VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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ペッパー 対 オーバードレス・ゴーレム




切り開くは刃、強者を倒す輝き

去栄の残骸遺道エリアボス、オーバードレス・ゴーレム。エリアの名前を彷彿とさせる姿と、降り注ぐ瓦礫とガラクタの雨を、加速力と敏捷を時間経過と共に高めて行く『激走奮迅(げきそうふんじん)』に、平地でも高い加速力を発揮する『ホライゾン・メロス』で置き去りにしながら、ペッパーは天を見上げ。核となる脳天部分へと上がるルートを思考する。

 

「侵入経路は三ヵ所、攻撃感覚はクレーン一本の叩き付けが約10秒毎に一回ずつ、瓦礫の放り投げも同様……タイミング、よし今ッ!」

 

名匠ビィラックの育成によって、更なる強靭な刀身を得た黒鉄丸(くろがねまる)改九を振るい、ペッパーがルート突入直前に『スキル』を発動する。致命刃術(ヴォーパルじんじゅつ)水鏡(すいきょう)(つき)】の鍛練を続け、壱式より始まり玖式を超えた事で到達した『致命秘奥(ヴォーパルひおう)【ウツロウミカガミ】』。

 

秘奥到達前が『敵の背後にヘイトを移す虚影の斬撃』であるのに対し、秘奥に到達した此のスキルは『敵のヘイトを其の場に置き去りにする分身生成』へ成長。実際に計算した所、此の分身は『およそ8秒間』持続する。

 

タイミングを調整し、ペッパーは登山ルートの一角よりセルタレイト・ケルネイヤーと遮那王憑(しゃなおうつ)き、アンブレイカブル・ソウルより進化し、発動時間は90秒と据え置きだが、筋力・敏捷・スタミナの上昇数値を2.5倍とし、発動中に自身が敵の攻撃を受けて、体力が全損して死亡した瞬間に『戦闘中1度だけ』、体力を半分回復させて『自己蘇生』を可能にする『戦王の煌心(プライマス・ハート)』を起動。

 

更に重ねたスキルの最後に使う事で、其の継続時間と補正を高める『デュアルリンク』による補強を加えて、地面より跳躍するや残骸とガラクタで出来た、オーバードレス・ゴーレムの身体を高速で登っていく。

 

「3…2…1…ウツロウミカガミの効果終了。攻撃来る前に、更に登って距離を稼ぐ!」

 

タイマーアプリを横目に、ウツロウミカガミの効果時間を把握。同時にスキルレベル×3歩、発動者は空中歩行が出来る『フローティング・レチュア』。スキルレベルに応じてスタミナの残存量に比例し、プレイヤーの移動量を高める『ムーヴセドナ』。ステップを掛ける度に、移動速度・加速力を大幅に上昇させる『アクセラレート・ステップ』の起動で、空中をステップ。

 

一歩で振り下ろされるアームを躱わし、二歩目で飛んできた瓦礫を致命舞術(ヴォーパルまいじゅつ)月光円舞(げっこうえんぶ)】で三歩目を踏んで、ありったけの力を籠めて跳躍し、ペッパーは目的地へと到着した。

 

「ホイールの真下、此処だ!オーバードレス・ゴーレムの『核』が在る場所ッ!」

 

着地前に『凪静水面(なぎしずむみなも)』を発動。高まった心拍数を正常に戻し、クリティカル時には装甲破壊効果を乗せる、刀・直剣系スキル『儷紲一剣(れいせついっけん)』、自分よりもあらゆる要素で勝るエネミーに対し、全ステータスに5%のバフを追加する『英傑之呼応(ヴァンガート・グレイトフル)』と共に、黒鉄丸を鞘へ納刀。

 

刀武器スキルで自身の筋力・敏捷を参照する『速刃(そくじん)雨払(あめばらい)】』、同じ武器種スキルで技量・器用を参照する『居合(いあい)切翼(きりつばさ)】』。逆手で繰り出すと強大なダメージ補正が追加される『マチェット・サイサリス』、自身と戦っている(エネミー)の数が少ない程にダメージボーナスが入る『烈光仙迅(れっこうせんじん)』で、逆手横一文字の『斬覇撃』と化した一閃と共に、オーバードレス・ゴーレムの核を守る残骸を一刀で切り開き。

 

「斬りッッッッ裂くッッッッッ!!!」

 

ペッパーは黒鉄丸をインベントリに仕舞い、即座に風神刀(ふうじんとう)碧千風(そうせんふう)】へ変更し、切り口に目掛けて十連続膾切りたる『連刀十刃(れんとうじゅっぱ)』、同じ箇所に斬撃ダメージが入る度にクリティカルとダメージ補正が働く『罰斗斬(ばつとざん)重連(ツラネカサネ)】』に、筋力・技量・スタミナを参照する『ファイティングスラッシュ』。

 

其所へ駄目押しとばかりに、自身の高潔度によってステータスを追加する『纐纈戦々(こうけつせんせん)』。高潔度を参照としてダメージ補正が働く『エクシリア・スライサー』に、斬撃ダメージが入る度に威力を上昇していく『ミッシングブレイド』の、ありったけの斬撃スキルの十連撃を、開かれた切り傷へ碧千風の特性と共に刻み込み。

 

「此れでッ………最後!!!」

 

致命剣術(ヴォーパルけんじゅつ)の修練の結実、ウツロウミカガミと共に秘奥へと到達し、直前の斬撃軌道と誤差が無い程、正確無比に(なぞ)る程、クリティカルとダメージの双方の補正に、高いボーナスが追加される『致命秘奥(ヴォーパルひおう)【タチキリワカチ】』。

 

