君はどうやって生き残る?
シャンフロの誇る『AI』はゲーム内に存在するNPCを時折、現実世界の『人間』であるかのように錯覚させる。相手の表情から考えを『察し』、必要なアイテムを求めれば外れたりする事はあるが、大体の場合は『当てる』事が出来たりと、VRゲーム全盛期たる此の時代でも数世代先を往く、トンデモスペックだ。
ましてや、シャングリラ・フロンティアというゲームにおいて、ただ七つしか存在しないユニークモンスターへ搭載されたAIともなれば、其れは通常のAIを遥かに超越する。
━━━━━━━であるならば、だ。
『自身の必殺技の一つを完封可能であり、空中を自由自在に飛び回る事が出来て、尚且つ挑戦者の中で最も邪魔に成り得る存在が居たとするならば』。
シャングリラ・フロンティアの、七つの最強種に組み込まれたAIは、一体どのような答えを算出するのか?
答えはこうだ。
「くっそ、ペッパーだけ『集中狙い』してんじゃねぇか!どんだけ空中飛ばれたのを根に持ってんだ、ウェザエモンのヤロウ……!」
「粗方予想はしてたけど、こうなる運命だった訳だ……っぁぶね!?!」
「ッ、此方からの攻撃は『完全に無視を決め込んでいる』…!」
振り下ろしを避け、全力で麒麟との合流をさせないよう逃げ回るペッパーと、全力で追跡して仕留めようとするウェザエモン。
其の全力追跡を行うウェザエモンを、何とかして止めんとするサンラク&
ペッパーもウツロウミカガミを起動させては見るものの、8秒の足止めは出来ても、直ぐにペッパーを目視するや、突撃を敢行してくる。
「おい、ペッパー!其の籠脚外せんのか!?」
「そーだよ、多分其れ付けっぱだから狙われてるんじゃないの!?」
サンラクと京極はレディアント・ソルレイアが原因で、ペッパーが狙われる事になったのではと予測するが、此処で外したとしても、ウェザエモンを動かすAIはペッパーを狙う事を
元々ウェザエモンは、『セツナの墓に危害を出す者』を排除する事が最優先事項であり、其れが『墓守』としての己の役目に則った行動を取る。
そして戦いの中、レディアント・ソルレイアを取り出して、雷鍾を打ち払ったペッパーを見た事により、其の思考は『ペッパーを排除せよ』という、墓守の指命と同じ事項として定めたのだ。
「外した所で、タゲられている以上は一生付き纏って来るよ!出来るだけ反撃しながら、時間を稼いでみせる!」
遠からず、近からず。其の予測が当たったペッパーは、全力逃走からの反転。インベントリからポーションと、
ポーションを浴びるように飲んで体力を回復し、『
しかしウェザエモンはダメージを全く受けてはおらず、逆に大太刀をくるりと回して、鋒を地面に突き立て『
「だぁい!?」
「オイオイ……!」
「全く容赦無し…!」
迫る火の龍、逃げる胡椒。しかし其の火の龍は、天に昇り始め、ペッパーは上空とウェザエモンの位置を把握し、レディアント・ソルレイアに飛翔機構解放の合言葉を言い放つ。
「ッ!『
再び空へ飛び上がり、赤い火の龍達は一つに集まり、黒い雲へと変わる。火砕龍とワンセットで繰り出され、直撃で窒息死が適応される『
高く飛んだペッパーは、ペンシルゴンが前にEメールで記載した灰吹雪の特性から、其のまま突っ込めば窒息死に直結し得ると考察し、身体を上下逆さまに反転させて、ブースターを全開。
『
「晴れろぉおおおおおおお!」
七連続回転蹴りスキルたる『セブニッシュフリップ』と『セルタレイト・ヴァラエーナ』と共に、人間扇風機と化して突撃。最大出力で振るう、開脚回転回し蹴りが嵐を巻き起こし。爆ぜる様に灰吹雪発生前の黒雲は、ペッパーによって払われた。
「灰吹雪…封殺完了!」
直ぐ様地上に着陸するも、待ち構えるはウェザエモン。ペッパーに身心の休息も、安全圏も在りはしない。
『
