墓守のウェザエモンの最後
『
「ダジャレかよ、ウェザエモン」
「サンラク、其所は言わない方が良くない!!?」
「
墓守のウェザエモン、最終奥義の天晴を乗り越えたペッパーとサンラク、そして
『
身体中から放出されていた蒼白い炎は消えて行き、煙が薄く細く線香の様に立ち昇っているのみであり。そしてウェザエモンは静かに、折れた大太刀の所へと歩み寄って、己の得物を拾って言った。
『重ねて……天晴、である。拓く者の末裔達よ……そして、我の……戦鎧を継承、せし……勇者よ……』
全身に纏う甲冑パワードスーツの崩壊が進む中、ウェザエモンは折れた大太刀を、鞘に納刀して一歩ずつペッパーの元へと歩み寄って、彼に問い掛ける。
『我の戦鎧を継ぎし者………名を、聞こう』
「………ペッパー」
『……ペッパー、か』
そう言ったウェザエモンは、己の大太刀をくるりと回して、ペッパーに差し出しながらこう言った。
『ペッパー。御主に……我が『魂』と、我が『名』を……託す。此れより………『
フルフェイスヘルメットの内側でペッパーは目を丸くして、サンラク・京極・オイカッツォ・ペンシルゴンもまた仰天といった表情をする中、ペッパーは何とか冷静さを保ちながら「………ありがたき御言葉。偉大なる魂と名を、謹んで襲名させていただきます」と大太刀を受け取り、深く頭を下げた。そして最後に、遠き日のセツナに言われた伝言を、ウェザエモンへと伝える。
「ウェザエモン・
最後の最後、彼女の言葉を伝えたペッパー。ウェザエモンは暫しの沈黙を経て『………そう、か………』とだけ、言葉を返した。
『悠久に均しき、刻……我の、誓い……も此処ま、で………か……━━━━━』
煙が細く途絶え、身体は朽ち果て、四肢の崩壊が進む中、ウェザエモンは一歩、また一歩とセツナの墓標へ歩いていく。
「あれ、セツナの墓が光っ…………『セっちゃん』……?」
「「「「え………!?」」」」
そんな時だった。ウェザエモンが歩く先を見ていたペンシルゴンが、セツナの墓標に『何か』が在る事に気付き。其の白い物が形を創り、見覚えたセツナの姿を成した瞬間を目撃。
他の四人が墓の方を見ると、確かに其所には『セツナ』が居て。然れど、半透明の『遠き日のセツナ』では無く。墓の近くまで歩いてきていた、ウェザエモンの足が…止まる。
『…………セツ、ナ……━━━?』
『ウェザエモン……私、ずっと、ずっと……貴方に謝りたかった……』
ふわり…ふわり…。形を成したセツナは、ウェザエモンの前に立ち、其の眼から大粒の涙を溢して彼に謝った。
『本当に……ごめんなさい……。私の死が貴方を……ずっと、
『違う!!……我は、君を……守れなかった…!!あの日、
ウェザエモンの声が震え、一人称が素の物へと戻り。セツナはウェザエモンに寄り添い、ずっと伝えられなかった事を━━━━伝える。
『貴方は何時だって不器用で、真っ直ぐで、決めた事は頑として曲げない……私の大切な人。私は貴方を……『許しているわ』。だから貴方も、貴方自身を『許してあげて』………』
彼を愛し、彼の傍に居たからこそ。セツナは………
『嗚呼、嗚呼……セツナ………。俺は……一緒に居て、良いのか……?』
『えぇ……。ずっと、ずっと……一緒よ……ウェザエモン……』
そう言った瞬間、ウェザエモンの身体は完全に崩壊し、同時にセツナの身体も消え。しかし其の場に残る二つの白い霊魂は、互いに離れる事は無く空へと昇っていった。
「………もしかして、ペッパーが『天将王装を装備して墓参りしたから』起きた、イベントシーンだったりするのか?」
「解らないけど……多分、そうなのかも……?」
「シナリオクリアの表示は出てないし、まだ何か有るのかな?」
辺りを見回して、何が起きるか警戒を続けていると、反転の花園『其のもの』に変化が起きる。満開に咲き誇る桜の巨樹は枯れ果てて、色調反転をしていた白い空は黒の夜空に戻り、平坦なフィールドは彼岸花が咲き乱れる、秘匿の花園へと戻っていく。
そしてセツナの墓標の近くに、半透明なセツナが。ユニークNPC・遠き日のセツナが、五人に向けて微笑みながら立っていた。
「セッちゃん……」
『アーサー……。其れに
セツナの言葉に、全員が疑問を抱き。ペンシルゴンがセツナに問い掛けた。
「セッちゃん……というより、セツナって貴方の事じゃないの?其れじゃあ、さっきのセツナって一体……?」
