VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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耐え凌げ、勝利の為に




刹那に花を、永劫へ終止符を 其の四

「サンラク!」

 

墓守のウェザエモンの牙突一閃に、心臓を貫かれたサンラクが倒れた。

 

京極(キョウアルティメット)ちゃん!カッツォ君!」

「任された!」

「解ってる!」

 

ペンシルゴンの一声を合図として、京極が走り出し、其の後ろにオイカッツォが続く形で駆ける。

 

「久し振りだね、ウェザエモン!次は僕が相手をしてあげる!」

『━━━━━断風(タチカゼ)

「当たらないよッ!」

 

腰狙いの神速抜刀居合を跳躍で避けて、サンラクに変わる形で戦闘を開始した京極。其の隙にオイカッツォは全力で再誕の涙珠を投げ、サンラクの脚にぶつける。

 

すると内側より呪文のような文章が浮かび上がり、倒れたまま微動だにしないサンラクの真上で光が満ちて。一突きにされ、ポリゴンが漏れ出していた胸部の傷跡は塞がり、体力とMPそしてスタミナが回復。

 

同時に意識を取り戻したサンラクは、直ぐ様ペンシルゴンやオイカッツォ、ペッパー達が居る場所までバックステップで帰還する。

 

「サンラク、ウェザエモンと戦った感想」

「ペンシルゴンが言ってた通り、即死攻撃のオンパレード。オマケに本体は何処を殴っても、一切怯まないときた。正直『余程の策』が無い限り……やり合う相手じゃないってのはよく理解出来たよ」

「サンラクが其所まで言うとはね……」

 

オイカッツォの問いに、サンラクはありのままに感じた事を答え、ペッパーはウェザエモンを見ながら、小さく言葉を溢した。

 

「其の『余程の策』って言うのが、私やギリギリでペッパー君が持って来てくれた、涙珠と神薬な訳なんだけどね」

「一回の蘇生で400万か……考えたく無いねぇ」

「なぁ、アレって『入道雲』だよな?」

 

感想を言い合っていると、ウェザエモンの背後に浮かび上がるは白い曇の巨腕。水掻きをするかのように、半円上に薙ぎ払う其れを、京極は何とか避けようとしたが、残念ながら間に合わずに轢き殺されて死亡する。

 

「あ、京ティメットが死んだ!」

「此の人でなし!じゃなくて、サンラク君戦闘準備!ペッパー君が京極ちゃんの蘇生を!」

「お前にだけは、人でなしって言われなくないなぁ!?」

「サンラク、急いで!」

 

耐久値が半分以上削られた帝蜂双剣(エンパイヤ.ビーツイン)改三を仕舞い、インベントリより改修された『湖沼(こしょう)短剣(たんけん)改三』と『湖沼(こしょう)小鎚(こづち)改二』を各種一本ずつサンラクは装備して、ニトロゲインの強化と共に走り出し。

 

ペッパーはインベントリより、投擲玉(とうてきだま):炸煙(さくえん)を取り出してウェザエモンのヘイトを擬似的に消しつつ、サンラク接近の援護と京極の蘇生の為に、投擲スキル『スワロスキースロー』で再誕の涙珠を彼女の左手にぶつけた。

 

「1分程度しか持たなかった京ティメットに代わり、俺がまた相手をしてやるよウェザエモン!」

 

煙の中より半裸の鳥頭が飛び出して、ウェザエモンの頭を小鎚を用いて殴り付け。其れが目覚ましとなってか、京極も蘇生によって意識が覚醒する。

 

「クッ……思った以上に感覚が鈍ってた……!」

「たかが1分、されど1分だ。ナイスファイト、京極」

 

超速即死攻撃多用のユニークモンスター相手に、1分生存出来るだけでもペッパーからすれば、其のプレイヤーは凄いという認識である。

 

「はいはい、ペッパー君!京極ちゃん!火砕龍が飛んで来たら、ヤバくなるから早く離れて!」

 

ペンシルゴンの声で退避する中、ふとサンラクの方を見れば、断風を回避して小鎚を上空に放り投げたかと思えば、エフェクトが付いた拳でウェザエモンの顔面を殴りつつ、様々なスキルを点火しながら戦い続けている。

 

しかし、サンラクも人間である以上は疲労もする。深夜帯までゲームをやり込む事も少なくないらしいが、其れでも長丁場の集中力とスタミナを維持するのは、本当に難しいのだ。

 

(ウェザエモンのモーションは、オイカッツォの指トンと一緒に見てきたから、大分解ってきている。問題は今の俺がウェザエモン相手に『どれだけ』持ちこたえられるか………だな)

 

