ウェザエモン戦を前に、問題発生
サードレマ・蛇の林檎。千紫万紅の樹海窟・秘匿の花園より帰還して、裏路地を使いこなしながら現地集合をした五人は、店のマスターの案内によってVIP対応の部屋にて、墓守のウェザエモン討伐に向けた話し合いを開始する。
「さてと……話し合いの前に、先ずはペッパー君と京極ちゃんの要件を解決しようか」
「
「そうだね、さぁさぁ早く出してペッパー君」
待ち望んだ物事を手にするのを急かすように、誕生日プレゼントの包装紙を開けて中身を見ようとするように、ユニーク
ペッパーはアイテムインベントリから一式装備、悠久を誓う天将王装を取り出して、彼女の前へと置いた。
「さてさて、ウェザエモン由来の装備『ブブーッ』………は?」
フルフェイスヘルメットを手に取り、いざ装備と思った矢先、京極に叩き付けられたのは『装備出来ません』を報せるSEであり。
「おい、京ティメット何があった?」
「どうしたの、京極ちゃん?」
「もしかしてステータス充たして無かった?」
サンラク・ペンシルゴン・オイカッツォが聞いてくる中、京極はペッパーに悠久を誓う天将王装を返して、衝撃の事実を口にしたのだ。
「……………悠久を誓う天将王装、これ………『男性用装備』なんだけど」
「「「「……………は????」」」」
ユニーク
一式装備の全てを其の身に着ければ、全種装備による固有能力が働き、装着者は一騎当千に等しき力を手に入れられる。
だが、京極が装備しようとした所で此の一式装備……もとい七つの最強種を模倣した、ユニーク遺機装の持つ『装備条件』が開示された。
「まさか……悠久を誓う天将王装が『男物の装備』だったとはね……。ペッパー、君の事斬り殺して良いかな?良いよね?答えは聞かないけど」
「俺だって始めて知ったよ!?ってか何で男しか着られないんだ、訳が解らん……」
「へいへい京極ちゃん、落ち着こうぜ?此処で流血沙汰起こしたら、唯でさえ肩身狭いPKerの休める場所が減っちゃうよ~?」
赤黒い剣を握って斬らんと迫ってくる京極を、ペンシルゴンが両脇を押さえる形で止めつつ、ペッパーは悠久を誓う天将王装を全身に装備し、万が一斬り掛かって来た時に備えてる。
とはいえ、ユニーク遺機装・悠久を誓う天将王装に性別限定装備という、特殊な条件が存在していた事を知らなかったのは事実であり。同時にペッパーの脳内では、新たな仮説が産み出され始めていた。
(女性アバターの京極が装備出来なかったって事は、もし仮に
いやまさか、ユニーク遺機装は各々模倣したり由来したユニークモンスターの『性別』で、装備出来たり出来なかったりするって事か?
じゃあ『夜襲のリュカオーン』は、ライブラリの情報が正しいとするなら『雌』だから、其のユニーク遺機装は『女性』じゃないと装備出来ない的な………?
えっ、此のゲーム『性別』変える手段無くない……?どうやって『女性装備』着けるの?仮にユニークモンスターの半分が女だったら、半分は装備出来なくなるじゃん……。いやマジかよ……ゲットしても着れないんじゃ意味ないじゃん………)
七つの最強種達が、一体どのような性別分配をしているかは解らないが、仮に其の予測が正しけば男性アバターの自分には、全て探し当てたとしても、其の半数が装備出来ない問題に直面する事になる。
そして問題は『もう一つ』。
「…………あれ?ちょっと待てよ」
「おい、まさかとは思うけど……」
「サンラクとオイカッツォ、気付いたか」
「え、何どういう事?」
サンラクとオイカッツォが事の重大さに気が付いて、ペンシルゴンが京極を宥めながら二人に聞いてくる。
「えっと、ペッパーが着ているSFサムライアーマーは、男物だから男性にしか装備出来ない訳じゃん」
「うん、そうだね」
「カッツォとペンシルゴン、そして京ティメットは女性アバター。そして俺は、胴と脚に装備が付けられない」
「……………そういうこと?」
二人共に頷いて、サンラクがペッパーの装備を指差しながら、事実を言ったのである。
「現状、其のアーマーを全部纏って能力を十全に発揮出来るのが、ペッパー
そう━━━━━ユニーク遺機装が、一式完全装備と性別限定装備という条件によって判明した、もう一つの問題点。
討伐メンバーの中で、男性アバターなのはペッパーとサンラクの二名だけ、更にサンラクはリュカオーンの
消去法で片手が使えずとも、一式装備を装着出来る+大天咫を振るう事が出来るのは、五人の内でペッパー以外存在しないのだ。
「まぁ何が言いたいかというとだな、京ティメット。此処でペッパーをキルして、其れが原因で『シャンフロ引退する』なんて事になったら、戦力大幅ダウン所の話じゃ済まねぇ事態になる」
「ウェザエモン攻略を行う以上、ペッパーの『読みと思考能力』は必要だし、何より一式装備は此の戦いじゃ不可欠だよ。直前ドタキャンで降りられちゃ、此方は堪ったもんじゃないよ」
内ゲバなんぞ起こそう物なら、最悪詰みに直結しかねない。サンラク・オイカッツォの二人が警戒しているのは正に其れであり、此処で京極がやらかせば一生掛けて怨み殺すと、無言の殺意を決め込みながら。
「ぐっ………はぁ、解ったよ。ウェザエモンを討伐出来なくなるのは、僕だって非常に困る。………ので、君を殺すのは我慢してあげる」
絶対何処かでキルしに来るんだろうなぁと、京極に対する警戒心を残しながらも、ペッパーは四人を見る。
「さて、話は脱線したけど話し合いをしよう。先ずは第一段階のウェザエモン単体、此れはサンラク君と京極ちゃんを中心に置きつつ、ペッパー君とオイカッツォ君、そして私が二人の補助を担当する。ウェザエモンの超速攻撃に対応出来得るサンラク君と、実際に戦闘経験有りの京極ちゃん。第一段階は二人の立ち回りが、文字通り鍵を握ってるから頼んだよ」
ウェザエモン相手に10分持ちこたえる。耐久戦は柔道に似通っており、普通に勝つ以上に苦しく、そして難しいとされている物だ。
「任せろ、キッチリ持ちこたえてやるよ」
「腕が鳴るね」
最強を相手に耐久戦を行う役目に、サンラク・京極共にやる気充分の様子だ。
「第二段階に突入したら、補助役だったカッツォ君が麒麟を相手にロデオで動きを封じつつ、私はカッツォ君の補助に入る。そして第二段階では、ペッパー君が全体を見通してアイテムの投入や、状況報告を行う担当に入る。全体を見通しながら、常に状況に応じたアイテム選択をしないといけない、正直かなりキツイけど━━━━やれる?」
「麒麟がデッカイロボットホースだろうと、ちゃんとロデオしてみせるよペンシルゴン」
「任せろ。レトロRPGの操作キャラ最大10人全体の状態チェックや、体力マナの管理で嫌という程経験してきたんだ。今更そんな事でビビるかよ」
此処まで力強く答えてくれると、寧ろ逆に安心出来る自分が居る。
「…………よしッ、じゃあ皆。ウェザエモン攻略、頑張って行こう!」
「「「「応ッッッッッ!!!!」」」」
担当は決まった、何を成すかも解った。必ず勝ってみせる………!ペンシルゴンを含め、此処に居る五人は改めて、其の意志を確固たる物としたのである……。
纏いし切札、使えるは唯一人のみ