第一段階、大詰めへ
今回の場合、ウェザエモンの代名詞にしてガード貫通攻撃内封スキルたる、神速居合抜刀の断風の発生モーションに合わせて発動した事で、ウェザエモンが自分の胴体を斬り飛ばす狙いに気付き、動体視力が其所まで優れていないペッパーでも、何とか回避に成功したのであった。
(まぁ其の分、
相対する者を押し潰さんとする、圧倒的な殺意を放つウェザエモンの姿を見ながらも、己の得物たる
其の笑みは、彼がウェザエモンを相手に『勝てないから』笑ったのではない。弱者として
ウェザエモンを前に、
鎚武器スキルでどんなに耐久値と体力に優れた相手でも『一定値のダメージを固定』して与えられるスキル『アゼルライトパウンド』と、地面に接地状態にある敵に対する衝撃浸透を高める合成スキル『イグナイトブレイカー』。
そして鎚武器での攻撃時に『美しいフォーム』で打ち抜いた場合、武器の搭載する能力を更に強くする『セルタレイト・ミュルティムス』で、ウェザエモンの左脇腹を斬り抜けならぬ、打ち抜きで叩き据える。
同時にクリティカルの発生が兎月【暁天】に秘められた、王撃ゲージを上昇させていき、一連の流れで21%の獲得に成功した。しかしペッパーの狙いは其所に有らず。
「さぁ来い!ウェザエモン!」
ディレイ入りの牙突を、アクセラレート・ステップで回避。体力・MP・スタミナの何れかで、己のステータスで消費出来るパラメーターを消費し、身体機能へボーナス補正を加える『エクステンド・オーレイズ』で体力を1/5までの減少とMPの全消費を対価として、動体視力を強化。
更に自傷系統スキルで得られる恩恵を高める『トーテン・タンツ』に、高潔度を参照とした強化スキル『
『
「『
膝狙いの抜刀居合を、レディアント・ソルレイアと共にクリティカル及び弱点への攻撃に成功すれば、気絶を初めとした『様々な状態異常』を相手に与える『シーヴァル・ディーバ』。脚でのパリィに成功すれば自身の敏捷・器用・技量にバフを与える『セルタレイト・ヴァラエーナ』を使い、ウェザエモンの大太刀を━━━━弾く。
『………!?』
「ハァッ!」
まさかウェザエモンでも、
レディアント・ソルレイアが唸り轟き加速して、兎月【暁天】と共に『
「脚でパリィされたのは初めてだったかな?墓守のウェザエモン。こういう技術を見せ合うのも、戦いの醍醐味って奴さ」
小さな挑戦者が此処まで研ぎ澄まし、洗練してきた牙達が、永劫の墓守人へと突き立てられていく。しかしウェザエモンもユニークモンスター、一筋縄所か百の縄が有っても足らない、超絶厄介なモンスターで在る事は解っている。
然れど其の闘志は更に大きく燃え上がり、最強へ立ち向かう己は凄い事をしているのだと、犇々実感する。振り下ろされる大太刀の右斜め袈裟斬りを、強化された動体視力でウェザエモンの視線、刀の持ち方、刃の角度から予測を立て、脚を後ろ移動で体勢変更により回避。
抜刀ならぬ抜鎚で
王撃ゲージが58%へ上昇する時間……過ぎ行く一秒がまるで一時間にも等しい、ゆっくりとした時の流れを感じながら、ペッパーは墓守のウェザエモンに立ち向かう。
「改めて思うがサンラク、ペッパーのスキルって何れも此れも、強いのばっかりだよね?オマケに『読みの能力』も有ってか、ウェザエモンに食らい付けてるし」
「動体視力はそんなに高く無いけど、便秘で見せた『後出し脚パリィ』や、シャンフロで獲得してる『潤沢なスキル達を惜しみ無く使える』ってのも、ペッパーの『強み』なのかも知れねぇな」
「数分とはいえ、ウェザエモンのモーションを『確り観察出来た』からねぇ。ああなったペッパー君は、本当に厄介だよ」
ペッパーがウェザエモンとの戦闘を開始して1分程が経過する中、遠くで其れを見ているオイカッツォ・サンラク・ペンシルゴンは、入道雲を跳躍で躱わして、空中を歩行とダッシュをしつつ着地したペッパーが、直後の無数の斬撃をダッシュスキルで切り抜け、唯一人で最強種に食らい付く、其の動きを見ながら各々の感想を言い合い。
しかしながら、彼が何時倒れるか解らない為に、サンラクは再誕の涙珠を右手に、左手に
