サンラクのユニーク条件開示、レディアント・ソルレイアのオハナシ
「サンラクが隠してる『ユニークシナリオ』……ソイツの『発生条件』を教えてくれ」
ウェザエモン討伐報酬の一つ『
しかしオイカッツォも、其れをタダで渡す程ピュアではない。ユニークシナリオの発生条件を聞くという事は、そういう事なのだろう。
「カッツォ君、其れは……」
「どーせ俺はユニーク自発出来ないですしぃ~?他人のユニークに乗っかりたいのが本音だしぃ~?」
「彼は面倒臭い拗れ方してるね、ペンシルゴン…」
気持ちは解らなくもない。仮に自分がオイカッツォと同じ立場で、規格外エーテルリアクターが来たのならば自分もそうしていたのは間違いない。
「……俺もリザルト画面を見た訳じゃないし、ハッキリと確信を以て言えるか解らないが、其れでも良いなら教えるぞ」
「えっ、良いのサンラク君?」
「マジ?言ってみた甲斐が有った」
「僕も気になるね、サンラクが隠してる物」
「メモメモ……」
ペッパーとサンラクは裏で繋がっている。しかし反応せずに居ては不自然に思われ、ペンシルゴンに考察の余地を与えかねないので、メモを取る用意をする事で関係性を隠しに行く。
「じゃ、言うぞ。俺の場合だが……ランダムエンカした『ユニークモンスター・夜襲のリュカオーン』を相手にして、其の時は『レベル20以下で15分間ノーダメかつ400回以上』、内分けの半分以上を『
………改めて思うが、本当に酷いな条件。
「曲芸馬鹿かな?」
「はい解散!」
「持ってけバッキャヤロー!」
「んぎゃあ!?あべし!?」
豪速球で投げられる規格外エーテルリアクターが顔面にめり込み、椅子に座ったまま引っくり返されるサンラク。ペンシルゴンとオイカッツォは青筋を浮かべ、
「何で俺がキレられるんだよ!?」
「人が空を飛ぶにはどうしたら良いって質問に、大胸筋を鍛えましょうって答えられたのと同じなんだよ」
「さらっと言ってるけど、レベル20以下でランダムエンカウントって時点で、相当な幸運が求められるんだよね」
「教えても達成出来ないから、支障が無いってか?あーもー馬鹿馬鹿しぃ。持ってけ持ってけ」
「理不尽だろ外道共!誠意持って答えたのに!」
ギャーギャー騒ぐサンラク達、そして此処でペンシルゴンがペッパーを見つめて言った。
「あ、空を飛ぶって事で思い出したんだけどさ。ペッパー君、君がウェザエモン戦で使ってた『空を飛ぶ
やはり其れで来るよなと、ペッパーは一応の覚悟は決めていた。墓守のウェザエモンとの決戦において、
本来は
「…………一つ言うと、あの時使った籠脚。名前はレディアント・ソルレイアって言うが、此の存在は『慈愛の聖女イリステラ』様も知っているし、もっと言うと『聖女ちゃん親衛隊』のジョゼットさんも目撃した。二人には『時が来るまで』は、コイツの存在を公にしない事を条件に、其の機能の『一部』………『飛翔機構』を見せている」
アイテムインベントリから取り出し、白と金に彩られたレディアント・ソルレイアを床に置いた。
「コレが……!」
「レディアント・ソルレイア。雷属性や風属性の攻撃、歩行走行、脚での攻撃やパリィで、エネルギーを吸収し蓄積。エネルギーを最大まで溜める事で『10分間』空を飛べるように成る、世界にたった一つしか存在しない『正真正銘のユニーク武具』だよ」
他にも切札たる
「まぁた、とんでもない物を手に入れたねペッパー君……」
「クソ犬許さねぇ……!」
「ユニークユニークユニークユニーク……!」
ペンシルゴンは頭を抱え、サンラクとオイカッツォは歯軋りと目を血走らせて、カオスさが増している。
「スキルや魔法の類い要らずで空飛べるって反則でしょ……あ、因みに装備出来そう?」
「ステータス満たさないと装備出来ないが、やってみるか京極?」
「うん。えっと……籠脚は装備条件にレベルが関係してるのか。ステータスは大丈夫、装備……出来た!」