『アーサー……私は確かに『セツナ』ではある。けれど、あの日死んだ『セツナ本人』とは違う……。『もしも恋人がずっとずっと私の死に囚われるのなら、どうか止めて欲しい』…………其の
そして貴方達が見たのは、ペッパーの天将王装の陣羽織に在る、桜の刺繍に宿った『彼女の想い』が、反転の花園に在った『彼女の墓標』と結び付いた事で蘇った、彼女
つまり遠き日のセツナは、セツナ本人の想いによって産み出された、所謂『コピペ』のような存在で。先程のウェザエモンとセツナのやり取りは、天将王装が有ったからこそ起きた『奇跡』だった様だ。
『私はセツナの残滓。役割を終えれば、消える存在……』
そう言ったセツナの半透明な身体は、足元からポリゴンと化して少しずつ消え始めていた。
「あっ……待って、セッちゃん!」
ペンシルゴンが惜しむような声を上げるが、セツナは儚げで朗らかな笑顔で彼女へ言う。
『悲しまないで、アーサー………。彼女の願いに『世界が応えた』時点で、いつかはこうなる事は決まっていたの………」
セツナはまるで、定められた己の運命を受け入れている様に言い。しかし其の表情は真剣な物に変わり、消え行く身体ながら、五人を見て言葉を紡ぐ。
『貴方達は
「バハムート?」
「知らんのか、カッツォ。大体どのゲームでも、ドラゴンとして扱われてる魚だよ」
「いや、それくらい知ってるって。此のゲームのバハムートについてだって」
セツナが言った『バハムート達』というワード。単体では無く複数体で言った事で、ペッパーは此の世界にバハムートなる存在が、少なくとも『一体以上』居るのだと考察する。
「バハムート……セッちゃん、其れって一体……」
『此処から先は、自分で見つけ出してちょうだい。だって其れが、未来を『切り拓く』って事でしょう?』
セツナの真剣な表情は再び、悪戯っ子のような柔らかな物へと戻る。己を構成するポリゴンが消えていく中で、彼女はペンシルゴンを見つめながらにこう言った。
『………アーサー。此れは『セツナ』じゃなくて、『私自身』が貴女に送る言葉』
「えっ………?」
『何時も『私』に、会いに来てくれて……ありがとう。大好きよ、アーサー』
「あ……っ……。………こちらこそ!」
満開に咲き誇る桜の様に、セツナは笑顔でペンシルゴンに手を振って。ペンシルゴンは何かを言おうとしたが、続く言葉を詰まらせ。しかし、彼女との別れをせめて笑顔で居ようと、己の表情を取り繕いながら、彼女に満面の笑顔と手を振って言う。
『そして……ペッパー。貴方にも一言、言わなくちゃいけない事が有るわ』
「俺、に………?」
最後にセツナは、己の言葉に疑問符を浮かべる天将王装を纏った勇者へと、コクリと頷いて。そしてポリゴンが消滅する瞬間に、彼女は彼へと言葉を伝えたのだ。
『━━━━アーサーを、大事にしてあげてね?』
「…………!」
其の言葉の意味が、ペッパーには解らなかった。彼女を『仲間』として大事にすれば良いのか、彼女を『友達』として大事にすれば良いのか。其れとも、彼女を『恋人』として大事にすれば良いのか。
答えが解らなかったペッパーではあったが、今は解らずとも何時かは其の意味を知る時が来ると思い、無言でセツナに頷いて。
其れを見届けた事がトリガーとなって、ユニークNPC・遠き日のセツナは泡沫の様にポリゴンを散らし、朗らかな笑顔のまま此の世界から消滅したのだった。
『墓守のウェザエモンは永い眠りについた』
『勇者は偉大なる将軍より魂と名を継承した』
『別たれた二人は此処に再び廻り逢えた』
『セツナの残滓は遠き日の願いを終えた』
『ユニークシナリオEX【此岸より彼岸へ愛を込めて】をクリアしました』
『称号【看取りし者】を獲得しました』
『称号【刹那を想う者】を獲得しました』
『称号【ご先祖様のお墨付き】を獲得しました』
『称号【残影を纏う者】が【天津気の襲名者】に変化しました』
『参加者全員がアクセサリー【
『参加者全員がアイテム【
『参加者全員がアイテム【世界の真理書「墓守編」】を獲得しました』
『アイテム【折れたバンガード】を獲得しました』
『Loading………』
『ユニーククエスト【インパクト・オブ・ザ・ワールド】が進行しました』
『ユニーククエストEX【七星の皇鎧よ、我が元に集え】が進行しました』
『ユニークシナリオEX【
『ワールドストーリー【シャングリラ・フロンティア】が進行しました』
成し遂げられし、前人未到の偉業