ユニーククエストEX、進展
「大陸横断試練………やらせていただきます!」
「……良い返事じゃ。しかし……唯々此の大陸を駆けても、つまらんじゃろう」
ペッパーの答えを聞いたポポンガは笑い、しかし自身が持つ杖を掲げ、魔法を施す。するとシナシナだった其の身はハリの有る肌へと代わっていく。同時に自分達の周りには魔方陣が生まれ、ペッパー達を包囲した。
「…………ん?えっ、ポポンガ……さん?」
「な、何している……のさ?」
「ペッパー、そしてヴァッシュの娘のアイトゥイルよ。ワシはワシ自身に
そしてポポンガの背丈は更に縮み、最終的に人間の五歳児程度の大きさにまで小さくなり、ちんまりとしたものとなった。同時に魔方陣は起動して、一人と一羽と一匹を光が包む。
「え?え……ちょっ、まさか………」
「其れでは、よろしく頼むぞい。あぁ、其れとな……フィフティシアに到達する過程で、他の開拓者に『協力を仰ぐ事』は許すからのぉ。頑張りんしゃい」
光が包み込み、己の視界を真っ白に染め上げた瞬間、ペッパーの目の前には『画面』が現れる。其れは、
『NPC『
『ユニーククエスト【想いの御手は、境界線を超えて】を開始します』
『クエスト開始に伴い、ファステイアに強制的に転移します』
そしてペッパーとアイトゥイル、そして自らの魔法で自らを縛ったポポンガは、始まりの街・ファステイアへと転移する。
ゲームには『護衛系ミッション』と呼ばれる物がある。NPCを目的地まで連れて行く、殺られてしまえば即ガメオベラが適応される、RPGやアクションゲームでも見掛けるカテゴリーだ。
そして護衛対象となるNPCは、大抵が非力に設定され、立ち回りやヘイト管理、アイテムの準備が整っていないともなれば、苦戦必至となる。総じて嫌いなプレイヤーは、とことん嫌いなミッションなのだ。
「………………マジかよ、ポポンガさん」
「カハハ。さぁ、ペッパー。お前さんの脚で、此の大陸を駆け抜けなさいな」
「とんでもないことになったのさ……」
ファステイアの裏路地に転移したペッパーは、ポポンガを見て驚愕と共に呟く。
彼は
彼が驚いたのは『ポポンガのレベル』だ。
「……『レベル20』……10倍で、レベル200……」
そう、自分自身が施した魔法によって弱体化したとはいえ、元々のレベルが『ユニークモンスター・墓守のウェザエモン』と同じだったのである。
ポポンガのレベル以外の全てのスキルやステータスを、
(協力者を募る事は禁止されていない……。此れは所謂『複数人推奨』、其れも『パーティー編成推奨の護衛系ミッション』だ)
ポポンガの発言。未踏の世界を進む事。此等の情報からペッパーは、第四段階は『他のプレイヤーの協力必須のクエスト』だと判断する。
しかしパーティープレイをする以上、問題が在る。己が……ペッパーというプレイヤーが、七つの最強種の一角を崩したプレイヤーだという事。依頼をすれば、対価として情報を寄越せ等、当たり前のように言ってくる事は明白であり、其れがキッカケになって付け入る隙を与えないとは言い切れない。
「えっと、ポポンガさん。兎御殿に帰還したり、休息を取る事は出来ますか?」
「うむ、可能じゃよ。アイテムの補充も、味方を頼るもお前さんの自由……其の脚でフィフティシアを目指すのじゃ」
流石に一日で走破せよ!という事では無く、クリア日数に制限は存在していないようだ。
「取り敢えず、動かない事には始まらないか……。アイトゥイル、ポポンガさん。先ずはセカンディルに行きますよ!」
「はいさ!」
爪先に力を込めて、ペッパーはヴォーパルバニーとゴブリンを引き連れ、裏路地から跳梁跋扈の森を目指して駆け出して。
「ん!?えっ、なっ━━━━!?」
突如、自分の前に出した足が底無し沼に嵌まった様な、己の身体が
「ちょ、どうなって……あぶん!?」
「みきゃん!」
「ふほぉぉ…。こりゃ何じゃな、いきなり」
本日二度目の暗闇の中に落ちたペッパーとアイトゥイルは尻餅を付いて、そしてフワリと浮遊するポポンガは、突如起こった状況に何事かと辺りを見渡す。
落下ダメージは無く、周りは暗い上に、落ちてきた先を見上げるとスポットライトの光が当たり、ステージ上の様な白い電光灯で出来た、光の円内にペッパー達は居た。
「ポポンガさん……もしかしてコレ、試練ってヤツですか?」
「いや、ワシは何も知らんぞ?」
「じゃあ一体誰がやったのさ……」
ポポンガが仕組んだ物でないなら、一体誰が。何の目的を以て、此のような場所に自分達を引き摺り込んだのか。
疑問……謎……見えない存在……。ペッパーが周囲を警戒した其の時。アイトゥイルとポポンガの腕を掴んだ『ナニカ』が、一羽と一匹を円外へ連れて行ってしまう。
「わ、ペ、ペッパーはわぁぁぁぁぁぁ!?」
「おや、コレは不味いのぉぉぉぉぉぉ!?」
「アイトゥイル!ポポンガさん!」
手を伸ばすも届かず、一人取り残されてしまったペッパー。同時に聞こえてきたのは━━━━━
『ラ……ララ、ラ………♪』
「え……?」
響き渡り、透き通り、語り掛ける。そんな優しく、しかし何処か寂しげな……歌。
『ラ…ラララ…、…ラ━━━━━♪』
「歌を……歌ってる?」
暗闇が薄く晴れ、フィールドの輪廓がハッキリとしてくる。ペッパーが此のフィールドを見て思った第一印象は、小さな『中世の劇場』だった。自分の今居る場所は『ステージ』、そして見渡せば『観客席』が広がって。
「ペッパーはん!」
「ペッパーよ、大丈夫か!」
「アイトゥイル!ポポンガさん!」
VIP観客席とおぼしき場所に、アイトゥイルとポポンガが移動させられているのを確認し、ホッと一安心した瞬間。
『ラララ……ラ、ララ……ラ……♪』
「!?」
歌のリズムが、テンポが、ペースが『変わる』。
『私は……貴方……。貴方は……私……』
同時にペッパーが目撃したのは、スポットライトに照らされる己の『影』が揺らめき、独りでに動き始めた事。光に照らされる影が、黒く濃くなるや自分の影から『離れ』、ペッパーの目の前で『黒いペッパー』の姿形を作る。
「は……?」
『合羽は貴方の
劇場から響く歌が、問い掛けてくる。
『影は何時も貴方を見る━━━━』
黒く濃く染まったペッパーに、何処からともなく飛来したのは、自分の装備している『
『さぁ、示して……
愉快合羽を纏い、影なるペッパーが武器を手に取る。其れは包丁と小鎚……其れも『
「おい、まさか……『
『光と影は瓜二つ。決して離れず、決して交わらず。けれど常に在り続け、共に高め合う……!』
影法師は求めている。魂を奮わせる其の歌を