VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

168 / 1075


墓守のウェザエモンの最後




刹那に花を、永劫へ終止符を 其の十七

晴天(セイテン)転じて、我が窮極(きゅうきょく)一刀(ひとたち)………天晴(テンセイ)。此処に言葉は移りて、(イワイ)へ転ず……………天晴(あっぱれ)である。我が窮極、よくぞ見切った』

「ダジャレかよ、ウェザエモン」

「サンラク、其所は言わない方が良くない!!?」

天晴(てんせい)……天晴(あっぱれ)……フフッ。結構『ハイカラ』なんだね、ウェザエモン」

 

墓守のウェザエモン、最終奥義の天晴を乗り越えたペッパーとサンラク、そして京極(キョウアルティメット)へと贈られた賛美の言葉。まさか此の場面でダジャレが飛んで来た為に、思わずツッコミを入れたサンラク、そんな彼にペッパーはツッコミ。そして想う所が有ったのか、京極は微笑んでいる。

 

呵々々(カカカ)……嗚呼(あぁ)。セツナにもよく、言われた……ものよ………』

 

身体中から放出されていた蒼白い炎は消えて行き、煙が薄く細く線香の様に立ち昇っているのみであり。そしてウェザエモンは静かに、折れた大太刀の所へと歩み寄って、己の得物を拾って言った。

 

『重ねて……天晴、である。拓く者の末裔達よ……そして、我の……戦鎧を継承、せし……勇者よ……』

 

全身に纏う甲冑パワードスーツの崩壊が進む中、ウェザエモンは折れた大太刀を、鞘に納刀して一歩ずつペッパーの元へと歩み寄って、彼に問い掛ける。

 

『我の戦鎧を継ぎし者………名を、聞こう』

「………ペッパー」

『……ペッパー、か』

 

そう言ったウェザエモンは、己の大太刀をくるりと回して、ペッパーに差し出しながらこう言った。

 

『ペッパー。御主に……我が『魂』と、我が『名』を……託す。此れより………『天津気(アマツキ)』と……名乗る、事を……許す』

 

フルフェイスヘルメットの内側でペッパーは目を丸くして、サンラク・京極・オイカッツォ・ペンシルゴンもまた仰天といった表情をする中、ペッパーは何とか冷静さを保ちながら「………ありがたき御言葉。偉大なる魂と名を、謹んで襲名させていただきます」と大太刀を受け取り、深く頭を下げた。そして最後に、遠き日のセツナに言われた伝言を、ウェザエモンへと伝える。

 

「ウェザエモン・天津気(アマツキ)さん。最後にセツナさんから、貴方に伝えて欲しいと伝言を賜っています。『貴方は……もう十分に守ってくれた、本当に………本当に、ありがとう』………と」

 

最後の最後、彼女の言葉を伝えたペッパー。ウェザエモンは暫しの沈黙を経て『………そう、か………』とだけ、言葉を返した。

 

『悠久に均しき、刻……我の、誓い……も此処ま、で………か……━━━━━』

 

煙が細く途絶え、身体は朽ち果て、四肢の崩壊が進む中、ウェザエモンは一歩、また一歩とセツナの墓標へ歩いていく。

 

「あれ、セツナの墓が光っ…………『セっちゃん』……?」

「「「「え………!?」」」」

 

そんな時だった。ウェザエモンが歩く先を見ていたペンシルゴンが、セツナの墓標に『何か』が在る事に気付き。其の白い物が形を創り、見覚えたセツナの姿を成した瞬間を目撃。

 

他の四人が墓の方を見ると、確かに其所には『セツナ』が居て。然れど、半透明の『遠き日のセツナ』では無く。墓の近くまで歩いてきていた、ウェザエモンの足が…止まる。

 

『…………セツ、ナ……━━━?』

『ウェザエモン……私、ずっと、ずっと……貴方に謝りたかった……』

 

ふわり…ふわり…。形を成したセツナは、ウェザエモンの前に立ち、其の眼から大粒の涙を溢して彼に謝った。

 

