VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

164 / 1074


ウェザエモンと戦う者達は




刹那に花を、永劫へ終止符を 其の十三

ペンシルゴンとオイカッツォが、ペッパーが呼び出した試作型戦術機獣(しさくがたせんじゅつきじゅう)天王(テンオウ)】のサポートで甲冑麒麟の腹部を打ち破り、麒麟轟沈作戦が最終段階に突入した其の頃。

 

サンラクと京極(キョウアルティメット)は、自壊によって其の命を削る墓守のウェザエモンへ、攻撃を叩き込み続けていた。

 

「オラァ!」

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

翡翠の刃が斬撃の軌跡を描き、戦角のパリィから紅白の連斬が調を刻み、亀裂が入ったウェザエモンの鎧に切り傷が走り、ダメージ表現たるポリゴンが溢れる。

 

「どーしたどーした、ウェザエモン!御得意のロボット剣術が通用しなくてショックかぁ???フハハハハハハハ!」

「残念だったね、ウェザエモン。僕も君の動きに随分慣れてきたよ。ほらほら、隠してる技でも出したらどーだい???アッハハハハ!」

 

外道二人が嘲笑い、各々の得物で鋒をウェザエモンに向けていた。サンラクは二本の兎月(とつき)達を、合体ゲージを高めて合体状態を目指していた。

 

クライマックスブーストを始め、自身の体力と空腹度が少ない程に、スタミナ・器用・技量を減少し、筋力・敏捷・耐久力を上昇させる『餓狼の闘志(ハンガーウルフ)』。

同じく体力の残量と空腹度を参照して、自身のスタミナが少ない程に、スタミナが底を尽き掛けている状態である程、敏捷・筋力・幸運を上昇させる『我狼の鼓動(ルプスビート)』と共に切り込み。

 

京極は風神刀(ふうじんとう)碧千風(そうせんふう)】で産み出された、裂傷と帯電のデバフを刻んだ箇所へ、デュエルイズムとセツナノミキリより選択派生する『瞬刻視界(モーメントサイト)』。

自身の此処まで得たウェザエモン戦の経験に、持ち前の技量と上位職業(じょういジョブ):剣豪(けんごう)で得てきた、秘剣(ひけん)系列スキルと共に、ウェザエモンの体力を削っていく。

 

(まぁ………此処までノーダメだったアイツにダメージが入って、鬱憤晴らせるのは良いんだが。何か『オカシイ』んだよな)

 

サンラクが感じたのは、ウェザエモンの違和感(・・・)。かなりの回数のクリティカルに加えて、京極の太刀の特性も相まってか、此処まで順調に体力を削っていた。

 

敵は反撃してきているし、攻撃速度も相変わらず超速と理不尽攻撃。現在はペッパーが居ない為に、雷鐘と灰吹雪を防ぐ手段が無く、サンラク・京極共に1回ずつ死亡したが、御互いに蘇生アイテムを投げ付けて、戦線離脱を回避出来ている。

 

だからこそ。クソゲーマー・サンラクは思う━━━『ウェザエモンとの戦いは、ただ体力を削り切って終わる可能性は極めて低い』と。

神ゲーたるシャンフロが、第一段階と第二段階を耐え抜いた褒美として、ユニークモンスターの体力を削り切らせて終了………で、終わらないのでは無いのか。そんなゲーマーとしての予感を抱き。

 

「サンラク!京極!スマン!」

「ペッパー、おせーぞ!ウェザエモンは大分削ったぜ?」

「で、重役出勤のペッパーは今の今まで何をしてたの?」

「ちょっと墓参りに行ってた!」

「墓参り!?彼処の小さな墓に!?」

「何か、そうしなきゃいけない気がしてさ!」

「おいおい、そんなんで大丈夫かよペッパー…」

 

此処で戦線を離れて、あろうことか墓参りをしていたペッパーが、漸く外道二人と合流した時━━━━『其れ』は起きた。

 

