VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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会談が始まる




求む者、示す者

エイドルト、蛇の林檎・水晶街支店。大部屋を貸し切り、5つのクランによる会談が幕を開けた。

 

「先ず、会談を始める前に皆さんに一言。此の度クラン『旅狼(ヴォルフガング)』を結成し、クランオーナーに就きました、ペッパーです。どうぞよろしく御願い致します。

 

そしてキョージュさん、サイガ-100さん。クラン勧誘なのですが、こうしてクランを創設してリーダーとして就任し、皆自由にシャンフロをやりたいという意思の元に集まっています。皆の意思を尊重する為、クラン勧誘は残念ながら断らせていただきます。誘って下さり、ありがとうございました」

 

先制パンチはペッパーから。自身の立ち位置を明確化&クラン勧誘を断る事で、此の先の話し合いを円滑に進められるようにした。

 

「では此方も。クラン『ウェポニア』のオーナー、SOHO-ZONEです。どうぞ良しなに」

「そうか……。君の意思に変わりは無いようだ、仕方無い。改めて……御存知かと思うが、クラン『ライブラリ』のキョージュだ。よろしく」

「クラン『SF-Zoo』のAnimaliaよ」

「歯切れの良い勧誘蹴りだ、ペッパー君。私としても良い断り方だよ。さて……クラン『黒狼(ヴォルフシュバルツ)』の団長(リーダー)、サイガ-100だ。よろしく頼む」

 

一連の挨拶を経て、5つのクランオーナー達は座り、会談は始まる。

 

「では最初に、私から良いか?」

 

一番最初の質問はサイガ-100、其の視線はサンラクに注がれる。

 

「はい、サイガ-100さんどうぞ」

「単刀直入に言おう。私達、黒狼よりの案件は1つ。サンラク君が持っている『夜襲のリュカオーンに関する情報』が欲しい。其の対価として、黒狼は君の身体に刻まれた『リュカオーンの呪い(マーキング)の解呪』。及び其れを行い終える迄の『全ての段取りと費用を此方持ちで負担する事』を約束する」

「えっ、マジで?」

 

初手から黒狼は、フルスロットルで条件を提示しに来たのである。ユニークNPC・慈愛の聖女イリステラは、クラン『聖盾輝士団』や高ランクプレイヤー、果てはNPC達に囲まれて中々対面出来ない存在。其れを段取り諸々含めた、全負担を保証しに来たのだ。

 

「我々黒狼の最終目標は『ユニークモンスター・夜襲のリュカオーンの討伐』。……ただ恥ずかしい事に、運良く接触出来ても、殆ど何も出来ずにやられてしまってね。ペッパー君から得たモーションを踏まえても、中々対応出来ずに居るのが現状だ」

「はぁ………」

 

サンラクがチラリとAnimaliaを見、ペッパーはアイテムインベントリに在る『星皇剣(せいおうけん)グランシャリオ』を思い浮かべる。エムルとアイトゥイルの存在もそうだが、両者共にユニークシナリオEX『致命兎叙事詩(エピック.オブ.ヴォーパルバニー)』の受注者として、なるべく他者への情報開示は避けたい所である。

 

更に言ってしまうと、夜の時間帯に其のエリアか周辺に『夜襲のリュカオーン』が居れば、確定遭遇(・・・・)を可能にする正真正銘の鬼札たる星皇剣グランシャリオは、意地でも開示出来ない『禁断級の超劇薬』だ。存在がバレたならリュカオーン独占等の難癖で、黒狼との対立コースは不可避になるだろう。其れだけは何としても避けたい所だ。

 

「…………おそらくだが、ユニークモンスターは『普通の方法』じゃ倒す事は不可避、だと思う。例えば俺達が討伐した『ユニークモンスター・墓守のウェザエモン』に関しても、専用の『ユニークシナリオ』を受注しないと挑戦出来なかったからな」

