VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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ヴァイスアッシュが打ちし、残照を刻んだ包丁の形




真化の輝きは、星の皇の剣となりて

ビィラックの伝言を受け、ペッパーはアイトゥイルと彼女を肩に乗せて、ヴァイスアッシュの鍛冶場へとやって来た。

 

「先生、失礼致します」

「おぅ、ペッパーかぁ。待ってたぜぇ」

 

人参煙管で煙草の煙を吸いながら、ヴァイスアッシュは一仕事を終えきった表情でペッパー達を出迎える。心なしか彼の身体が、少し細くなったような気がするのは見間違えだろうか。

 

「先生、痩せました?」

「ハハハ!そりゃ、半日近くトンカチ握って打ったからなぁ。すげェモンが出来たぜ?」

「……お疲れ様です!」

 

ヴァイスアッシュ程の鍛冶師が、半日掛かる程の戦いをした武器は。リュカオーンの残照が刻まれた致命の包丁(ヴォーパルチョッパー)は、一体どんな姿に生まれ変わったのだろう。

 

「おめぇさんが渡した、犬っころの残照が引っ付いた致命の包丁(ヴォーパルチョッパー)はぁ……死に損ないの魂たる大太刀を加えてぇ、此処に新たな姿(すがた)()ァを得た。

コイツの銘は兎月(とげつ)……いや、兎月なんてモンにゃ『収まらねぇ』。なげぇこと(てつ)を打ったオイラですら、こんな上物(じょうもん)に仕上がり、姿を変えたのは随分と久し振りだぁ(・・・・・・・・・)

 

其所に在ったのは、ペッパーが予想していた形である『刀』ではなく、RPGゲームの最終盤で手に入るコッテコテの『聖剣』。剣の長さは刀身だけで『70cm』、刃幅は『15cm』程有り、一瞬『両手剣』かと思われたが、此の武器のカテゴリーは『片手剣』とある。

 

其の身を彩る『銀と空色』の刀身は美しく輝き、然れど此の刃には光が宿り輝く程に、刃の中に在る『黒い光』もまた同様の存在感を放っており。

 

そして何よりも、其の身に刻まれた『七つの穴』が、喋らずとも此の剣の異質さ(・・・)を物語る。まるで何かを『セット』する事で其の真価を、其の真髄を『解放』出来るかの様に在り。聖剣の隣には黒く、黒い『鞘』が置かれ。其の黒さは星の輝きも、光の煌めきさえも吸い込み、二度と出られなくする『ブラックホール』に似た力を秘めている。

 

「コイツの銘ァは『星皇剣(せいおうけん)グランシャリオ』。死に損ないやジークヴルム、毛色は違うが犬っころにも認められた、おめぇさんと共に歩み……其の身を更なる高みへ届かせる。正真正銘の『業物(ワザモノ)』よぉ」

 

ヴァイスアッシュが其所まで言い切る程に、ビィラックもアイトゥイルも、そしてペッパーも目の前にある聖剣を目を丸くしながら見つめて。

 

固唾を飲み込み、震える手で聖剣の柄を掴みつつ、ブラックホールのように全てを吸い尽くす鞘へ刃を納め、そして其の性能をチェックした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星皇剣(せいおうけん)グランシャリオ(ユニークウェポン)

 

武器種:片手剣

 

兎の国の神匠が、致命の名を冠する刃に神代最強の英雄の遺した御霊(みたま)を用い、真化を行う事により姿を成した蒼天(そら)を舞う勇者の(つるぎ)

最強種達に認められし者が、強き意思と共に刃を振るえば、己に掛かりし呪いを捩じ伏せ、其の手に剣は握られる。其の刃に彼等彼女等の根源を示す物を翳す時、星の剣に光は灯りて、其の御技は解放される。譲渡及び破棄不可能、PKされても持ち主の手元を離れない。

 

此の武器を装備する場合、装備者に以下の状態異常が付与されている場合、此の武器の黒鞘を当てる事により、戦闘終了まで『装備出来ない効果』のみを吸収する。

 

・リュカオーンの呪い(マーキング)

・リュカオーンの刻傷(こくしょう)

・リュカオーンの愛呪(あいじゅ)

 

 

此の武器は破壊・消滅されず、耐久値が0になった場合にオブジェクト化する。アイテムインベントリ及びインベントリア内で、一定時間使用せずに置く事で、此の武器の耐久値はMAXまで回復する。

 

此の武器を用いた刺突及び斬撃、並びにスキルによるダメージとクリティカル、クリティカル補正上昇能力を含む攻撃は、プレイヤー・エネミー・ユニークモンスターの持つ防具・スキル・アクセサリーで軽減されず、無効化されない。

 

