ユニーク戦に備え、集めた情報を分かち合え
「墓守のウェザエモン。既に話しているとは思うけど、此のユニークモンスターはレベル以上に、プレイヤースキルが攻略の鍵になる存在だよ」
ペンシルゴンは言った。150レベル差の理不尽な戦闘が要求され、使う技は何れも此れもが即死級のオンパレード。まともに戦っては勝てない、というよりも『勝たせない』相手であると。
「10分が経過する毎に、ウェザエモンの戦闘段階は変化していく。第一段階はウェザエモン単体を、第二段階突入で巨大馬型ロボットの麒麟を合流させずに戦わないといけない」
「麒麟は見た目以上に狂暴でねぇ…昔『腕っ節の強い暴力野郎』が、麒麟を担当していたけど、アレでも一苦労したくらいだし。でも、問題は………其所じゃないよね?ペンシルゴン」
京極の横目遣い、サンラク・オイカッツォ・ペッパーの三人が気になる様子で見る中、ペンシルゴンがウェザエモンの第三段階戦闘の事に付いて話始める。
「私と京極ちゃんが知っているウェザエモンの第三段階は、突入時点以降は
「えっ、どういう事?」
ペンシルゴン・京極ともにカンストからレベル50に引き下げられたとは言え、そんな事がありえるのか?と。そして其の答えは、京極の口から発せられた。
「………『全滅させられた』んだよ僕達。第三段階突入時に、ウェザエモンの身体に皹が入ったと思ったら、さっきのペッパーの纏ってるサムライアーマーの口辺りをガパッ!って開いた様に放った、フィールド全体を揺らす『巨大な咆哮』によってね」
「クソゲーかな?」
「元よりユニークモンスターってのは、全部が理不尽でしょ?サンラク」
「クソゲー?」
「京ティメットは知らない方が良い。沼にハマるから」
「???」
サンラク・オイカッツォ・京極が喋る中でペッパーはペンシルゴンに質問をぶつける。
「ペンシルゴン、ウェザエモンが放った咆哮はどんな感じだったか解るか?」
「咆哮は防御や魔法で、ガッチガチに固めても即死だった。音でも掻き消せないと思う。………私達が第三段階に入るには……ううん。ウェザエモンを攻略するには、あの咆哮をどうにかしない限り、全滅不可避だね」
皹割れ、咆哮、全滅……おそらく『衝撃波』によるフィールド全体を巻き込む技。喉を潰すか、口を縫い止めるか、そうしなくては防げないと思われるだろう。
だが、ペッパーとサンラクは約一時間前に、ヴァイスアッシュからウェザエモンについて、『ヒント』を貰っている。
「あ~……ペンシルゴン、ちょっと良いか?」
「何?サンラク君」
話を切り出したのはサンラク、白頭巾で身体を隠しながらも、其の目はペンシルゴンを見つめている。
「実は『此方のユニーク』を進めてたら、墓守のウェザエモンに関して『ある言及』を得てな。攻略の参照になると思う」
「此方も
「解った。取り敢えずサンラク君から話して、其れからペッパー君で」
サンラクは名前を伏せた上で、ヴァイスアッシュがウェザエモンを、死に損ないや生きる屍と言った事を。そしてペッパーは、ウェザエモン由来の一式装備の能力の中にある、試作型戦術機獣の天王が軍馬・人馬・甲冑の三形態に変形する事を話した。
「成程…ウェザエモンを、死に損ないや生きる屍と形容して、其の戦術機獣には甲冑形態が在る……と」
「要するにウェザエモンは『アンデッドモンスター』って事?ペンシルゴン」
「………そう考えると、戦闘開始時点で動きが固かったりしたのにも、色々と辻褄が合う。そして甲冑形態は第三段階突入で、麒麟が変形する時の可能性が有り……か」
顎に手を当て、暫く無言の思考をしていたペンシルゴンが、何かの答えに行き着き。そして一人、席を立ち上がる。
「ちょっと用事が出来たから、私と京極ちゃんは少しの間、別行動を取る事になりそう」
「……もしかして『アレ』をやるのかい?ペンシルゴン」
アレ?と質問したかったが、ペンシルゴンと京極は素晴らしく悪い顔でニタニタ笑っており、サンラク・オイカッツォ・ペッパー共に、絶対にロクな事をしない感じだと確信した。
「其のまさかだよ、京極ちゃん。君が待ちに待った『アレ』をやるよ」
「フフフ…遂に、だね。あぁ、ペッパー。其の前に最速走者が居たのって何処?」
「ソイツは栄古斉衰の死火口湖、其の山肌の中腹辺りで見付けた。けど、通常のブルックスランバーもプレイヤーを見付けたら、追いかけ回して火口に放り込む悪辣さがヤバい」
実際の所、あの悪辣駝鳥は複数体で襲い掛かってくるし、リュカオーンの
「情報ありがと」
「どういたしまして」
フッと笑った京極。まぁ、火口から湖に放り込まれて落下死したとしても、一応警告はしたから許される……よな?
「サンラク君とカッツォ君は、一先ず『レベリング』だね。レベル50に届いてないんじゃ、挑む挑まないの話にもならないよ」
ペンシルゴンがアイテムインベントリを操作、取り出したのは釣竿と地図。此のアイテムを見たペッパーは、あぁそういう事かと納得する。
「ペッパー君、前に案内した『レベリングの穴場』が在ったでしょ?二人を彼処に案内してあげて」
「解った。………あぁ、其れとペンシルゴン。お前が何を考えてるかは知らないけど━━━━『無茶はするなよ』?」
「……………心配してくれて、ありがと♪」
そう言ってペンシルゴンは、振り返り様に朗らかな笑顔をペッパーに向けて。京極と共に何かをするべく退席し、店を出て行った。
「………なぁカッツォ。アレ本当にペンシルゴンか?」
「其れなりにアイツとゲームしてるけどさ。あんな顔始めて見たわ……」
其れなりに長い付き合いのサンラク・オイカッツォでも、彼女のああいう表情と顔を見た事が無いらしい。まぁアイツはそういう奴だからなと、ペッパーは口に出さずに居る。
「ヨッシャ、早速レベリングに行こうぜ!」
「ちょい待ち。装備を元の状態に戻すのと、ルート確認。アイトゥイル、もうそろそろ良いよ」
「あ~…白頭巾被り続けるの、地味に疲れるわ。エムル、大丈夫か」
「やっぱり、ワイはペッパーはんの所が落ち着くのさ…」
「隠れ続けるのも一苦労ですわ…」
オイカッツォがやる気を示すが、此のまま行ける訳が無いだろと、ペッパーはSFサムライアーマーから真っ黒統一中二病コーデに変身し、旅人のマントの中にアイトゥイルを隠して。サンラクは白頭巾を凝視の鳥面へ変更し、エムルが耳を彼の首に巻き付ける形で擬態させる。
そしてサードレマの地図の裏路地を参考に、神代の鐵遺跡へのルートを導き出して、蛇の林檎から旅立ち。他のプレイヤーに鉢合わせに成らぬよう、ブランシュ・クロッサーで感覚を研ぎ澄ませながら脱出。
ペッパー・サンラク・オイカッツォ・アイトゥイル・エムルの三人二羽のパーティーは、神代の鐵遺跡に在るレベリングスポット、涙光の地底湖へ旅立つのだった………。
計画は綿密に