水晶巣崖で荒稼ぎは続く
本来、
だが、
「フハハハハ………!素晴らしい……素晴らしいぞ、インベントリア!そして其れを思い付いた俺、マジ天才!クックック……!」
僅かなMPを対価に、
そして蠍達同士を激突させての素材回収に、採掘ポイントでの掘削で、インベントリア内には其の素材と煌美やかな鉱石や宝石達が、此の無尽蔵の倉庫の一角を占拠している。
「水晶群蠍の素材もたんまり集まったし、何よりも鉱石に宝石達……こんな危険地帯に在るって事は、労力以上の価値が有る筈…!」
流石にヌルゲーが極まり過ぎた上、近い内に運営から修正は入るだろうが……と予感しつつも、今此の瞬間にキッチリ稼いでおけば良いだけの話だと、サンラクは自己思考にて結論を下し。
そしてレアアイテムの一覧を見ながら、彼は『ある物』が無い事に気付く。
「やっぱり『針』が採れてねぇな。蠍型モンスターって言ったら、針は欠かせねぇ『レアアイテム』だろ……」
唯でさえ硬質な水晶群蠍の甲殻、其れを加味しても間違い無く、水晶群蠍の針は其れ以上の『超硬度』を誇る。
「蠍共の身体は『鉱物』とかで固まってるからなぁ……『打撃武器』で付け根を脆くして、一気に打っ手斬るのが一番かも知れねぇ。問題は安定しない足場と、不規則に動く蠍達を如何に集中させるか…………ん?」
蠍達の素材を確認、そして自身のインベントリに在る武器を確認。ある武器の説明文を読み、素材と照らし合わせた瞬間、サンラクの脳内でスーパーノヴァが起きた。
「フッ…フフフフフ………!!!ハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!やっっっっっべぇ!?今日の俺、ツキが回ってねぇか!?」
クソゲーマー・サンラクは、此迄に乱数という要素に嫌と言う程嫌われている。様々なクソゲーをやって来た中でも、特に嫌われたのが『ミナココロ大戦記』なる『クソゲー』であり、ストーリー進行に必須となる『キーアイテム』を手にする迄に三週間もの時間を費やし、漸く辿り着いたエンディングで、メンタルに完璧なトドメを刺された経験がある。
以来、彼は乱数の女神を『クソッタレ』と呼ぶ程に嫌悪しているが、どうやら其の女神様は上機嫌かは知らないものの、良い方向に働きまくっている様だった。
「そうと決まりゃあ、話は早い……!さっさと採取して、水晶巣崖からオサラバしようじゃねーか」
格納空間から現実空間へ転移。辺りを見渡せば、近くの水晶に擬態している水晶群蠍を一匹発見した。一見、キッチリ擬態したように見えるが、長い尻尾は折り畳まれているが故に、変わった形に成っている。
「何れが擬態してるのかも、何回も見たから解る!」
そろーり……そろーり……と、足音を立てずに近付いて、アイテムインベントリから『武器を二本』取り出し装備。
「すぅぅぅぅ……………おはよーごさいまーす!」
武器を振るいて、折り畳まれた針の付け根を『ブッ叩く』。すると、針の周りに纏わり付く水晶が『削り取られ』、其の武器に『吸収された』。水晶群蠍は、突如自分の尻尾に走った『異質な攻撃』に反応し、周りの水晶を爆砕しながら起き上がる。
「ハッハー!効果抜群!此の武器なら、オマエ等の針も楽勝で持ってけるぜェ!」
サンラクの手に握られるは二本の小鎚、然れど其の小鎚は凡百の小鎚に非ず。ペッパーが持つ製造秘伝書と、ビィラックの手により造られた『マッドネスブレイカー』。
鉱石を喰らいて其の力を己の身に携え、鉱脈に擬態し開拓者を食らう
ロックオンブレイカーの特性━━━━鉱物系アイテムを砕く事で其の希少度合いに応じ、小鎚の耐久値を回復するオンリーワンに等しい修復能力を持っている。
「ちゃっちゃと針ぶん取って、ウイニングランと洒落込もうか!」
ありったけのバフスキルを点火して、サンラクは水晶群蠍の針の付け根を二刀流スキルと打撃スキル、そしてマッドネスブレイカーの武器特性を併用。
と、背後で水晶が爆砕されて、他の水晶群蠍達がアクティブ状態となるや、此方へ迫ってくる。
「ちぃっ…急げ急げ……!おおおおおおりゃあああああああ!!!!」
粗方水晶を削り、此処で武器をマッドネスブレイカーから
二段ジャンプスキルの『スカイウォーカー』と共に、刹那に刃を反転させながら、
「ヨッシャアアアアアアアア!斬り落としじゃああああ!後は此のままインベントリアに━━━━━━」
近くの水晶の頂上へ着地し、真上に飛んだ針に向け、サンラクが手を伸ばした………其の直後。自身の背後から腰に衝撃が走り、己の視界が
「いるぶガッ…フ!?………は━━━!?」
『ダメージ』を受けた感触が襲い、体力が削られるも200超えの幸運による『食い縛り』が発動し。サンラクが見たのは、腰から真っ二つに斬られた己の下半身。
そして其の奥には『金色の水晶群蠍』の姿が在った。だが其の蠍は、水晶群蠍のおよそ『3倍の巨躯』を誇り、其の鋏は『蟷螂に見られる折り畳める形状』、そして何よりもサンラクの目を惹いたのは『剣に似た金色に輝く針』。其の煌めきが放つ光を見た彼は、怒りと共に叫んだ。
「い……何時か必ずッ……!オマエを、ブッ殺してやる……から、なァァァァァァァァァァァ!!!べほば!?」
金色の針が合唱団指揮者の
水晶を纏う蠍達は、侵入してきた小さく木っ端の人間を排除し、月明かり照らす水晶に其の身を擬態させ、一匹…また一匹と再び眠りの床へ着き。そして最後に、黄金に其の身を染めし、大躯を成す金色の皇もまた、静かに眠りに沈んでいく。
彼の者、
小さき頃より、王の背の上にて育ち。産まれた頃より同族を喰らう偏食個体にして、育て上げた親を喰らい尽くす事により成された其れは、種族を守護する次世代決戦戦力として、水晶巣崖に住まう者達の雄々しき皇帝なのだから。
尚、兎御殿にてリスポーンしたサンラクは、手に入った水晶群蠍の素材の一部を売り払い、手にしたマーニで約束通りエムルに魔導書と、ラビッツスペシャルパフェを奢った事を記載しておく。
何時か必ず、其の身に刃を突き立てる