『…………ァ………リス…。……ゥェザ……リォ……』

「!」

 

サンラクの胸に煌めく、エムルの宝物である『識別片のネックレス』と。ペッパーが全身に纏いし『悠久を誓う天将王装(フォーエヴァー・ウェザリオ)』を見たウェザエモンは、掠れた声でありながら三人に向け━━━言葉を放つ。

 

『………………アリス(・・・)…………。そして………我の、嘗ての約束(・・・・・)たる、鎧……と……刀……は、無事であったか(・・・・・・・)…………』

 

「………は?アリス………?」

「約束……」

「無事だった………?」

 

サンラク・ペッパー・京極の三人は武器を各々握ったまま、ウェザエモンの様子を窺い。同時に其の会話が何かが起き得る可能性を疑って、構えを続ける。

 

『ア……リス、断片認証キー………『アリス』。………そして『悠久を誓う天将王装(フォーエヴァー・ウェザリオ)』………は、紡がれ………継承された、のだな………』

 

ウェザエモンが言葉を発している。紡がれた、継承された、そしてアリス。サンラクとペッパーがウェザエモンに対する、何らかのフラグを踏んだ可能性が高い。

 

だが、イベントは進行する。ウェザエモンの言葉は止まらない。

 

『悠久は果てなく……我が身朽ち、果て…………彼等の行く末、見ざれ…ど……。確かに………『フロンティア』は………成され、成されて………。人の『想い』、は紡ぎ……紡がれ、ていく……』

 

「おいおい!?其所で其れ(・・)は無いだろう!?」

「まさかこんな状況で考察(・・)させるつもり、ウェザエモンの奴ッ……!」

「ッ………!サンラク、京極!何を仕掛けてくるか解らないから、注意してくれ!」

 

ペッパーは天将王装を纏ったまま、レディアント・ソルレイアの飛翔機能によって上空に舞い上がり。サンラクと京極は共に、各々の得物を握り直して備える。

 

そしてウェザエモンは、まるで何かを『新たに』決心するかのように、弾けた己の鎧に残った肩当てを、自らの手で剥ぎ取り投げ捨て。利き手で大太刀を水平に構え、残された片手を峰に添えて、そして三人の開拓者へと言い放った。

 

『行くぞ……『二号計画(セカンドプラン)』の申し子()よ。我の『戦鎧』を、受け継ぎし勇者(・・)よ………。新たな時代を切り開き、此の世界を拓きたくば……。

 

我が誓いを、我が『晴天大征(セイテンタイセイ)』を…………』

 

 

越えていけ(・・・・・)

 

 

 

其の一言に、サンラク・京極・ペッパーの脳より絶大な衝撃と、背筋を雷が走った様な警鐘が、過去最大級の音量で鳴り響く。

 

「……へっ!此処からが本当の本番ってか!良いぜ、掛かってこいよウェザエモン!」

「ウェザエモンの本気か…、乗り越えてみせる…!」

「絶対に油断したりしない……!」

 

墓守のウェザエモン、最後の戦い。最初に晴天大征のターゲットとされたのは………『サンラク』だった。

 

腰に刀を添えて、超速の抜刀居合の構えと共に。神速の踏み込みから、代名詞たる『断風(タチカゼ)』の一声が響き、頭狙いの一閃が煌めき。然れどもサンラクは、己の動体視力とスキルと天秤で強化された敏捷で、此れを回避する。

 

「ハッ…!御大層な宣言かと思ったら、ただの断風じゃ…『入道雲(ニュウドウグモ)』…は?」

 

なぞりし神速の抜刀居合の最中、空いた手を模して膨れ上がる白い雲の巨腕。

 

「えっ!?何でいきなり『別の技』!?」

「晴天大征……何かが『違う』!」

「おいおい、何焦ってんだウェザエモン!」

 

地面を薙ぎ払う白の質量攻撃を、ダッシュで躱わしたサンラク。其の最中に響くは、ウェザエモンの攻撃技の宣言。

 

