VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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実戦訓練は続く




愚鈍なる強者を超えるは、気高き弱者であれ

「…………マジかよ」

 

ヴォーパルコロッセオの休憩室にて、実に『12度目』となるリスポーンをしたペッパーは、一人ポツリと呟いた。

 

「アレが複数所か、雪崩で押し寄せて来るとか……。ヤバいだろ絶対死ぬわ。………実際、単体でも死んだけどさ」

 

水晶群蠍(クリスタルスコーピオン)。ペッパーが嘗て、水晶巣崖(すいしょうそうがい)にて遭遇した、水晶を纏う巨大な蠍である。其れがまさか、実戦的訓練の1体目で相手をしなくてはならないと、誰にも予想出来る訳がない。

 

レベルカンスト間近のビィラックが、水晶群蠍相手に間違い無く死ぬと言った理由を、実際に戦闘を経験した事で、彼は其の意味を真に実感した。

 

「ペッパーはん、大丈夫なのさ?」

「あぁ……あの巨大蠍が『普通の戦い方』じゃ、倒せないってのが解った。そして『アイツのモーション』も大分把握出来たし、次は勝ちに行ける」

 

致命の小鎚(ヴォーパルレッジ)を左手に装備し、13回目となる水晶群蠍戦に臨む。

 

「さて、水晶群蠍。俺は唯々殺られっぱなしで終わっていた訳じゃ無いんだ」

 

突進してくる水晶群蠍に、ペッパーはステップ関連の移動時に、重力作用を軽減する『ペガサロスワーク』で、ゆらりふわりと動き回り、移動・攻撃モーションを吹き荒ぶ風の様に、スタミナ消費で加減速を変幻自在に変更する『疾風連紲(しっぷうれんせつ)』を使い、大鋏の横薙ぎ一閃攻撃を躱わして蠍の『頭』に着地する。

 

「幾度か叩いたから解るが、お前さんの『針の硬度』は全身に纏っている水晶より、ずっと『堅い』のが解った。じゃあ其れを、頭に乗ってる俺に向けて刺してくるならば……一体どうなるんだろうな?」

 

差し迫る水晶群蠍の針。ペッパーは其の攻撃に対して避ける事をせず、致命舞術(ヴォーパルまいじゅつ)月光円舞(げっこうえんぶ)】の自動発動を以て回避を行い。水晶群蠍の頭を守る晶殻と針がぶつかり合った果て、晶殻が砕け散りて其の穂先が脳天に突き刺さった。

 

「其の針、もっと深く刺してやる…!」

 

決戦爍拏(けっせんしゃくな)による超至近距離の打撃ダメージ補正追加、英雄志願(ウォーレヴ.ヒロイック)による格上相手へのバフ、ソウルジェネレートで体力減少を引き換えに筋力増加、破壊属性の強化たるイモータルヴァーツに、近距離での戦闘でバフを入れるファイティングスピリッツ、そして打撃攻撃のクリティカルを補正と強化を行う、ブレイク・セリオンのバフスキルを点火。

 

致命の小鎚を振って致命鎚術(ヴォーパルついじゅつ)満月押印(まんげつおういん)】で針を押し込み、続けて様にウルティモアス・鎚撃(ついげき)地割(ちわり)】・ハードスマッシュ・閂昏打(かんぬきこんだ)・ドロッパーストンプの追撃を着弾地点、丸く満月に刻まれた刻印に重ね合わせ、乗算された衝撃がパイルバンカーとなって水晶群蠍の脳を突き刺し、二撃決殺と成って破壊する。

 

衝撃に震えて、水晶群蠍を構成するポリゴンが爆散。此所に実戦的訓練・1体目、水晶群蠍に勝利を納めたのだった。

 

「ペッパーはん、御見事なのさ。次の相手と戦うのさ?」

「スキルの再使用時間(リキャストタイム)を終えてからだな。あと、少し休憩も」

 

己のスキルが使えるようになるまで、ペッパーはヴォーパルコロッセオの中心点で禅を行うように、深い呼吸を行いながら精神を落ち着かせていく。

 

そしてスキルが使えるようになり、彼は2体目となるモンスターへと挑むのだった………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

此所に記載するのは、ペッパーが挑んだ兎の国の招待・実戦的訓練で戦った、モンスター達の記録である。

 

 

 

2体目、プラタヌクス・ホォーラクス。戦闘開始と同時にフィールド全体を蟻地獄状態に変えてくる、前鋏のサイズからして6mは下らないアリジゴク型のモンスター。

 