「そうだね。ユニークモンスターは、ユニークシナリオEXの中核を担う存在。そして夜襲のリュカオーンは御存知の通り『ランダムエンカウント』だから、挑めても何かしらの『フラグ』を建てないと、倒せない可能性は大いにある。ただ現状、其のフラグに思い当たる節は何処にも無いし、他『ユニークモンスター』達もフラグを探さないと、討伐には到れないと思うよ」

 

ペンシルゴンの補足に、むぅ……と顔をしかめたサイガ-100だが、ペッパーは既に『5体』、サンラクは『4体』のユニークモンスターの存在を把握している。そして二人は、自分達の身体に引っ付いたリュカオーンの呪いを、一次的とは言え『相殺』可能な毒を持つ存在を、ペッパーはヴァイスアッシュより、サンラクはペッパーから聞き得ている。

 

其のユニークモンスターの名は『無尽(むじん)のゴルドゥニーネ』。自分達がレベルカンストに至れば、其の毒を取りに行ける為、レベル99到達は目標の1つである。

 

「そう言えばサイガ-100君。家の『家内(かない)』が迷惑を掛けていないかな?」

「あぁ……『マッシブダイナマイト』さんですか。最大火力獲得の為、今日も頑張っていますよ」

 

クランメンバーの話なのだろうが、サイガ-100とキョージュの関係も気になる所ではある。

 

「………俺もリュカオーンに関して知ってる事は少ないし、ペッパーとモーションが被ってるかもしれねぇが、其れでも良いか?」

「構わない。呪いを受けた戦闘経験者(プレイヤー)からの情報は、非常に大きい。何より別の視点から見れば、新しい発見が有るからな」

 

「成程な……」とサンラクは暫く考え、そしてリュカオーンのモーションをサイガ-100に説明していく。

 

「じゃあ始めるが………先ず、アイツの物理攻撃は予備動作が少なく、発生も並のボスより遥かに速い。だが、基本的には前足攻撃は『斜め・縦・横振り』の三パターン。後ろ足の蹴りは『ヤクザキック』だけ。どっちの足もディレイを当然の権利の如く多用してくるが、ああ見えて結構な具合に『安全地帯』が多い。

詳しくは後で説明するとして……厄介なのは『噛み付き』だな。というか、物理攻撃は『デフォルト』で破壊属性を帯びてる。食らったら普通に食い千切られるし。

他にも『影』を利用して、黒い棘を針山みたいに出現させたり、アイツが夜空に吠えると『金縛り』が働いて動けなくなったりとか。後は━━━━━━」

「ちょ、ちょっと待ってくれサンラク君」

「ん?」

 

話を続けようとするサンラクに、サイガ-100は声を震わせる。

 

「君は『一度』しかリュカオーンと戦って居ないのだろう……!?其の一度の戦いで『其れだけの情報』を分析したのか……!?」

「あー……コイツ変態なんだよ、あんまり気にしない方が良いよ」

「おいバカッツォ、変態は余計だろうが」

「半裸で鳥頭だからねぇ、彼」

「京ティメット、テメェ後で覚えとけ」

「はいはい。其処の外道組、ハッスルしてないで落ち着いて」

 

一触即発の気配漂うも握手会を処理しつつ、ペッパーが仲裁に入って事を荒立たせないように努めており、サイガ-100はペッパーとサンラクの二人を見つめ、思う。

 

(ペンシルゴンやペッパー君とつるみ、リュカオーン相手に呪いを二ヶ所受けたプレイヤー……か。成程、サンラク君。……今後も君はペッパー君共々やらかして(・・・・・)くれそうだな)

 

ほんの少しサイガ-100の口角が上がり、しかし直ぐ様自然体へと戻る。

 

「すまない、続けてくれ」

「あぁ。………そういや1つ、俺にも『解らない事』が有るんだよな」

「解らない事?」

 

コクリと頷き、サンラクはリュカオーンについて語り出した。

 

「リュカオーンと遭遇する前、俺は『レッドキャップゴブリンの群れ』と戦ってたんだ」

「レッドキャップゴブリン?」

「夜の時間帯にだけ出現する、赤い布着けたゴブリンでな。通常種よりずっと狡猾でフェイント入れてくるわ、群れで襲ってくるわで大変だった。で、其の群れをリュカオーンは『真正面』から薙ぎ払い、俺の前に姿を現しやがった」

