VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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帰った後に一難待って




胡椒と鳥頭、ヴァイスアッシュと交わす約束

「ペッパー殿、帰り道には御気を付けて」

「アッハイ、アリガトウゴザイマス」

 

サードレマ大公の城。光輝へと昇る金龍王装(レディアント・ドラゴニウス)から紳士服へと戻ったペッパーは、ノアベルトに見送られる形で屋敷を後にした。

 

言葉は片言ではあるが、歩き方はロールプレイの状態という、それはロールプレイとして大事なのか?とツッコミを入れられそうでは有ったものの、屋敷を出てからも歩法は崩さずに歩いて、裏路地へと入り━━━

 

(っっっっっ……………ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!??あびゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!???)

 

言葉に成らぬ声で、心の内の悲鳴を上げた。

 

(マジかよ、マジかよ、マジだった!?何でさ、何でサードレマ大公の城の地下に、ウェザエモン由来のユニーク遺機装(レガシーウェポン)が置いてあるんだよ!?

 

此れ下手したらペンシルゴンどころか、サンラク達からも一式装備着させろとか、うんたらかんたら難癖付けられても反論出来ねぇぞ!?

 

寧ろ戦う前から結束どころか、装備巡ってサヨナラバイバイ離散エンドで、ユニークモンスター討伐頓挫の可能性すら有り得るじゃねーか!?ファーーーーーーーーー!!??)

 

七つの最強種を模倣せし、神代の大いなる遺産。現在自分の手元には、天覇のジークヴルムを模倣した光輝へと昇る金龍王装(レディアント・ドラゴニウス)と、墓守のウェザエモンに由来する悠久を誓う天将王装(フォーエヴァー・ウェザリオ)の、2種類のユニーク遺機装が在る。大元のモンスターに及ばずとも、其の能力は唯一無二に等しき力を持ち合わせ、真に一式装備の力を使いこなす者が纏えば、無双に等しい圧倒的な戦いが出来るだろう。

 

しかしながら巨大過ぎる力は、同時に争いの火種を孕んでいる。片やスキルや魔法を含んだ、相応の代償を用いずに天を舞い上がる力。片やダメージにデバフを最小限に留めて、最前線での秀でた継戦能力と戦略級のロボットホースを呼び出す力。存在が公になれば、此方は唯では済まない。下手を打てば戦争勃発と激化に伴って、此方は最悪引退も避けられない。

 

(ああああああ……もう本当にどーしよう……)

 

改めて特殊クエストがもたらす恩恵が、洒落や馬鹿に成らないレベルの代物だと実感する。

 

「………取り敢えず、先生に報告しよう。ウェザエモンとの戦い赴く事も踏まえて、準備しなくちゃ」

 

ペッパーは漸く落ち着き、王都ニーネスヒルで出逢ったクラン:聖盾輝士団団長ジョセットから貰った、使い捨て魔法媒体(マジックスクロール)をアイテムインベントリから取り出し、兎御殿を頭に浮かべながら封を解く。

 

次の瞬間、ペッパーの周りを魔方陣が包み込み、彼の姿形はサードレマの上層エリアから、忽然と姿を消したのであった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ……芳醇な香り、チーズと良く合うのさ…」

 

兎の国 ラビッツ。兎御殿の休憩室にて、アイトゥイルはペッパーが買ってくれた高級葡萄酒と、ティークが朝早くに市場で競り落として仕入れたという、旨いチーズと天日干しにした葡萄をつまみに、昼近くに飲んでいた。

 

「白いカビが生えたチーズ……最初はどうかと思ってたけど、匂いと味わいが中々クセになるのさ……」

 

チーズを一口含み、じっくりと噛み。葡萄酒を飲んで、舌をリセット。渋味の葡萄酒の後味を、干した葡萄の甘味により正常に戻せば、あら不思議。あっという間に、飲酒の永久機関が完成する。

 

アイトゥイルは此れが好きだ。アルコールが身体に染みていく、此の言葉にならないが体験すれば解る感覚が、彼女は大好きなのだ。

 

「とても幸せなのさ……」

 

ぐびりと葡萄酒を喉に通し、さぁ天日干しの葡萄をと思った所、後ろで出現する魔方陣。現れるは高級な紳士服に身を包んだ、ジェントル溢れしペッパーである。

 

「アイトゥイル、今帰ったよ」

「ペッパーはん……どうしたのさ、其の格好は?」

「色々有ってね、ちょっとサードレマ大公の城に行ってたんだ。其れとさアイトゥイル、先生とサンラクは今居る?」

「オカシラなら応接の間に居て、サンラクはんはエムルと一緒に千紫万紅の樹海窟に行った後、戻ってきたら少し用事が出来たとか言って寝たのさ。でもどうしたのさ?」

 

