル)』のパブリック配信動画だ。

 

アーカイブこそ残らなかったが、既に他の投稿者によって大量のミラー動画が出回り、二人も独自に保存した其の配信動画には、シャングリラ・フロンティアというゲームに置ける『極限にして極点たる物』が映像化されている。

 

「問題なのは『ペッパー』の方だ、超対応万能型に見えて奴は万能型のステータスじゃない。明らかに他の三桁帯プレイヤー達の其れ(ステ振り)から、完(・)全(・)に(・)逸脱している」

「ユニークモンスター何体も討伐してるんだし、当然じゃない?シャンフロのユニークモンスターはエンカウントや撃破、他にもレイドや特殊なモンスターの撃破でボーナスポイント入るって『家の視聴者(リスナー)』が言ってたよ?」

「其(・)れ(・)込(・)み(・)で(・)だ(・)。配信者としての『勘』でしか無いが─────────此の手の類いの勘は『当たった事の方が多い』からな」

「…………マジ?」

「大マジ」

 

其れなりに交流が有り、相応の対人経験を積んだ冷泉の言葉に妻夫木は耳を疑うも、彼の目を見て其の発言は冷泉の中で確信を抱いていると察するに至った。

 

「…………尤もペッパーの方は『少数精鋭+対人特化プレイヤー達を用意すれば』、何とかなる算段は有る。対ペッパー戦を見据えた候補者探しも、此(・)方(・)の(・)準(・)備(・)と並行して行う」

「ん〜…………なら俺は多くは言わんよ」

「にしても、お前の方はどうなんだ?向こうにも軍師プレイヤーが居るって話だろう?」

「なぁんか『スパイ』が紛れ込んでる臭いし、向こうさん『だいぶガチというかマジなんだよね』〜。………でもまぁ、其れなら其れで策有りって感じだけどな!後はギャルゲーの結果次第ってトコ」

「………説明になってない。妻夫木、ドリンクはどうする?」

「烏龍茶」

「なら俺は焼酎でも頼むか」

「此の後個人配信なのに、酒入れるの?冷泉」

「……言わなきゃバレない、其れに少し入ってた方が調子が良いんだ」

「俺は弱いからなー」

 

其処から先は特に言葉も無く、十数分もすれば二人の昼食は終わり、カードによる支払いを終えて店を出た二人の男達は、自分達の『仕事の為だけに借りているマンション』へと向かう途中、移動の為に乗り込んだエレベーターの中で更に言葉を交わす。

 

「此の感じだと早くて十一月末か、クリスマス前の辺りには大規模PVPの決戦って感じだし、其れまでは個人配信しつつシャンフロの戦争に備えて………って感じかな」

「案件関係はどうなった?」

「来年分は受けたけど今年分は一本だけ、もう録画したやつだから冷泉が配信してる間に編集しとく」

「助かる」

「良いってこった。あ~でも、やっぱ壺カルビも頼んどけば良かったかな」

「…………」

 

『和牛を頼みまくっていた奴が未だ足りないと宣うか』と、半目で睨む冷泉を何処吹く風で往なした妻夫木だったが、ふと思い出したかの様に冷泉へと目を合わせ直し、彼に問い掛けた。

 

「あ、そうだ。そろそろ教えてくれても良いじゃん。先王と新王のどっちの陣営に付くか決める時、冷泉『新王側にしたい』って何であんなに押し通したん?結果的に良い感じの構図になったけどさ………、最初に聞いた時にはぐらかしてたじゃん?壺カルビは無しにするから教えてくれよ」

「……割と個人的な理由だから配信には載せられないぞ」

「え、私怨?」

「まぁ…………そう、だな」

 

エレベーターが最上階に到着した事を電子アナウンスが伝えて扉は開かれ、そして『何とも言えない顔』をしながらエレベーターを出た冷泉…………本名を『冷泉(れいぜい) 東真(あずま)』にして『ガル之瀬』として活動している男は。

 

最近配信チャンネル統合によってビジネスパートナーとなり、配信者では知らぬ者の方が少ないと言われる有名人で、過去三度の炎上を自力鎮火・大規模な視聴者との企画を幾度も成功させた、別の配信者曰く『配信界隈のカリスマ』と呼ばれる『妻夫木(つまぶき) 隼(しゅん)』にして『ぱやぶさ』へ向け、端的にこう告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気(・)に(・)食(・)わ(・)な(・)い(・)顔(・)を(・)見(・)付(・)け(・)た(・)。三(・)分(・)間(・)殴(・)っ(・)た(・)く(・)ら(・)い(・)じ(・)ゃ(・)、絶(・)対(・)に(・)気(・)が(・)済(・)ま(・)な(・)い(・)く(・)ら(・)い(・)の(・)な(・)」

「え、怖っ。何したらそんな恨み買うのそいつ」

 

 

 






お前だけは絶対に許さない


※次章の骨組み構築の為、二ヶ月から二ヶ月半程の御休みを頂きます。其処から幕話を挟んだ後、世界の真理書「冥響編」を投稿し、来年一月辺りを目処に新章を開始します



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。