VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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第一段階、大詰めへ




刹那に花を、永劫へ終止符を 其の五

致命秘奥(ヴォーパルひおう)【サキガケルミゴコロ】。此のスキルを簡単に言い表すのであれば、数秒先に起こる『己の死亡に直結するダメージを受ける瞬間』を、未来予知の様に脳内イメージとして発現するスキルである。

 

今回の場合、ウェザエモンの代名詞にしてガード貫通攻撃内封スキルたる、神速居合抜刀の断風の発生モーションに合わせて発動した事で、ウェザエモンが自分の胴体を斬り飛ばす狙いに気付き、動体視力が其所まで優れていないペッパーでも、何とか回避に成功したのであった。

 

(まぁ其の分、再使用時間(リキャストタイム)に20分要求する、燃費が悪いスキルでは有るんだけども)

 

相対する者を押し潰さんとする、圧倒的な殺意を放つウェザエモンの姿を見ながらも、己の得物たる兎月(とつき)暁天(ぎょうてん)】を握るペッパーは、フッ…と笑っていた。

 

其の笑みは、彼がウェザエモンを相手に『勝てないから』笑ったのではない。弱者として挑戦者(チャレンジャー)として、此の圧倒的なまでの強者に自分の『牙』が届き得るか試せる事に、喜びを感じて笑ったのである。

 

ウェザエモンを前に、戦神の心構え(モンチュ・レ・プライド)を起動。全身の感覚と動体視力を鋭敏にして、斬り払い一閃を回避しつつ、振り切った後に残る僅かで些細な隙を狙い。

 

鎚武器スキルでどんなに耐久値と体力に優れた相手でも『一定値のダメージを固定』して与えられるスキル『アゼルライトパウンド』と、地面に接地状態にある敵に対する衝撃浸透を高める合成スキル『イグナイトブレイカー』。

 

そして鎚武器での攻撃時に『美しいフォーム』で打ち抜いた場合、武器の搭載する能力を更に強くする『セルタレイト・ミュルティムス』で、ウェザエモンの左脇腹を斬り抜けならぬ、打ち抜きで叩き据える。

 

同時にクリティカルの発生が兎月【暁天】に秘められた、王撃ゲージを上昇させていき、一連の流れで21%の獲得に成功した。しかしペッパーの狙いは其所に有らず。

 

「さぁ来い!ウェザエモン!」

 

ディレイ入りの牙突を、アクセラレート・ステップで回避。体力・MP・スタミナの何れかで、己のステータスで消費出来るパラメーターを消費し、身体機能へボーナス補正を加える『エクステンド・オーレイズ』で体力を1/5までの減少とMPの全消費を対価として、動体視力を強化。

 

更に自傷系統スキルで得られる恩恵を高める『トーテン・タンツ』に、高潔度を参照とした強化スキル『纐纈戦々(こうけつせんせん)』と、目に関係するスキルの補正を強化する『アイズオブセスティ』を起動。

 

断風(タチカゼ)

「『弾ける(パリィ)』!」

 

膝狙いの抜刀居合を、レディアント・ソルレイアと共にクリティカル及び弱点への攻撃に成功すれば、気絶を初めとした『様々な状態異常』を相手に与える『シーヴァル・ディーバ』。脚でのパリィに成功すれば自身の敏捷・器用・技量にバフを与える『セルタレイト・ヴァラエーナ』を使い、ウェザエモンの大太刀を━━━━弾く。

 

『………!?』

「ハァッ!」

 

まさかウェザエモンでも、籠脚(ガンドレッグ)装備有りきとは言え、脚で断風を弾かれるとは(・・・・・・・・・・・)、夢にも思わなかっただろう。そして其の隙を、当然ながらペッパーは見逃さない。

 

レディアント・ソルレイアが唸り轟き加速して、兎月【暁天】と共に『轟天大破厳(ごうてんだいはがん)』が、ウェザエモンの下顎をクリティカルで打ち抜き炸裂。其の一撃に、ウェザエモンは一瞬身体が揺れて、暁天の王撃ゲージは39%へ上昇する。