サードレマで目立つように動き、ブルックスランバー"最速走者(トップガン)"と戦闘をして、戻ってくるまでの間にサンラクもサンラクで、色々やっていたようだ。寝ている……つまるところはログアウトで、オイカッツォと一緒にペンシルゴンからウェザエモンとの戦いについて、話を持ち掛けられているのだろう。

 

「……アイトゥイル、俺も少し休んでくる。そうだな…午後1時になったら戻ってくるから、其の間にサンラクが起きた場合に待ってて貰えるよう、お願いしてくれないかな?」

「解ったのさ。オカシラと話すって事は相当重要な事情があるのさね?」

「あぁ。今後の事にも関わるからな……」

 

アイトゥイルもまさか、自分が御世話係に付いた開拓者が1時間と少しを離した間に、エクゾーディナリーモンスターを討伐した挙句、サードレマ大公の城で墓守のウェザエモン由来の、ユニーク遺機装を入手していた等と予想出来る訳もないだろう。

 

ペッパーは自身の装備をジェントル溢れる物から、黒一色のコーデに変更してベッドに寝転がり、目を閉じてログアウト。シャンフロのペッパーから現実世界の梓へと戻り、昼御飯&トイレ休憩を挟むことにしたのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んで、ペッパー。お前んとこのアイトゥイルが、ログインするなり待機をしてろって言ってたけど、何か有ったの?」

 

昼休憩を挟んで、午後1時にシャンフロへ再ログインしたペッパーは、休憩室で胡座座りをしていたサンラクと、頭の上に乗っかったエムルを目撃する。

 

「あぁ。実は此方は此方で色々やってたんだけど、ちょっと『ヤバい物』を手に入れちゃって。先生案件なのとサンラクにも関係が有る代物だから、一緒に来て欲しいんだ」

「兄貴と関係あんの?ってか何なの、其のヤバい物って」

 

アイトゥイルとエムルも、此方の内容が気になる様子で視線を向けてくる。此処で話すといけない気がする……そんな予感が頭を過ったペッパーは、サンラクにこう言った。

 

「先生と向き合ったら、其の時に話すよ。多分腰抜かすと思うから………」

「……………?」

 

遠い目をしながら明後日の方角に視線を運ぶペッパーに、サンラクと二羽の兎達は疑問符を浮かべる。二人と二羽は兎御殿の応接の間に足を運び、開かれた襖の先の奥で座るヴァイスアッシュと対面した。

 

「おぅペッパー、サンラク。二人揃って俺等(おいら)に何用だい?」

 

人参の煙管を吹かし、ヴァイスアッシュが此方を見る。相変わらず凄まじい気迫と覇気だ、並大抵の奴等ならチビって指詰め案件だろう。だが、俺もサンラクも、既にロールプレイに入っている。

 

きっと大丈夫、なはず。

 

「先生。実は先程、私はサードレマ大公殿下の城に赴きました。理由は数日程前に王都ニーネスヒルにて、慈愛の聖女イリステラ様と面会し、其処へ向かうよう御言葉を賜ったからです。そして大公殿下のノアベルト様と出逢い、彼から『コレ』を託されました」

 

そう言ってペッパーは、アイテムインベントリから『一式装備』を取り出す。其れを見た瞬間、サンラクとヴァイスアッシュ、エムルにアイトゥイルが、其の目を丸くする。

 

「サードレマ大公の城の地下、神代のタイムカプセルらしき其の中に保存されていた、一式装備。名を『悠久を誓う天将王装(フォーエヴァー・ウェザリオ)』。

『ユニークモンスター・墓守のウェザエモン』が、数千年前の戦場で纏ったとされる、伝説の戦鎧です」

「いやなんちゅう物出しやがった、ペッパーお前」

 

サンラクはついさっき、世紀末略奪ゲーたるユナイト・ラウンズで鉛筆戦士こと、アーサー・ペンシルゴンからユニークモンスター・墓守のウェザエモンの討伐を、ペッパー含めた5人で一緒にやらないか?と誘われたり、ウェザエモンの即死&広範囲&理不尽攻撃のオンパレード説明で、オイカッツォ共々戦慄したが、其れがたった一瞬で塗り替えられた。

 

何でコイツ、ユニークモンスターに関係ありありな一式装備を手に入れてんの?腰抜かすとか事前に言われてても無理だわこんなん。其れがサンラクが心の中で思った事であり。

 

「ペッパー、サンラクよぉ。まさかたぁ思うが……おめぇさん等、あの『死に損ない』にケンカを売りに行くつもりかい?」

 

そしてヴァッシュが放った死に損ないの台詞(ワード)で、衝撃が更に塗り替えられた。ウェザエモンについて聞きたい事は有る、だが今答えなくてはいけないのは『其れではない』。

 

「……『今はまだ』、俺もサンラクも。ウェザエモンに挑んで、確実に勝てるとは思っていません」

 

