VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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己との戦い




影法師と胡椒は踊りて、次なる歌へと響いて紡ぐ

「どうわっ!?」

『……………』

 

影法師の愉快合羽(グルナー・ト・シェミンコート)を纏い、致命の武器たる包丁で刺突、小鎚で打撃を次々に繰り出す、真っ黒なペッパー。此処では『黒ペッパー』は迷う事も無く、ペッパーを狙って攻撃を掛けてくる。

 

「喋らないからか、何してくるか解らない…ッ!オオオッ━━━ラァ!」

『……………………!』

 

ステータスポイントを振り込み、強化された筋力と共にギルフィードブレイカーを振るい、クリティカルが発生しやすくなる打撃スキル『クリティカルメナス』を、致命の小鎚の側面を叩いて体制を崩させ、格闘スキル『衝拳打(しょうけんだ)』で頭を殴り付けて吹き飛ばす。

 

「ペッパーはーん!そんな黒いペッパーはんに負けるななのさー!」

「良いぞ、ペッパー。あの時よりも、益々強く成っておるの」

 

戦闘開始から三分、自分の影が形を作ったペッパーについて、解った事は『三つ』ある。

一つ、今現在戦っているのは『巌喰らいの蚯蚓(ガロックワーム)と戦った時のペッパー』という事。

二つ、影から作られたペッパーは『其の当時の武器とスキル』しか使ってこない事。

 

正直に言うなら、此の二つは然程問題という訳ではない。

 

問題は三つ目、判明した何よりも『厄介な点』━━━━此の影ペッパーは『今の自分と同じ防具を身に纏い、同じ数値のステータスを保有している』事。

 

其れ即ち━━━━━━━

 

「耐久2000越え、体力125の『俺』と戦わなきゃならないっ……!」

 

仮に此の戦い以降、同じようなイベント発生が有るとして、自分(ペッパー)が厄介になるのは喪失骸将(ジェネラルデュラハン)やティラネードギラファ、カイゼリオンコーカサス等の『合成スキル』を使って、倒した時の自分を出された場合。

 

今はまだ斬打二刀流に、小鎚の打撃と包丁の斬撃だけだが、次にティラネードギラファ&カイゼリオンコーカサス討伐時の自分と戦うなら、脚パリィに格闘だけでなく、進化スキルも使ってくる様になる。

 

「くおっ!セイヤァ!」

 

影ペッパーの致命の包丁による刺突を、自身の視角内及び半径5m以内から放たれた攻撃を『自動回避』する『適正眼下(ノリティア・アイザック)』で回避。幸運が高い程にダメージが与えやすくなる『ピアッシングアーマー』、膝から下の脚を鋼化させるスキル『メタルレッグス』を使って、ジャストタイミングでのフック→蹴りで脇腹に重い打撃を入れていく。

 

と、此処で黒ペッパーを作った時と同じ『歌』が響いてきた。

 

前奏曲(プレリュード)は、終幕(フィナーレ)へ向かう………。勇者は己の死した過去を打破した……致命たる鋭き刺突、致命を打ち込む雄々しき衝撃、斬打の形が……新時代を切り開く……』

「ッ!………『影の自分を倒すのは、其の時のモンスターと同じトドメの刺し方』か!」

 

巌喰らいの蚯蚓を仕留めた時に使ったスキルは、刺突スキルの『スポットエッジ』からの、刺さった包丁を小鎚で殴り付け、パイルバンカーにした打撃スキル『レイズインパクト』。もうスキルは何回も進化を遂げたが、其の時其の瞬間の戦いは今も、自分の記憶に残っている━━━━━!

