最後の相手、キョージュ
「此れは
ウェザエモンの
改めて思うが、此の『狸ジジイ』は厄介極まりない。其れがアーサー・ペンシルゴンが抱く、キョージュというプレイヤーの印象である。
自身と同じく言葉巧みに他者を翻弄し、人を動かす根っからの策士型の人間で、一見双方共にメリットが吊り合いが取れた様な交渉結果でも、其の実自分の方が取分が多く成るようにしてしまう、口が回る人間なのだと。
(さぁて、どうしようかねぇ………)
ペッパーが借金を建て替えてくれたお陰で、晴れて1プレイヤーとして再出発を果たしたペンシルゴンは、キョージュに世界の真理書【墓守編】を見せるか否か思考を重ねる。
現状ウェザエモンを討伐した5人のみが持ち、彼の背景や誕生に至る経緯。そしてペッパーが保有しており、クラン:
オマケにサイガ-100が、園長と一緒に連れて来た武器狂い、ウェザエモン由来の一式装備の存在が知られれば、武器や防具に関してキョージュやAnimalia
(一丁、おねーさん頑張ってみましょうか!)
交渉諸々をペッパーから信用され、任されたペンシルゴンはキョージュが見つめる中、アイテムインベントリから世界の真理書【墓守編】を取り出す。
「流石
真理書を持つ手首をふりっふりっと揺らしながら、挑発的な視線をキョージュに送るペンシルゴン。
「ほぅ、其れが……!」
「名前は『世界の真理書【墓守編】』。ユニークモンスター・墓守のウェザエモンに関する、超に超と超が付く物凄っっっっっごい貴重な書物。でも、私達からすれば『不特定多数』には
ねっとりボイスでニヤニヤと微笑み、ペンシルゴンは真理書を開いては閉じて、目をキラキラと光らせるキョージュを見る。
「でもでもぉ……此の情報を正しく扱い、大事な記載箇所を秘匿すると約束してぇ。其の
「よ、よし!幾らだ!幾ら払えば見せて貰える!?」
ペンシルゴン特有の御得意ムーブに、キョージュは乗っかり早速金額交渉に入った。
「エグいな、ペンシルゴン」
「同意だな」
「アレは全部を見せずに、部分的な課金させていく奴だね」
「どのくらい搾り取るつもりなんだろうか?」
悪どい事をしているが、貴重な情報ともなれば端金で見せる程、ペンシルゴンも愚かではない。キョージュが百万単位で見ようとすれば、此処から先は更に数百万必要だねぇと言って、超重要文面となれば億は下らないと言いながら、終始ペースを握り続けて。
「グム、グムム………!………ムムムムム………ッ!よし、解った!じゃあ『3億マーニ』だ!超極秘情報は秘匿を約束する!だから3億マーニで見せてくれ!此れ以上は流石に払えん!」
「オッケー、交渉成立ー♪」
清々しい満面の笑顔でペンシルゴンが付き添うようにして真理書をキョージュに見せ、激渋ボイスのエセ魔法少女は食い付くように書物を見ている。
「ペンシルゴン、因みにどのくらいキョージュさんから金を取ったんだ?」
「合計『5億マーニ』だね。ホントはもうちょっとむしり取りたかったけど………まぁ仕方無いか。あ、此処等辺は秘匿してね?おじーちゃん」
「さっすが魔王。容赦ねぇ」
「えっぐいなぁ。何時もの事だけど」
其れなりに長い付き合いのペンシルゴンのやり口に、サンラク・オイカッツォはある種の安心感を抱いていた。
そしてキョージュは、パッチリ目を一際キラッキラのキンキラリンに光らせて、何とか真理書を買わせてくれないかと交渉するも、ペンシルゴンは素晴らしい笑顔と共に「だぁめ♪」と一刀両断しきってみせた。
「………まぁ、今回の交渉で得られたマーニはクランの運営費に充てるから、安心して頂戴な。………最後に我等
当初の予定通り、ペッパーが立席し。そして彼は数拍の間を置いた後、4クランのリーダーに向けて、こう言った。
「旅狼の打診は、此処に集まっていただいた
『!?』
旅狼のメンバーを含め、クランリーダーに関係者全員が、ペッパーの発言により視線が注がれる。クラン連盟とは、プレイヤー同士で結ぶフレンド機能を、クラン同士の領域まで拡張した物であり、連盟が成立すれば互いのクランが保有する施設や特権を利用出来るようになるのだ。
「旅狼は結成したてで、
クランリーダーとして、一人のプレイヤーとして。先輩プレイヤーに対する敬意を、彼は忘れない。堂々と頭を深く下げ、連盟構築を願い出たペッパーに、4クランのリーダー達は━━━━━
