開戦の時
墓守の御人を眠らせ、深淵の盟主を満足させ、天を覇する黄金龍王の再誕によって、ワールドストーリーが第四段階に移行した事により、サードレマとファイヴァルの間に在る『
正確には嘗ての時代に置いて、天覇のジークヴルムが先々代赤竜クレプトクルムを物理的に押し潰し、其の死骸を水底の蓋にして焠がる大赤翅を封じていた其れが破壊された事で、遂に長い眠りより『其れ』は姿を現した。
旧大陸側の始源存在の一柱、正式分類は『右方始源眷族の赤にして
其れ以降も接触と戦闘に返り討ちに遭ったプレイヤーの持ち帰った情報によって、遂に焠がる大赤翅は『無尽蔵のエネルギー生成を可能とする、超出力の炎熱エネルギー体という
更に其処からベヒーモスの中に在る機能の中に在るだろう、対抗策となる物を徹底的に洗い出して見付け、オイカッツォが『焠がる大赤翅討伐隊パーティーの募集(加入条件:焠がる大赤翅と一度以上の戦闘及び死亡を経験している)』を掛けた事で、一気に状況は動き出した。
そうしてオイカッツォを始めとし、ペッパー・カルダモンやアージェンアウルにパッセル・コックゴーン、レイニーレイン・炸裂グリンピース・しいたけ・エターナルゼロ・ホークアイ等々、プレイヤーネームに一癖や二癖に含みやらを持たせた彼等彼女等は、栄古斉衰の死火口湖に赴いて─────────
「ねぇケッツ、じゃなくってカッツォ。アレが前に言ってた『秘策』なのカナ?」
「カッツォね、アージェン。にしても良いね、ベヒーモスの天候操作ライセンス………想像以上に効いてる様だ」
「『生半可な水は水蒸気のカウンターでやられるから、其のエネルギー以上の水を叩き付け続けて冷やせば良い』、だったかしら。ゴリ押しとは言え、こんな形でギミックの一つが解けちゃうなんて………」
「アタシからすりゃ、あのファイヤーバタフライを殺せるんなら何でも良いさ。此れで漸く『スタートラインに立てた』って認識で良いのか?」
「そういう事だ、ホークアイ。レイドモンスターしかり、ユニークモンスターしかり、シャンフロは推測と考察から謎を解き明かす必要が有る」
火山にピンポイントで豪雨が降り注ぎ、轟々と叩き付ける雨音と白い線で塗り潰された様な光景の中、晴れていた時は大きく燃え盛って膨張していた焠がる大赤翅が、其の身を縮めて小さく丸まっている姿が遠目に見えたのだった。
「にしても其のエリア内の一区画を都合良く、豪雨やらの天候操作なんて出来るんだねぇ。神代技術スゲーと言うか、ファンタジーだからこそ許されてるみたいな?」
「象牙氏曰くベヒーモスから雨の素を投射して、ナノマシンと気流操作で操るとの事。何でも神代技術の中で『マナ粒子を一切用いない技術』なのだとか」
「ほへ~………。マナ粒子が絡まないなら、数年から十年くらい後で実現しちゃったりしそう………」
「私リアル雨女だし、飛行機に船とかの航路に旅行先の雨を止めてくれると助かるなぁ………」
「レイニーレインの由来ってそう言う……」
故に焠がる大赤翅討伐隊パーティー参加プレイヤーは全員『雨具』を其の身に纏うのは当然とし、装備もそれぞれの特徴を組み合わせてシナジーを発生させ、事前の作戦会議で役割分担にアイテム配分等を決め、こうして今日という日を迎えるに至ったのだ。
「焠がる大赤翅は無尽蔵のエネルギーを放出する存在、生半可な水を掛ければ『フィールド全体に
「まぁあくまで第一段階、されど第一段階は此れでクリアだ。相手は触れる事すら許さない超高温ボディ、半端な水を浴びせたら水蒸気爆発、其れも超広範囲に襲い掛かるカウンターギミックだ。
だったら此方がやるべき事は一つ。『焠がる大赤翅の乾燥が間に合わない勢いと量の水を、ひたすら頭上から叩き付け続ければ良い』…………ってね」
焠がる大赤翅は熱というエネルギーの塊であり、莫大量を保持こそしては居るが、其の量は『無限』では無く。そして生物が常に全力全開の出力を維持出来ない以上、熱を失い続ければ球体として丸まった身体も崩壊する。
熱されて熱い物体に中途半端な水や油を掛ければ、急激な温度変化と発生した気泡が弾けて跳ね跳んで、熱されて液体から空気に転じた際の出力が襲い掛かる。
『相手が熱と水蒸気爆発によるマップ攻撃カウンターをするならば、此方は大量の水を常に頭上から掛け続けて封殺してしまえば良い』─────────其れが焠がる大赤翅の討伐隊メンバー達が辿り着いた『解答』だった。
「さぁ、此れで奴に干渉する為の最低条件は整った!今日の俺達は文字通り消防隊ッ!一つのパーティー最大人数十五人で、たかがエンドコンテンツ
オイカッツォの号令が莫大量の豪雨に負けぬ声量で響き、そんな
鐵と機巧の巨象が降らせた加護の雨の中、灼熱なる始源の一柱に挑む勇士達は頂上にて輝く赤い太陽へ、恐れる事無く歩みを進めて行く……………。
豪雨を身に受け、落とせや太陽