平面だろうが壁が有ろうが悪路だろうが全力疾走出来、悪路だと加速力が跳ね上がる、ホライゾン・メロスで壁際まで避難後、壁を伝ってジャンプ系統スキルを用いて空中に飛び上がり、投擲玉・炸音で地上に引き釣り出した所、異常発達した腹部が見えた。

 

気絶している状態になったので、致命の包丁(ヴォーパルチョッパー)で斬撃スキルで滅多斬りと、刺突スキルで滅多刺しにして勝利。尚、最後っ屁に体液を身体にぶちまけられて、衣服が汚れる羽目に。毒は無かったけど。

 

 

挑戦回数:1回

 

 

3体目、ルートエンド・ミノタウロス。御伽噺に出てくる、こってこての牛頭怪人で両手武器の大戦斧を持っている。半径3mの決殺距離(キリングレンジ)で振るわれたら、先ず間違い無く死ぬ。

 

なので、斧の上段唐竹割りを誘発させて、三日月巴でミノタウロス本体をぶん投げから分離、斧をインベントリに回収すると、ミノタウロスは突進攻撃しかしなくなった。

 

其の突進攻撃でも破壊力が半端では無いので、脳天に致命の包丁を突き刺して、突進攻撃で壁に激突させて脳を破壊し、勝利を納めた。後、インベントリに入れた斧が、ドロップアイテムとして加わっていた。俺、両手武器使えないんだが………。

 

 

挑戦回数:6回

 

 

4体目、エブリシング・モスキート。必ず20匹以上で出現するダニの身体に蚊の四肢と頭を持った、虫とかダニとか駄目な人には徹底的に刺さるヤバい相手。常にプレイヤーの半径5mを徘徊し続け、皮膚に接触すると一瞬で体力とMPをドレインして殺してくる。おまけに本体は物凄くちっこいくせに、蝿の様に機敏に動き回り、反応も滅茶苦茶速いせいで、攻撃が全然当たらない。

 

コイツ等をわからせる為、一旦実戦的訓練を中断。アイトゥイルと共にエンハンス商会サードレマ露店通り支部に行き、投擲玉・炸臭と呼ばれる特定のモンスターを惹き付ける玉と、着弾地点に火を放つ投擲玉・炸火を購入。

 

炸臭でエブリシング・モスキート達を引っ張り、炸火で燃やしてやったら、今まで苦労したのは何だったのかレベルで、あっさりと倒しきれた。クリアにはなったので良し。

 

 

挑戦回数:10回

 

 

5体目、嘲り嗤う影法師(グルナー・グリンセリン)。アイトゥイル曰く『相対者の影を模倣し、本体と遊ぶ事を生き甲斐としている』らしいドッペルゲンガー。自身の影から産まれているので、性能は兎に角強い。自分と自分が戦うと、普段見えない事も見えてきたので、非常に楽しいし勉強になる。

 

戦闘開始から10分経過して、あらかたスキルを出し切った所、満足したのか霧散して消えていった。消え行く直前に「戦ってくれてありがとう」と伝えたら、フード付きの黒いトレンチロングコートらしき物を落として、朗らかに笑っていたのが印象的。嘲り嗤うというよりは、悪戯っ子みたいな。

 

どうやら胴装備らしく、PKerは即死するが普通のプレイヤーは装備中に限り、プレイヤーネームを隠せるという内容だった。因みに耐久値+2000……神防具かな?あとレベルが1つ上がって、スキルのレベルアップと新スキルを習得出来た。防具云々抜きにして、また戦いたいと思える強敵。

 

 

挑戦回数:4回

 

 

6体目、オーヴェルワーウルフ。高ステータスと柔術使いの狼人間、ただ其れだけ。強いて言うなら、グラップルからの頭噛み砕きが大好きなモンスター。

 

顎骨を致命の小鎚と打撃系列スキルで粉砕骨折させ、ダースティ・クラッチで首をへし折って倒した。

 

以上。

 

 

挑戦回数:3回

 

 

7体目、ベホイデッドスライム。打撃は効かない、斬撃は効かない、おまけに触れたら猛毒状態にしてくる相手。触れてから一秒経たずに毒殺された時は、マジでどうやって倒すんだ……と絶望しかけたが、試しに毒消し薬を放り込んだら其の部分だけ毒が中和された。

 