「………良いだろう。ペッパー君」
「………私も断る理由は無いね。活動其の物に支障が出る訳では無さそうだ」
「此方も別に構わないわ。まぁ、SF-Zooの要求はまだ叶ってはいないけれども」
「私も同意です。ペッパーさんとロックオンブレイカーを含む、ユニーク小鎚を製作を依頼する以上は連絡手段が欲しいですから」
彼の誠実な姿勢を良しとしたのか、すんなりと。おおよそペンシルゴンの思惑通りに事が運ぶ形と成って。
「連盟の誓いを結びましょう」
発言者のペッパーが音頭を取り、クラン連盟に置ける『幾つかの約束事』を立て。今日、此の日、此の瞬間。5つのクランによる『5クラン連盟』が結ばれる事に成ったのだった。
クラン連盟の盟約を結び、ペッパーはSOHO-ZONE・Animalia・サイガ-100とフレンド登録をして、クランリーダー間の連絡を取り合えるようにし。サンラクはサイガ-100に伝え損ねていた、夜襲のリュカオーンの攻撃の安全地帯に関する説明を終えた。
そうして4クランが蛇の林檎・水晶街支店を去った後、残った旅狼の5人はペンシルゴンが頼んだケーキを食しつつ、一息付く。
「まぁ、当然と言えば当然なんだけど『ウェポニア』以外のクランは、私達の事を多少なりとも『下に見てる』訳なのよね」
トッピングされた果物をフォークで刺し、口に運んだペンシルゴンが言う。
「盾の勇者武器……もとい、文字通り自分のクランの切札を交渉材料に、ペッパー君のユニーク小鎚の情報と製作依頼を取り付けた、武器狂いは良いとしておいても……だよ。黒狼は黒狼でサンラク君の事は、多少評価はしてる気がするけど、足元を見てたし。
まぁ彼処に関しては、ウチの愚弟並みに拗らせた選民主義者共が集まってて、ワチャワチャしてるから『モモちゃん』も意思統一に苦心してるし、気持ちは解らなくも無いんだけどさ」
「別にリュカオーンの攻撃モーションくらいなら、教えてやっても良くない?ペッパーも教えてたくらいだしさ」
鳥面の下嘴を開けて、ケーキを内側に突っ込んだサンラクに、ペッパーは同意するように頷いたが、「其れは違うよ」とオイカッツォが口を開く。
「プロゲーマーの俺が言わせて貰うけど、此の御時世で敵の動きが解るって言うのは相当な価値を秘めてる。ましてや、シャンフロのユニークモンスターともなれば、其の価値は値千金なんて話じゃない。頑張って治せる状態異常とは違うし、下手すれば数百万マーニを要求したって、文句は言われないし言わせない力を秘めてるんだから」
「………あぁ確かに」
「其れもそうか……」
オイカッツォの言う事も、また真実だ。何せ最新の対戦相手のプレイスタイルや戦術が、情報として金銭取引される程、プロの世界も相当なのだから。
「というか、オイカッツォ。君プロゲーマーだったんだ」
「まぁね、あんまり口外してないけど」
そしてオイカッツォの職業を初めて聞いた
「そゆことだよ、サンラク君。ライブラリはウェポニア程じゃないけど、まだ
「其れは俺も思ったな。握手会を見ていたけど、隙有らばモフろうとしてたし、レーザーカジキの仲裁も有ったから大人しくはしていたが、アレは『枷』やら『ブレーキ』やら『手綱』が無いと、とんでもない事になる」
エムルとアイトゥイルは握手中、時折死にそうな顔をしていたので、相当なプレッシャーが掛かっていただろう。もしラビッツに再来して、永住権を獲得しよう物なら、サンラクと自分に対するヴァイスアッシュや兎御殿のヴォーパルバニーの好感度にも悪影響が及び兼ねない。
「サンラク君が『何のユニーク』を隠してるかは、聞かないで置くけどさ。其れが私達以外の、他の連中の手に渡るようなヘマをしないで欲しいんだよ。そしてペッパー君も、今進めている『ユニーク関連』も同様にね」
「………其のつもりだよ」
「あぁ、勿論」
ユニーククエスト【インパクト・オブ・ザ・ワールド】。
ユニーククエストEX【七星の皇鎧よ、我が元に集え】。
ユニークシナリオEX【
何れも此れも、シャンフロに置いて絶大な影響を与える代物ばかりだ。成るべく隠し通しておきたい。
「まぁペッパー君のお陰で、当初の目的は果たせたから良しとしようかな」
