VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

180 / 1074


ユニーククエストEX、進展




開拓者は走り出し、影法師は歌を求む

「大陸横断試練………やらせていただきます!」

 

極星大賢者(スターラウズ)のポポンガより、シャングリラ・フロンティアの大陸に在る街を巡り、最後の街へ到達する事で現在のメイン職業(ジョブ)を高みに至らせられる試練に、ペッパーは力強く答えた。

 

「……良い返事じゃ。しかし……唯々此の大陸を駆けても、つまらんじゃろう」

 

ペッパーの答えを聞いたポポンガは笑い、しかし自身が持つ杖を掲げ、魔法を施す。するとシナシナだった其の身はハリの有る肌へと代わっていく。同時に自分達の周りには魔方陣が生まれ、ペッパー達を包囲した。

 

「…………ん?えっ、ポポンガ……さん?」

「な、何している……のさ?」

「ペッパー、そしてヴァッシュの娘のアイトゥイルよ。ワシはワシ自身に魔法(・・)を掛けたわい。其の魔法の内容は『現時点のワシのレベルを1/10』に固定し、目的地到達まで『解除されんようにした』んじゃ」

 

そしてポポンガの背丈は更に縮み、最終的に人間の五歳児程度の大きさにまで小さくなり、ちんまりとしたものとなった。同時に魔方陣は起動して、一人と一羽と一匹を光が包む。

 

「え?え……ちょっ、まさか………」

「其れでは、よろしく頼むぞい。あぁ、其れとな……フィフティシアに到達する過程で、他の開拓者に『協力を仰ぐ事』は許すからのぉ。頑張りんしゃい」

 

光が包み込み、己の視界を真っ白に染め上げた瞬間、ペッパーの目の前には『画面』が現れる。其れは、第四段階(フォースフェイズ)の始まりを。戦いの幕開けを告げる物となったのだ。

 

 

 

 

『NPC『極星大賢者(スターラウズ)のポポンガ』がパーティーに強制加入しました』

『ユニーククエスト【想いの御手は、境界線を超えて】を開始します』

『クエスト開始に伴い、ファステイアに強制的に転移します』

 

 

 

そしてペッパーとアイトゥイル、そして自らの魔法で自らを縛ったポポンガは、始まりの街・ファステイアへと転移する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲームには『護衛系ミッション』と呼ばれる物がある。NPCを目的地まで連れて行く、殺られてしまえば即ガメオベラが適応される、RPGやアクションゲームでも見掛けるカテゴリーだ。

 

そして護衛対象となるNPCは、大抵が非力に設定され、立ち回りやヘイト管理、アイテムの準備が整っていないともなれば、苦戦必至となる。総じて嫌いなプレイヤーは、とことん嫌いなミッションなのだ。

 

「………………マジかよ、ポポンガさん」

「カハハ。さぁ、ペッパー。お前さんの脚で、此の大陸を駆け抜けなさいな」

「とんでもないことになったのさ……」

 

ファステイアの裏路地に転移したペッパーは、ポポンガを見て驚愕と共に呟く。

 

彼は護衛系(此のタイプ)のミッションが嫌い、という訳ではない。其の手のクエストはレトロゲームで幾度もプレイしてきたし、普通なら行けた筈の道がミッション中に限り『どういう訳か』通行止めになったりと、簡単にクリアさせない設計なのも理解している。

 

彼が驚いたのは『ポポンガのレベル』だ。

 

「……『レベル20』……10倍で、レベル200……」

 

そう、自分自身が施した魔法によって弱体化したとはいえ、元々のレベルが『ユニークモンスター・墓守のウェザエモン』と同じだったのである。

 

ポポンガのレベル以外の全てのスキルやステータスを、此方(プレイヤー)が確認出来ないようになっているのは、護衛系ミッションを更に盛り上げる為の措置として、運営側が用意した物と見て良いだろう。

 

(協力者を募る事は禁止されていない……。此れは所謂『複数人推奨』、其れも『パーティー編成推奨の護衛系ミッション』だ)

 

ポポンガの発言。未踏の世界を進む事。此等の情報からペッパーは、第四段階は『他のプレイヤーの協力必須のクエスト』だと判断する。

 

しかしパーティープレイをする以上、問題が在る。己が……ペッパーというプレイヤーが、七つの最強種の一角を崩したプレイヤーだという事。依頼をすれば、対価として情報を寄越せ等、当たり前のように言ってくる事は明白であり、其れがキッカケになって付け入る隙を与えないとは言い切れない。

 

「えっと、ポポンガさん。兎御殿に帰還したり、休息を取る事は出来ますか?」

「うむ、可能じゃよ。アイテムの補充も、味方を頼るもお前さんの自由……其の脚でフィフティシアを目指すのじゃ」

 

流石に一日で走破せよ!という事では無く、クリア日数に制限は存在していないようだ。

 