夜の時間帯に此の武器を使用した場合、夜襲のリュカオーンが其のエリア内、もしくは隣接するエリアに存在するなら、確定で遭遇する。また此の武器を夜襲のリュカオーンとの戦闘中に使用した時、夜襲のリュカオーンの装備者に対するヘイトが永続する。

 

 

必要ステータス

 

【筋力150】【技量125】【器用125】

 

【ヴォーパル魂300】【高潔度300】【歴戦値1000】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、コレはヤバい武器だ。そうペッパーは瞬間的に理解した。一時的とは言え、リュカオーンの呪いによって装備不可能の都合上、アイテム投擲ばかりだった右手が此の装備限定だが装備可能となり、更には耐久限界による破壊・消滅問題を、インベントリやインベントリアに収納すれば、時間経過が何れだけ掛かるかは解らないものの、耐久値MAX=完全に修復される事を意味している。

 

刺突・斬撃系統のスキルによるダメージ軽減を許さず、おまけにユニークモンスター相手となれば、其の理不尽に刃を突き立て、切り裂く事が可能となっていた。

 

しかし問題点も有り、リュカオーン相手に此の剣を振るえば、彼方は戦闘終了まで自分しか狙わなくなる事。デコイになれば良いが、リュカオーンを相手にして何分持ちこたえられるか解らない以上、そう簡単には使えない。

 

そしてさらっと、リュカオーンの呪いに関する興味深い表記も有る。刻傷と愛呪とは一体何なのか、疑問は積み重なるばかりである。

 

総じて、星皇剣グランシャリオと言う武器は『とんでもない能力を秘めた、とんでもないヤバい武器』という評価に、ペッパーは落ち着く事とした。

 

「先生、ありがとうございます。お疲れの所悪いのですが、此のグランシャリオの説明に在る『根源を示す物』とは一体………?」

「そいつはァ、おめぇさん自身が見付けるべき物なのさ。其れによぉ……其の一つをおめぇさんは『既に』手にしてるんだからなぁ」

「手に入れている………」

 

ヴァイスアッシュは其れ以上の事は教えず、自分自身で見付けて初めて意味が有ると、そう言い切った。ならば其れを探し出すのもまた、ゲーマーの生き様なのだから。

 

ペッパーは彼に頭を深く下げて礼を述べ、アイトゥイルと共に休憩室からゲートを開いて、サードレマの裏路地へと繰り出し、蛇の林檎へと向かったのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後5時、サードレマ・蛇の林檎。

 

影法師の愉快合羽(グルナー・ト・シェミンコート)の中にアイトゥイルを入れて訪れたペッパーは、到着して個室を取っていたサンラク・オイカッツォ・京極、そして麻の衣服一式と花飾りに清歯のネックレスを付けたペンシルゴンが、巨大なバースデーケーキを取り囲むように待っていた。

 

「やぁやぁ、ペッパー君。君が一番最後のドンケツだよ?」

「悪いな。此方は此方で、ウェザエモンさんの報酬確認してたからね。で、何で貧相な装備に成ってるの?ペンシルゴン」

「格納鍵インベントリアの性能確認の為に『サバちゃん』にお願いして、現地解散後にPVPして貰ったんだってさ」

「実験は無事成功してね。報酬として再誕の涙珠や生命の神薬を持ってかれたけど、インベントリアに入ったアイテムやらは、没収されずに済んで一安心だよ」

 

PKされても手元を離れないインベントリアの特性を、PKerがキルされても効果が働くかを自身で確かめていたと、京極(キョウアルティメット)は言った。ペッパーは実験は大事と思いながらも、京極の回答で出てきた名前について問う。

 

「そうか……あとサバちゃんって誰?」

「ソイツは俺の別ゲーの知り合いでな。サバイバアルってPNで、ペッパーを探してるんだと」

「そうなのか……」

 

サンラクの知り合いとなると、どんなプレイヤーなのか気になるが、其れは其れとしてペッパーは席に座る。

 

「さて……全員集まったし、色々と確認したい事が有るんだけど。先ずは『インベントリアの中に在る、SFパワードスーツやらロボットに武装』は見たよね?」

「あぁ。世界観が中世から、一気に超未来方面に飛んじまったな」

「ペッパーのサムライアーマーがそうだったけど、アレはアレで本当に凄いよ」

「というかアレ全部ワンマンアーミーでしょ、あの装備達さ」

「僕は彼処の中にある太刀武器を使ってみたいな……」

 

最初の話題はインベントリアの中に在る、戦術機獣やパワードスーツ、そして武器の数々についてだ。しかし、此処でペンシルゴンは現実を突き付けてくる。

 

「まぁ、使ってみたいって気持ちは解るけれど、率直に事実を述べるなら『動力源』が無いので、現状鑑賞用以外にアレに価値が無い」

「動力源?」

 

