勇者は次の街を目指す
夕焼けが空を染め、シャンフロが夜へ移る頃。跳梁跋扈の森を抜けた先の渓谷で、黒き閃が迸っていた。
「打っ手切りだああああああああ!!」
声の主はペッパー。
剣・刀系列武器を装備中、対応する武器スキルに多大な補正を加える『
此迄以上の速度上昇に加え、攻撃及び移動時に相手に『怯み』の状態異常を与える『
短剣・短刀武器の使用時にクリティカル補正を強化する『ナイフズタクト』。
自身よりも敵の方が大型で、重量が有る程に比例して、威力が上昇する斬撃スキル『
3つのスキルによって白光る雷迸り、赤褐色の夕闇に近しい焔のエフェクトを纏った、
「貪食の大蛇。戦ってくれて、ありがとうございました………と。アイトゥイル、ポポンガさん。確り掴まってて下さいね」
「はいさ!」
「解ったぞい」
合掌と一礼。ドロップアイテムを拾って、インベントリアの中に収納するや、ホライゾン・メロスとムーヴセドナの合成によって誕生したダッシュスキル『
疾走途中で貪食の大蛇を倒せたものの、毒のスリップダメージに追われているのか、軽装備のプレイヤーがセカンディルに向かっているのを目撃するも、自分は其れ以上の速度で真横を走り抜け。セカンディルの門を潜るや、其の脚を止める事はせずに、
そしてセカンディルからサードレマへ続く門を通った瞬間、ペッパーにユニーククエスト進行を告げる画面が現れたのである。
『ユニーククエスト【想いの御手は、境界線を超えて】が進行しました』
『条件達成まで、残り━━━六つ』
「ふぅ……思った以上に『腹が減るな』、此のスキル」
「あちゅいのさ………酒を飲むのさ………」
「コートん中に居たからのぉ……」
四駆八駆の沼荒野に有る岩山の影に隠れ、スキルを解除と呼吸を調えるペッパーは、愉快合羽の内側に籠った熱を追い出し、袖で汗を拭い取る。アイトゥイルとポポンガも汗まみれになっていて、片や瓢箪水筒で酒を喉に流し込み、片や水魔法で出来た水滴を口に含んでいく。
スキル:
そして空腹度は、スタミナ回復速度に影響を与えるパラメータであり、シャンフロにおいて食事を行う事で腹が満たされる……即ち満腹に。逆に空腹に成り過ぎると、スタミナ回復に悪影響を及ぼす。だが、其の空腹度が『限界ギリギリの状態』でレベルアップすると、習得可能になるスキルがあるそうで、其れを狙うのも一興かも知れない。
「今の内にスタミナ回復をしておこう」
アイテムインベントリから携帯食糧を取り出し、ガブリと噛み付き咀嚼。減少していたスタミナと空腹感が満たされていき、元気が湧いてきた。
「次は沼掘り……沼のフィールド……カチ上げから空中移動スキルで速攻掛ければ、イケるかな?」
スキルの
アイトゥイル・ポポンガを愉快合羽の中に避難させ、再び走り始めたペッパーは沼掘りがテリトリーとして潜む、沼地に沈んだ峡谷へと到着。軽戦士の十八番たる機動力を奪う沼地へ恐れる事無く進んで行けば、三度目の遭遇となった鮫鯰ことエリアボスの沼掘りと対峙する。
「さぁ、ギアを上げていこうか!」
強化時間90秒から60秒に減少したが、1度だけ自己蘇生を据え置きとして、敏捷・筋力・スタミナの強化数値を3倍にした『
1分間自身の動体視力強化とスタミナ消費を抑制し、クリティカルを繰り出す度に効果時間が延長する『スート・アヴェニュー』。
そして駄目押しに、其れ等のスキルを熟達度MAXの『デュアルリンク』の起動で補強し、沼掘りを『1分以内』で仕留め切ると、脳内で目標を設定。直後鮫特有の背鰭残しの潜行を行った沼掘りが、ペッパーの目の前より飛び出して噛み付き攻撃を仕掛けてきた。
「躱わせる!」
墓守のウェザエモンの断風を直に経験した彼は、其の身を屈めて噛み付きを回避。バフを含めて『一定以上の筋力』に到達した場合に繰り出すと、直撃した相手やモンスターに『確定気絶』を付与する『コラプションスマッシャー』で、頭上を過ぎ行く沼掘りの下顎を叩き据えてカチ上げた。
『ギィ…ア……!?』
スキルの効力により、沼掘りが気絶で動かなくなる中、ペッパーは3つのスキルを起動させ、片足を沼から引っ張り出す。
自身に対する重力へ干渉し、歩走行の軽量化を可能にする『
ゲニウス・チャージャーとフローティング・レチュアを合成した事で産まれた、90秒間の空中歩走行を可能にする『
熟練度MAXとなり、空中でのスキルに対する効果時間を強化・延長する『ヴィールシャーレ』。
では此等のスキルが合わさった場合、一体何が起きるのか?
「よし、出来た!思った通り此の3つなら、擬似的な『浮遊移動』が可能に成ったぜ!」
そう、
敵の点穴を、言い換えるなら『弱点のツボ』を可視化する『
エネミーの弱点に、最も衝撃が通る場所を知る事が出来る『
元々高火力を繰り出せるが、バフスキルの総数で更なる火力に至る『
頭部に直撃させると仰け反り発生率を高め、確率で気絶判定を付与する『
打撃攻撃でクリティカルを出しやすくする『クリティカルメナス』。
攻撃時にスキルレベル1につき、打撃による衝撃が爆破属性を含む確率が1%乗る『ニトロスマッシュ』。
複数スキルを重ねた攻撃時、同系統の攻撃スキルを発動していれば、
ありったけの格闘と打撃スキル、そして強化スキルが己の拳に金色のエフェクトが纏わり、最後に拳撃スキルで連続かつ出鱈目に繰り出す程、ダメージ補正とダメージ追加が乗る『
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
2つの視界に関するスキルにより、沼掘りの弱点となるツボと其の近辺に、黄金の拳の豪雨が降り注ぐ。マンガでも連打の表現として用いられる、拳や腕の複数描写が有るが成程こういうモノかと、ペッパーは此の日自分自身で再現するに至り。
『ギィィィ………!!』
「此れでッ、終わりだ!」
同じ箇所に打ち込み続け、時折爆破が発生。打撃ダメージによって頭部の肉質が柔らかくなり、衝撃が徹し易くなった其の場所へ、同じ箇所に打ち込んだ回数を参照して、威力を上昇させる『デュアライズ・ストライク』を使用。
弱点のツボに渾身の正拳突きが打ち込まれ、沼掘りを構成するポリゴンが爆散して、ドロップアイテムが沼地に落ちる。
「沼掘り。嘗てお前に誓ったソロ討伐、確かに果たしたぞ」
中国武術に有る挨拶で左手を掌に、右手を拳のまま添えて一礼。そして擬似浮遊の効果が続く間に、ペッパーはドロップアイテムをインベントリアに収納して、真っ直ぐにサードレマを目指して走り始めたのであった……。
大蛇を斬り裂き、鮫鯰を殴り倒し