「………………なん、で………なんで?」
そんな中、ペッパーの動きに驚愕とも言える、衝撃を受けた表情のプレイヤー………
ペッパー、今戦っているあのプレイヤーの動きは、於保つかずそして出鱈目で、何時殺られてもおかしくない。
だというのに。
其の動きの節々から感じるのは、剣道や格闘技でも用いられる『後の先』に近しい物であり。其の深く深い思考と読みは、己の『憧れた存在』に近しい物であった。
そしてウェザエモンの攻撃を見る度に、回避が洗練されていき、相手の視線や身体の動きを見続けて、何時倒されるか解らない状況で、あのプレイヤーは『笑っている』のだ。
『相手に攻撃を繰り出させ、得てきた情報を元にして』
『相手を見ながら、己の攻撃を当てられるように動き』
『少ない攻撃回数で、相手を倒しきれるようにする』
そんな立ち回りを。
「………なんで?なん、で………?」
ウェザエモンと戦い続けるペッパーの其の背中に、京極の目には『ある人物』の姿が色濃く重なる。もう此の世には居ない、当世最強と詠われた『正真正銘の剣聖』と。
「サンラク!此れ以上は流石に無理!スイッチしてくれ!」
「おぅ、任せろ!」
ショートメイスをインベントリに仕舞い、黒刀を取り出して逆手に構えながら、ペッパーが叫んだ。其れを合図として、サンラクが走り始めて即座に水鏡の月で、ウェザエモンの背後に一突きの幻影を打ち。ヘイトをペッパーから虚空へ移しながら、イプロッションスライサーで斬撃を叩き込んで、其の戦闘を引き継ぐ。
「時間は!?」
「1分37秒、まぁ上々かな?」
「引き際を弁えてる辺り、本当に厄介だねペッパー君はさ。私より長生きするんじゃない?」
サンラクがウェザエモンと三度の戦闘を開始し、黒幕魔王が何を言ってんだとオイカッツォとペッパーは思いつつも、ペッパーは黒鉄丸を鞘に納刀して絶え絶えの呼吸を、スキル『
と━━━━━━
「ねぇ!
「うおっ!?」
突然胸ぐらを掴まれ、立ち上がらされるペッパー。其の犯人は京極で、其の目は『真剣さ』と同じく『驚愕』と『殺意』で満ちていた。
「ねぇ、誰!?君は誰!?ねぇ、教えてよ!其れを一体
「お、おち…落ち着け、京極…!」
感情がオーバーフローを起こし、其の瞳からはシャンフロの誇るシステムにより、涙が零れ落ちていく。だが、其れをこんな状況下でやっていては、敵に隙を晒すのみ。
「落ち着け京極!今はウェザエモンに集中しないと!」
「そうだよ京極ちゃん!其れに……あと15秒で『規定時間』になる」
オイカッツォがペッパーから京極を引き剥がし、ペンシルゴンがタイマーを見ている。カウントは進み、刻まれた秒数は減少し、そして遂には0を刻む。其の瞬間、ドッ………!と重く空気が、否『隠しエリア全体』が軋む音が、五人の耳に轟き刻まれる。
「第二段階!カッツォ君はロデオ、ペッパー君は全体サポート!京極ちゃんはサンラク君と一緒に、ウェザエモンを対処して!」
「残機回復要員から、麒麟とのロデオ役だ。やってやんよ!」
「おぅ、任せとけ。ペンシルゴン」
「ッ……解った」
一人此方を睨んでいるが、直ぐに気持ちを切り替えて、全員がウェザエモンの方を見る。
『……エ、………………
『…………
上空にて展開されるは、巨大な黒の魔方陣。其所から少しずつ姿を晒し、躍り出たるは巨大な騎馬。
「………ん?」
「なぁ、ペンシルゴン」
「うん?」
「確か情報だと『足が生えたダンプカー』って言ってたよな?」
「そうだよ」
反転の墓標に降り立った其れは、確かに馬の見た目をしていた。しかし実際に目の前で出されたのは、全長およそ8mは余裕で有るだろう、馬の形を成したナニカ。
白い蒸気を顔回りのバルブより吐き出し、稼働する其の様たるや━━━━━━
「コレ、ダンプカーじゃなくて戦車でしょ。どう見てもおっ!?」
「各員持ち場に着けー!?」
「散開!」
「オイカッツォ、マジでロデオ頼んだぞ!?」
前足を振り上げ、踏み付けをゴングとし、ウェザエモン・麒麟の双方が動き始めた。
戦いは、
麒麟とウェザエモンを合流させるべからず