ラビッツで毒消し薬を買い占めて、此れまでの恨みを晴らすかの如く、毒消し薬をブチ込みまくって無害化させてから、体内の核をアドバンスト・フィンガーで摘出、業腕一投(ごうわんいっとう)で空に放り投げて、ナタラージャで蹴り砕いて倒した。

 

二度と相手したくないわ。

 

 

挑戦回数:40回

 

 

8体目、ゴブリン・聖騎士(パラディオン)。何で聖騎士?と思う疑問も、コイツの剣筋で瞬く間に掻き消された。いや、滅茶苦茶綺麗だし凄いんだけど。ナニコレ、聖騎士の技を完全模倣してるの?ってくらい強い。

 

ただ言ってしまえば、ゲームの剣客の師匠に比べて天と地の差があって、モーションを理解して剣を弾き飛ばせれば、倒す事は出来た。

 

次遇う時は、他の武器で戦いたい。

 

 

挑戦回数:5回

 

 

9体目、ストーム・ワイバーン。四翼で兎に角素早く飛び回って、上空より口から放つ風のブレスがヤバいドラゴン。此れのせいで空中系・ジャンプ系のスキルが軒並み腐った。

 

飛翔能力を支えているのは、背中の四翼であるために其処を潰せれば、何とか成る……とはいかずに、地上に降ろせても普通に強いと言う罠。

 

寧ろ地上に降りてからが本番じゃあ!と言わんばかりに暴れまくり、持てるスキルの全てを総動員して、何とか倒す事が出来た。単純なステータスの暴力程、厄介で恐ろしい存在である。

 

 

挑戦回数:28回

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ~………」

 

27度の死と1度の勝利の果て、大地に横たわりポリゴンを崩壊させ、消えていくストーム・ワイバーンの姿を見届けたペッパーは、肺に重く乗し掛かった二酸化炭素を吐き、此所まで来たのだと想いを馳せる。

 

とはいえ、時刻は5時手前であり、致命の包丁が使える時間は残り僅か。のんびりしていられないが、かといってスキルの再使用時間も、まだ完了していないので、一旦トイレを含めて10分の休憩をする旨をアイトゥイルに伝え、ペッパーは一時ログアウト。

 

現実世界で梓は、最後の敵も相応の強さを誇ると考えながら、ワクワクと不安が入り雑じった感情を胸に秘めて、トイレと水分補給を行い、シャンフロへと再ログインする。

 

「ペッパーはん、お帰りなのさ」

「ただいま、アイトゥイル。実戦的訓練、最後の相手を頼む」

「はいさ。あと其れに関して、オカシラが『ペッパーに相応しい相手を連れて来る』って言ってたのさ」

 

「相応しい相手?」と首を傾げた時だった。

 

「おぅおぅ、ペッパー。案外掛かるたぁ思ったが、随分早く9体目を倒せたみてぇだな」

「オカシラ!」

「先生!」

 

ヴォーパルバニーの大頭・ヴァイスアッシュが闘技場の客席に現れて、其の隣にはローブに身を包む、杖を持つ小さな者の姿在り。

 

其の者がローブを上げると、顔を出したのは『隻眼のゴブリン』であり、其の姿を見たペッパーは其の名を叫ぶ。

 

「ポポンガさん……御久し振りです!」

「久しいの、ペッパー。お前さんの活躍、星や人の噂で耳にしたぞい」

 

嘗てセカンディルの裏路地にて出逢い、ゴブリンの目玉を渡した事で生きる力を取り戻した老ゴブリン・ポポンガ。魔術なのか杖を振るえば、其の小柄な体躯は宙に浮いてヴォーパルコロッセオに降り立ち。

 

そしてヴァイスアッシュは、ペッパーに実戦的訓練の最終内容を伝えた。

 

「ペッパー。おめぇさんの最後の相手は『オイラの古くからの友公(ダチコウ)』、数多の叡知を其の頭に修めた『極星大賢者(スターラウズ)のポポンガ』だぁ。内容は……友公が決めるんだそうだ」

「お前さんに褒められると、やる気がでるわいヴァッシュよ。そうじゃな………」

 

そう言いながらポポンガはペッパーを見て。少し沈黙の果てに最終戦の内容を決定した。

 

 

 

 

 

 

「ペッパー、ワシの攻撃から30秒間生き残って見せんしゃい」

 

 

 

 

 

と…━━━━━━━。

 

 

 






特殊クエスト・第四段階のキーゴブリン


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