「取り敢えず、動かない事には始まらないか……。アイトゥイル、ポポンガさん。先ずはセカンディルに行きますよ!」

「はいさ!」

 

爪先に力を込めて、ペッパーはヴォーパルバニーとゴブリンを引き連れ、裏路地から跳梁跋扈の森を目指して駆け出して。

 

「ん!?えっ、なっ━━━━!?」

 

突如、自分の前に出した足が底無し沼に嵌まった様な、己の身体が真下に引き摺り込まれる(・・・・・・・・・・・)感覚と共に、暗闇の中にアイトゥイルとポポンガ共々飲み込まれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、どうなって……あぶん!?」

「みきゃん!」

「ふほぉぉ…。こりゃ何じゃな、いきなり」

 

本日二度目の暗闇の中に落ちたペッパーとアイトゥイルは尻餅を付いて、そしてフワリと浮遊するポポンガは、突如起こった状況に何事かと辺りを見渡す。

 

落下ダメージは無く、周りは暗い上に、落ちてきた先を見上げるとスポットライトの光が当たり、ステージ上の様な白い電光灯で出来た、光の円内にペッパー達は居た。

 

「ポポンガさん……もしかしてコレ、試練ってヤツですか?」

「いや、ワシは何も知らんぞ?」

「じゃあ一体誰がやったのさ……」

 

ポポンガが仕組んだ物でないなら、一体誰が。何の目的を以て、此のような場所に自分達を引き摺り込んだのか。

 

疑問……謎……見えない存在……。ペッパーが周囲を警戒した其の時。アイトゥイルとポポンガの腕を掴んだ『ナニカ』が、一羽と一匹を円外へ連れて行ってしまう。

 

「わ、ペ、ペッパーはわぁぁぁぁぁぁ!?」

「おや、コレは不味いのぉぉぉぉぉぉ!?」

「アイトゥイル!ポポンガさん!」

 

手を伸ばすも届かず、一人取り残されてしまったペッパー。同時に聞こえてきたのは━━━━━()だ。

 

『ラ……ララ、ラ………♪』

「え……?」

 

響き渡り、透き通り、語り掛ける。そんな優しく、しかし何処か寂しげな……歌。

 

『ラ…ラララ…、…ラ━━━━━♪』

「歌を……歌ってる?」

 

暗闇が薄く晴れ、フィールドの輪廓がハッキリとしてくる。ペッパーが此のフィールドを見て思った第一印象は、小さな『中世の劇場』だった。自分の今居る場所は『ステージ』、そして見渡せば『観客席』が広がって。

 

「ペッパーはん!」

「ペッパーよ、大丈夫か!」

「アイトゥイル!ポポンガさん!」

 

VIP観客席とおぼしき場所に、アイトゥイルとポポンガが移動させられているのを確認し、ホッと一安心した瞬間。

 

『ラララ……ラ、ララ……ラ……♪』

「!?」

 

歌のリズムが、テンポが、ペースが『変わる』。

 

『私は……貴方……。貴方は……私……』

 

同時にペッパーが目撃したのは、スポットライトに照らされる己の『影』が揺らめき、独りでに動き始めた事。光に照らされる影が、黒く濃くなるや自分の影から『離れ』、ペッパーの目の前で『黒いペッパー』の姿形を作る。

 

「は……?」

『合羽は貴方の(かたち)を知り、影は揺らがぬ(たましい)を知る━━━貴方はだぁれ?貴方はだぁれ?』

 

劇場から響く歌が、問い掛けてくる。

 

『影は何時も貴方を見る━━━━』

 

黒く濃く染まったペッパーに、何処からともなく飛来したのは、自分の装備している『影法師の愉快合羽(グルナー・ト・シェミンコート)』と同じもの。

 

『さぁ、示して……貴方の光を(・・・・・)。影が見つめる、貴方の輝きを(・・・・・・)。揺らぐ事無い、貴方の強さを(・・・・・・)

 

愉快合羽を纏い、影なるペッパーが武器を手に取る。其れは包丁と小鎚……其れも『致命の包丁(ヴォーパルチョッパー)致命の小鎚(ヴォーパルレッジ)』を握ったペッパーが、今は呪いによって出来なくなった『斬打二刀流フォーム』を成している。

 

「おい、まさか……『巌喰らいの蚯蚓(ガロックワーム)と戦った頃の自分』と戦えって事かよ!?」

『光と影は瓜二つ。決して離れず、決して交わらず。けれど常に在り続け、共に高め合う……!』

 

 

ペッパーを示す物語(・・・・・・・・・)前奏曲(プレリュード):英雄の原点(ヒロイックオリジン)

 

 

題名を言う(タイトルコール)が響き、真っ黒に染まったペッパーが、アイテムインベントリから『ギルフィードブレイカー』を取り出して握った、ペッパー本人に襲い掛かったのである。

 

 






影法師は求めている。魂を奮わせる其の歌を


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。