VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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ファステイアよりセカンディルへ




開拓者は旅立ち、駆け往く道を大蛇が阻む

「まさか、クエストに続きがあったなんてなぁ…」

 

ファステイアの道具屋にて、巌喰らいの蚯蚓からドロップした鉱物の一部を換金し、体力回復や状態異常回復、スタミナ回復の各種アイテムを購入しながら、ペッパーは先程の出来事を思い出す。

 

『特殊クエスト:沼地に轟く覇音の一計』。特殊クエスト:岩砕きの秘策をクリアし、武器カテゴリーの小鎚が新規解放された直後に、連動発生した次なるクエスト。

 

取り敢えず受注はしたものの、何処で何をすれば良いのかのヒントは無く、現状手詰まり状態だ。

 

(クエストの続きが解放されるって事は、連続タイプのクエストなのかもしれないな…。というより、これから先のクエストで手に入る報酬も、ヤバい奴だったら俺どーなんの?指名手配されないか?)

 

辺りを見渡し、自分の身を案じるペッパー。しかし既に1名、ヤバい奴に狙われている訳だが、其れを彼は知る由もない。

 

「もう夕方だし、シャンフロは夜になると『危険なモンスター』が出るとか、おっちゃんは言ってたからな…。でも、やっっっっっぱ気になるんだよなぁ………」

 

ゲームでも昼と夜の概念があり、起こせるイベントや出現するモンスターが変化したりと、プレイヤーの興味や探究心を擽る要素として存在している。

 

ペッパーも1ゲーマーとして、1度は体験してみたいと考えていたのだ。

 

「一応日が沈む迄1時間はあるから、今からダッシュで『跳梁(ちょうりょう)跋扈(ばっこ)(もり)』を抜ければ、日没前に『セカンディル』に辿り着けるかな?

 

で、セカンディルでリスポーン地点を更新してから、夜の世界を体験………よし、此れで行こう」

 

物質調達を終え、武器の耐久値を確認し、遂にペッパーは僅かな時でありながら、濃密な時間を過ごした最初の街(ファステイア)より先の世界へと旅立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本には逢禍時(おうまがとき)という呼び方をする時間がある。昼と夜の移り変わり、太陽の光が翠を帯びる黄昏時とも捉えられる其の刻は、妖怪や魔物との遭遇を始めとした、巨大な災禍が訪れるとされ、人々が恐怖し畏れていた時間だ。

 

「そんな時間に跳梁跋扈の森に入るだなんて、風情が効いてるなぁ全く。無論、悪い意味でだが」

 

スタミナを全力で使いながら、尽き果てるギリギリで止まって自然回復を挟みつつ、ペッパーは『空腹度』に気を付けながら、途中で襲い掛かるモンスターを切り伏せ、叩き潰しながら、森を一目散に脱兎の如く駆け抜けていく。

 

シャンフロには『空腹パラメーター』と呼ばれる、特殊なステータスが存在しており、プレイヤーのスタミナの回復に対して影響を与える。

 

人間と同じように食事を取ることで回復し、逆に空腹になり過ぎれば、回避や移動といった様々なアクションに支障が現れるようになり、パラメーターが0になれば次第に体力が減少、最終的には底を着いて餓死に至るのだ。

 

「時間が時間だからか、モンスターが狂暴に成りつつあるっぽい?どうにも、血気盛んに俺を狙ってるみたいなんだが?

 

まぁ…コイツの初陣を飾るには上々だな」

 

そう言葉を溢しつつ、右手には巌喰らいの蚯蚓(ガロックワーム)の素材を使い、創り上げられたユニーク武器・ロックオンブレイカーの青い脈筋が光り、左手の白鉄の短刀は白刃が揺れて、どちらも次なる獲物を求める様に光っている。

 

ペッパーは地図を頼りに最速最短距離を走り続け、途中レベルが2つ上がる嬉しいサプライズが有りながら、太陽が地平線の彼方へと沈む寸での頃、漸く跳梁跋扈の森の果ての渓谷にして、セカンディルへと繋がる吊り橋の付近に到着する。

 

「時間は…流石に夜になるか。早く渡りた――――!」

 

そんな彼の前に立ち塞がったのは、橋の入口で蜷局(とぐろ)を巻いて、頭と尾先に白毛を囃し、頭の白毛には髪止めのような赤い宝石で結んで着飾った、巨大な大蛇が1匹。

 

ペッパーの存在に気付くや、長く先端が二股に分かれた舌を伸ばし、毒蛇特有の鳴き声で此方を威嚇してくる。

 

跳梁跋扈の森のエリアボス・貪食(どんしょく)大蛇(だいじゃ)

推奨レベル10の、推奨人数3人以上の巨大モンスターだ。

 

「………此方もあんま悠長に出来ないからな。さっさと倒して橋を渡らせて貰うぞ、ヘビ公!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリアボスという事で警戒してはいたのだが、ペッパーは思った以上に『肩透かし』を食らっている。

 

敵は確かに強い。エリアボスというだけあり、身体に纏う鱗は硬く、まともに攻撃が通るのも頭だけと、普通なら苦戦する。

 

(やっぱり、巌喰らいの蚯蚓との戦いで得た経験が生きてるな…!)

 

巨体による突進、丸呑み攻撃、薙ぎ払い――初見であれば確かに苦戦を強いられる。だが、彼はそうならなかった。其れは此の大蛇以上のデカブツと、命を取り合う死線を越えたからだろう。

 

経験と知識、2つの要素が歯車と歯車が噛み合い、強大な畝りに変わるように、ペッパーの斬擊と打撃は次々と貪食の大蛇に直撃する。

 

『垂直』に『水平』に白鉄の短刀で巨体に纏う鱗を裂き、スキル『剛擊』で肉質が変化した場所を叩きながら、彼は大蛇相手に立ち回る。

 

「よし、このまま押し切るぞ!!!」

 

そう意気込んだ刹那、貪食の大蛇の尾先が僅かに震え、黒い何かが飛び出した。

 

「へ、わちょ!?」

 

突然の新技に対応が遅れ、ペッパーはまともに其れを受けてしまう。

 

「臭いくっさ!?糞でも引っ掛けられた!?」

 

思った以上に強烈な異臭で鼻が曲がりそうになる。と、ペッパーの体力(HP)バーが表示され、ピッという音と共に1減少。其の横に『毒』という一文字と、10秒毎に1ダメージを受けるという説明文が。

 

「………油断大敵、って訳か」

 

ペッパーの現時点の体力は残り9、つまり順当に行けば90秒後に体力は底を尽き、死亡する事になる。

 

「へっ…こういう時の為に、用意しといて正解だったな!」

 

そう言い、ペッパーは右手の白鉄の短刀の装備を解除し、アイテムインベントリから取り出したのは、ファステイアに辿り着いた時に購入していた解毒薬だった。

 

 

 

 




大蛇の毒牙を越えていけ
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