 

「脚でパリィされたのは初めてだったかな?墓守のウェザエモン。こういう技術を見せ合うのも、戦いの醍醐味って奴さ」

 

小さな挑戦者が此処まで研ぎ澄まし、洗練してきた牙達が、永劫の墓守人へと突き立てられていく。しかしウェザエモンもユニークモンスター、一筋縄所か百の縄が有っても足らない、超絶厄介なモンスターで在る事は解っている。

 

然れど其の闘志は更に大きく燃え上がり、最強へ立ち向かう己は凄い事をしているのだと、犇々実感する。振り下ろされる大太刀の右斜め袈裟斬りを、強化された動体視力でウェザエモンの視線、刀の持ち方、刃の角度から予測を立て、脚を後ろ移動で体勢変更により回避。

 

抜刀ならぬ抜鎚で致命鎚術(ヴォーパルついじゅつ)満月押印(まんげつおういん)】を自身の筋力より相手の耐久値が高い場合に、武器の耐久値減少を抑制する打撃武器スキル『リトセンス・パラダズム』。そして鎚武器スキルで、高潔度と歴戦値を参照したダメージを与える『アゼルライトパウンド』と組み合わせ、ウェザエモンの腹部に刻印を刻み付けた。

 

王撃ゲージが58%へ上昇する時間……過ぎ行く一秒がまるで一時間にも等しい、ゆっくりとした時の流れを感じながら、ペッパーは墓守のウェザエモンに立ち向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めて思うがサンラク、ペッパーのスキルって何れも此れも、強いのばっかりだよね?オマケに『読みの能力』も有ってか、ウェザエモンに食らい付けてるし」

「動体視力はそんなに高く無いけど、便秘で見せた『後出し脚パリィ』や、シャンフロで獲得してる『潤沢なスキル達を惜しみ無く使える』ってのも、ペッパーの『強み』なのかも知れねぇな」

「数分とはいえ、ウェザエモンのモーションを『確り観察出来た』からねぇ。ああなったペッパー君は、本当に厄介だよ」

 

ペッパーがウェザエモンとの戦闘を開始して1分程が経過する中、遠くで其れを見ているオイカッツォ・サンラク・ペンシルゴンは、入道雲を跳躍で躱わして、空中を歩行とダッシュをしつつ着地したペッパーが、直後の無数の斬撃をダッシュスキルで切り抜け、唯一人で最強種に食らい付く、其の動きを見ながら各々の感想を言い合い。

 

しかしながら、彼が何時倒れるか解らない為に、サンラクは再誕の涙珠を右手に、左手に湖沼(こしょう)短剣(たんけん)を装備して、オイカッツォも万が一にもサンラクが蘇生行動最中に倒された場合、戦闘を引き継げる様に準備をしていた。

 

「………………なん、で………なんで?」

 

そんな中、ペッパーの動きに驚愕とも言える、衝撃を受けた表情のプレイヤー………京極(キョウアルティメット)が言葉を溢す。

 

ペッパー、今戦っているあのプレイヤーの動きは、於保つかずそして出鱈目で、何時殺られてもおかしくない。

 

だというのに。

 

其の動きの節々から感じるのは、剣道や格闘技でも用いられる『後の先』に近しい物であり。其の深く深い思考と読みは、己の『憧れた存在』に近しい物であった。

 

そしてウェザエモンの攻撃を見る度に、回避が洗練されていき、相手の視線や身体の動きを見続けて、何時倒されるか解らない状況で、あのプレイヤーは『笑っている』のだ。

 

『相手に攻撃を繰り出させ、得てきた情報を元にして』

『相手を見ながら、己の攻撃を当てられるように動き』

『少ない攻撃回数で、相手を倒しきれるようにする』

 

そんな立ち回りを。

 

「………なんで?なん、で………?」

 

ウェザエモンと戦い続けるペッパーの其の背中に、京極の目には『ある人物』の姿が色濃く重なる。もう此の世には居ない、当世最強と詠われた『正真正銘の剣聖』と。

 