現状、ウェザエモンのユニーク遺機装(レガシーウェポン)を一式完全装備が出来るのは、自分しか居ない上に何時訪れるか解らない、ウェザエモンの意識の覚醒時に鎧を纏って動けるようにしなくてはいけない。

 

「ペンシルゴン、其の天秤を動かしながら聞いてくれ」

「何、ペッパー君?」

「次、サンラクがウェザエモンに殺られたら、次は俺がウェザエモンの相手に入る」

「「「!?」」」

 

其の宣言にペンシルゴン、オイカッツォ、京極が目を丸くしてペッパーを見つめた。

 

「理由を聞いても良い?」

「万が一にも俺にヘイトが集中した場合、時間稼ぎが出来るようにしておきたい。其れと天将王装を纏った時に、立ち向かわなきゃいけない気がする」

「サンラクは約3分、僕は1分、君に出来るのかい?」

「出来るかじゃない、やるんだよ」

 

オイカッツォと京極の問いに、ペッパーは言い切り。其れを聞いたペンシルゴンは少し思考をして、ペッパーに向けて言った。

 

「ペッパー君……君が脱落した場合、ウェザエモンの一式装備が使えなく事と同じだから。絶対に(・・・)無茶だけはしないでね?」

 

ペンシルゴンのペッパーに向けられる視線が、何処か『恋人を心配しているよう』に京極には見えて。其の視線に何を感じたのかペッパーは「……応ッ」とだけ答え。

 

月光円舞のリキャストタイムが終わっていなかったのか、サンラクがウェザエモンの断風によって、胴体を真っ二つにされ、大の字に倒れたのをトリガーに、ペッパーが戦王の煌心(プライマス・ハート)を起動、黒鉄丸(くろがねまる)改九を抜刀してウェザエモンに突撃。其の後ろに京極が続き、サンラクの蘇生へと動く。

 

「勝負だ、墓守のウェザエモン!」

 

鞍馬天秘伝(くらまてんひでん)、レコメンド・スートで、機動力と動体視力を高めたペッパーは、ウェザエモンに接近。刀身を揺らし敵胴体を斬るように狙い、目算で断風の射程圏たる3mに入った瞬間。

 

自身の注目(ヘイト)を其の場に置き去りにする、スキル『致命秘奥(ヴォーパルひおう)【ウツロウミカガミ】』で残像を残して、自身は京極と反対側に移動。

 

ウェザエモンがペッパーの残した残像へ、断風を使って斬り放つも、微動だにしないペッパーに斬撃を続けて。其の間に京極はサンラクを蘇生させ、安全圏まで退避を完了した。

 

「行くぞ!」

 

残像が目の前で消滅した瞬間、ウェザエモンの背後よりペッパーが迫り。首への攻撃を行う度に追加ダメージが入る、スキル『十断斬首(じゅうだんざんしゅ )』で背面より首筋に斬撃が走る。

 

「………ッ、ダメージは入らないか!」

 

レディアント・ソルレイアで浮遊滑走を行い、ウェザエモンが雷鍾を落としたくなる位置を意識し、黒鉄丸改九の鋒を向ける。

 

其れを見たウェザエモンは再び左腰に刀を置いた瞬間、ペッパーは『致命秘奥(ヴォーパルひおう)【サキガケルミゴコロ】』を使い、直後に彼の脳内に過ったのは。

 

 

 

『踏み込んだウェザエモンの居合抜刀により、己の胴体を斬られ、上半身が地面にゴトリと落ちる光景』だった。

 

 

 

「見えたッ!ちょっと先の未来(・・)!」

『━━━━断風(タチカゼ)

「カッ飛ぶ!」

 

レディアント・ソルレイアが唸り、ブースターが点火して、ペッパーは自ら重力に身を委ね、低く沈んだ瞬間に頭部を、空色に光る大太刀の刃が擦り抜け。

 

爆音と共に加速し、儷紲一剣(れいせついっけん)とライトニング・シャーレの刺突を放って、斬り抜けならぬ突き抜けを行い、再びウェザエモンとの距離を4mで維持した。

 

「俺にはまだ、大仕事が残ってるんだ。悪いが、ちょっとだけ付き合って貰うよ。墓守のウェザエモン!」

 

唸るは光輝へと昇る金龍王装(レディアント・ドラゴニウス)を構成せし一欠片、レディアント・ソルレイア。そして黒鉄丸を収納しつつ新たに振るうは、ヴァイスアッシュの手により致命の小鎚(ヴォーパルレッジ)が真化し、ショートメイスに姿を変えた『兎月(とつき)暁天(ぎょうてん)】』。

 

相対するは白黒の歴戦の戦装束に身を包む、大太刀を振るいしロボット鎧武者が唯独りのみ。

 

戦闘開始より、7分が過ぎようとしている━━━。

 






一分一秒の時は永く


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