決戦最終準備
遂に此の時が訪れた…………と、昔のアニメやら映画やらで、予告に使われる常套句が頭に流れる。しかしながら、本当に遂に此の時が訪れた━━━なのだ。
思い返せばシャンフロを始め、特殊クエストを受注し。夜襲のリュカオーンに会敵してから、永遠との再会とユニークシナリオの受注。様々な事が起きて、シャンフロの掲示板に載る程の有名っぷり。本当に色々有った。
「いよいよ今日の8時……か」
バイトを終え、傾く日の光射し込むハンバーガーチェーン店で、梓は早めの夕食を取りつつ、時間を確認する。
サンラク・オイカッツォが、ユニークシナリオEX【此岸より彼岸へ愛を込めて】を受注してから二週間。レベリングや武器防具の強化を重ね、皆各々がやるべき事を成すべき事をやって来た。
勝っても負けても、一度っきりの大勝負。ペンシルゴンがメールで、口頭で言った言葉を思い出しながら、梓はシャンフロwikiを覗き、アイテムの一覧を見つめる。
「ふっ……今の俺の懐はホクホクしてるんだ。ドカンって使ってやろうじゃないの」
金は貯蓄するのも大事だが、同時に大きく使う為に有る。億越えのマーニで『あるアイテム』を購入する事を決めた梓は、ハンバーガーを食べ終えてバスに乗って、アパートの近くのバス停で降り、自室に帰宅。
手洗いとうがい、シャワーで汗を流して寝間着に着替え、水分補給を済ませる。布団を敷いて、機材チェックに、水分補給用のペットボトルを用意。
玄関の戸締りを行い、窓の空き具合を調節。VRソフトを便秘からシャンフロへとチェンジし、夕焼けに染まる部屋の中で、梓は寝転がって神ゲーへとログインする。
アーサー・ペンシルゴン………天音 永遠との約束を果たす為に、ペッパー……梓は戦うのだ。墓守のウェザエモンを倒す為に。
午後5時。兎御殿の休憩室、ベッドより目覚めたペッパーは呼吸を整える。
「ペッパーはん、こんにちわなのさ!」
「やぁ、アイトゥイル。こんにちわ」
そんな折、アイトゥイルが休憩室の窓から顔を出して、此方に跳ね寄ってくる。
「今日なのさね、ペッパーはん」
「うん。今日の夜に」
心配そうに見つめるアイトゥイルに、微笑み掛ける形で安心させたペッパーは、墓守のウェザエモンに挑む自身のステータスを確認した。
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PN:ペッパー
レベル:53
メイン
サブ
体力 35 魔力 10
スタミナ 110
筋力 110 敏捷 110
器用 75 技量 75
耐久力 51 幸運 50
残りポイント:21
装備
左:無し
右:リュカオーンの
両脚:無し
頭:蒼零のヴォージュハット(耐久力+13)
胴:ブラッディスカーの長ラン(耐久力+18)
腰:ブラッディスカーのベルト(耐久力+12)
脚:蒼零のスートズボン(耐久力+15)
アクセサリー
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・旅人のマント(耐久力+2)
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所持金:631,970,000マーニ
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致命極技
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致命武技
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スキル
・マチェット・サイサリス
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・セツナノミキリ
・スワロスキースロー
・ライトニング・シャーレ
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・アクセラレート・ステップ レベル8
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・ホライゾン・メロス レベル7
・アドバンスト・フィンガー レベル4
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・プレジデントホッパー
・ホップスウイング
・エクステンド・オーレイズ
・クロスインパクター
・セブニッシュフリップ
・シーヴァル・ディーバ
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・イモータルヴァーツ
・ブレイク・セリオン
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・デュアルリンク レベル8
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・ベラスティ・ニー
・ジェスター・タロス
・ファイティングスラッシュ レベル5
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・レコメンド・スート
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・アイズオブセスティ
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・セルタレイト・ケルネイアー