『本当に……ごめんなさい……。私の死が貴方を……ずっと、(過去)に縛り付けてしまっていた事を………』

『違う!!……我は、君を……守れなかった…!!あの日、()が……嘘さえ、付かなければ……!君を死なせる事もッ……!』

 

ウェザエモンの声が震え、一人称が素の物へと戻り。セツナはウェザエモンに寄り添い、ずっと伝えられなかった事を━━━━伝える。

 

『貴方は何時だって不器用で、真っ直ぐで、決めた事は頑として曲げない……私の大切な人。私は貴方を……『許しているわ』。だから貴方も、貴方自身を『許してあげて』………』

 

彼を愛し、彼の傍に居たからこそ。セツナは………刹那(セツナ)天津気(アマツキ)は、彼を救う言葉を知っているのだろう。

 

『嗚呼、嗚呼……セツナ………。俺は……一緒に居て、良いのか……?』

『えぇ……。ずっと、ずっと……一緒よ……ウェザエモン……』

 

そう言った瞬間、ウェザエモンの身体は完全に崩壊し、同時にセツナの身体も消え。しかし其の場に残る二つの白い霊魂は、互いに離れる事は無く空へと昇っていった。

 

「………もしかして、ペッパーが『天将王装を装備して墓参りしたから』起きた、イベントシーンだったりするのか?」

「解らないけど……多分、そうなのかも……?」

「シナリオクリアの表示は出てないし、まだ何か有るのかな?」

 

辺りを見回して、何が起きるか警戒を続けていると、反転の花園『其のもの』に変化が起きる。満開に咲き誇る桜の巨樹は枯れ果てて、色調反転をしていた白い空は黒の夜空に戻り、平坦なフィールドは彼岸花が咲き乱れる、秘匿の花園へと戻っていく。

 

そしてセツナの墓標の近くに、半透明なセツナが。ユニークNPC・遠き日のセツナが、五人に向けて微笑みながら立っていた。

 

「セッちゃん……」

『アーサー……。其れに京極(キョウアルティメット)、オイカッツォ、サンラク、そしてペッパー……成し遂げてくれたのね。本当に……本当に、ありがとう。私の……いいえ、遠き日に『セツナ』が抱いた願いは……此処に果たされました』

 

セツナの言葉に、全員が疑問を抱き。ペンシルゴンがセツナに問い掛けた。

 

「セッちゃん……というより、セツナって貴方の事じゃないの?其れじゃあ、さっきのセツナって一体……?」

『アーサー……私は確かに『セツナ』ではある。けれど、あの日死んだ『セツナ本人』とは違う……。『もしも恋人がずっとずっと私の死に囚われるのなら、どうか止めて欲しい』…………其の想い(・・)が生み出した彼女の『残滓』。謂わば筆跡まで完全に再現された、写本(・・)のようなものなの。

そして貴方達が見たのは、ペッパーの天将王装の陣羽織に在る、桜の刺繍に宿った『彼女の想い』が、反転の花園に在った『彼女の墓標』と結び付いた事で蘇った、彼女本人(・・)の霊魂よ』

 

つまり遠き日のセツナは、セツナ本人の想いによって産み出された、所謂『コピペ』のような存在で。先程のウェザエモンとセツナのやり取りは、天将王装が有ったからこそ起きた『奇跡』だった様だ。

 

『私はセツナの残滓。役割を終えれば、消える存在……』

 

そう言ったセツナの半透明な身体は、足元からポリゴンと化して少しずつ消え始めていた。

 

「あっ……待って、セッちゃん!」

 

ペンシルゴンが惜しむような声を上げるが、セツナは儚げで朗らかな笑顔で彼女へ言う。

 

『悲しまないで、アーサー………。彼女の願いに『世界が応えた』時点で、いつかはこうなる事は決まっていたの………」

 

セツナはまるで、定められた己の運命を受け入れている様に言い。しかし其の表情は真剣な物に変わり、消え行く身体ながら、五人を見て言葉を紡ぐ。

 