 

「御要望通りに、キッチリ決めてやるぜ!」

 

ギルフィードブレイカーを収納、ステータスポイントを器用に振ったからか今までより、スムーズに武器が取り出せる。使うのは白磁(はくじ)短刀(たんとう)【改五】。黒ペッパーの包丁の斬撃に対し、自身の認識限定で『スローモーション』化させる眼と思考の強化スキル『瞬刻視界(モーメントサイト)』で回避。

 

突っ込んできた無防備の首へ、スポットエッジが進化を続け、合成して至りし高速の刺突スキル『フィーバー・シャイニング』が、物理エンジンの慣性を乗せて深々と突き刺さり。

 

空いた手にインベントリより取り出され握るは、あの時の致命の小鎚(ヴォーパルレッジ)。今はヴァイスアッシュにより真化を遂げて、兎月(とつき)暁天(ぎょうてん)】となったショートメイス。

 

巨人兵の大厳撃覇(ジャイアント・インパクト)!!!」

 

突き刺さった白磁の短刀【改五】の柄に、大火力の一撃が打ち据えられ。其の瞬間に構築されていた黒ペッパーと、同時に中世劇場を模したフィールドも崩壊する。そして観客席に移されたアイトゥイルとポポンガは、何時の間にか出来たレッドカーペットの滑り台で、舞台まで降りてきた。

 

「ペッパーはん、やったのさ!」

「お疲れじゃの、ペッパー」

「自分との戦いですから……一瞬たりとも油断出来ませんよ」

 

合流したアイトゥイルとポポンガが、各々ペッパーの肩に乗る。視界には劇場の崩壊による元の黒い世界が戻り、聞こえてくるのは同じ声の歌である。

 

『勇者は力を示した。………光を、輝きを、そして強さを。影は貴方を見ています……どうかまた、貴方の魂の歌を……奏でて、繋いで………』

 

其の声が途切れた瞬間、ペッパー・アイトゥイル・ポポンガは『強烈な倦怠感』によって立っていられなくなり。一羽と一匹が眠るようにして意識を失い、ペッパーも最後まで抗ったものの、遂には彼女と大賢者に続く形で、同じ道を辿り。

 

其の直前に、彼はリザルト画面を目撃した………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『勇者は影法師の試練を越えた』

『魂の音色は始まり、次へ繋ぐ………』

『ユニーククエストEX【七星の皇鎧よ、我が元に集え】が進行しました』

『影法師の愉快合羽が、一時的に胴装備から外せなくなりました』

『全ての歌を歌う時、影法師の愉快合羽は己の身より離れる』

『残された歌は━━━━━━━三つ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ……!?」

 

意識が覚醒して、脚が地面を踏み締める。ペッパーが辺りを見れば、其所はおよそ四分程前に地面に引き摺り込まれた場所と同じ。

 

「アイトゥイル、ポポンガさん、居ますか!?」

「ペッパーはん、ワイは居るのさ」

「ワシも無事じゃよ、ペッパー」

 

ゴソゴソモゾモゾと、トレンチロングコートから顔を出した、アイトゥイルとポポンガ。どうやら二人共無事だったようだ。

 

「何だったんだ今のは……当時のプレイヤーのコピーと戦うって、相当だなオイ……。しかも後三回も……」

「今までワイ達、劇場みたいな場所に居たのさね……何なのさアレは………」

「ワシも長いこと生きとるが、生まれて初めて経験したからの……」

 

三者三様の感想。しかし解った事も有り、胴装備として身に付けている『影法師の愉快合羽(グルナー・ト・シェミンコート)』により、先程のイベントと戦闘が起きたという事。

 

ユニーククエストEX【七星の皇鎧よ、我が元に集え】が進行した為に、愉快合羽が外せなくなっただけでなく、光輝へと昇る金龍王装(レディアント・ドラゴニウス)悠久を誓う天将王装(フォーエヴァー・ウェザリオ)、各々の胴装備が装着出来なくなった事だ。

 

(兎に角、先ずは影法師の歌とやらを速攻で解決しないと話にならん!)

 

不意に情報を漏らして、ペンシルゴンからのオハナシで詰められたりするだろうと、頭と胃を痛くしながらも、ペッパーは気を取り直してファステイアを脱出し、セカンディルを目指して猛ダッシュし始めたのだった……。

 

 

 






ハプニング有れど、セカンディルへ進む


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