「そう」とペンシルゴンは言い、バースデーケーキの苺に似た果物を口に入れ、淡々と事実を述べる。

 

「ペッパー君が持ってる、サムライアーマーと天王(テンオウ)ちゃんに大天咫(オオテンタ)の動力は、一体どうなってるのかは置いとくとしておいても、インベントリアの中にあるパワードスーツにロボット達は、動力源━━━━『規格外エーテルリアクター』が無いと装備諸々含めて動かないの」

 

どうやら其れを稼働させるには、対応するアイテムが必要不可欠であり、其れが無いと話にもならないようだ。だがしかし、此処で驚くべき物をオイカッツォが取り出した。

 

「ん……?規格外エーテルリアクター……?もしかして『コレ』か、ペンシルゴン」

「ぶっふぅ!?えっ!?なんっで、カッツォ君持ってるの!?」

「うわっ、きったねぇ!?」

「おいペンシルゴン、せめて口を塞ぎなさい」

 

オイカッツォが取り出したのは、角を取った三角柱状の筒のアイテム。其所には確かに『規格外エーテルリアクター』と有り、インベントリアに在る戦術機獣を含んだ物を動かす為の動力源だ。

 

「俺、ウェザエモンとの戦いで麒麟に付きっきりだったからなのか、討伐報酬で真理書と極天に、インベントリアとコイツを報酬で貰ったんだよ」

「カッツォ、マジナイスだ。ロデオが効を奏して、スーツにロボット達起動の足掛かりが出来たな」

「ファインプレーだよ、緊縛ロデオ君」

「くっ、スクショしとけば良かった……!」

「ウェザエモン戦、唯一の不覚ッ……!」

「おい、外道三人。場合によっては俺女子の顔面も躊躇無く殴りにイクヨ?」

 

シュッシュシュとシャドーボクシングの要領で、ジャブを繰り出す真似をするオイカッツォ。しかしオイカッツォは、規格外エーテルリアクターを見ながらこう言ったのだ。

 

「ただコイツ……『破損』してるらしくてね。フォスフォシエやサードレマの鍛冶師に修理を依頼したんだけど、全員『こんなワケ解らんもん直せるか』の一点張りだったよ」

「参ったね……直せる鍛冶師が必要なのか、其れとも特殊なアイテムが必要なのか………」

 

またしても行き詰まり、頭を悩ませながら水を飲むペンシルゴン。しかしペッパーとサンラクは、神代の遺物を扱える存在………ヴァイスアッシュを知っており、彼は遺機装(レガシーウェポン)を修繕出来ていたので直せるアテを持っている。

 

「其のエーテルリアクター、直せるかも知れねぇぞペンシルゴン」

「ぶっーーーーー!?」

「オイゴラ、ペンシルゴン!今のわざとやったろ!?」

「ペンシルゴン、ロボット扱えなくなっても俺は一切責任取らんからな?」

 

サンラクが切り出した、エーテルリアクター修理のアテに、ペンシルゴンがまたしても吹き出して、サンラクの顔面はビショビショになる。

 

「てか、マジなのサンラク?」

「あぁ。ただ『此方のユニーク関係』なんで、案内が難しいんだわ。出来ればソイツを預けて欲しいんだが……」

 

サンラクから示された、規格外エーテルリアクター修理への道。オイカッツォは掌に在る其れを見て、しかし表情は真剣さを帯びながら、サンラクへ言ったのだった。

 

 

 

 

「解った……と言いたい所だけど、一つ条件がある。サンラクが隠してる『ユニークシナリオ』……ソイツの『発生条件』を教えてくれ」

 

 

 

 






オハナシの始まり


星皇剣(せいおうけん)グランシャリオ(ユニークウェポン)

ヴァイスアッシュが、墓守のウェザエモンの得物だった『バンガード』を継承したペッパーの、彼が持つリュカオーンの残照が刻まれた致命の包丁(ヴォーパルチョッパー)の真化に用いて、完成させた業物。

最強種に傷を刻み、最強種に名を刻み、最強種に認められた、前人未到へ到らんとする勇者に、神の御業を持つ匠によって打たれた此の剣は、未だ遠く、然れど遠くない未来に、真なる姿へ其の身を変える。

此の剣は星である━━━━星は命であり、命は流転であり、流転より産まれる力は、何物にも模倣する事(・・・・・)は叶わない。

モチーフは百獣戦隊ガオレンジャーの『獣皇剣(じゆうおうけん)』の、ガオの宝珠をセットする部分が七つ存在する、仮面ライダーセイバーの『刃王剣(はおうけん)十聖刃(クロスセイバー)』の刀身カラーを銀と空色、黒にカラーチェンジした物。


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