「サンラク!此れ以上は流石に無理!スイッチしてくれ!」

「おぅ、任せろ!」

 

ショートメイスをインベントリに仕舞い、黒刀を取り出して逆手に構えながら、ペッパーが叫んだ。其れを合図として、サンラクが走り始めて即座に水鏡の月で、ウェザエモンの背後に一突きの幻影を打ち。ヘイトをペッパーから虚空へ移しながら、イプロッションスライサーで斬撃を叩き込んで、其の戦闘を引き継ぐ。

 

「時間は!?」

「1分37秒、まぁ上々かな?」

「引き際を弁えてる辺り、本当に厄介だねペッパー君はさ。私より長生きするんじゃない?」

 

サンラクがウェザエモンと三度の戦闘を開始し、黒幕魔王が何を言ってんだとオイカッツォとペッパーは思いつつも、ペッパーは黒鉄丸を鞘に納刀して絶え絶えの呼吸を、スキル『明鏡睡蓮(めいきょうすいれん)』で落ち着かせる。

 

と━━━━━━

 

「ねぇ!君は誰なの(・・・・・)!?」

「うおっ!?」

 

突然胸ぐらを掴まれ、立ち上がらされるペッパー。其の犯人は京極で、其の目は『真剣さ』と同じく『驚愕』と『殺意』で満ちていた。

 

「ねぇ、誰!?君は誰!?ねぇ、教えてよ!其れを一体何処で習ったの(・・・・・・・)!?()に教えてよ、ねぇ!?」

「お、おち…落ち着け、京極…!」

 

感情がオーバーフローを起こし、其の瞳からはシャンフロの誇るシステムにより、涙が零れ落ちていく。だが、其れをこんな状況下でやっていては、敵に隙を晒すのみ。

 

「落ち着け京極!今はウェザエモンに集中しないと!」

「そうだよ京極ちゃん!其れに……あと15秒で『規定時間』になる」

 

オイカッツォがペッパーから京極を引き剥がし、ペンシルゴンがタイマーを見ている。カウントは進み、刻まれた秒数は減少し、そして遂には0を刻む。其の瞬間、ドッ………!と重く空気が、否『隠しエリア全体』が軋む音が、五人の耳に轟き刻まれる。

 

「第二段階!カッツォ君はロデオ、ペッパー君は全体サポート!京極ちゃんはサンラク君と一緒に、ウェザエモンを対処して!」

「残機回復要員から、麒麟とのロデオ役だ。やってやんよ!」

「おぅ、任せとけ。ペンシルゴン」

「ッ……解った」

 

一人此方を睨んでいるが、直ぐに気持ちを切り替えて、全員がウェザエモンの方を見る。

 

『……エ、………………質量転送(エクスポート)及び展開(サモンコール)

 

『…………戦術機馬(せんじゅつきば)………【騏麟(きりん)】』

 

上空にて展開されるは、巨大な黒の魔方陣。其所から少しずつ姿を晒し、躍り出たるは巨大な騎馬。

 

「………ん?」

「なぁ、ペンシルゴン」

「うん?」

「確か情報だと『足が生えたダンプカー』って言ってたよな?」

「そうだよ」

 

反転の墓標に降り立った其れは、確かに馬の見た目をしていた。しかし実際に目の前で出されたのは、全長およそ8mは余裕で有るだろう、馬の形を成したナニカ。

 

白い蒸気を顔回りのバルブより吐き出し、稼働する其の様たるや━━━━━━

 

「コレ、ダンプカーじゃなくて戦車でしょ。どう見てもおっ!?」

「各員持ち場に着けー!?」

「散開!」

「オイカッツォ、マジでロデオ頼んだぞ!?」

 

前足を振り上げ、踏み付けをゴングとし、ウェザエモン・麒麟の双方が動き始めた。

 

戦いは、第二段階(セカンドフェイズ)へと突入する━━━━。

 

 






麒麟とウェザエモンを合流させるべからず


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