VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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墓守のウェザエモン戦、始まる




刹那に花を、永劫へ終止符を 其の三

ジキジキと世界が反転する音がする。空間に出来た黒い綻びに飛び込んだ先で、サンラク・オイカッツォ・ペッパーのスリーゲーマー達が感じた事だった。

 

色付いて居た景色が変わって、色調が反転したかの様にフィールドが書き変わる。ユニークNPC・遠き日のセツナが言っていた、此処とは反対側の座標の意味はまさに其れで、暗い夜空は純白へ煌めく星々は、墨汁を落とした様に黒い点として空を彩り、辺りを取り囲む岩達は白へと変わった。

 

隠しフィールド『反転の花園』━━━━━━━━秘匿の花園と同じフィールドなのだが、表側が枯れ木と彼岸花の群生地帯とすれば、裏側たる此処は何もない平らな地平と、大きく満開に咲き誇る、桜の大樹が一本在るのみで。

 

其の大樹の根元に簡素な墓標と、そして()は居た。

 

「ペンシルゴン、京極(キョウアルティメット)アレ(・・)がそうか?」

「うん、アレが『ユニークモンスター・墓守のウェザエモン』。私達、元阿修羅会が秘匿し続けていた存在」

「久し振りに見たけど、相変わらず凄い殺気だ。まだ10mは離れてるってのに、此処からでもビリビリ来るよ」

 

ペッパーの問い掛けに、ペンシルゴンと京極は答える。そして三人のウェザエモンに対する第一印象は、言うなれば『ロボット武者』だった。

 

全身の肌すら隠しきった日本甲冑、膝先をバネに変えて人としての脚を完全に捨て、ヒロイックな頭部とツインアイたる双眸に光が宿り、右置き外向けの大太刀たる己が得物を手に取って、硬い身体を金属特有の音を鳴らし、其れは立ち上がる。

 

墓守のウェザエモン。其の身長たるや、およそ2,5m。身体に降り積もっていた、桜の花弁を落として立ち上がる姿は、ロボット物アニメ好きならば堪らないワンシーンだろう。

 

「さぁて、サンラク。お手並みを拝見しようか」

「ヘッ、好きに言ってろ京ティメット」

 

御先にどうぞと言う京極の挑発に、鼻で嗤いつつもサンラクは一歩ずつ、墓守のウェザエモンに近付いていく。対するウェザエモンもまた、手にした大太刀を右手から左手に移し、左腰に添えて居合抜刀の構えを取る。

 

(どっちが速いか、勝負しようぜって事か?面白ェ……其の挑発、敢えて乗ってやるよ。墓守のウェザエモン)

 

強化スキルたる、イグニッション・ニトロゲインを点火し、体力調整を行ったサンラクは、最初から全開状態にしながら、ウェザエモンとの距離を徐々に詰めていく。

 

5m…4m…3m…2m…。そして1mに突入した刹那、サンラクはクライマックスブーストを起動し、同時に宣言する。

 

「墓守のウェザエモン。いざ尋常に━━━━」

『━━━━(タチ)……(カゼ)━━━!』

 

およそ50cmと言う所で、ウェザエモンが刀を抜いた。一瞬迸った水色の線は、サンラクの『首』を斬り飛ばさんと走って。

 

然れども瀕死寸前に至るまで強化された、彼の敏捷と持ち前の動体視力は、ウェザエモンの一刀を見切って回避するに至り。

 

「勝負!」

 

超至近距離時の格闘ダメージ補正を与える『インファイト』と共に、格闘ダメージに補正を加える『マグナマイトギア』、そして敏捷と筋力を参照とする打撃スキルの『ゲイルサベージ』を点火したサンラクが、ウェザエモンに肉薄して鳩尾に蹴りを咬ます事で、五人にとって後々の記憶まで残る、長く……そして永い『30分』の時間が、堂々と幕を開けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハハッ……本当に初見で回避しちゃったよ、サンラク君……」

「やるね、彼。ペンシルゴンが言うだけはあるか」

 

ウェザエモンが初手で繰り出す断風は、確定で一番近いプレイヤーの首を狙うというのは、幾度と戦ったペンシルゴンと京極が得た情報では有ったものの、其れを加味してもアレを、超至近距離下で避けるのは簡単な話ではない。

 

「京極ちゃんは、サンラク君が殺られたらスイッチ。ペッパー君、オイカッツォ君は涙珠を投げ込めるようにしておいて。私も此方で『準備』しておくから」

 