京極がレディアント・ソルレイアを試してみたいと言ってきて、ペッパーは一時的に貸し出し。装備条件を確認した京極は、条件を満たしていた事に安堵しつつ、両脚に籠脚を纏う。
「飛翔や浮遊滑走には『
「成程。えっと…『
出力調整に失敗し、バナナの皮で滑ったギャグの様な回転で、背中から床に落ちた京極。
「うわぁ………ペッパー君、其れ使いこなすのに何れくらい掛かったの?」
「基本的な操作感は大体2時間くらいかな。ウェザエモンさんとの決戦を前にも、ちょくちょく練習したりして、今は三次元高速戦闘出来ないか、色々と模索してる所だよ」
実際、此れと習得したスキルを組み合わせれば、今まで以上の機動力で、変幻自在の空中殺法も可能と成る筈だ。
「あ、そういやペンシルゴン。PKerがキルされたら、確か多額の賠償金を払うんだよな?どのくらい借金背負ってるの?」
此処でペッパーが切り出したのは、サバイバアルにキルされたペンシルゴンの今現在の状態。シャンフロのwikiでは、PKerがキルされるとカルマ値に応じた多額の賠償金と、持ち物を倉庫に預けた分を含めて全没収されるという、重いデメリットが掛けられる。
其の上、借金完済までは『一切の金銭取引』が出来ないオマケ付き。まともに武器やアイテムも買えないので、苦労する元PKプレイヤーも多いという。
「ざっと『5億マーニ』かな。まぁ返せない訳じゃないし、何なら世界に5冊しかない『真理書』をライブラリに売り払って、借金返済に当てるつもりだけど」
そしてペッパーの恐れていた事態が、起こり掛けていた。もしペンシルゴンが真理書をライブラリに渡せば、天将王装の存在がバレて、彼方がハッスルする未来しか見えない。なんならウェポニアなる、武器狂いのクランまで出張って来る可能性も高い。
「あー………ペンシルゴン。真理書売り払うのは、ちょっと待ってくれない?」
「えっ何で?」
疑問符を浮かべて首を傾げたペンシルゴンだったが、ペッパーは彼女の横に『5億マーニが入った袋』をオブジェクトとして置きつつ、アイテムインベントリから世界の真理書【墓守編】を取り出し、事態が飲み込めていない四人に言う。
「コホン……皆様、世界の真理書【墓守編】の攻略記載部分を熟読してください。そうすれば意味が解ります故」
「世界の真理書?アレ攻略本だろ、特に意味無くない?」
「え~…数回読んだら価値無いでしょ、あの本って」
「サンラクにオイカッツォ。君達は価値が解ってないようなので、廊下に立ってなさい」
「理不尽だろソレ!?」
「恩赦!恩赦プリーズ!」
能天気なクソゲーマーとプロゲーマーに、レトロゲーマーがツッコミを入れる。
「………ペッパー、君が言いたい事がよく解ったよ。あ、レディアント・ソルレイア返しておくね」
「あぁ……ペッパー君、そういう事か。というよりコレは見せられないね……。見せるにしても、情報規制掛けて貰わないとヤバい」
元と現役のPKer達は本を読んだ事によって、其の意味を理解したようだ。そして残り二人も渋々本を読んでいき………其の理由に辿り着く。
「ペッパーの言う通り、こりゃあ渡せんな」
「天将王装を用いた場合の、攻略方法までバッチリ記載されてるじゃん………」
「Exactly。世界観を考察するライブラリに、天将王装の情報までもたらされたら、俺含めて全員に影響が出ると判断した」
少なくとも快適なシャンフロライフを送る為には、隠しておける物は隠しておくに限る。
「不本意だが……前に『ある人』の伝で『天願の偶像』をオークションに出品したら『10億』で売れてね。其の内の諸々差し引いた金額の七割を受け取り、涙珠やら諸々買って余ってた5億。ペンシルゴンの真理書売り払い防止とレディアント・ソルレイアやら諸々含む口外を控える条件に、俺が借金を肩代わりしますので感謝するように」
「……ありがとう、ペッパー君。君は目を離すと予想の斜め上を、毎度毎度軽々しく越えていくんだから」
