VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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サンラク&オイカッツォ、ユニークシナリオEX受注へ




プロゲーマーとクソゲーマーはセツナに出逢い、レトロゲーマーは嘗ての鎧を纏う

アーサー・ペンシルゴンのメールが着信してから四日後の夜。ユニークシナリオEX【此岸(しがん)より彼岸(ひがん)へ愛を込めて】を受注可能な、満月の日が再び訪れた。

 

兎御殿の休憩室のベッドで目覚めたペッパーは、ペンシルゴンへとEメールでログインした事を伝えていると、サンラクがログインしてきたので、千紫万紅の樹海窟へのルートを確認し合い、時間差を付ける形で各々の付き兎と共に、変装をしてからサードレマの裏路地を進んで街から脱出。

 

樹海の中をホルンマッシュルームや、苔が放つ仄かな緑の光を頼りに目的地に到着すると、其所にはペンシルゴンとオイカッツォ、そして何故かジト目でペッパーを睨み、其の手に黒と赤の異質な剣を握る、京極(キョウアルティメット)の姿が在った。

 

「やぁやぁ、ペッパー君。サンラク君。どうやらちゃんと撒いてきたみたいだね」

「てかペッパー、其の真っ黒コート何?中二病でも発症してるの?あと何で名前無いの?バグ?」

「胴装備でPKerやPK行為したら、即死&罰則の代わりにルールを遵守すれば、名前隠しが出来るオンリーワンの性能持ちのコート」

 

ペッパーの説明に、オイカッツォは歯軋りと共に「ユニークユニークユニーク……!」、サンラクは「クソ犬許さんクソ犬許さん……!」とブツブツ怨唆の声で呟き始めて。そしてペッパーは、京極の方に視線を変えて問い掛ける。

 

「で、何で此方を睨んでるのさ?京極は」

「ペッパーさぁ……最速走者(トップガン)と戦う前に、あの悪辣駝鳥に火口へ放り込まれたんだけどさ……君の事斬って良いかな?」

 

やっぱり其れかと内心溜息を付きながら、ペッパーは京極に警告として言った事を、もう一度正論と共にブチ当てにいく。

 

「一応警告したよな俺?あの悪辣駝鳥はプレイヤーを見付けると、ヤバい追跡をしてくるって。シャンフロのエネミー記事読まなかったの?アレ、敏捷スタミナの二極化した上級プレイヤーでも、逃げ切るのは簡単じゃないって書かれてたし」

「斬っても斬っても次から次にやって来るから、捜索出来なくなったんだよ……。取り敢えず、落下死した分だけ、君の事斬って良いよね?」

 

嗚呼、コレは駄目だわ。何度言っても話が一向に通じないし、イベントが進まないタイプだと、ペッパーは静かに確信。ペンシルゴンにアイコンタクトで救援要請を出しながら、京極へこう言った。

 

「取り敢えず悠久を誓う天将王装(フォーエヴァー・ウェザリオ)着させてやるから、怒りを静めてくれ京極。ウェザエモン討伐前にゴタゴタで、メンバー離散はしたくないんだよ」

「ふぅん………まぁ良いけど」

 

溜息一つを付いて赤黒い剣を仕舞い、京極が落ち着いた所で本題へ。ペンシルゴンが苔の壁の中の光っていない箇所を調べると、およそ一ヶ月前に見た隠し通路が現れる。

 

「懐かしいね…初めて知った時は、こんなの在ったんだって驚かされたよ」

「クリアしたエリアにこんなのが在ったとは……何かちょっと悔しい」

「RPGとかでも隠しエリア見付けたら、何時だってワクワクするわ」

「こんなのよく見付けたね、ペンシルゴン」

「私がコレを見付けたのって、必要なアイテムを取りに此のエリアに来た時だったからね。時間指定有りだから、偶然が重なっただけだよ」

 