ペッパーが先んじて切り出し、話の骨組みを作り出す。サンラクは思い出す、隣に居るペッパーが言った、ロールプレイの重要性を。

 

「……兄貴。俺とペッパーは、ウェザエモン討伐の補助に徹する事になってやして。主幹となるのは、俺達の知り合いで御座いやす。其の知り合いが言うには、ウェザエモンは今………『殺人鬼集団』の育成の為に、都合の良い道具の様に扱われている……という風に、そいつから聞きやした」

 

骨組みを舗装し、より頑丈に仕立てていく。ロールプレイのボルテージが、段々と高まって上がっていくのが二人には解る。

 

「ウェザエモン討伐の発案者は、其の殺人鬼集団の中の一人で御座いやすが……。そいつぁ本気で、ウェザエモンをぶん殴り、ハッ倒すつもりでいやす」

 

大袈裟だと思うだろうか。否、此れで良い━━━━━カッコつけとは、何時だって大きく見せた方が勝ちなのだ。

 

「意気るのは良いがぁよぉ…勝算は在るんかい?俺ァ負けに行くことを、『ヴォーパル魂』だとは教えちゃいねぇぜ?」

 

此処からが正真正銘の大詰め。ペッパーがヴァイスアッシュに言葉を放つ。

 

「……『約束』をしたんです……友と、そしてセツナと」

「む……」

 

ヴァイスアッシュがペッパーを見る。彼の目には熱く燃える炎が宿り、そして力が満ち充ちている。

 

「友は……恋人のセツナを困らせる、頑固者のウェザエモンを張り倒したいと言い。セツナは自分の過去()に縛られたままでいる、自分の愛した愛しい人(ウェザエモン)を止めて欲しいと言いました」

 

あの日、セツナと話していたトワは。強い意志を宿して、セツナに言い切ってみせた。

 

「友は昔から、一度決めた事は必ず成し徹す人でした。其の為なら自分の全てを捧げ、投げ捨てられる人間です。ウェザエモンとの戦いを、彼女は一回限りの大勝負と言ってみせた。そんな彼女に俺も、サンラクも、他の協力者達も。彼女の其の『心意気』に胸を打たれ、力を貸す事が『仁義』だと思ったのです」

「俺達は未だ、木っ端微塵の弱者ではありますが、猶予はおよそ『4週間弱』。あまり長くはありやせんが、必ず間に合わせてみせます。未熟で弱者で凡夫たる俺達二人の『蛮勇』が、強者に挑む者の『度胸』となるまで」

 

即興では有ったが、ダブルロールプレイでヴァイスアッシュに自分達の意向、立ち位置、そしてやるべき事を伝えきった。後はどうなるかだが…………

 

「友との約束…心意気…仁義……かぁ。おめぇさん等二人共、ヴォーパル魂が何たるかってのを、確りと理解出来てる様だなぁ」

 

ヴァイスアッシュが立ち上がり、ペッパーとサンラクに歩み寄る。そして目の前に置かれた、悠久を誓う天将王装を見ながら、語らうようにして二人にこう言った。

 

アイツ(・・・)はよぉ…不器用なヤツなのさ」

「不器用なヤツ……もしかして、ウェザエモンの事ですか?先生」

「あァ…糞真面目で加減すら効かねぇアイツは、下手な嘘で女房を失って、死ぬに死ねねぇ身体になっちまった。言うなりゃ………『生ける屍』なんだよォ」

「生ける、屍……アンデッドって事なのか?」

 

確かに悠久を誓う天将王装にも、ウェザエモンが数千年前に纏ったというテキストが在った。普通人間の寿命は平均で75~80、今の時代は100まで生きられる環境も整ったが、其れにしたって有り得ない。

 

「俺等ぁはよぉ。アイツ等にゃあ手ェ出さねぇと決めているんだが、挑もうってなら止めはしねぇ」

 

「だが………」とヴァイスアッシュは、応接の間から去り際に、ペッパーとサンラクへウェザエモンに挑む為の『条件』を提示したのだ。

 

「アイツに挑むなら、先に『実戦訓練を終えてから』だなぁ。其れが『通過儀礼』ってもんさぁ」

 

 

………………と。

 

 

「あ、先生。レディアント・ソルレイアの耐久値の回復を御願いしても良いでしょうか?」

「おぅ、解った。……この具合なら、こんくらいかぁ」

「ペッパー、それなんだよ」

「エネルギーフルチャージで空飛べるようになる籠脚(ガンドレッグ)……値段は結構掛かるけど、払えない金額じゃないな。御願いします先生」

「エッナニソレ」

 

ペッパーが取り出し、ヴァイスアッシュに修繕を依頼したレディアント・ソルレイアによって、サンラクは再び腰を抜かす事になったのだった……。

 

 

 

 






挑む為の最低条件


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