サンラクの新武器開発依頼、そしてオハナシ会場へ
「ビィラックさーん」
「ビィラック姉さーん」
「ビィラックおねーちゃん!」
兎御殿の鍛冶場、其の内のビィラックが居る方へとやって来た二人と二匹。ビィラックは今も尚、カイゼリオンコーカサスの素材を用いた大槍製作に精を出している様だ。
「おぉ。ペッパーにアイトゥイルにエムル、よう来たの」
「ビィラックさん、此方に居るのがサンラク。最近ラビッツで噂になっている、リュカオーンと戦った開拓者ですよ」
「おぉ、噂通りの鳥の人やな。オヤジに気に入られたんじゃっけの。ビィラックじゃ、よろしくな?」
製作の手を止め、歩み寄ったビィラックがサンラクに手を差し伸べ、握手をしてくる。サンラクは其れを見て数拍を置きながら、ロールプレイを踏まえてこう言った。
「………ウッス、ビィラックの姐さん。サンラクっす」
そう言って握手に応じたサンラクに、ビィラックは目が光り。フッと微笑み握手をしながら、彼に言う。
「……ワリャ、中々『解ってる』ようじゃな。じゃが、わちの事は『ビィラック』でエエけ」
「ウッス…!」
「で、ペッパー。鳥の人…いや、サンラクだったの。此処に連れて来たんは、新しい武器を作って欲しいからやろ?違うか?」
「やっぱり解りますか?」
「何となくじゃがな。サンラク、素材を見せてみ。其れで何を作りたいか、わちに言うてみな」
「えっと…、双剣と頭装備が欲しいっす」
ビィラックの言葉を聞き、サンラクはアイテムインベントリから、クアッドビートルとエンパイアビー達、更にはペッパーが見た事の無い、蟷螂と思われるモンスターの素材を取り出していく。
「其のカマキリの素材は?」
「ミミクリーマンティスってハナカマキリでな。花に擬態して見付けるのは大変、おまけにダメージ食らうと直ぐに逃げるせいで、狩るのに苦労したぜ……。おかげで小鎚をぶん投げて倒したからか、投擲系スキルが手に入ったから良いんだけどさ」
「サンラクさん、血眼で叫びまくってましたわ……」
何となく場面を想像出来てしまい、ペッパーは「大変だったな」とサンラクに言った。
「注文は双剣と頭装備じゃったな……。なら、双剣はコイツにコレ。んで、頭装備は……コイツ等じゃな。サンラク、
「あ、ありがとうございやすッ!ビィラックの姐さん!」
ロールプレイが上手くいった事で、初回に限り無料製作を承ってくれたビィラックに、サンラクは直角90度で礼を述べた。
「と、サンラク。そろそろ時間だね」
「んぉ、確かにそうだ。遅れたら色々面倒な事になりそうだよなぁ……」
ペンシルゴン、オイカッツォ、そしてもう一人の協力者。サードレマのNPC運営のカフェ・蛇の林檎で行われる、ユニークモンスター・墓守のウェザエモン攻略会議。遅れたら遅れたで、また厄介な事になるのは間違いない。
「あ、そうだサンラク。ちょっと協力してくれない?」
「ん?何だペッパー」
「
「よし乗った」
作戦会議&ルート確認。サンラクは頭装備を白頭巾に変更し、兎御殿の休憩室からエムルが開いたゲートを越え、ペッパーが先んじて街に出て。数分置いてから、エムルとアイトゥイルを頭巾の中に隠したサンラクが街を駆けて、目的地を目指して走り始めたのだった………。
サードレマ・蛇の林檎………
「……いらっしゃい」
「お、俺が一番か。あ、どうも」
集合時間30分前。騒がしい街の中を人目に見付からず、現場到着一番乗りを果たしたオイカッツォは、一人適当な席に座って他のメンバー到着を待つ。
「まぁ……遅れたら遅れたで、どう煽ってやろうか。特にサンラク」
セカンディルの煽りを何倍にして返すべきか、そんな悪巧みでクツクツと笑って、円形のテーブル席に着くオイカッツォ。流石は外道で毒舌家である。
と、カランカランと扉に立て付けられたベルが鳴り、二人の女性プレイヤーが訪れた。
