ユニークモンスターの討伐を成して
「なぁ、ペンシルゴン……」
「………ぐずっ、な…泣いてなんか、ないから」
「俺まだ何も言ってねぇよ?」
ユニークモンスター・墓守のウェザエモン、ユニークNPC・遠き日のセツナの最後を見届け、ペッパーはペンシルゴンに声を掛けて。当の本人は涙声で、泣き顔をゴシゴシと腕で拭っている。
そして其の後ろでは、サンラク・オイカッツォ・
「いやぁ………まさか、ペッパーとペンシルゴンがねぇ~~~???実は
「もしかして御二方、
「コラコラ、サンラクとオイカッツォ。其所はもっと
外道共が結託してワイワイ言ってくるが、此処で下手に反応すれば何を言われるか解らないので、どうしたものかと思っていると、全員の目の前にユニークシナリオEXのクリア画面が表示された。
「ぐずっ……うぅ……。………とにかく、何はともあれ……。皆、私のワガママに付き合ってくれて、本当にありがとう。おかげでユニークシナリオの攻略まで、キッチリ持っていけたよ」
四人に素直な礼を述べたペンシルゴンに、各々の言葉を以て返事を返す。
「ンだよ、急に改まりやがって。俺達全員、やりたいから参加した。其れだけだろ」
「そーそー。無事全員生存出来たし、ウェザエモンもセツナに再会で、大団円……だったのかは知らないけど、クリアしたからね」
「僕もウェザエモンにリベンジ出来たから、満足と言えば満足ではあるかな」
「何にせよ……シャングリラ・フロンティアのサービス開始から、初めてのユニークモンスター討伐かぁ……報酬気になる」
「「「それはそう」」」
やんややんやと騒ぐサンラク、オイカッツォに京極と、そしてペッパーを見ながら、ペンシルゴンはカリスマモデルや黒幕魔王とも違う、心からの笑顔で大々と宣言した。
「さぁ、野郎共!報酬確認と洒落込もうか!」
ペンシルゴンの音頭に四人が『おー!』と同意した、まさに其の時。
突如として秘匿の花園の上空に現れた、黄金にして年季の籠った鐘楼。其れがカラーン…!カラーン…!カラーン…!と荘厳な鐘の音を、幾度も鳴らし始めたのだ。
「えっ?」
「何あれ、鐘楼?」
「あぁ…アレはゲームアナウンスの鐘だよ。シャンフロの運営からの『お知らせ』ってヤツだね」
初めて見る其れに、サンラク・オイカッツォが疑問の声を上げ、京極は其れに対する回答を出し。
「なぁ……ペンシルゴン。俺ちょっと『嫌な予感』がするんだけど」
「奇遇だね、ペッパー君。私も『そんな気』がするよ」
そして二人の予想通り━━━━其れはアナウンスとなって、秘匿の花園へ。否、文字通り『此のシャングリラ・フロンティアという世界』の全てへと響く報せとなって、英雄達の名を轟かせたのだ。
『シャングリラ・フロンティアをプレイされている全てのプレイヤーの皆様にお知らせ致します。現時刻を持ちまして、ユニークモンスター………『墓守のウェザエモン』の討伐を確認致しました。
討伐者プレイヤー名は『アーサー・ペンシルゴン』・『オイカッツォ』・『
さらにユニークモンスターの討伐に伴い………ワールドストーリー【シャングリラ・フロンティア】が進行しました』
鐘の音と共に、世界へ響き渡るアナウンス。伝える事を伝え終えてか、金色の鐘楼は消え去って。五人は御互いに顔を見合わせた。
「………逃げるか、誰か来る前に」
「それな」
「取り敢えず、解散って事で良い?」
「OK、其れで行こう」
「報酬確認は個々人で。後日、蛇の林檎に集合しよう」
そんな中、サンラクは二羽とペッパーには三羽のフクロウが飛んで来て、各々が彼等の腕に乗って来た。同時に画面には『
確認すると、サンラクはサイガ-0とサバイバアルからで、前者は前人未到の偉業を成し遂げた彼に対する称賛、後者は落ち着いたらウェザエモンの事を聞かせてくれとあり。
ペッパーの方はジョゼットに、レーザーカジキとキョージュ、前者はサイガ-0と同じく偉業を称え、中者はサイガ-0やジョゼットと同じだが、偉業への称賛が語彙力を失った状態、後者は墓守のウェザエモンについて話が聞きたいと言う、だいぶハッスルした文面であった。
同時に『解散ッ!』と五人は叫んで、ペンシルゴンは刺さったままのグラダネルガを回収してから、他四人も秘匿の花園を出た後、サンラク・ペッパーはサードレマ、京極・オイカッツォはフォスフォシエ方面へと走り出す。
停滞に満ちた世界は、遂に動き出した。五人の
ウェザエモン討伐者の五人を探す、他プレイヤー達が喧騒と血眼で探し回るサードレマに戻りつつ、ペッパーは胴装備を名前隠しが出来る
グッドタイミングとも言うべき所で、迎えに来たアイトゥイルとエムルに各々抱き着かれ、涙と鼻水ぐしゃぐしゃの泣き笑顔で、彼女達が何を言っているか解らなかったが、取り敢えず二人は兎御殿へと避難。
数分後、一足先に落ち着きを取り戻したアイトゥイルが、ヴァイスアッシュに無事に帰還したと伝えに行き、エムルはサンラクの頭に乗って、二人を連れて大広間へと案内した。
「おぅ。ペッパー、サンラク。早速聞かせてぇ貰おうかい……あの『死に損ない』は、どうだったぁ」
座りつつ、年代物の人参煙管で煙を吸い込み、ヴァイスアッシュが問い掛ける。
「ウェザエモン・天津気さんは、本当に……本当に強敵でした。サンラクを始めとして、仲間達の協力無しでは決して勝てない程に」
「滅茶苦茶強かったッス、ヴァッシュの兄貴。少なくともルーザーズ何たらと、比べ物にもならないくらい」
「はっはっは!だろうなぁ……」
もし天王と合体していなかったら、もし大天咫の超過機構を使っていなかったら。きっと負けていたのは自分の方で。其れ程までに墓守のウェザエモン………ウェザエモン・天津気は此迄のゲーマー人生で、最大最強に相応しい相手だと、胸を張って言い切れる。
「………あいつぁ満足して逝けたかい」
「
サンラクが答え、チラリとペッパーを見て。ペッパーは小さく頷き、アイテムインベントリから『折れたバンガード』を取り出して、己の前に置いて言った。
「ウェザエモン・天津気さんより、彼の魂たる『大太刀・バンガード』を受け継ぎ。そして彼の名前たる『天津気』を襲名させていただきました」
育てている弟子の一人が、まさか死に損ないから魂と名を継承した等、ヴァイスアッシュも予想外だった様子であり。
「ふっははははは……!!!!はははははははははははは!!!!そうか、ペッパー!おめぇさん、あいつに認められたかぁ!」
驚き半分、喜び半分の笑い声で、高らかに笑い。軈て瞑目した後に、何かを決意してペッパーとサンラクへ言ったのだ。
「育み……拓く……そろそろ、かもなぁ。………ペッパー、サンラク。おめぇさん等……『世界の真実』を知りてぇかい?」
ヴァイスアッシュの問いに、二人は迷う事もなく答えてみせた。
「……そりゃあ、願ってもない事で」
「…………はいッ!先生!」
世界の真実を知る為に、二人の新たな戦いが幕を開けんとしている…………。
世界は、遂に動き出す