そう言ってペンシルゴンは、アイテムインベントリから『金色に輝く黄金の天秤』を取り出し、ウィンドウを展開。京極は何時でもスイッチ出来るよう、風神刀(ふうじんとう)碧千風(そうせんふう)】を取り出しつつ構えを取り、オイカッツォとペッパーはサンラクがウェザエモンとの戦闘で引き出した、攻撃モーションを頭に叩き込み、思考を重ねていく。

 

「断風からの派生モーションは、右手からの振り下ろしに、両手での水平斬り払い。其所から更に派生して、ディレイ持ちの突きに斬り上げ……」

「大太刀の長さとウェザエモンの身長、腕の長さから計算するに、射程距離はおよそ3m。大体4m離れれば、断風の射程圏からは逃れられ━━━!」

 

其の時、ペッパーはウェザエモンが大太刀の鋒を、天に掲げる姿を見た。反射的とも言えるインベントリ操作、両足に『レディアント・ソルレイア』を装着し、彼は真っ先にサンラクと三人の間へと駆け出す。

 

「ペッパー君!?其の装備何!?」

「ペンシルゴン、雷鍾(ライショウ)が来るよ!」

 

刀身に雷電が纏い、ウェザエモンが構え。重く乗し掛かる声で、『雷鍾(ライショウ)』の一声と共に振るえば、高らかな轟音響かせて、空色の雷が降り注ぐ。

 

「レディアント・ソルレイア、早速で悪いが仕事を頼むぜ…!『蓄積せよ(Charging up)』ッ!」

 

Uターンからの、ペンシルゴンや京極、オイカッツォに降り注ぐ雷撃に、籠脚を合わせて振るい抜く。本来ならば感電死による死が待ち構える自殺行為、然れどもレディアント・ソルレイアは風と雷を喰らい尽くし、己の身に其のエネルギーを蓄え、浮遊と飛翔のエネルギーへと転換する。

 

即死級の雷なれど装備貫通能力を持たない雷鍾は、レディアント・ソルレイアの風雷吸収能力の前に、餌を与える形となり。そしてペッパーは広範囲落雷攻撃から、仲間達を守り抜く。

 

「しゃあ!電撃吸収成功!此れで雷鍾は実質ボーナスだ!」

「ペッパー、其の籠脚(ガンドレッグ)何!?何で雷吸収出来たの!?」

「はいはい、質問は後!雷鍾は俺が封じるから、目の前に集中!」

 

そしてサンラクは、ドリフトステップで急カーブを行いながら、雷鍾を回避してエンパイアビー・クイーンを始めとする、エンパイアビー達の素材より作り、改修をした『帝蜂双剣(エンパイア.ビーツイン)改三』と共に、致命刃術(ヴォーパルじんじゅつ)水鏡(すいきょう)(つき)】でヘイトを一瞬掻き消し、グローイング・ピアス&ヘイト・トランプルで墓守のウェザエモンの左脇の下を突き、ヘイトを一心に集める。

 

「何かあっちはあっちで、色々やってるみたいだ……なっどぅお!?!」

 

恐ろしく速い水平斬り払いをバク転跳躍で、続く斬り上げをセツナノミキリで紙一重の横回避。エフュール特製の小鬼人形(ゴブリンドール)がもたらすリジェネによって、体力が規定値まで回復し次第、ニトロゲインでバフを加えながら、ウェザエモンの攻撃に食らい付く。

 

しかし武器を身体を、思い付く限りの箇所を攻撃しても、ウェザエモンは怯まない。全ての攻撃が即死級の物だらけ。攻撃をパリィしたサンラクは、二度目となるユニークモンスターに対する感情を、言葉と共に溢した。

 

「ハハッ…聞いてた通り、コイツは━━━!」

 

 

倒せるような相手じゃない。

 

 

そう言葉を紡ごうとした瞬間、飛んできたのはウェザエモンの代名詞、神速の抜刀居合たる断風。

 

直後、致命舞術(ヴォーパルまいじゅつ)月光円舞(げっこうえんぶ)】により、サンラクの身体は己の意志とは関係無く、ブリッジ体勢を取って其の斬撃を回避して。次の瞬間、体勢を戻した僅か一瞬に、ウェザエモンのディレイが入った高速の突きが、サンラクの心臓を穿ち貫き、なけなしの体力を0へと変えたのだった。

 

 

 

 

 

戦闘開始から、2分53秒の出来事である。

 

 

 

 

 






思い知る、ユニークモンスターの実力。


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