VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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サンラクのユニーク条件開示、レディアント・ソルレイアのオハナシ




天舞う秘宝のオハナシと、借金返済と、ペンシルゴンの提案

「サンラクが隠してる『ユニークシナリオ』……ソイツの『発生条件』を教えてくれ」

 

戦術機馬(せんじゅつきば)騏驎(きりん)】撃破の報酬として、オイカッツォの元へとやって来た『規格外(きかくがい)エーテルリアクター』。

ウェザエモン討伐報酬の一つ『格納鍵(かくのうかぎ)インベントリア』の中にある、パワードスーツや戦術機獣達を動かすのに、必要不可欠となる其れは現在破損しており、サンラクならば直せるアテが有るという。

 

しかしオイカッツォも、其れをタダで渡す程ピュアではない。ユニークシナリオの発生条件を聞くという事は、そういう事なのだろう。

 

「カッツォ君、其れは……」

「どーせ俺はユニーク自発出来ないですしぃ~?他人のユニークに乗っかりたいのが本音だしぃ~?」

「彼は面倒臭い拗れ方してるね、ペンシルゴン…」

 

気持ちは解らなくもない。仮に自分がオイカッツォと同じ立場で、規格外エーテルリアクターが来たのならば自分もそうしていたのは間違いない。

 

「……俺もリザルト画面を見た訳じゃないし、ハッキリと確信を以て言えるか解らないが、其れでも良いなら教えるぞ」

「えっ、良いのサンラク君?」

「マジ?言ってみた甲斐が有った」

「僕も気になるね、サンラクが隠してる物」

「メモメモ……」

 

ペッパーとサンラクは裏で繋がっている。しかし反応せずに居ては不自然に思われ、ペンシルゴンに考察の余地を与えかねないので、メモを取る用意をする事で関係性を隠しに行く。

 

「じゃ、言うぞ。俺の場合だが……ランダムエンカした『ユニークモンスター・夜襲のリュカオーン』を相手にして、其の時は『レベル20以下で15分間ノーダメかつ400回以上』、内分けの半分以上を『致命武器(ヴォーパルウェポン)でクリティカル』を叩き込んだらこうなった」

 

………改めて思うが、本当に酷いな条件。

 

「曲芸馬鹿かな?」

「はい解散!」

「持ってけバッキャヤロー!」

「んぎゃあ!?あべし!?」

 

豪速球で投げられる規格外エーテルリアクターが顔面にめり込み、椅子に座ったまま引っくり返されるサンラク。ペンシルゴンとオイカッツォは青筋を浮かべ、京極(キョウアルティメット)は大きな溜息を付いている。

 

「何で俺がキレられるんだよ!?」

「人が空を飛ぶにはどうしたら良いって質問に、大胸筋を鍛えましょうって答えられたのと同じなんだよ」

「さらっと言ってるけど、レベル20以下でランダムエンカウントって時点で、相当な幸運が求められるんだよね」

「教えても達成出来ないから、支障が無いってか?あーもー馬鹿馬鹿しぃ。持ってけ持ってけ」

「理不尽だろ外道共!誠意持って答えたのに!」

 

ギャーギャー騒ぐサンラク達、そして此処でペンシルゴンがペッパーを見つめて言った。

 

「あ、空を飛ぶって事で思い出したんだけどさ。ペッパー君、君がウェザエモン戦で使ってた『空を飛ぶ籠脚(ガンドレッグ)』について………『オハナシ』しようか?」

 

やはり其れで来るよなと、ペッパーは一応の覚悟は決めていた。墓守のウェザエモンとの決戦において、雷鐘(ライショウ)灰吹雪(ハイフブキ)を封じ込めただけに留まらず、オイカッツォを騏驎にロデオさせる為の足掛かりを作って、断風(タチカゼ)をスキル込みでパリィし、あの戦いのMVPに等しい活躍を見せたユニーク籠脚。

 

本来は光輝へと昇る金龍王装(レディアント・ドラゴニウス)を構成する要素の一欠片でしかないのだが、其の一欠片でさえ七つの最強種(ユニークモンスター)を相手に、とてつもない戦いが出来た代物だ。

 

「…………一つ言うと、あの時使った籠脚。名前はレディアント・ソルレイアって言うが、此の存在は『慈愛の聖女イリステラ』様も知っているし、もっと言うと『聖女ちゃん親衛隊』のジョゼットさんも目撃した。二人には『時が来るまで』は、コイツの存在を公にしない事を条件に、其の機能の『一部』………『飛翔機構』を見せている」

 

アイテムインベントリから取り出し、白と金に彩られたレディアント・ソルレイアを床に置いた。

 

「コレが……!」

「レディアント・ソルレイア。雷属性や風属性の攻撃、歩行走行、脚での攻撃やパリィで、エネルギーを吸収し蓄積。エネルギーを最大まで溜める事で『10分間』空を飛べるように成る、世界にたった一つしか存在しない『正真正銘のユニーク武具』だよ」

 

他にも切札たる超過機構(イクシードチャージ)が有ったりするが、此れだけ情報を出せば納得するだろう。

 

