レイドモンスター。
古今東西ゲームに置いて大規模人数での突破及び討伐ないし撃退を是とする、所謂『エンドコンテンツ』に座する存在である。
此のモンスター達は共通して莫大なステータス、大人数を相手取る技の数々、解けなければ全滅不可避なギミック、特定のオブジェクトを用いた防衛戦等々の要素が有り、大衆が認める神ゲーたるシャングリラ・フロンティアもまた其の例に漏れる事は無く。
但し此のゲームに置けるレイドモンスター、或いは始源眷属や始源眷族に総称して始源存在とも言われる其れ等は、其々が特殊な能力を持ち合わせており、戦うべき相手の背景を解き明かさなければ『勝負の土台に上がる事すら叶わない』のが、旧大陸と新大陸の其々に赤・青・緑・白・黒の五色からなるシャンフロのレイドモンスター達なのだ。
例えば狂える大群青…………左方始源眷属の青に属する存在にして、反転都市ルルイアスにて深淵のクターニッドが封じる其れは、死滅速度を遥かに上回る増殖能力によって水中どころか地上すらも青一色に染め上げる、有機物を捕食・消化・増殖のプロセスを一瞬して行い、無機物に寄生する『プランクトン達』であり、クターニッドが封印し続けている為にルルイアスの外には出ていないが、仮に出てしまった場合は『シャンフロをゲームオーバーに追い込む程の脅威』となる。
例えば貪る大赤依…………左方始源眷属の赤に属する存在で在りながら、取るべき戦術によっては出現と同時に完封する事すら可能な始源存在では有る物の、其れが出来なければ参加者達を漏れ無く即死させ、嘗てプレイヤー達により一番最初に倒された始源存在であり、其の正体は『左方始源獣エレボスの血』たる『赤い飛蝗の集合体』。
例えば彷徨う大疫青…………右方始源眷族の青たる存在にして、初見殺し過ぎる其の性能から上級プレイヤー達を悉く鏖殺し続け、下級プレイヤー達を元々のステータスによる暴力で叩き潰した結果、現時点の始源存在のキルスコアランキングで堂々の一位に君臨する事になった『痩せこけた青一色の仔馬』で、最終形態にて『ジェル状の青い肉を纏う天馬の姿』へ変貌し。
例えば嬲る縁大緑…………右方始源眷族の緑で、其の見た目は『緑一色の樹の実に見立てた卵を吊るした孔雀』ながら、其の色彩と森林地帯が組み合わさる事で高度な擬態能力を発揮、樹の実にして卵をモンスターやプレイヤーに投げ当て、緑一色の液体を染み込ませて無数の小さな雛による全ステータスの接収から、規定量を満たせなければ自身の手駒に落とし、奥の手として『過去に手駒にした存在の中から、最も秀でた力を持つ存在を現出する能力』を持ち。
例えば嵩増す大黒繊…………左方始源眷属の黒にして、生物の原初的欲求たる強化の為ならば生物としての禁忌に当たる『同族喰い』すらも厭わず、強くなった果てに己の力によって自滅の末路が待てども、其れすらも是として強くなり続ける『筋骨隆々の黒一色の単眼剛力鬼』であり、其の実『黒一色の大小異なる蛭の大群が寄り添い合って身体を構築した存在』であり。
此の様に多種多様なる始源存在達が蔓延り、世界を災禍を齎しながら彩り、そして確認されて共有された数多の始源存在の一体、嵩増す大黒繊は『たった一人のプレイヤーによって複数存在して居る中の一体が倒された』というアナウンスが、レイドモンスターを捜索する者達や倒さんと画策する者達、そしてシャンフロをプレイしている者達に絶大な衝撃を齎した。
嵩増す大黒繊を倒したのは『ペッパー・天津気氏』─────────シャンフロという世界で数多の偉業を成し遂げ、七つの最強種達に関わる一式装備を探し出すシナリオ受注者であり、そして此の世界に関わる様々な謎を解き明かし、時に知識を他者に伝授・伝達し、プレイヤー達のモチベーションや脳髄に多大な影響を与える、今を輝く『時の人』の一人。
シャンフロをプレイするプレイヤー達は其の名を『必ず一度は確実に耳にし』、例えシャンフロをプレイしていない者であったとしても、検索にて『ペッパー』や『胡椒さん』というワードでエンジンを掛ければ、検索項目の一覧の最上段に其の名が出て来る程に指折りの有名プレイヤーであり、其の口から出て来る情報はプレイヤーの脳を容易く破壊する事なんぞ、御茶の子再々やら朝飯前と言わんばかりの威力を持ち合わせ。
何より彼によって『複数パーティーによる攻略を必須とするシャンフロのレイドモンスターは、プレイヤーのビルドスタイルや持ち物等の諸々を含めた相性では単騎討伐も可能』という方程式と証明行為に他ならず、始源存在達が討伐後に一定期間を開ければ再出現する特性から事実上『プレイヤー全員が挑めるエンドコンテンツに置いて、単騎討伐という栄誉を一番最初に手にした』という、確固たる実績をペッパー氏は手にしたのだ。
尤も当の本人は『始源存在達を放置した先、シャンフロの運営が嬉々として世界崩壊を仕掛て来るだろう』との強い危機感を抱き、そんな事はさせないという強い使命感に似た行動と其の果てに在る結果が、彼をそうさせたに過ぎないのだが………。
閑話休題。
ペッパー氏が10/21に冥響のオルケストラに接触、己の持ち得る力の全てを擲った死闘の果てに撃破した訳だが、其の準備期間中…………正確には10/19に焠がる大赤翅が『オイカッツォ氏』を中心とした勇敢なる廃人プレイヤー達による討伐隊、もとい『消防隊』によって攻略させられたというニュースが在った。
其時の彼等彼女等は何を思い、如何にして戦い、そして始源の一柱たる右方始源眷族の赤を落とすに到れたのか………今回は其の戦い置いて、一度は赤き熱と殺意の蝶に焼かれ、彼の呼び掛けに応じて参戦し、共に戦って戦局を見届けた先の軌跡を。
『爆焔鎮滅戦』と名付けられた戦いを、私が手記という形を以て此処に記録を遺す。
何時の日か始源存在の一柱・焠がる大赤翅が地の底から蘇り、再び脅威を振り撒き始めた際に彼の存在を倒さんとする際、此の手記を手に取りて頁と文脈を読む者が現れた時、其の一助となる様に。
執筆プレイヤー:パッセル・コックゴーン
始源存在戦闘記録・爆焔鎮滅戦より抜粋