ペッパー 対 オーバードレス・ゴーレム
去栄の残骸遺道エリアボス、オーバードレス・ゴーレム。エリアの名前を彷彿とさせる姿と、降り注ぐ瓦礫とガラクタの雨を、加速力と敏捷を時間経過と共に高めて行く『
「侵入経路は三ヵ所、攻撃感覚はクレーン一本の叩き付けが約10秒毎に一回ずつ、瓦礫の放り投げも同様……タイミング、よし今ッ!」
名匠ビィラックの育成によって、更なる強靭な刀身を得た
秘奥到達前が『敵の背後にヘイトを移す虚影の斬撃』であるのに対し、秘奥に到達した此のスキルは『敵のヘイトを其の場に置き去りにする分身生成』へ成長。実際に計算した所、此の分身は『およそ8秒間』持続する。
タイミングを調整し、ペッパーは登山ルートの一角よりセルタレイト・ケルネイヤーと
更に重ねたスキルの最後に使う事で、其の継続時間と補正を高める『デュアルリンク』による補強を加えて、地面より跳躍するや残骸とガラクタで出来た、オーバードレス・ゴーレムの身体を高速で登っていく。
「3…2…1…ウツロウミカガミの効果終了。攻撃来る前に、更に登って距離を稼ぐ!」
タイマーアプリを横目に、ウツロウミカガミの効果時間を把握。同時にスキルレベル×3歩、発動者は空中歩行が出来る『フローティング・レチュア』。スキルレベルに応じてスタミナの残存量に比例し、プレイヤーの移動量を高める『ムーヴセドナ』。ステップを掛ける度に、移動速度・加速力を大幅に上昇させる『アクセラレート・ステップ』の起動で、空中をステップ。
一歩で振り下ろされるアームを躱わし、二歩目で飛んできた瓦礫を
「ホイールの真下、此処だ!オーバードレス・ゴーレムの『核』が在る場所ッ!」
着地前に『
刀武器スキルで自身の筋力・敏捷を参照する『
「斬りッッッッ裂くッッッッッ!!!」
ペッパーは黒鉄丸をインベントリに仕舞い、即座に
其所へ駄目押しとばかりに、自身の高潔度によってステータスを追加する『
「此れでッ………最後!!!」
迫り来るクレーンをバク転で回避し、空中に放り出された己の身体を二段ジャンプたる『スカイウォーカー』で整え。効果が残されたバフの中、ペッパーの身体は空中を飛んで。
全身全霊全力全開の横一閃の翡翠の光が走り、武器特性によって裂傷と帯電のデバフが入った傷口に刀身が入り、風と雷の融合と致命の秘剣が、オーバードレス・ゴーレムの核を遂に両断する。
「オーバードレス・ゴーレム。巨大ボスに相応しい体力に振り下ろされる強大な攻撃技、後半エリアに相違無い素晴らしい相手だった!」
巨体を、瓦礫を、ガラクタを。其の身一つで構成していた、オーバードレス・ゴーレムのポリゴンは、爆発四散を遂げて。
「あ~…討伐した後の着地を考えて無かったな」
現時点のペッパーはオーバードレス・ゴーレムの崩壊した身体から、シャンフロが誇りし物理エンジンに従い、空中から地面に目掛けて落下している。此のままでは物理エンジンによる、落下死と言う名のプレイヤーもNPCも、そしてモンスターも等しく殺す死刑判決が適応されてしまうだろう。
かといってレディアント・ソルレイアを装備し、空中浮遊を万が一にも見られて、胡椒争奪戦争にコメントが記載されれば、其れこそ収拾が付かなくなる。
「危険だが…アレを使うか……!!ええぃ、いざ参らんッ!!」
迫る地面に向けて、空中で足裏を向け。着地に備えながら、ペッパーは『プレジデントホッパー』を起動する。
此のスキル、本来ならば落下死と言う物理エンジンの死刑宣告に対し、一定の高さから落下+着地時に足裏が地面に接地している場合に限り、其の落下ダメージを次の跳躍時に跳躍力へと変換出来るスキルなのだ。
其れを活かす為、ペッパーは『ゲニウス・チャージャー』を使って空中での姿勢制御を行いつつ、出来得る限り自身が真っ直ぐに落ちるようにして、更に
(ビビったら負けだ、ビビったら負けだ、ビビったら負けだ!やってやるぅぅぅぅぅぅ!)
着地と同時に本来なら襲い来る筈の衝撃が来ず、足裏から脚全体にスキルエフェクトが纏う。確認次第、向きを調整し僅かな力で跳ねてみれば、遮那王憑きでも使ったかの様な、とんでもない力が発揮されて、ペッパーの身体はエリアボスのコロシアムから、イレベンタルへと続く出口方向にかっ飛んで行く。
「そりゃあんな高さから落ちたのを、跳躍力に変換したらこうなるよねぇえええええ!?!?」
身体を捻って、甲皇帝戦脚の爪先部分を構成するクアッドビートルの角と、風神刀【碧千風】を地面に刺してブレーキ。武器防具共に耐久値がゴリッゴリに減らされるが、下手をすれば石にぶつかってシミになっているかも知れなかったので、勘弁して欲しい。
結果として甲皇帝戦脚は残り耐久値が3/8、碧千風に至っては1/10まで減ってしまい、武器変更推奨アラートが鳴ったが、ペッパーは何とか落下死を覆す事に成功して。 同時に『条件達成』による解放を告げる、ウィンドウ画面が表示された。
『修練は此処に結実す!』
『
「…………よしっ!致命極技獲得成功!取り敢えず、碧千風と甲皇帝戦脚をインベントリに収納して、オーバードレス・ゴーレムのドロップアイテムを回収しよう」
風神刀【碧千風】並びに、甲皇帝戦脚の装備を解除。かっ飛んで行った分の距離を走って戻り、再びオーバードレス・ゴーレムが居た場所に到着。周囲を見渡してみると、円状フィールドの中心地点にウィンドウが見えており、近付いてみると其所には『偶像』が一つ落ちていた。
其の偶像は『四匹の巨大な蛇を従えた中学生程の背丈をした女の子』の姿をし、髪の質感や表情の細部に至るまで、現代のフィギュア造形にも匹敵し得る魂が込められた、まさに逸品と呼ぶに相応しい出来栄えで。
ペッパーは早速、此の偶像をインベントリに入れて、名前をチェックする。
其れは始まりの
無尽の偶像より発せられ、存在を拒絶する気配は、其の存在の興味を引き、重力の如く惹き寄せる。然れども、其れと相対する者在るならば、其の存在を退ける力と成るだろう。
レアな偶像の気配漂うフレーバーテキストに、ペッパーはワクワクしながら、休憩がてら偶像を暫く眺めて。そしてアイトゥイルが迎えに来る10分前に、エイドルトで待っている彼女の元に戻るべく、去栄の残骸遺道をUターンして行ったのだった。
此の時、彼は知らなかった………。
オーバードレス・ゴーレムのドロップアイテムたる偶像が、まさか『
切札は此処に揃い、後一つの確認のみ