『貴方達は開拓者(かいたくしゃ)二号計画(セカンドプラン)末裔(まつえい)、そして世界を『(ひら)(もの)』。もしも……貴方達が自身のルーツを。『世界の真実』を知りたいと願うのなら━━━━━『バハムート達』を探しなさい』

「バハムート?」

「知らんのか、カッツォ。大体どのゲームでも、ドラゴンとして扱われてる魚だよ」

「いや、それくらい知ってるって。此のゲームのバハムートについてだって」

 

セツナが言った『バハムート達』というワード。単体では無く複数体で言った事で、ペッパーは此の世界にバハムートなる存在が、少なくとも『一体以上』居るのだと考察する。

 

「バハムート……セッちゃん、其れって一体……」

『此処から先は、自分で見つけ出してちょうだい。だって其れが、未来を『切り拓く』って事でしょう?』

 

セツナの真剣な表情は再び、悪戯っ子のような柔らかな物へと戻る。己を構成するポリゴンが消えていく中で、彼女はペンシルゴンを見つめながらにこう言った。

 

『………アーサー。此れは『セツナ』じゃなくて、『私自身』が貴女に送る言葉』

「えっ………?」

『何時も『私』に、会いに来てくれて……ありがとう。大好きよ、アーサー』

「あ……っ……。………こちらこそ!」

 

満開に咲き誇る桜の様に、セツナは笑顔でペンシルゴンに手を振って。ペンシルゴンは何かを言おうとしたが、続く言葉を詰まらせ。しかし、彼女との別れをせめて笑顔で居ようと、己の表情を取り繕いながら、彼女に満面の笑顔と手を振って言う。

 

『そして……ペッパー。貴方にも一言、言わなくちゃいけない事が有るわ』

「俺、に………?」

 

最後にセツナは、己の言葉に疑問符を浮かべる天将王装を纏った勇者へと、コクリと頷いて。そしてポリゴンが消滅する瞬間に、彼女は彼へと言葉を伝えたのだ。

 

『━━━━アーサーを、大事にしてあげてね?』

「…………!」

 

其の言葉の意味が、ペッパーには解らなかった。彼女を『仲間』として大事にすれば良いのか、彼女を『友達』として大事にすれば良いのか。其れとも、彼女を『恋人』として大事にすれば良いのか。

 

答えが解らなかったペッパーではあったが、今は解らずとも何時かは其の意味を知る時が来ると思い、無言でセツナに頷いて。

 

其れを見届けた事がトリガーとなって、ユニークNPC・遠き日のセツナは泡沫の様にポリゴンを散らし、朗らかな笑顔のまま此の世界から消滅したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『墓守のウェザエモンは永い眠りについた』

『勇者は偉大なる将軍より魂と名を継承した』

『別たれた二人は此処に再び廻り逢えた』

『セツナの残滓は遠き日の願いを終えた』

『ユニークシナリオEX【此岸より彼岸へ愛を込めて】をクリアしました』

『称号【看取りし者】を獲得しました』

『称号【刹那を想う者】を獲得しました』

『称号【ご先祖様のお墨付き】を獲得しました』

『称号【残影を纏う者】が【天津気の襲名者】に変化しました』

『参加者全員がアクセサリー【格納鍵(かくのうけん)インベントリア】を獲得しました』

『参加者全員がアイテム【球状型記憶装置(きゅうじょうがたきおくそうち):極天(ぎょくてん)】を獲得しました』

『参加者全員がアイテム【世界の真理書「墓守編」】を獲得しました』

『アイテム【折れたバンガード】を獲得しました』

『Loading………』

『ユニーククエスト【インパクト・オブ・ザ・ワールド】が進行しました』

『ユニーククエストEX【七星の皇鎧よ、我が元に集え】が進行しました』

『ユニークシナリオEX【致命兎叙事詩(エピック.オブ.ヴォーパルバニー)】が進行しました』

『ワールドストーリー【シャングリラ・フロンティア】が進行しました』

 

 

 

 






成し遂げられし、前人未到の偉業


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。