戦局を打開せよ
「多大な時間稼ぎに……」
「蘇生アイテムの節約……?」
第二段階戦闘開始から6分が経過。ぶん投げられた大太刀を拾い上げるウェザエモンを視界に入れ、ペッパーの発言に耳を貸すサンラクと
「あぁ、けど其れを行うには、サンラクと京極の二人の協力も必要不可欠になるんだ。具体的に言うと、二人にはウェザエモンを『かごめかごめ』して欲しい」
「………は?かごめかごめ?」
「えっ、どういう事?」
突如ペッパーの口から出てきた、子供の遊びに外道二人は疑問符を浮かべ。張本人たる胡椒は左手の
「さぁ、ウェザエモン。俺の策を見破れるかな?」
言うが早いか、投擲スキル『フェイローオブスロー』で投擲玉を投げ込み、ウェザエモンの目の前で白く濃密な煙を発生させる。
『
対するウェザエモンも、煙ごと三人を薙ぎ払って全滅させんとして、雷鍾ではなく吸収不可能の入道雲を選択。煙ごと雲の巨腕にて押し退け払い、自身の周りを薙ぎ払う。
だが煙が払われた先には、三人の姿は無く。左右を見渡すと、サンラク並びに京極の姿は在れども、肝心のペッパーの姿は残像を残して消えている。
「やぁやぁ、ウェザエモン。俺は此方だよ?」
背後より声、振り返ったがペッパーの姿は無い。
「おやおや…俺は近くに居るんだけど、気付かないかな?」
刀を振るえど、ペッパーは居ない。だが気配と声は在る。ならば奴は何処に居る?
「正解は…………貴方の丁度『真後ろ』なんだよね」
ふと足元を見れば、ペッパーの足がほんの少しだけ見えた事で、ウェザエモンは背後に手を伸ばすが、其の手は虚空を掴み。なれば刺突をせんと刃を突き翳すも、当たった手応えは有りはしない。そしてペッパーは宣言通りにウェザエモンの真後ろに居た。
始めに『セルタレイト・ケルネイアー』で跳躍と着地の重力軽減を施し、リキャストが終わった『
「なぁ、ウェザエモン。貴方は『台風の目』を知っていますか?」
ウェザエモンの動き━━━正確には『腰の可動』に己の身体をシンクロさせながら動かす形を維持して、ペッパーは常にウェザエモンの背後を、背中合わせのようにして陣取り続ける。
「貴方程の剣士を相手に、俺はスキルをフル稼働させないと、其の動きに付いていく事は出来ません。けれど、入道雲の説明を友人から教えて貰い、そして此処までの戦いで貴方の動きを見れた事で、確信に至れた。
貴方の放つ即死オンパレードの攻撃範囲……其の『絶対的安全地帯』は貴方の背後にこそ在ると『信じて』、俺は此の作戦を思い付いたという訳です」
ウェザエモンが前に動けば、自らも後ろに動き。逆にバックするなら、此方は前進をチョイス。剣士が持つ剣劇の間合いを、至近距離下で繰り出す掴みさえも封殺し、己に対するヘイトで味方をも守る技。
「名付けて『影法師』……別名『剣士殺しの技』なんて、何処かのレトロゲームで名付けられてました」
「成る程なぁ……剣士の間合いを封殺するたぁ、ペッパーめ。中々やりおるわ」
「武士として見れば、アレは最低の戦法だけどね」
「あっれ~?俺頑張ってるのに、何で京極はそういう事言うのかなぁ?」
サンラクと京極を無視して、己を倒そうとするウェザエモンの思考を信じたペッパー。そしてサンラクと京極がペッパーのオーダー通り、かごめかごめで其の周りを駆け回りつつ、絶妙な距離感を維持する。
ペッパーを狙わなくては、確実に雷鍾や灰吹雪を封じられる。かといって、周りに居る此の二人を放置するわけにもいかない。思考をすればする程に、ウェザエモン━━━否、ウェザエモンを構成するAIは、思考の坩堝に嵌まってズブズブと底無し沼の様に沈んでいく感覚を、
「ヘイヘイヘイヘイ、ウェザエモン!胡椒引っ付いた状態じゃあ、まともに倒せないかぁ~???」
「悔しかったら、ペッパーを早く倒したらどーですかー?????」
外道達が煽り、胡椒が纏わり付いて離れない。思考が縛られる感覚の中、状況を覆すべくウェザエモンは行動の選択を取り、ペッパーの引き剥がしを狙う。
「ペッパー、左腕来るぞ!」
「ありがと、サンラク!」
だが、其の行動を第三者たるサンラクと京極が見逃す訳がなく、行動を読み取られて動きを制限される。ペッパーの集中力が切れるか、ウェザエモンの思考が白旗を掲げるか。互いに苦しい持久戦が幕を開けた。
「なーーーーーーにやってんのかなぁ、あの三人は………」
ウェザエモンの背後を背中合わせに陣取るペッパー、かごめかごめで煽り散らかすサンラクと京極を横目に、ペンシルゴンは大きな溜息を吐く。
しかし其の行動自体は効果覿面で、ウェザエモンの攻撃や行動を封じつつ、時間を稼げている。
「あ、そう言えばカッツォ君は!?」
「おおおおおおぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~!」
ハッと思い出して麒麟の方を見たペンシルゴン、其所には麒麟の頭部にロープで己の身体ごとギチギチに縛り付けて、張り付いているオイカッツォの姿が。
「こ、ここれななならららぁ、振り落とされずずずずにににに~~~!ロデオでででででで、きるわわわわーーーーーー!?」
「え?カッツォ君、何て?」
首をブンブンと全力スイングしたり、上下に振り回しては引き剥がさんと藻掻く麒麟ではあるが、ロープ三本を利用して己を巻き付けたオイカッツォは、そんな程度では剥がされない。
「でも、ここここここれれれれれ、じみみみにに体力へらさささささ、れるかららあああ!ダメ前いいいいえあんまぁぁぁり、長くはもたなななななな!!!??」
麒麟の巨体が揺れる度に発生する、絶大な振動が元々体力耐久にステータスを振り分け、天秤の加護によって更に強靭となった軽戦士たるオイカッツォの体力を、着実に確実に減らしていっている。
「いや、大丈夫だよ。カッツォ君」
ペンシルゴンが見つめていたのはタイマー表示画面。其の秒数を刻む数字が『00:00』へと至り、麒麟は定められた『プログラム』に従い、オイカッツォを振り落とそうと暴れ狂っていた其の巨体を、ピタリと停止させた。
「……あ、れ?止まった……?」
其れは同時にウェザエモンにも起こる。ペッパーを捉えんとした彼が、突如として膝を着いて刀を地に刺し、其の身を止めた。同時に起きるはウェザエモンを全身を包み、攻撃を加えようともダメージを通さなかった、剛強たる甲冑パワードスーツが卵の殻の様に皹割れる『音』。
「止まった…?」
「倒したって…訳じゃなさそうだな……」
「ペッパー!早く此方来て!早く!」
最強種の一角相手に背中合わせをしていたペッパーと、かごめかごめで煽り散らかしたサンラクが同じ疑問を抱く中で、京極は叫んでペッパーを呼び戻す。
「ペッパー、サンラク。気を付けた方が良いよ」
京極は緊張から冷や汗を額に滲ませて。
「カッツォ君。気を引き締めてね」
ペンシルゴンは遠目でウェザエモンを目視し。ウェザエモン戦経験者達は、シンクロしたかのように同時に言葉を発した。
「「此処からが本番………『
戦いはネクストステージへ