「まぁた、とんでもない物を手に入れたねペッパー君……」

「クソ犬許さねぇ……!」

「ユニークユニークユニークユニーク……!」

 

ペンシルゴンは頭を抱え、サンラクとオイカッツォは歯軋りと目を血走らせて、カオスさが増している。

 

「スキルや魔法の類い要らずで空飛べるって反則でしょ……あ、因みに装備出来そう?」

「ステータス満たさないと装備出来ないが、やってみるか京極?」

「うん。えっと……籠脚は装備条件にレベルが関係してるのか。ステータスは大丈夫、装備……出来た!」

 

京極がレディアント・ソルレイアを試してみたいと言ってきて、ペッパーは一時的に貸し出し。装備条件を確認した京極は、条件を満たしていた事に安堵しつつ、両脚に籠脚を纏う。

 

「飛翔や浮遊滑走には『飛翔せよ(Flying up)』って、音声認証を行う事で出来るようになる。ただ出力調整が結構難しくて、スケートとフライボードが超融合した物をやってる感覚を味わう事になる」

「成程。えっと…『飛翔せよ(Flying up)』……わわっ…!?これ、意外ッと…難……わぁ!?」

 

出力調整に失敗し、バナナの皮で滑ったギャグの様な回転で、背中から床に落ちた京極。

 

「うわぁ………ペッパー君、其れ使いこなすのに何れくらい掛かったの?」

「基本的な操作感は大体2時間くらいかな。ウェザエモンさんとの決戦を前にも、ちょくちょく練習したりして、今は三次元高速戦闘出来ないか、色々と模索してる所だよ」

 

実際、此れと習得したスキルを組み合わせれば、今まで以上の機動力で、変幻自在の空中殺法も可能と成る筈だ。

 

「あ、そういやペンシルゴン。PKerがキルされたら、確か多額の賠償金を払うんだよな?どのくらい借金背負ってるの?」

 

此処でペッパーが切り出したのは、サバイバアルにキルされたペンシルゴンの今現在の状態。シャンフロのwikiでは、PKerがキルされるとカルマ値に応じた多額の賠償金と、持ち物を倉庫に預けた分を含めて全没収されるという、重いデメリットが掛けられる。

 

其の上、借金完済までは『一切の金銭取引』が出来ないオマケ付き。まともに武器やアイテムも買えないので、苦労する元PKプレイヤーも多いという。

 

「ざっと『5億マーニ』かな。まぁ返せない訳じゃないし、何なら世界に5冊しかない『真理書』をライブラリに売り払って、借金返済に当てるつもりだけど」

 

そしてペッパーの恐れていた事態が、起こり掛けていた。もしペンシルゴンが真理書をライブラリに渡せば、天将王装の存在がバレて、彼方がハッスルする未来しか見えない。なんならウェポニアなる、武器狂いのクランまで出張って来る可能性も高い。

 

「あー………ペンシルゴン。真理書売り払うのは、ちょっと待ってくれない?」

「えっ何で?」

 

疑問符を浮かべて首を傾げたペンシルゴンだったが、ペッパーは彼女の横に『5億マーニが入った袋』をオブジェクトとして置きつつ、アイテムインベントリから世界の真理書【墓守編】を取り出し、事態が飲み込めていない四人に言う。

 

「コホン……皆様、世界の真理書【墓守編】の攻略記載部分を熟読してください。そうすれば意味が解ります故」

「世界の真理書?アレ攻略本だろ、特に意味無くない?」

「え~…数回読んだら価値無いでしょ、あの本って」

「サンラクにオイカッツォ。君達は価値が解ってないようなので、廊下に立ってなさい」

「理不尽だろソレ!?」

「恩赦!恩赦プリーズ!」

 

能天気なクソゲーマーとプロゲーマーに、レトロゲーマーがツッコミを入れる。

 

「………ペッパー、君が言いたい事がよく解ったよ。あ、レディアント・ソルレイア返しておくね」

「あぁ……ペッパー君、そういう事か。というよりコレは見せられないね……。見せるにしても、情報規制掛けて貰わないとヤバい」

 

元と現役のPKer達は本を読んだ事によって、其の意味を理解したようだ。そして残り二人も渋々本を読んでいき………其の理由に辿り着く。

 

「ペッパーの言う通り、こりゃあ渡せんな」

「天将王装を用いた場合の、攻略方法までバッチリ記載されてるじゃん………」

「Exactly。世界観を考察するライブラリに、天将王装の情報までもたらされたら、俺含めて全員に影響が出ると判断した」

 

少なくとも快適なシャンフロライフを送る為には、隠しておける物は隠しておくに限る。

 

「不本意だが……前に『ある人』の伝で『天願の偶像』をオークションに出品したら『10億』で売れてね。其の内の諸々差し引いた金額の七割を受け取り、涙珠やら諸々買って余ってた5億。ペンシルゴンの真理書売り払い防止とレディアント・ソルレイアやら諸々含む口外を控える条件に、俺が借金を肩代わりしますので感謝するように」

「……ありがとう、ペッパー君。君は目を離すと予想の斜め上を、毎度毎度軽々しく越えていくんだから」

 