「うぇあぉ!?」
「くっそ、ウェザエモンが止まらねぇ!」
「あぁもう!興味無しって地味に傷付く!」
逃走するペッパー、追跡するウェザエモン、追尾するサンラク&京極。スタミナとレディアント・ソルレイアのエネルギー切れにならないよう、鬼ごっこは続く。
「おわあああああああああああ!!?!?」
鬼気迫る勢いで襲い掛かるウェザエモンに、ペッパーが追い回されている頃。麒麟を相手にロデオをしているオイカッツォもまた、縄傀儡【蛇】で巻き付けたロープに対し、縦横無尽の『振り落としモーション』に振り回され、空中に放り出されてもおかしくない状態に在った。
「カッツォ君!麒麟から離れなければ、振り落としモーションは解除されないから!」
「解除されないって言っても……!このままじゃ飛ばされるんだけどぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!???」
キャバリー・クライシス全国3位を含む、日本屈指のプロゲーマー・オイカッツォでさえ、麒麟相手に大苦戦を強いられている。
(ペッパー君はウェザエモンに追われて、サンラク君と京極ちゃんはウェザエモンに追い付けても、決定打が与えられてない…!カッツォ君は麒麟の制止に苦しめられている…!間違いなく此処が『分岐点』━━━━!)
戦闘開始からペンシルゴンが此処まで、準備をしていたユニークアイテム『
其の能力は、左側の『捧げの皿』にアイテムやマーニを、文字通り『捧げる』事によって其の金額に応じ、様々な恩恵を右側の『恵みの皿』より受け取る事が可能になる。
「ふぅ~…頼むよ、天秤ちゃん。此の状況を打破するには、君の力が必要だ……!」
思えば自分が最も得意としている交渉やらオハナシやらを駆使し、自身のメイン武器を担保にして『一時的に借りる』事しか出来なかった此れは、墓守のウェザエモンがレベル50を強制する状況を、擬似的に突破可能な存在として、ペンシルゴンが前々から目を付けていた代物。
もしも。阿修羅会がもう一度だけ本気になって、ウェザエモンに挑んでいたなら。自分は此れを借りたり、蘇生アイテムを集めるべく奔走していただろうか?
だが、其れ等はもう既に過ぎ去った事。世界線の分岐でしかないのだ。
「阿修羅会のランキング上位者に、チキンな元クランリーダーが溜めに溜め込んできたアイテム達。そして私が此れまで集めて、あれやこれやでトレードしてきたアイテムやら含めた全財産。其の総額『1億マーニ』を━━━━捧げる!」
己の手によって滅ぼした阿修羅会の、京極と共に回収したクランの持ち物を含め、自分の全てを擲ち捧げた事で左側の皿は、地に着く程に大きく傾いた。
同時に現れるは、支柱の中心に展開される恩恵選択の画面。示された項目より、ペンシルゴンは迷う事無く『追加ステータスポイント』をタッチする。
すると天秤はまるで太陽の如く、其の身に纏う金色の輝きをより一層輝かせ、戦場に光をもたらす程に美しく光を放つ。
「『天秤は均衡を保つ。価値を数値に、万夫不当の力を』………!一時的と言う制約の元、追加ステータスポイントの恩恵を得る。レートは10万マーニに付き、1ポイント。其の合計は1000ポイント……!」
刀一本でプレイヤーとの対人戦に生き甲斐を感じる、時代錯誤の女剣客へ。
何をしたいのか解らない、半裸で鳥頭のクソゲーマーたる幸運戦士へ。
タフネスに秀でし、女アバターの軽戦士ビルドたるプロゲーマーへ。
そして━━━頑固者で女泣かせのウェザエモンの鎧を継承した、自分が愛する一人のレトロゲーマーへ。
「全員に150ポイントずつ!大盤振る舞いだ!!持っていけ泥棒共ッッッッ!!!」
放たれる金色の光、不可能を可能へと変える一計。そして四人に、其の加護は与えられた。
ユニークアイテム・対価の天秤が覚醒する