「やぁやぁ、カッツォ君。君が一番乗りは意外だねぇ」
「お?其れどーゆー意味?俺は場合によっちゃ、女の子でも顔殴るよ?……で、そちらの大和撫子…げ、PKerじゃん」
「ん?斬られたい?斬られたいって事で良いよね?」
「カッツォ君、レベル差の暴力を味わいたいかな?」
半目で嫌そうな顔をするオイカッツォに、PNに髑髏を掲げるアーサーペンシルゴンは魔槍を、もう一人の協力者たる
「とまぁ、冗談はさておくとして」
「完全にPKする雰囲気だったじゃん……まぁ良いけどサ」
「して…あと『二人』来るんだよね、ペンシルゴン?件の二人はどうしたのかな?」
「大遅刻はしないと思いたいけど……ねぇ?」
「遅れようが遅れまいが、其れは其れとして煽る」
「良いね。其れ最高じゃん」
外道が三人、クックックと嗤う。どうやって煽ってやるか、どんな表情や声色を使ってやってやるか。そんな風に考えていた時だった。
カランカランとドアの音が鳴り、二人のプレイヤーが入ってきて。片や『真っ白な頭巾で其の身体をスッポリと覆い』、片や『SFサムライスーツに身を包んだ』プレイヤーが入って来る。
頭巾のプレイヤーが先に席に着いて、もう一人のサムライスーツの方は、マスターが居るカウンターに歩み寄ると、マーニの袋を置いて「此の店を貸し切りにして欲しい」と願い出た後、同じく席に着いた。
「え……どちら様?」
「おいバカッツォ、俺はサンラクだ」
「いや、サンラクは解るよ。じゃあ此方は一体……ペンシルゴン?」
サムライスーツの姿に、ペンシルゴンと京極は言葉を失っていて。震える声で、其れを呼ぶ。
「な、んで……?『ウェザエモン』……が?」
「いや、えっ?アレって確か、彼処から出られない……ハズ、だよね?」
「え!?ウェザエモン!?」
身構える三人に、サムライスーツの内側から「いや、俺はウェザエモンじゃないし」との声が。同時に頭兜型フルフェイスヘルメットのロックが外れて、中からペッパーが顔を出す。
「どうだ、驚いたか?」
ニッコリ笑った瞬間、ペンシルゴンに殴られ。ペッパーはこう思った。
作戦成功━━━━━━━と。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………あのさぁペッパー君。君ホント何なの?私結構ガチで心臓止まりかけたんですけど?」
店を貸切りとして、マスターがサービスで持ってきた冷水を飲み干したペンシルゴンは、ジト目でペッパーを睨んでいる。
「いやゴメンて…ペンシルゴンなら驚かんと思ったんだが、ちょっと刺激が強すぎたかな」
「てか何なんだよペッパー、其のカッコいいSFスーツは」
「総受けのオイカッツォじゃ、どう頑張っても一生手が届かない、ユニーク装備なんだとさ」
「おっし解った、取り敢えずペッパーぶん殴って良いよね?」
「そんな台詞1ミリも言ってねぇんだけどサンラクゥ!?コレの詳細に関してはちゃんと話すから、安心してくれオイカッツォ。……其れより、其処の大和撫子さんは?」
再び頭兜型フルフェイスヘルメットを被って、ペッパーが京極を見る。刀をチャキチャキと鳴らしながら、此方をじっと見つめていた。
「僕は京極。アーサー・ペンシルゴンから、サンラクとオイカッツォ、そしてペッパーの話は聞いていたけどさ………。まさか、ウェザエモンみたいな格好で来るなんて、予想出来る訳ないじゃんか。其れは其れとして斬って良いかな?」
「物騒だなオイ………狂犬かよ、京ティメット」
「京ティメット………」
「制御不能の君達三人に比べたら、まだ可愛い狼ちゃんだよ?」
『どっちにしても京極はヤベー奴』と、三人が認識した所でペンシルゴンが手を鳴らす。
「時間は早いけど、全員揃ったから始めようか。ユニークモンスター・墓守のウェザエモン、攻略作戦会議をさ」
オハナシが━━━━━━━━始まる。
オハナシの始まり始まり