 

サンラクの説明に疑問を抱いたのは、レッドキャップゴブリンの事を聞いたペッパーと、其の異質さに気付いたオイカッツォだった。

 

「正面から?背後からじゃないの?」

「確かに変だな……シャンフロのモンスターって確か『フィールドに突然ポップ』する事は無かった筈だよ」

「気紛れなのかは知らないが、其の時のアイツはそうやって俺と対峙してきた。だが、問題は其処じゃねぇ━━━━不意打ちとは言え、其の巨体で吹っ飛ばされる迄、俺は奴の存在(・・)に気付けなかった。そんな事ってフツー有り得るか?」

「サンラクにしては『らしくない』な……」

 

室内に満ちる暫しの沈黙、そして口を開いたのはサイガ-100。

 

「敵の仕様上、其れは有り得ないな。……だとすると、サンラク君が体験したのは『リュカオーンの何らかの能力によるもの』である可能性が高い、と?」

「だと思う。………流石にリュカオーンに関して、解ってる事が少な過ぎる。せめて1か2回戦えば、何かしら掴めそうだけど……」

 

夜襲のリュカオーンに秘められた能力は未だ謎が多く、攻略の糸口を見出だすには至れないようだ。語る事を語り終え、フー……と息を付いたサンラクと、リュカオーンの特性を考察するペッパー。

 

早く話し合い終わらないかなぁと考える呆け顔のオイカッツォに、自身の刀の刃が欠けていないかチェックする京極、そしてニヤニヤと何か企んでいるペンシルゴン。

 

そんな五人を見て、サイガ-100は微笑みながらに言った。

 

「成程、ありがとうサンラク君。私の質問は此れで終わりだ」

「おぅ、どーいたしまして」

 

軽いノリで答えたサンラク。そして次なる質問が来る。

 

「じゃあ次は私で。良いですかね、Animaliaさん?」

「えぇ、構わないわ。私は今、凄く幸せだからね♪」

 

此処まで大多数に握手をさせられ、若干お疲れ気味のアイトゥイルとエムルを両手で握手しつつ、満面の笑みを溢すAnimaliaは、随分と幸せなそうな御様子だ。

 

「オホン……では、ペッパー君。我等『ウェポニア』のオーダーは、貴方に対しての物になります」

 

ウェポニアと武器狂い(SOHO-ZONE)。胡椒争奪戦争の情報によれば、武器や防具の耐久値を徹底的に調査及び研究し、独自の理論で方程式までも産み出した程のクラン。そして其のクランオーナーは自分の知る限り、武器や防具に関して一際真剣で、真摯な姿勢を貫く男だ。

 

「我等が求めるのは、小鎚のユニーク武器『マッドネスブレイカーの情報と本体の譲渡』。もしくは『影法師の愉快合羽(グルナー・ト・シェミンコート)本体の譲渡』を要求します。片や武器其の物の研究が進んでいない事に加え、現状唯一のカテゴリー内ユニークですからね。そして愉快合羽其の物も、研究と実験に用いたいのです」

「成程……」

 

マッドネスブレイカー其の物は三つの成長派生形態へ育成してしまった為、現在は存在して無い。だが、自分の手元には『ロックオンブレイカーの製造秘伝書・改参式』があり、其れを用いれば作り出す事も可能になる。

 

そして影法師の愉快合羽は現在、呪いの装備と化して外す事は出来ないので、消去法でマッドネスブレイカーに関する情報を開示するしか無いだろう。

 

だが、ウェポニアは。SOHO-ZONEは。此の場に居た全員が予想だにしなかった、とんでもない切札で勝負に出たのだ。

 

「もし、此方の要望を受け入れて下さるなら。ペッパー君個人に、我等ウェポニアが手にしている切札。盾の勇者武器(ウィッシュド.ウェポン)聖盾(せいじゅん)イーディス』を譲渡する用意があります」

 

━━━━━━━━と。

 

 

 

 






示せ、己の手札の価値を


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