スキル精査と約束の日時決め
午後11時過ぎ、神代の鐵遺跡からサードレマへと戻って来たペッパーとアイトゥイルだったが、大きな問題に直面していた。というのもシャンフロ、と言うよりはオンラインゲーム全般からして、深夜帯に成れば成る程にプレイ人口が比例して増加する傾向に有る。
そして脱初心者を果たした開拓者達が、拠点として滞在して大勢のプレイヤー行き交うサードレマ、ペッパーという現在シャンフロを賑わわせる、一人のとんでもないプレイヤーの存在。
なれば、何が起きるのか?
「ペッパー見なかった!?」
「さっき、此方の方角に行ったよ!」
「ヤッバ!速いね!」
「というか、ペッパーって昼間~夕方を中心にプレイしてると思ってたわ」
「ほんとそれな」
胡椒捜索を行うプレイヤー達が、街の至る所に沸いて出ては、野良という淡い繋がりでありながらも、驚異的な連繋を発揮してペッパーを捜しているのだ。
「深夜帯のプレイヤー達を甘く見てたわ…!アイトゥイル、ゲートを頼んだ…!」
「了解なのさ…!」
やっぱり夜遅くまでプレイするのは、其れ相応のリスクを抱えている事を再認識したペッパーは、アイトゥイルが開いた扉を潜り、兎御殿の休憩室へと帰還する。
「今後は時間にも注意しながらプレイしないとだなぁ……。特技剪定所に行って、今日は終わりに━━━『バサバサ……』━━━━んん?」
「フクロウさね……」
背後で聞こえた鳥の羽音。振り返って見れば窓際に一羽のフクロウが止まり、同時に『
書かれた内容に絶句した。
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あーくんへ
やぁやぁ、あーくん。ペンシルゴンおねーさんだよー。つい数日前に、阿修羅会のメンバー率いてペッパー君達を襲撃した私だけど、此の度私アーサー・ペンシルゴンは、阿修羅会のクランリーダーに退団届を提出して、無事受理されました~。
………と言うのはさておいて。本当の所は京極ちゃんと一緒に、ボロクソになって弱ってた阿修羅会を、クランリーダーと主要メンバーの集まる定期集会日を強襲して、全員キルして来ただけなんだけどね?
ブクブクに肥って、低レベルプレイヤーばっかりキルしてた奴等ばっかりだったから、主要メンバーは億レベルの、クランリーダーに至っては悪質なリスキルやり過ぎたから、多分兆越えクラスの借金背負ったと思うんだよ。
おまけに退職金として、京極ちゃんと一緒に主要メンバーやクランリーダーの持ち物やレアアイテムを、根刮ぎ強奪したから、アイツ等は当分借金返済に追われて、まともな金銭取引すら出来ないし、ウェザエモン所の話じゃなくなった訳だから安心して。
此のメールは、オイカッツォ君とサンラク君にも送ってるよ。其れと私の大槍が出来たと思うから、三日以内で空いてる日が有ったら、サードレマの蛇の林檎に集合ね?受け取りに行くから。
あーくん、絶対来てよ?お願いね?