はぁ…と溜息を溢しながらも、5億マーニの入った袋を受け取り、ペンシルゴンはインベントリアに其れを収納する。
「まぁ、今回の一件で色々解った事も有る。ユニークモンスターは『金』になるんだよね」
「確かにな……」
「はっ」
「簡単に言ってくれるじゃねーか」
「そうだね」
世界の真理書、インベントリア、極天……ウェザエモン討伐によって得た、此の三つの報酬だけでも廃人プレイヤーのプレイ日数や内容を上回る、とんでもない代物だらけ。更にはバハムートなる存在も在るので、情報のアドバンテージも凄まじい限りだ。
其れを踏まえた上でペンシルゴンは、四人に向けて提案をしてきたのである。
「其処で私から『提案』が有るんだ。………此の5人で『クラン』を結成しない?」
クランとは、仲間内や同じ目的を達成するべく、プレイヤー同士で作るコミュニティを指す。別のゲームならば『ギルド』や『サークル』と言われる物だ。
「俺は良いぞ、ペンシルゴン」
「其の話、乗った」
「僕も構わないよ」
「俺は……ライブラリと
サンラク・オイカッツォ・京極は了承し、ペッパーは先にスカウトを言ってきた、ライブラリと黒狼と交渉をしてからでは無いと、駄目である事を示した。
そして此処でサンラクが、一つ。クラン結成においての避けては通れない、問題点に気付く。
「そういやよ………『クランリーダー』って誰がやんの?」
「「「「……………あ」」」」
全員の視線がぶつかり合い、そして利き手を拳に変える。学校でもよくやる、班毎のメンバー内での役職決めに用いる『じゃんけん』。
『最初はグー!じゃんけんポン!』
ペンシルゴン・ペッパー:グー
サンラク・オイカッツォ・京極:パー
「よっし抜けた!」
「いぇぇぇぇぇい!」
「フフン、クランリーダーは面倒だからねぇ」
「負けた……」
「うわヤバい……」
反射神経で勝る外道三人が先抜けし、残ったペッパーとペンシルゴンが互いに真剣な眼差しとなる。
「最初はグー…!」
「じゃんけん…!」
『ポン!』
ペッパー:パー
ペンシルゴン:チョキ
「ああああああああ!負けたァ!?」
「シッッッッッ!勝ったアアアア!」
片や悲鳴、片や歓喜。此処にクランリーダーを決める戦いは終結した。
「はいっ、という訳で!
「イェェェェェェェアアアアアアア!!!」
「御就任おめでとう、ペッパー」
「はぁ……勝てて良かったぁ」
「うむむ……はぁ、負けちまったのは仕方無い。やってやんよ、クランリーダー」
じゃんけんで負け、クランリーダーに就任する事になったペッパーは溜息を付きつつも、今後の事を含めて覚悟を決めた。
「じゃあよ、ペッパー。初仕事として『クラン名』を決めてくれ」
「其れじゃあ私、音頭用にドリンク頼んでおくよ」
「バースデーケーキが、奇しくもクラン結成の御祝いになるなんてね」
「さぁて、どんな名前にするのかなペッパー。中二病魂全開は流石に控えてくれよ?」
クラン名付けという、一大事業。失敗すれば、他のプレイヤーから色々と嘗められる羽目になる。
「……狼……自由……放浪……あ」
天啓が舞い降りた。
「じゃあ、さ……。俺達は『世界を旅する気高き狼達』って意味を込めて、クラン『
四人がシーンとしている。流石に駄目かと思ったペッパーだが、意外な答えが帰って来た。
「旅する気高き狼……良いじゃん、其れ」
「若干、黒狼と被ってるけど名前が良いね」
「格好いいし、俺は賛成だよ」
「僕も良いよ」
全員一致の賛成で、クラン名は旅狼と成り。そして蛇の林檎のマスターが、ペンシルゴンのオーダーしたドリンクを五人分持ってきて。一人ずつ一杯を受け取り、ペンシルゴンが音頭を取った。
「其れでは皆さん、ドリンクは持ちましたね?今此の瞬間から、私達は世界を旅する気高き狼として、シャンフロのユニークを探すクラン………
『乾杯~~!!!!』
木製のジョッキを鳴らし、五人はドリンクを一気に飲み干した。此処に生まれた
此処に狼達はクランを作る