隠し通路を歩いている最中に、サンラクがオイカッツォにユニーク自発出来ないマンだとか弄り始め、あわや通路で喧嘩が始まりそうになったので、ペッパーが割って入り、ペンシルゴンが宥める形で矛を治め。

 

通路を抜けて眼前に広がる彼岸花、サンラクは変装用に装備した頭装備の白頭巾を、何時もの鳥面に変更すると隠れていたエムルが現れて。面識の有るオイカッツォは軽く挨拶を、逆に喋るヴォーパルバニーが居た事に、ペンシルゴンと京極は、驚愕の表情と目を丸くする。

 

そんなやり取りをしている中、ペッパーも着替えるからとコートを少し捲ると、アイトゥイルが出て来た。ペンシルゴンとオイカッツォは一度面識が有るので軽い挨拶を、逆に初見の京極は再び目を丸くした。

 

と……

 

「サンラク、アレ………」

「!半透明のバグか何か…か?」

「いや何でバグが第一声になるし」

 

オイカッツォが指差す先、巨大な枯木に凭れ掛かるセツナの姿を五人は目撃する。彼女も此方に気付いたようで、優しい声と共に話し掛けてきた。

 

『あら……アーサー、ペッパー。久し振りね。其れに京極も……』

「やっほーセッちゃん、一ヶ月振り」

「セツナさん、御久し振りです。そして、こんばんわ」

「久し振りだね、セツナ」

 

ユニークシナリオEXを受注しているプレイヤー達に対する、セツナの反応なのだなと思いつつ、サンラクとオイカッツォの方を見ると、サンラクは鳥面に手を当てながらセツナの服装を見て考察をしており、オイカッツォはセツナに興味津々の様子である。

 

『今日の人達は……また違うのね』

「此方に居るのは、サンラク君とオイカッツォ君。此の二人もウェザエモンを張り倒す、最強のメンバーであり切札達。此の五人でウェザエモンを止めて見せるよ」

 

利き手を強く握り締めたペンシルゴン。思えば此処までレベリングに追われたりしながら、短期間で規定レベルまで到達したなと思っていると、セツナがサンラクとオイカッツォ、そしてペッパーを見つめて言った。

 

『凄いわね……『クロちゃん』の強い気配を二つも着けた人、私は初めて見たわ。其れに……『灰被りちゃん』の子供達と一緒だなんて……フフフ』

「?」

 

セツナが朗らかに笑う中、オイカッツォとペンシルゴンに京極が、アイトゥイルとエムルを見つめて。ペッパーとサンラクは、各々の兎を肩や頭に乗せながら、ペッパーはセツナの気になる言葉を考察し始めた。

 

(『灰被り』……?先生……もとい『ヴァイスアッシュ』の事だよな、セツナが言ったのって……。でも先生は『白色』の毛皮だった……。ゴリラには年老いる程に、毛並みが黒から白に変わる『シルバーバック』の様な現象が有るから、其れを指しているのか?)

 

『あぁ、気にしないで。ずっとずっと、ずっと昔の郷愁………。彼女(・・)はもう既に死んでしまっているけれど……貴方達のお陰で、懐かしい記憶を思い出せたわ。………ありがとう』

「どう、いたしまして……」

 

考察は程々にした所でペンシルゴンがセツナに、ウェザエモンの事をサンラクとオイカッツォに話して欲しいと言って、二人の前にはユニークシナリオEXの受注画面が表示。

 

二人がOKボタンを押して、受注を行うとセツナはウェザエモンの事を語り出し、五人は其れを静かに聞いた。最期にセツナが願うように、彼等彼女等に深々と頭を下げたのだった。

 

そしてペンシルゴンは此処からが本題とばかりに、セツナへ話を切り出す。

 

「セッちゃん……いえ、セツナ。今日は見て欲しい物が有るんだ」

『見て欲しい……物?』

 

セツナが疑問符を浮かべるように首を傾げて、ペンシルゴンがペッパーの方を向く。其れを合図として、ペッパーはアイテムインベントリから取り出した、悠久を誓う天将王装を一つ一つ、其の見に纏わせていく度にセツナの目は丸く、見開かれていく。