アーサー・ペンシルゴンより
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何を考えているか解らないと思っていたが、まさか所属していたクランを京極共々強襲し、潰していた等と誰が予想出来ただろうか。
詰まる所━━━━━『邪魔する可能性が非常に高かった阿修羅会を排除して、キルランキング上位の面々が持っていた物を、墓守のウェザエモン攻略の資金の足しにしてしまおう』━━━━━というのが、ペンシルゴンと京極が話していた『アレ』であり、失敗する可能性も有った非常に危険な作戦だった訳だ。
「トワの奴、エグい事するなぁ……」
「どうしたのさ、ペッパーはん?」
「前にペンシルゴンと出逢ったよね、アイトゥイル。彼女はあぁ見えて結構エグい事をしてくるから、気を付けてねって意味だよ……」
一先ずメールは送信するとして、バイトのシフトに大学の講義日程を思い出しながら、ペッパーは伝書鳥のフクロウを選択。『三日後なら大槍を渡せる』といった予定を打ち込んだ文章をメールに載せて、ペンシルゴンへと送信していった所、同期しているEメールアプリに一通の着信メールが届く。
送り主はブシカッツォであり、ペンシルゴンがやった事に対し、ヤベーヤベーと声を挙げては、外道窮まれり等々言いたいように言っていた。
「まぁペンシルゴンなら、其れくらい呼吸をするように、当たり前にやらかすよね……っと」
ブシカッツォにメールを送信した後、ペッパーは再び伝書鳥機能でフクロウをチョイスし、サンラクへ向けて『ペンシルゴンビックリドッキリ作戦の成功報酬、便秘での組手50連戦を明日やりませんか?』と、伝書鳥を飛ばして伝えた。
「さて……さっさと特技剪定所でスキル関連の事、終わらせなくちゃな……。レベリングで熟練度がMAXになったり、選択可能になったりしたから整理しないと」
規定レベルまで後2つ、兎の国の招待による実戦訓練を踏まえると、此れ以上のレベリングは50レベル時の動きに影響が出ると考え、レベルが47もしくは48に到達した時点でユニークシナリオに挑戦すると、ペンシルゴンによってもたらされたウェザエモンの情報を見た時から、ペッパーは心に決めていた。
と、窓際に一羽のフクロウが止まり、伝書鳥が届きましたの一文。受け取った手紙を開くと、サンラクからのメッセージ。内容は『午後6時に便秘でやろう』との事である。
「解った、其れでいこう……と。時間は…やっべぇ日付変わるまで40分もねぇじゃん!アイトゥイル、エルクさんの所へ全速前進だ!」
「は、はいさ!」
早歩きかつ大急ぎで特技剪定所へと向かうペッパー&アイトゥイル。夜は深く、深く、更けていく………。
「あらあら、ペッパーさぁん。こんな遅くまで活動してるなんてぇ~、随分珍しいわねぇ~?」
特技剪定所にやって来たペッパーとアイトゥイルが目撃者したのは、紅玉模様のパジャマ姿のエルクであり、其の脇には可愛らしい枕を抱えていた。
「実戦訓練に備えて、結構な追い込みをしてましたからね……。其れでスキルの合成と、極之秘伝書が一つ欲しいんですけど……夜分に訪れてた挙句、いきなりこんな事を言ってしまい、本当に申し訳ありません」
「いいえぇ~。深夜でも、こうしてお金を使ってくれる人が居るならぁ~、私は大歓迎よぉ?」
銭ゲバが過ぎるが、此所まで至れば逆に信用出来てしまう不思議である。時間を取らせるのもいけないと考え、ペッパーは早速自分のスキルを確認し始め、手始めに選択可能と成った『ドリフトステップ』と『ナックルラッシュ』を、各々『アクセラレート・ステップ レベル1』と『
続いてスキル合成で、アクタスダッシュ&バーストダッシャーの組み合わせで『ホライゾン・メロス レベル1』に。握撃とハンズ・グローリーで『アドバンスト・フィンガー レベル1』を、ブランシュ・クロッサーとハイランナーを『
チェインズアップにチェインズブートの二つは『デュアルリンク レベル1』、グロリアス・ストラータとステックピースで『ライトニング・シャーレ』となり、投擲に
最後に致命極技の一つたる『
「ペッパーさぁん、何時もスキルの秘伝書を買ってくれてる~貴方にぃ、ちょっと『耳寄りな情報』をあげるわぁ」
「耳寄りな情報……ですか?」
「そうよぉ~因みに御値段は、2万マーニで聴けるけどぉ~……如何かしらぁ?」
ペッパーは考える。銭ゲバエルクの事だ、おそらく2万マーニでは『最低限の情報』しか、教えてはくれないだろうと。彼女はよく解っている。ならば、敢えて乗ってやろう。そう考えたペッパーは、彼女が提示した金額の10倍、20万マーニをカウンターに乗せた。
「うふふ…ペッパーさんならぁ、そうくると信じてたわぁ~……」
「折り込み済みだったか…食えないなエルクさんは」
「良いわぁ。ペッパーさんに耳寄りな情報、教えて上げるわ~」
そうしてエルクが喋り始めた情報を、ペッパーとアイトゥイルは傾聴し。日付が変わった頃、其の話を聞き終えたペッパーはシャンフロからログアウトしたのであった………。
実戦訓練に向けての総仕上げ、完遂