はぁ…と溜息を溢しながらも、5億マーニの入った袋を受け取り、ペンシルゴンはインベントリアに其れを収納する。

 

「まぁ、今回の一件で色々解った事も有る。ユニークモンスターは『金』になるんだよね」

「確かにな……」

「はっ」

「簡単に言ってくれるじゃねーか」

「そうだね」

 

世界の真理書、インベントリア、極天……ウェザエモン討伐によって得た、此の三つの報酬だけでも廃人プレイヤーのプレイ日数や内容を上回る、とんでもない代物だらけ。更にはバハムートなる存在も在るので、情報のアドバンテージも凄まじい限りだ。

 

其れを踏まえた上でペンシルゴンは、四人に向けて提案をしてきたのである。

 

「其処で私から『提案』が有るんだ。………此の5人で『クラン』を結成しない?」

 

クランとは、仲間内や同じ目的を達成するべく、プレイヤー同士で作るコミュニティを指す。別のゲームならば『ギルド』や『サークル』と言われる物だ。

 

「俺は良いぞ、ペンシルゴン」

「其の話、乗った」

「僕も構わないよ」

「俺は……ライブラリと黒狼(ヴォルフシュバルツ)とのスカウトを断ってからだなぁ、一応状況を伝えないといけないし」

 

サンラク・オイカッツォ・京極は了承し、ペッパーは先にスカウトを言ってきた、ライブラリと黒狼と交渉をしてからでは無いと、駄目である事を示した。

 

そして此処でサンラクが、一つ。クラン結成においての避けては通れない、問題点に気付く。

 

「そういやよ………『クランリーダー』って誰がやんの?」

「「「「……………あ」」」」

 

全員の視線がぶつかり合い、そして利き手を拳に変える。学校でもよくやる、班毎のメンバー内での役職決めに用いる『じゃんけん』。

 

『最初はグー!じゃんけんポン!』

 

ペンシルゴン・ペッパー:グー

サンラク・オイカッツォ・京極:パー

 

「よっし抜けた!」

「いぇぇぇぇぇい!」

「フフン、クランリーダーは面倒だからねぇ」

「負けた……」

「うわヤバい……」

 

反射神経で勝る外道三人が先抜けし、残ったペッパーとペンシルゴンが互いに真剣な眼差しとなる。

 

「最初はグー…!」

「じゃんけん…!」

『ポン!』

 

ペッパー:パー

ペンシルゴン:チョキ

 

「ああああああああ!負けたァ!?」

「シッッッッッ!勝ったアアアア!」

 

片や悲鳴、片や歓喜。此処にクランリーダーを決める戦いは終結した。

 

「はいっ、という訳で!クランリーダー(・・・・・・・)はペッパーに決定だぁ!」

「イェェェェェェェアアアアアアア!!!」

「御就任おめでとう、ペッパー」

「はぁ……勝てて良かったぁ」

「うむむ……はぁ、負けちまったのは仕方無い。やってやんよ、クランリーダー」

 

じゃんけんで負け、クランリーダーに就任する事になったペッパーは溜息を付きつつも、今後の事を含めて覚悟を決めた。

 

「じゃあよ、ペッパー。初仕事として『クラン名』を決めてくれ」

「其れじゃあ私、音頭用にドリンク頼んでおくよ」

「バースデーケーキが、奇しくもクラン結成の御祝いになるなんてね」

「さぁて、どんな名前にするのかなペッパー。中二病魂全開は流石に控えてくれよ?」

 

クラン名付けという、一大事業。失敗すれば、他のプレイヤーから色々と嘗められる羽目になる。

 

「……狼……自由……放浪……あ」

 

天啓が舞い降りた。

 

「じゃあ、さ……。俺達は『世界を旅する気高き狼達』って意味を込めて、クラン『旅狼(ヴォルフガング)』……なんて、どうかな?」

 

四人がシーンとしている。流石に駄目かと思ったペッパーだが、意外な答えが帰って来た。

 

「旅する気高き狼……良いじゃん、其れ」

「若干、黒狼と被ってるけど名前が良いね」

「格好いいし、俺は賛成だよ」

「僕も良いよ」

 

全員一致の賛成で、クラン名は旅狼と成り。そして蛇の林檎のマスターが、ペンシルゴンのオーダーしたドリンクを五人分持ってきて。一人ずつ一杯を受け取り、ペンシルゴンが音頭を取った。

 

「其れでは皆さん、ドリンクは持ちましたね?今此の瞬間から、私達は世界を旅する気高き狼として、シャンフロのユニークを探すクラン………旅狼(ヴォルフガング)となります。クラン結成を祝して━━━乾杯!!!」

『乾杯~~!!!!』

 

木製のジョッキを鳴らし、五人はドリンクを一気に飲み干した。此処に生まれた旅狼(ヴォルフガング)……ユニークモンスター・墓守のウェザエモンを討伐した、五人の英雄達によって結成され、誰も彼もが強い癖を持ち合わせる此のクランは、シャングリラ・フロンティアの世界に大きな波乱を巻き起こして行くのだが………其れはまだ先の話である。

 

 






此処に狼達はクランを作る


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