 

そして其の全てを纏った姿に成るペッパー。初見ではウェザエモンと見違えてしまう程、似通った部分も多い物の、然れど其れはウェザエモンに有らず。纏っているのはペッパーなのだ。

 

「ペッパー君が受け継いだ、悠久を誓う天将王装。私達も初めてコレを見せられた時は、ウェザエモンかと……セッちゃん?」

 

ペンシルゴンがセツナに話し掛けようとした時である。彼女の両目からは、大粒の涙がボロボロと零れ始め、胸に手を当てながら、泣き声と共に言葉を紡ぎ始めた。

 

『あぁ……あぁ……『桜の刺繍』。……『遠い過去に』セツナが、あの人の無事を、願って………付けた、セツナが好きだった『桜の花』……』

「セッちゃん!?大丈夫!?」

「おいおいおいおい、ペッパーがセツナを泣かせやがったぞ~????」

「いーけないんだ~、いけないんだ~。ペンシルゴンに殴られろ~」

「いーけないんだー、いけないんだー。サムライ装備ズルいペッパーくーん」

「オイ今さらっと私怨加えたよな京極?」

 

外道三人に好き勝手に言われまくるペッパー、セツナに寄り添うペンシルゴンと、秘匿の花園は一時的に混沌に陥った。

 

『ごめんなさい、アーサー……。あの人が纏っていた鎧を見たら、感窮まって泣いてしまったわ……』

「やっぱり、あの頑固者のウェザエモン由来の装備なんだね、悠久を誓う天将王装って……」

 

改めて此の一式装備は本当にヤバい存在だと、ペッパーはフルフェイスヘルメットの中で遠い目になっていると、セツナがペッパーを手招いて近くに来るよう、サインを送っている。

 

彼は近くに進み、彼女の前に立つと、セツナは言葉を紡ぎながら、桜の刺繍に手を伸ばす。

 

『ペッパー、其の鎧に秘められた力。此処に解き放ちます。そしてどうか、あの人に伝えてあげて。貴方は……もう十分に守ってくれた、本当に………本当に、ありがとう……と』

 

セツナの透明な両手が、天将乃胴鎧(テンショウノドウガイ)天照一清(アマテラスイッセイ)に掛けられた陣羽織の桜刺繍に触れた直後、ペッパーの目の前で此れまで封じられていた『ある能力の解放』を告げる、リザルト画面が表示された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『此処に時は満ちた!FCB【不屈之鎧(フクツノヨロイ)】が解禁されました』

『此処に時は満ちた!FCB【天王招来(テンオウショウライ)】が解禁されました』

『此処に時は満ちた!FCB【晴天結実(セイテンケツジツ)】が解禁されました』

『伝説を超えよ!轟斬型(ゴウザンガタ)太刀式(タチシキ)武装(ブソウ):大天咫(オオテンタ)の専用スキル【破天光(ハテンコウ)】が解禁されました』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(FCBが解禁された…!此れで天王を呼び出したり出来るし、使用感をちゃんと確認出来る。というか、大天咫にも専用スキルが有ったのか……名前が破天光?破天荒じゃないの?何か意味有りなスキルだな……?)

 

「任せてよ、セッちゃん。私達が必ず、あの頑固者のウェザエモンを倒して、安心出来るようにしてあげるから!」

 

右手で拳を作り、溌剌とした表情で宣言したペンシルゴン。其れを見たサンラク・オイカッツォ・京極の三人は目を合わせつつ、各々が声を出す。

 

「オイオイ見たか?オイカッツォ、京ティメット」

「見た見た、アレって本当にペンシルゴン?」

「普段相手を陥れる事に関して、嬉々としてやってるペンシルゴンが………ねぇ?」

 

セツナを前にして言い切ったペンシルゴンに、外道三人が言い始める。

 