「あの4クランとの『クラン連盟かい』?ペンシルゴン」
「そう!其の通りだよ、京極ちゃん!此れで私達は他クランの恩恵や権利を受けられる様に成った訳さ!」
「まさか全員一致の承認とはなぁ……」
「案外あっさり決まったし、絶対何か企んでそうだ」
あまりにもすんなりと決まったクラン連盟。プレイヤー間で発足するのがクランであるなら、連盟はクラン同士で結ぶ様な物である。
「彼方からすれば『便宜を図るから情報頂戴』って感じなんだろうけど、此方もそう易々と情報を渡すつもりは無い。そしてクラン:旅狼は今現在、複数の切札を持っている。其の1つ1つが廃人クラン達が必死こいて積み重ねた物を、一発でブッ壊せるくらいのモノをね」
ニヤニヤニマニマと笑い、ペンシルゴンはクランの持ち札を示していく。
「1つ目。一番最初にユニークモンスターを討伐した事で、私達はバハムート達という情報を手にした。
2つ目。格納鍵インベントリア内に有る、様々な武装にパワードスーツとロボットを保有している。
3つ目。墓守のウェザエモン由来の一式装備とロボットホースの天王ちゃん、そして空を飛ぶ力を持つユニーク
4つ目。ロックオンブレイカーの製造秘伝書をペッパー君が持っているので、彼に頼まないと生産出来ず、ユニーク小鎚生産権を旅狼が実質的に独占している。
5つ目。ペッパー君が持つエンハンス商会の会員証によって、普通なら行く事が出来ない商会内の会員専用エリアで買い物が出来る。
6つ目。サンラク君がエーテルリアクターを直す過程で、どうやらラビッツの鍛冶師を育成出来れば、私達が
7つ目。兎の国・ラビッツへ行く為の条件を含んだ、ラビッツ関連の情報をサンラク君が握っている事。
8つ目。其れ等諸々含めて、次のユニークシナリオに王手を掛けてるのは私達だという事」
他にも夜襲のリュカオーンを誘き寄せられる残照持ちの武器だったり、レディアント・ソルレイア含む天覇のジークヴルムを模倣した一式装備、
「切札は匂わせるだけでも『力』になるし、そして『情報』は人を簡単に殺せる。結成して1週間にも充たない私達5人がトップクラン達に貢がせ、常に先を突っ走り続けられる………其れって『最高に楽しい』と思わない?」
最高に悪い顔で、まさに此の瞬間シャングリラ・フロンティアの世界を、最も楽しんでいるのは自分だと言わんばかりに、ペンシルゴンは微笑む。其の姿は昔、小さな頃の一緒に遊んでいた時に見せた、
「悪い顔してるね、ペンシルゴン」
「
「コレ最終的に俺達全員悪いって流れで、討伐されてクラン崩壊の流れじゃない?」
「攻め立ててくるなら、逆に全員斬り捨てれば解決じゃん」
「全責任俺が背負う羽目になりそうなんだが……」
「そん時はお前等売って、ラビッツに亡命するわ」
悪巧みを始めたペンシルゴンに、皆各々思う事を言い合って。そして蛇の林檎・水晶街支店を退出し、現地解散の形で全員別々の方向へ歩いて行った。
そしてペッパーも、装備解除不可能状態に陥った
休憩室のベッドにてセーブを行い、此の日のシャンフロを終えたのであった………。
旅狼の持つ切札達
旅狼のリーダー・ペッパーから見た他クランの印象
黒狼:サイガ-100とサイガ-0を中心に、強いプレイヤーが揃っている実力派クラン。リュカオーンに関する事になるとグイグイくる。ペンシルゴンが団長と知り合いらしいから、交渉時は彼女を主軸に立てて対応しよう。
ウェポニア:SOHO-ZONEことソウちゃんは、中学時代の知り合いであり、武器や防具に関した約束はキッチリ守る人柄なのは知っている。程好く付き合いつつ、互いに利となる関係に成れれば上々。
ライブラリ:もしもペンシルゴンと出逢わなかったら、彼のクランに入っていたかも知れない。世界の真実には興味も有ったし、キョージュさん本人は悪い人じゃ無いのは感じたので、もしもが有り得たなら別の道が有ったかも………。
SF-Zoo:レーザーカジキから話は聞いていたが、実際に見聞きして一番ヤバい連中だと確信。ラビッツに悪影響が出かねないので、上手い事交渉時期を伸ばしつつ、及第点を探りたい。もしくはレーザーカジキを旅狼に引き込んで、Animaliaさんのブレーキ役を担って貰うのも有りか。