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・イグナイトブレイカー レベル1
・ナイフズタクト レベル5
・フェイローオブスロー レベル6
・スパイラルエッジ
・セルタレイト・ヴァラエーナ
・ダースティ・クラッチ レベル6
・トーテン・タンツ
・ヴィールシャーレ レベル3
・ゲニウス・チャージャー レベル9
・フローティング・レチュア レベル5
・ムーヴセドナ レベル4
・リトセンス・パラダズム
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・エクシリア・スライサー レベル4
・アゼルライトパウンド
・ミッシングブレイド レベル5
・セルタレイト・ミュルティムス
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致命極技の晴謳、新しい致命秘奥の習得。やる事はやって来た、此の一戦の為に鍛えてきた。
「即死攻撃オンパレードのウェザエモン相手に、敏捷とスタミナは三桁越え、アイテム共に武器改修良し……。さてと、アイトゥイル。エイドルトのエンハンス商会本社に行くから、ゲートを頼んだ。買い物を終えたら、兎御殿に戻ってサードレマに。アイトゥイルは兎御殿で待機をして、午後9時から10時辺りにサードレマの裏路地に迎えに来て欲しい」
「解ったのさ、任せてなのさ」
「おぅ、ペッパー。今日行くんだな?」
事細かなオーダーをするペッパーに、アイトゥイルが話の内容を理解するや、ぴょいーんと彼の肩に乗って、壁にゲートを開いた時。休憩室の出入口に、ヴァイスアッシュの姿が在った。
「はい、先生。今日、ウェザエモンと決着を付けに行って来ます」
床に正座し一礼と共に、戦いに赴く意志を示すペッパー。するとヴァイスアッシュは、ペッパーに向けて重要な発言をしてくる。
「そうかぁ……ペッパー、おめぇさんの持っている死に損ないの鎧。ソイツを纏うのはァ『アイツの意識が目覚めて』からが良い。そうじゃあねぇと、暴れ狂って手ェ付けられなくなるからよぉ」
そう言ったヴァイスアッシュは去り際に、背を向けたままペッパーに「ヴォーパル魂を忘れるなよ、ペッパー」と言い残して去って行き。
ペッパーは其の背中に一礼、そして「はい、先生!」と述べてゲートを越えたのだった………。
エンハンス商会、エイドルト本社。水晶煌めく街並みの、影たる裏路地を駆使してアイトゥイルを隠して辿り着いたペッパーは、従業員にエンハンス商会会員証を見せ、会員限定売り場へと足を運んだ。
シャンフロwikiを検索し、目当てのアイテムを探していると、此方に向かって歩いてくるスーツ姿の、五十代程のダンディな男性が一人。
「御初に御目にかかります、ペッパー様。本日は御来店、誠にありがとうございます。私、エンハンス商会の会長『メラゼイト・カブンセル』と申します。以後、御見知り置きを」
「初めまして、ペッパーです。エンハンス商会の投擲玉には、要所要所で何時も助けられています」
サーカス等で見る御辞儀をしたメラゼイトに、ペッパーも御辞儀をして握手に応じる。会長自ら出向いてくれたのは大きいと思い、ペッパーは彼に此の店を訪れた目的を単刀直入に述べる。
「早速ですが、メラゼイトさん。購入したいものが有るのですが、良いでしょうか?」
「はい。何なりと御申し付け下さい」
「ありがとうございます。では………━━━━『
ペッパーの発言に、メラゼイトの目が丸くなり、表情も堅くなる。
此のアイテムの素晴らしい点は、体力0になった場合の復活対象がプレイヤーだけでなく、NPCも含まれており、最難関護衛系ミッションでは此れの有無が、攻略の成否を分けるとまで言われている。
「再誕の涙珠……ですか。貴方程の御方が、其れを求めるとは……如何なる理由なのでしょうか?」
「不可能を可能にする為に。友達との約束の為に。どうしても必要不可欠なアイテムなんです。とても貴重な品である事も、重々承知しています。其れを知った上で、エンハンス商会ならば、手に入れられると踏んで来ました」
「どうか、よろしくお願い致します…!」と深く頭を下げるペッパー。並々成らぬ覚悟を間近で見たメラゼイトは、近くに居た職員に目配せを送り。そして頭を下げるペッパーに向かって言った。
「ペッパー様。貴方様の覚悟、そして想い。確りと聞き届けました」
そうして職員が持ってきたのは、南京錠による鍵が付いた宝箱。ロックを外して開かれた中には、野球ボールサイズの透明な硝子玉と、其の内側に無数の呪文を内封したような文様が蠢いている物であり。
「此方がペッパー様が求める、再誕の涙珠。エンハンス商会が総力を上げて独自のルートで仕入れた、運命神が復活の詠唱を封じたという、神秘の宝玉になります。
本来であれば、1つ『400万マーニ』が必要なのですが、ペッパー様には大恩が有りますから、1つ『360万マーニ』で御売り致しましょう」
「ッ………ありがとうございます!」
エンハンス商会会員証、そしてロールプレイの成功によって、一割引きでの購入が出来る事になった。ペッパーは8000万マーニを支払い、再誕の涙珠を22個購入してエンハンス商会・エイドルト本社を後にする。
去り際、メラゼイトが「ペッパー様、御武運を」と言って、彼も深く深く御辞儀をして感謝の意を伝え、エンハンス商会本社より出て、裏路地の闇へ潜って行ったのだった………。
開拓者よ、前人未到へ挑め。