第三段階突入
ピキリ…バキッ…パキン……と、まるで卵の中から雛が孵る様に、大太刀の鋒を地面に刺して両膝を着いたウェザエモンの、全身に纏った甲冑から音が響く。
「ペッパー、サンラク。僕とペンシルゴンがマジだった頃の阿修羅会で、たった一度だけ第三段階に来れた事が有った。でも……」
「ウェザエモンが初手に繰り出した咆哮と衝撃波に、全滅させられた。そして今まさに其の衝撃波を、ぶっぱなそうとしている………って事だな?」
「防御も駄目となると、流石に御手上げなんだが……」
「ペッパー君!反転の花園突入前に『瓶』渡したでしょ!アレをウェザエモンにぶん投げて!」
「アレか、解った!」
蘇生アイテム振り分けの際に、此方に手渡された神々しい煌めきを持つ液体入りの瓶を、アイテムインベントリから取り出したペッパーは、スキル『
直後、ウェザエモンの口周りのアーマーがガパッ!っと、口裂け女のように展開し、同時に液体入りの瓶が着弾。バリン!と高級な硝子が割れる音と共に、内に収められていた液体が、破損して隙間が出来たウェザエモンの鎧にぶちまけられ。
『ガ……!?オオオオオオオオォォォォォオオオオォォォォオオオオオオオオオォオオォォォォォォォオオオオオオ!!!!!!!!!!!』
咆哮が放たれる。しかし京極とペンシルゴンの記憶に根付いたウェザエモンの咆哮━━━━━『怒りに燃える怒号』とは明らかに違う、まるで『苦痛に藻掻き苦しむ悲鳴』に似た声であり。
「全体攻撃か!?」とサンラク、ペッパーも身構えるが、一度身を以て経験した京極は反応の違いに気付く。
「いや………コレは!」
そして数秒後、ウェザエモンは顔面を片手で押さえて立ち上がり、自分達には何も起きなかった事で、京極とペンシルゴンは声を上げる。
「全体攻撃がキャンセルされた!」
「よっし、ビンゴ!」
「ペンシルゴン、ペッパーに何渡したんだ!?」
サンラクの声が響き、ペンシルゴンと京極が答えを示す。
「シャンフロってゲームは、世界観や背景から敵モンスターの弱点とかを考察するゲームなんだよね。私と京極ちゃんは最初、ウェザエモンを『身体を機械化させたサイボーグモンスター』って思ってたの」
「でも、サンラクが『何処の情報』から仕入れたか解らないけど、ウェザエモンを『死に損ない』や『生きる屍』って言った事で、本当は『特殊なアンデッドモンスター』じゃないかなと、ペンシルゴンは予想出来た訳さ」
そしてペンシルゴンは、其の答えを踏まえた上でペッパーに渡した『アイテム』の種明かしをする。
「ペッパー君に渡したのは、シャンフロのアイドル『慈愛の聖女イリステラ』が、丹精込めて作った『聖女ちゃんの聖水』。対アンデッドポーションのカテゴリーじゃあ、最強クラスの代物でね。あの手この手の裏ルートで、何とか入手出来た代物なんだよ」
「聖女ちゃんの聖水(意味深)……ねぇ?ペンシルゴン、もしかして其の聖水とやら、『アレ』なヤツじゃないよな?」
「当たり前でしょ!」
「あぁ、其れとサンラク。其の聖女様に頼めば、身体に引っ付いてる
「えっマジで?」
そんな話に花を咲かせていると、ウェザエモンに変化が起きる。全身の装甲に亀裂が走り、頭や首に胴を始め、腕や脚に手首や腰等、各部から蒼白い焔が勢い良く噴出し始め、大太刀の鍔からも同様の焔を出し、其の身体が少しずつ崩壊を始めた。
「ペッパー、サンラク。言っとくけど、僕も此の先の事は
「ゲームの初見突破はゲーマーの嗜みだ。というか、俺もペッパーもオイカッツォも、勝つ為に来たんだからな…!」
「前人未到の領域なんだろ?逆にワクワクするぜ…!」
此の先の事は何も解らない京極からの質問に、サンラクとペッパーは共に力強く答えを返す。
「うわぁ……ウェザエモン、どーなって……わぁわわ!?」
「カッツォく……ん!?」
麒麟に縛り着く形でロデオを乗り切ったオイカッツォだが、其の麒麟が突如音を立てて変型し、ロープが千切れてオイカッツォが振り落とされる。
巨大な馬の体型が、巨大な四肢を持ちながらも、胴体と頭が無い中途半端な甲冑へと姿を変え、腰にはウェザエモンのバネ状の脚がスッポリ嵌まりそうな穴が二つ開いていた。
「此れって……甲冑じゃないの、ペンシルゴン!?」
「ペッパー君の天将王装の中に在るっていう天王……甲冑形態に成れるって言ってたけど、麒麟にも同様な機能が有ったか…!」
仮に……否、十中八九此の甲冑形態と成った麒麟が、ウェザエモンに合流しようものなら、自分達の敗北は間違いなく確定する。今の自分に出来る事は麒麟の足止めを行い、三人がウェザエモンを攻略するまでの時間を稼ぐ事。
「ペッパー君!サンラク君!京極ちゃん!私とカッツォ君で麒麟を止めておくから、ウェザエモンの方を任せられる!?」
彼女の問い掛けに、三人の答えは既に決まっていて。「「「当たり前だ!!!」」」と断言し。其れを合図としたか全身から蒼白い焔を噴き出す、亡霊と化したウェザエモンが━━━━━━
『ワ………レ、ハ………』
「!?」
「えっ…」
「は…?」
『我、は……『ウェザエモン・
喋ったのだ。此迄一切喋らなかったウェザエモンが、ハッキリとした『意志』を以て言葉を放ち。然れども直ぐ様、己の役目を邪魔する者達を斬り捨てに行く。
京極は
すると、今までダメージを表現するポリゴンが出ていなかった、ウェザエモンの身体からポリゴンが溢れ落ちたのを確認した。
「京ティメット、朗報だ。
「よし、来たね!僕達の『反撃のターン』が!此迄やられてきた分の恨みを、纏めて熨斗付けて返してあげるよウェザエモン!!!」
頭装備を凝視の鳥面からクアッドビートルの素材より産み出した、数有るシャンフロの防具では珍しい
手持ち武器をインベントリに、サンラクがスイッチするは、ヴァイスアッシュが
京極も翡翠の太刀をチャキっと鳴らし、刃にウェザエモンの顔を写し、遂に訪れた反撃の
「ウェザエモンの意識が戻った……!なら、此処が纏う時だッ!」
━━━━━━━ソイツを纏うのはァ『アイツの意識が目覚めて』からが良い。そうじゃあねぇと、暴れ狂って手ェ付けられなくなるからよぉ。
ヴァイスアッシュの言葉を思い出し、ペッパーはアイテムインベントリより、其れを取り出し纏っていく。墓守のウェザエモン………ウェザエモン・
黒鉄丸から、天将王装に唯一対応する武装たる
「………
合言葉と共に、大天咫の鋒を天へと掲げ。空色の魔方陣の中より、試作型戦術機獣【天王】が姿を現して。麒麟には及ばずとも、十分な巨体を誇る機械の騎馬が、反転の花園へと降臨する。
『ペッパー、此ノ瞬間ヲ心待チニシテオリマシタ』
「やるよ天王…!俺達でウェザエモンを止めるんだ!」
崩壊する最強種、闘志燃える開拓者達。戦いは佳境へと差し掛かる…………。
天将王装、出陣