雷鐘(ライショウ)

「其れは━━━ボーナス行動ッ!」

 

降り注ぐ雷撃を、上空から強襲したペッパーが吸収していき、再び天へと飛んで行く。だが、今さら雷を吸収されようが、ウェザエモンは気に止める事はしない。

 

断風(タチカゼ)断風(タチカゼ)大時化(オオシケ)

「オイ、技の再使用時間(リキャストタイム)はどーなってやがんだ!?胴、脚、首ィィィィィ!」

 

二連続の抜刀居合を紙一重と跳躍、首掴みを回転キックで腕を弾く。しかし、ウェザエモンは止まらなかった。

 

火砕龍(カサイリュウ)

「全力ダッシュ!」

「灰吹雪は……俺が対応ッ!」

 

差し迫る火柱の龍から回避し、上空に浮き行きて黒雲となり。灰吹雪による追撃前に、ペッパーが人間扇風機の要領で、黒雲を打ち払う。

 

だが、ウェザエモンの本当の最終奥義(・・・・)は此処からだった。

 

晴天大征(セイテンタイセイ)流転(るてん)手向(たむ)けを()って、終極(しゅうきょく)()す』

「ッ!?速い━━━━!」

 

そう。幸運スタミナ敏捷に比重を置くステ振りをしたサンラクの、其の全力全開ダッシュに意とも容易く追い付いてきたのだ。其れだけでなく、既に両手は大太刀の柄を握り締め、刀身は天に掲げられている。

 

晴天(セイテン)転じて、()窮極(きゅうきょく)一太刀(ひとたち)

「明らかに必殺技って感じの其れを、食らう馬鹿はいねーだ………あれ?」

 

武器をインベントリに放り込み、万が一に備えて再誕の涙珠を取り出した瞬間、サンラクに襲い掛かったのは、自分の両足裏が粘着テープによって、地面に吸い付く様な感覚。其れによって彼は、『其の場から一歩たりとも動けなくなったのだ』。

 

おまけに『致命舞術(ヴォーパルまいじゅつ)月光円舞(げっこうえんぶ)】が自動発動した』にも関わらず。

 

「サンラク!?」

「どうした、サンラク!」

「動けね……ッ!!」

 

ぞわりと感じた濃密な死の気配、其の刹那にサンラクは手に持った再誕の涙珠を空に放り投げて、己の死に抗うべく戦角兜【四甲】による、不安定な状態での頭パリィを慣行し。

 

(ワレ)(りゅう)をも()つ………』

 

振り下ろされるは所謂『大上段の斬り下ろし』。剛たる剣の極致にして、回避不能の状況下なれば、其の一刀は文字通り龍ですらも両断し、二の太刀を必要としない。

 

耐久(・・)も、防御(・・)も。魔法(・・)だろうと、幸運(・・)だろうと、そして技能(・・)であったとしても。此の一撃の前に何も意味を成さないのだから(・・・・・・・・・・・・・)

 

 

(テン)(セイ)

 

 

頭パリィで繰り出した、戦角兜の象徴たる四角の内の三本が硝子細工のように『砕け散り』、サンラクの胴体を切り裂き、腰に纏う命湖鱗の腰当を仏陀斬って『破壊した』。

 

(何だそりゃ………天晴だか何だか知らねぇが、此の技は『ヤバすぎる』………!)

 

暗転する意識、聞こえるはペッパーと京極の声。

 

(だがな、ウェザエモン………!『此の程度』で、俺が倒れるタマだと思うな!)

 

僅かに残った視覚が見据えるは、数瞬前に己が放り投げた再誕の涙珠の輝き。開拓者達は闘志を持つ限り、其の心は決して折れない。

 

そして其れが逆境(クソゲー)を誰よりもこそ好む、サンラクであるならば、此の天晴の攻略が彼のゲーマー魂を、烈火の如く燃やすのである。

 

 

 

 

 






墓守が課す、最終試練を越えていけ。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。