VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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此れは、シャンフロを遊ぶ者達の視点のお話




インパクト・オブ・ザ・ワールド ~世界の開拓者達~

此所は沼渡りに備える街 セカンディル。台地の大都市サードレマの前に在る、豊かな栄養と鉱物資源に満ちる四苦八苦の沼荒野が広がる小さな街だ。

 

「うーん…どうしようか」

 

とある男性プレイヤーは悩んでいた。彼は今、セカンディルからサードレマに向かう道を阻む『エリアボス』を倒すための準備をしている。

 

「あのボス、まさかあんな『アクション』してくるなんて……初見だったとはいえ、情報を集めるべきだったかぁ」

 

エリアボスとの戦いの最中に武器が壊れてしまい、最終的にエリアボスの『アクション』で敗北した彼は、再び挑むために新しい武器を欲していた。

 

「また片手剣を購入するしか無いかぁ……」

 

シャンフロの武器耐久値システムの厄介さを味わった彼は、ウジウジしていても仕方無いとセカンディルの武器屋に訪れた。

 

「おっさん、新しい武器とか無いか?」

「新しい武器だぁ?そんなら作る………いや、ちょっと待ちな」

 

1度訪れた時と店主の台詞が変化しており、男性は何かフラグが立ったのかと身構える。

 

「…丁度良かった、新しい武器が有るが見ていくかい?」

 

そう言って表示されたのは、武器カテゴリーに小鎚というワードが追加されたバージョンであり、項目をタッチすると、幾つかの種類の小鎚が提示される。

 

「小鎚…見た感じ、二刀流にも対応する打撃武器…って感じかな?」

「おう。斬擊が効かない相手に対して有効だったり、使い方によっちゃツルハシを使うよりも、効率的に採掘が出来るみてぇでな」

「へぇ………じゃあ此の鉄小鎚を2つ頼める?」

 

「わかった」と店主が一言、そして数秒後、彼のアイテムインベントリには『鉄小鎚』が納められていた。

 

「ありがとう、おっさん」

「おう。あぁ後な、四駆八駆の沼荒野で採れる鉱石を持ってくりゃ、もっと良い武器を作ってやっても良いぞ」

「お、マジ?やった!」

 

更に強い武器が手に入る。新しい希望を得て、彼はウッキウキで店を出る。

 

(何だか分からないけど、とにかく新しい武器はゲットだ!………取り敢えず、明日から沼荒野で採掘しよう)

 

エリアボスに勝ち、先の街へと行くために男性プレイヤーの戦いは続く………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水晶工芸の街 エイドルト。水晶巣窟の近くで採れる良質な水晶を元に、加工技術が発展した此の街は、夜になると灯された街灯が水晶の輝きに反射され、昼よりもずっと明るく、しかし万華鏡ように美しい不夜の街へと変わる場所だ。

 

「…………」

 

夕暮れ時となり街灯があちこちで灯り、街が明るくなる中で、武器屋の前に立つ桃色の髪をツインテールに束ね、左右に3つずつの計6つの桜色のリボンで各々を結び、赤のラインを通すワンピース型の衣裳を纏う少女が1人、あるカテゴリーを眺めて目を細めている。

 

「調査班の言っていた通り……ほんの数分前まで、武器のラインナップには『小鎚』の表記は存在していなかった(・・・・・・・・・)

 

見た目は幼い幼女でありながら、其の声は滅茶苦茶渋い老年男性の其れである。初めて彼女(?)の声を聞いたのならば、思わず口が止まってしまうだろう。

 

「やはり以前に起きた、小鎚持ちのヴォーパルバニーが此の異変の始まり。モンスターの生態系は愚か、シャングリラ・フロンティアの情景にさえも影響を与える、特別なクエスト……実に興味深い」

 

世界を拓く開拓者のゲーム、シャングリラ・フロンティア。其の広い世界を考察し、他のプレイヤー達に発信するクラン『ライブラリ』。其のリーダーを務める『キョージュ』は、未だ自分達の知らぬ未知との出逢いに想いを馳せる。

 

「情報が出回れば、何れ其の者にも辿り着けるだろう……。考察をしながら、時を待つのも一興……か」

 

そうしている時、自分のメッセージに新しい情報が入る。其れを見ながらキョージュは、クランメンバーとの考察の時間を楽しみとし、自身のクランへと足を運んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

門出の港街 フィフティシア。

 

シャングリラ・フロンティアをプレイする開拓者達が、始まりの街・ファステイアより旅立ち、様々なエリアを街を踏破した末に辿り着く、最後の街である。

 

帆船による交易が盛んに行われ、港街として発展した此所は、現状最終地点の街というだけあり武器や防具、装備品にアイテムと其の何れもがRPGで言う処の、最強クラスの品々が揃う。

 

「………………」

「え、えっと……お客、様………?」

 

フィフティシアの一角、裏路地に在る特殊な武器屋。其の店の店主に対して『剣の切っ先』を向けながら、彼女は武器のレパートリーを見ている。

 

彼女のプレイヤーネームの横には、赤黒い『ドクロ』のマークが在った。

 

「ねぇ、店主さん」

「ひぃぃ!?な、なんでございやしょう!?」

「此の『小鎚』って言う武器だけどさ、昨日までは此所には無かったよね?何かあったの?」

 

喉笛に当たるか否かのギリギリまで刃先を寄せ、まるで『天女』に似た笑顔で脅すと、店主はあっさりと白状した。

 

「つ、ついさっきの話になるんだ…!ファステイアの街の鍛冶師がスゲェ武器を作ったって、『伝書鳥(メールバード)』で各地の鍛冶師に言い触らして来てよ…!!

最初は嘘っぱちだと思ったんだ…だが実際に其の技術で作ってみたら、ちゃんと武器として機能した…!

だから俺も負けじと作って…!だから頼む、殺さないでくれ!!!」

 

命乞いをする店主を見て、彼女はニッコリと微笑みながら言った。

 

「貴重な情報ありがと♪御礼と言ったら何だけど、此の一番高い小鎚を買わせてね?モチロン『無料(タダ)』で♪」

「は、はいいいいい!う、売らせていただきやす!」

 

指定額を踏み倒す形で小鎚を入手し、彼女は剣を納めて店を跡にする。

 

「新武器実装…リアルタイムアップデートじゃないとなれば、何かしら『ユニーク』絡みと見て間違いないかも」

 

夕闇が降り、街には灯りが充ち初め、裏路地は暗闇に包まれていく。

 

「ふふふ……夜が開けたら、ちょっとファステイアまで遠出してみようかな」

 

そう言い、彼女はラベンダーのような紫の髪を揺らし、フィフティシアの街の闇へと消える。

 

最上位の廃人プレイヤーとの戦いを何よりの生き甲斐とし。此迄に数多の敵NPCや自身を狙うプレイヤーを幾千と返り討ちにした、最強クラスのプレイヤーキラー。

 

廃人狩り(ジャイアントキリング)の異名で畏れられる女性プレイヤー、『アーサー・ペンシルゴン』は静かに微笑んでいたのだった。

 

 

 




情景を変えた者を探せ、追われる身となったとしても
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