「円卓では敵を誘き寄せる為に、NPCの王様を生き餌にして馬車で引き摺り回したり…!」

「NPCのお姫様をシャンデリアに吊るして、他のプレイヤーが城に入った所を、闇討ちにする餌にするとか…!」

「敵対クランを倒すために別クランに情報リークして、疲弊した所を纏めて漁夫の利してたり……!」

 

ボロクソかつ好き勝手に言いまくる三人に、ペンシルゴンの頭の後ろに怒りのマークが浮かぶのが見えたペッパーは、アイトゥイルとエムルを抱えて其の場からソロリ…ソロリ…と退避していく。

 

「NPCと談笑しているじゃないか…!遂に、遂に人の心を取り戻したと言うのか…!?」

「コレガ…キモチ、コレガ……ココロ……?」

「いやはや……こんな一面が見られるとは。此の僕でさえ見抜けなんだ……」

 

ブチリと明らかにキレた音と共に、花園に爆発と稲妻が迸る。ペンシルゴンの手には轟雷大槍グラダネルガが握られ、彼女は大層な御立腹である。

 

「流石に失礼過ぎないかなぁ~、君達さぁ……?レベルカンストの恐怖と共に、グラダネルガの実験台にしてあげようかぁーーーーーーー!!!!!」

「わぁ!?待って待って、雷纏いながらの攻撃は卑怯でしょ!?」

「今ので瀕死に成ったから、PKは勘弁!カッツォ犠牲になれ!?」

「許すわけねーだろが、お前が死ねぇサンラクゥ!?」

 

ギャーギャーワーワーと大混乱になる様を見ながら、はぁ……と溜息を付くペッパーと、彼の両肩に乗る形であわわ顔で見守る、エムルとアイトゥイル。

 

暫し経って追い掛け回された三人が、ペンシルゴンに服従のポーズをした事で、漸く落ち着いた彼女はセツナを見て言った。

 

「セッちゃん……セツナはこう、何て言うか……背景的に、他人のように思えなくて……。ッ~~~!えぇ、そうですよ!私だって本気でゲームに感情移入しちゃったりする事が有るんですよー!?」

 

恥ずかしくなったのか、正直な気持ちを白状したペンシルゴン。其れを聞き届けたサンラク・オイカッツォ・京極の三人はニヤリと笑い、そして言った。

 

「ゲームで本気なる?大いに結構だろ。何事も本気と全力で取り組んだ方が、絶対に楽しいに決まってら!」

「そうそう。ゲームって、誰よりも楽しんだ奴の勝ちなんだし。と言うのか俺は、其れで飯を食ってるしね」

「僕もウェザエモンにはリベンジしたいし、一人の剣士としてアイツに挑みたい。こうしてリベンジの機会が巡って来た訳だし、全力で勝ちに行きたいから」

 

動機は各々、然れど見据える目標は同じ。其れを見てペッパーはコクコクと頷きながら歩み寄り、ペンシルゴンは笑って言った。

 

「アハハハハ……!あぁ、そうだった。君達()大概大馬鹿だったね」

「ペンシルゴン。俺達全員、ウェザエモンに勝つために集まったんだ。本気の一発勝負、勝ちに行こうぜ」

 

皆自然と右手が拳を握っていた。突き出す拳が拳と触れて、ペンシルゴンが音頭を取る。

 

「相手は此迄、誰にも討伐出来なかった七つの最強種、墓守のウェザエモン。けれど君達が居れば、必ずアイツに勝てる。アイツを超えられる。本気で戦い、勝ちに行こう━━━━!」

 

此処にウェザエモン討伐への意志は固まり、其の時に備えて最期の仕上げに、各々取り掛かるのであった━━━!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「其れは其れとして、サードレマの蛇の林檎で作戦会議ね。ペッパー君の天将王装の装備を京極ちゃんが試すのを踏まえてさ」

「「「「アイアイサー」」」」

 

 






セツナの遺志、解禁される真なる力


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