迫り来るクレーンをバク転で回避し、空中に放り出された己の身体を二段ジャンプたる『スカイウォーカー』で整え。効果が残されたバフの中、ペッパーの身体は空中を飛んで。

 

全身全霊全力全開の横一閃の翡翠の光が走り、武器特性によって裂傷と帯電のデバフが入った傷口に刀身が入り、風と雷の融合と致命の秘剣が、オーバードレス・ゴーレムの核を遂に両断する。

 

「オーバードレス・ゴーレム。巨大ボスに相応しい体力に振り下ろされる強大な攻撃技、後半エリアに相違無い素晴らしい相手だった!」

 

巨体を、瓦礫を、ガラクタを。其の身一つで構成していた、オーバードレス・ゴーレムのポリゴンは、爆発四散を遂げて。致命魂(ヴォーパルだましい)腕輪(うでわ)を装備しながらも、後半エリアのボスだけありレベルアップを果たしたペッパーだったが、只今問題に直面していたのだ。

 

「あ~…討伐した後の着地を考えて無かったな」

 

現時点のペッパーはオーバードレス・ゴーレムの崩壊した身体から、シャンフロが誇りし物理エンジンに従い、空中から地面に目掛けて落下している。此のままでは物理エンジンによる、落下死と言う名のプレイヤーもNPCも、そしてモンスターも等しく殺す死刑判決が適応されてしまうだろう。

 

かといってレディアント・ソルレイアを装備し、空中浮遊を万が一にも見られて、胡椒争奪戦争にコメントが記載されれば、其れこそ収拾が付かなくなる。

 

「危険だが…アレを使うか……!!ええぃ、いざ参らんッ!!」

 

迫る地面に向けて、空中で足裏を向け。着地に備えながら、ペッパーは『プレジデントホッパー』を起動する。

 

此のスキル、本来ならば落下死と言う物理エンジンの死刑宣告に対し、一定の高さから落下+着地時に足裏が地面に接地している場合に限り、其の落下ダメージを次の跳躍時に跳躍力へと変換出来るスキルなのだ。

 

其れを活かす為、ペッパーは『ゲニウス・チャージャー』を使って空中での姿勢制御を行いつつ、出来得る限り自身が真っ直ぐに落ちるようにして、更に甲皇帝戦脚(エクスパイド.ウォーレッグ)改五を纏って脚部の耐久値其の物を引き上げる。

 

(ビビったら負けだ、ビビったら負けだ、ビビったら負けだ!やってやるぅぅぅぅぅぅ!)

 

着地と同時に本来なら襲い来る筈の衝撃が来ず、足裏から脚全体にスキルエフェクトが纏う。確認次第、向きを調整し僅かな力で跳ねてみれば、遮那王憑きでも使ったかの様な、とんでもない力が発揮されて、ペッパーの身体はエリアボスのコロシアムから、イレベンタルへと続く出口方向にかっ飛んで行く。

 

「そりゃあんな高さから落ちたのを、跳躍力に変換したらこうなるよねぇえええええ!?!?」

 

身体を捻って、甲皇帝戦脚の爪先部分を構成するクアッドビートルの角と、風神刀【碧千風】を地面に刺してブレーキ。武器防具共に耐久値がゴリッゴリに減らされるが、下手をすれば石にぶつかってシミになっているかも知れなかったので、勘弁して欲しい。

 

結果として甲皇帝戦脚は残り耐久値が3/8、碧千風に至っては1/10まで減ってしまい、武器変更推奨アラートが鳴ったが、ペッパーは何とか落下死を覆す事に成功して。 同時に『条件達成』による解放を告げる、ウィンドウ画面が表示された。

 

 

 

 

 

 

 

 

『修練は此処に結実す!』

致命極技(ヴォーパルヴァーツ):太刀型(たちがた)晴謳(ハレウタイ)】を習得しました』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………よしっ!致命極技獲得成功!取り敢えず、碧千風と甲皇帝戦脚をインベントリに収納して、オーバードレス・ゴーレムのドロップアイテムを回収しよう」

 

風神刀【碧千風】並びに、甲皇帝戦脚の装備を解除。かっ飛んで行った分の距離を走って戻り、再びオーバードレス・ゴーレムが居た場所に到着。周囲を見渡してみると、円状フィールドの中心地点にウィンドウが見えており、近付いてみると其所には『偶像』が一つ落ちていた。

 

其の偶像は『四匹の巨大な蛇を従えた中学生程の背丈をした女の子』の姿をし、髪の質感や表情の細部に至るまで、現代のフィギュア造形にも匹敵し得る魂が込められた、まさに逸品と呼ぶに相応しい出来栄えで。

 

ペッパーは早速、此の偶像をインベントリに入れて、名前をチェックする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無尽(むじん)偶像(ぐうぞう)

 

其れは始まりの(いち)であり、其れはありとあらゆる蛇達の母であり、そして森羅万象をも憎みし、最強たる女王の御姿を示す。

 

無尽の偶像より発せられ、存在を拒絶する気配は、其の存在の興味を引き、重力の如く惹き寄せる。然れども、其れと相対する者在るならば、其の存在を退ける力と成るだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

レアな偶像の気配漂うフレーバーテキストに、ペッパーはワクワクしながら、休憩がてら偶像を暫く眺めて。そしてアイトゥイルが迎えに来る10分前に、エイドルトで待っている彼女の元に戻るべく、去栄の残骸遺道をUターンして行ったのだった。

 

此の時、彼は知らなかった………。

 

 

 

 

 

 

 

オーバードレス・ゴーレムのドロップアイテムたる偶像が、まさか『七つの最強種(ユニークモンスター)』の一角を担う存在である等と。

 

 

 

 






切札は此処に揃い、後一つの確認のみ


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