耐え凌げ、勝利の為に
「サンラク!」
墓守のウェザエモンの牙突一閃に、心臓を貫かれたサンラクが倒れた。
「
「任された!」
「解ってる!」
ペンシルゴンの一声を合図として、京極が走り出し、其の後ろにオイカッツォが続く形で駆ける。
「久し振りだね、ウェザエモン!次は僕が相手をしてあげる!」
『━━━━━
「当たらないよッ!」
腰狙いの神速抜刀居合を跳躍で避けて、サンラクに変わる形で戦闘を開始した京極。其の隙にオイカッツォは全力で再誕の涙珠を投げ、サンラクの脚にぶつける。
すると内側より呪文のような文章が浮かび上がり、倒れたまま微動だにしないサンラクの真上で光が満ちて。一突きにされ、ポリゴンが漏れ出していた胸部の傷跡は塞がり、体力とMPそしてスタミナが回復。
同時に意識を取り戻したサンラクは、直ぐ様ペンシルゴンやオイカッツォ、ペッパー達が居る場所までバックステップで帰還する。
「サンラク、ウェザエモンと戦った感想」
「ペンシルゴンが言ってた通り、即死攻撃のオンパレード。オマケに本体は何処を殴っても、一切怯まないときた。正直『余程の策』が無い限り……やり合う相手じゃないってのはよく理解出来たよ」
「サンラクが其所まで言うとはね……」
オイカッツォの問いに、サンラクはありのままに感じた事を答え、ペッパーはウェザエモンを見ながら、小さく言葉を溢した。
「其の『余程の策』って言うのが、私やギリギリでペッパー君が持って来てくれた、涙珠と神薬な訳なんだけどね」
「一回の蘇生で400万か……考えたく無いねぇ」
「なぁ、アレって『入道雲』だよな?」
感想を言い合っていると、ウェザエモンの背後に浮かび上がるは白い曇の巨腕。水掻きをするかのように、半円上に薙ぎ払う其れを、京極は何とか避けようとしたが、残念ながら間に合わずに轢き殺されて死亡する。
「あ、京ティメットが死んだ!」
「此の人でなし!じゃなくて、サンラク君戦闘準備!ペッパー君が京極ちゃんの蘇生を!」
「お前にだけは、人でなしって言われなくないなぁ!?」
「サンラク、急いで!」
耐久値が半分以上削られた
ペッパーはインベントリより、
「1分程度しか持たなかった京ティメットに代わり、俺がまた相手をしてやるよウェザエモン!」
煙の中より半裸の鳥頭が飛び出して、ウェザエモンの頭を小鎚を用いて殴り付け。其れが目覚ましとなってか、京極も蘇生によって意識が覚醒する。
「クッ……思った以上に感覚が鈍ってた……!」
「たかが1分、されど1分だ。ナイスファイト、京極」
超速即死攻撃多用のユニークモンスター相手に、1分生存出来るだけでもペッパーからすれば、其のプレイヤーは凄いという認識である。
「はいはい、ペッパー君!京極ちゃん!火砕龍が飛んで来たら、ヤバくなるから早く離れて!」
ペンシルゴンの声で退避する中、ふとサンラクの方を見れば、断風を回避して小鎚を上空に放り投げたかと思えば、エフェクトが付いた拳でウェザエモンの顔面を殴りつつ、様々なスキルを点火しながら戦い続けている。
しかし、サンラクも人間である以上は疲労もする。深夜帯までゲームをやり込む事も少なくないらしいが、其れでも長丁場の集中力とスタミナを維持するのは、本当に難しいのだ。
(ウェザエモンのモーションは、オイカッツォの指トンと一緒に見てきたから、大分解ってきている。問題は今の俺がウェザエモン相手に『どれだけ』持ちこたえられるか………だな)
現状、ウェザエモンのユニーク
「ペンシルゴン、其の天秤を動かしながら聞いてくれ」
「何、ペッパー君?」
「次、サンラクがウェザエモンに殺られたら、次は俺がウェザエモンの相手に入る」
「「「!?」」」
其の宣言にペンシルゴン、オイカッツォ、京極が目を丸くしてペッパーを見つめた。
「理由を聞いても良い?」
「万が一にも俺にヘイトが集中した場合、時間稼ぎが出来るようにしておきたい。其れと天将王装を纏った時に、立ち向かわなきゃいけない気がする」
「サンラクは約3分、僕は1分、君に出来るのかい?」
「出来るかじゃない、やるんだよ」
オイカッツォと京極の問いに、ペッパーは言い切り。其れを聞いたペンシルゴンは少し思考をして、ペッパーに向けて言った。
「ペッパー君……君が脱落した場合、ウェザエモンの一式装備が使えなく事と同じだから。
ペンシルゴンのペッパーに向けられる視線が、何処か『恋人を心配しているよう』に京極には見えて。其の視線に何を感じたのかペッパーは「……応ッ」とだけ答え。
月光円舞のリキャストタイムが終わっていなかったのか、サンラクがウェザエモンの断風によって、胴体を真っ二つにされ、大の字に倒れたのをトリガーに、ペッパーが
「勝負だ、墓守のウェザエモン!」
自身の
ウェザエモンがペッパーの残した残像へ、断風を使って斬り放つも、微動だにしないペッパーに斬撃を続けて。其の間に京極はサンラクを蘇生させ、安全圏まで退避を完了した。
「行くぞ!」
残像が目の前で消滅した瞬間、ウェザエモンの背後よりペッパーが迫り。首への攻撃を行う度に追加ダメージが入る、スキル『
「………ッ、ダメージは入らないか!」
レディアント・ソルレイアで浮遊滑走を行い、ウェザエモンが雷鍾を落としたくなる位置を意識し、黒鉄丸改九の鋒を向ける。
其れを見たウェザエモンは再び左腰に刀を置いた瞬間、ペッパーは『
『踏み込んだウェザエモンの居合抜刀により、己の胴体を斬られ、上半身が地面にゴトリと落ちる光景』だった。
「見えたッ!ちょっと先の
『━━━━
「カッ飛ぶ!」
レディアント・ソルレイアが唸り、ブースターが点火して、ペッパーは自ら重力に身を委ね、低く沈んだ瞬間に頭部を、空色に光る大太刀の刃が擦り抜け。
爆音と共に加速し、
「俺にはまだ、大仕事が残ってるんだ。悪いが、ちょっとだけ付き合って貰うよ。墓守のウェザエモン!」
唸るは
相対するは白黒の歴戦の戦装束に身を包む、大太刀を振るいしロボット鎧武者が唯独りのみ。
戦闘開始より、7分が過ぎようとしている━━━。
一分一秒の時は永く