VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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勇者達の名は轟き響く




猫が風を呼び込み、鳥と胡椒の名は轟く

エイドルトにて行われた、5つのクランによるクラン連盟設立から一夜。季節は6月の初日となった此の日、大学講義とコンビニバイトを終えた梓は、降り頻る雨を傘で身を守りながら、アパートへ帰還していた。

 

「傘持っといて正解だったな……降りそうな感じはあったし」

 

あと1~2週間もすれば、本格的な梅雨入りになるだろう。梓は梅雨と言うものがあまり好きではない、洗濯物は乾かないし、湿気で室内が蒸れると中々寝れなくなるからだ。

 

「明日から夏服に変えるとして……ジーンズにすると、乾くのに時間掛かるし、半ズボンにするかなぁ……。いや、あんまり目立ちたくないから大人しくジーンズか……うむむ」

 

玄関の鍵を施錠し、寝間着を取り出しつつ、洗面所にてシャワーを浴び。髪と顔と身体を洗い、次いでに手洗いとうがいをして、タオルで全身の水気を拭き取る。

 

下着を履き、寝間着を付け。ドライヤーで頭を乾かし、布団を敷いて、機材をチェック。トイレと水分補給を済ませて、現実世界の梓はシャンフロのペッパーとなり、世界へと降り立つのだ。

 

 

 

 

「ペッパーはん、こんにちわなのさ」

「こんにちわ、アイトゥイル」

「ペッパーよ、昨日ぶりじゃな」

「こんにちわ、ポポンガさん」

 

午後5時過ぎ、兎御殿・休憩室のベッドよりログインして、待っていたであろうアイトゥイルとポポンガに挨拶をし、ペッパーは影法師の愉快合羽(グルナー・ト・シェミンコート)の装備解除に向け、ユニーククエスト進行を目指すべく行動を起こそうとして。

 

『ワリャはいきなり何しとるんじゃあ!?』

「ん!?」

「ビィラック姉さん!?」

「おやおや、物騒じゃの……」

 

休憩室を出てきた瞬間、聞こえてきたのはビィラックの怒号。声色から一体何事かと不安になり、ペッパーはアイトゥイルとポポンガを肩に乗せて、ビィラックの鍛冶場に向かい。

 

「アァッ!?麗しき黒き乙女よ!?!背骨はヤメテ!せめて尻を叩いて!?」

 

ビィラックに背骨をガシガシと蹴られては、愉悦というか歓喜というか、頬を赤らめる『長靴を履いた黒毛の猫』が一匹居て。其の様子を遠い目をしながら見る、サンラクとエムルの姿が在った。

 

そして其のカオスな光景を目の当たりにしたペッパーは、至極全うな言葉を以て呟く。

 

「なにこれ」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在進行形で、ビィラックに背中を踏み続けられている黒猫……彼女と同じ程の背丈と、中世ヨーロッパの王宮に仕えていそうな衣裳を身に纏い、腰にはレイピアを1本。そして脚にはトレードマークたる長靴を履いている。童話に出てくる『長靴を履いた猫』のイメージに合致した其の二足歩行の黒猫は、どうやらビィラックに関係が有るようだ。

 

ふとペッパーの目に止まったのは、ビィラックが鍛冶仕事で使う金床の上に乗る、煌美やかな色彩に満ちる見事な宝石達と、近くには水晶群蠍(クリスタル.スコーピオン)の素材が山積みで置かれている光景で。

 

「サンラク、其所に在る宝石と水晶群蠍の素材………もしかして『水晶巣崖(すいしょうそうがい)』で採ってきた?」

「あぁ『ペッパー』か。応よ、コイツ等は昨日の話し合いが終わってから、水晶地雷元で『ちょっとした裏技』使って掻き集めたんだよ。代わりに色々………うん、色々有ってな。最終的に死んだんだけどさ」

「マジかよ………因みに何かあったの?」

「キンイロソードユルサネェ。イツカアイツブッコロス」

「???????」

 

身の安全を最優先として撤退した自分と違い、ゲームだからこそ死を恐れないサンラクは、あの危険地帯でとてつもない成果を上げたようである。と、サンラクの言った言葉に黒猫の耳がピクリと反応し。

 

「ペッパー……!?まさか、そちらにいらっしゃるのは、我等『猫妖精の国(キャッツェリア)』にも其の名轟く『蒼天(そら)を舞う勇者のペッパー』殿で有らせられるか!?な、何と!?あ、貴方様は『極星大賢者(スターラウズ)のポポンガ』殿でございますか!?」

 

ババッと立ち上がり、慌てふためく黒猫騎士によって、ビィラックの鍛冶場は暫しカオスとなる。

 

「おぅ、ペッパー。お前相当有名人みたいだな」

「……色々とやってるからかな、うん」

 

ニンマリ顔のサンラクに対し、遠い目をするペッパー。数分後、黒猫騎士は落ち着きを取り戻したようで、ペッパーとポポンガに自己紹介と挨拶をしてきた。

 

「コホン……御恥ずかしい姿を晒した事、御詫び申し上げると共に、御初に御目に掛かります、ペッパー殿。そして我等の国にも轟きし、偉大なる大賢者のポポンガ殿。

 

我は『剣聖』にして、其の名に『吹き荒ぶ旋風(ワイルドウィンド)』を賜りし者。猫妖精(ケット・シー)の国・キャッツェリアが誇る、長靴銃士団(ながぐつじゅうしだん)副団長(ふくだんちょう)。名を『アラミース』と申し上げる。以後、御見知り置きを」

 

キリッとした視線と共に、頭に着けた帽子を外し、片膝を着くように、挨拶をしてきたアラミース。

 

「えっと、ペッパーです。よろしく御願い致します」

 

アラミースと同じ高さまで腰を落として膝を着き、ペッパーは己の左手を出して握手をする。

 

「んでじゃ『バカミース』。今日はワリャに頼みが有るんじゃ」

「な、何と!?乙女が僕に頼み!?君の頼みならば、僕は『あの』リュカオーンにだって挑んでみせよう!何ならジークヴルムの『逆鱗』すら穿ってみせる!」

 

最強種相手に挑んだなら、先ずタダでは済まないのは間違いない。ソースは自分とサンラクであり、二人共にリュカオーン相手に善戦した結果、其の身に呪いを受けたのだから。

 

「其れも一興かも知れんが、今日呼び出したんは他でもない。ワリャ等んとこの『宝石匠(ジュエラー)』の『ダルニャータ』に、サンラクが集めた宝石を全て使った『アクセサリー』の製作を依頼したい。其れも只の(・・)アクセサリーじゃのうて、此の宝石達を用いた最高傑作(・・・・)を、じゃ」

「おぉ…、此れはまた見事な宝石達……!……えっ、最高傑作を?全部?乙女よ、彼は一体……?」

 

ビィラックの両手一杯に乗った宝石達を見て、アラミースが目を輝かせている。そして直ぐ様、彼女が最高傑作を要求した理由を聞く。

 

「ただの人間だと侮るな、バカミース。人の身ながら『夜の帝王』に認められ。そして『永劫の墓守』を打倒してみせた、オヤジの舎弟(・・・・・・)じゃ」

「そして俺の友達(・・・・)です、アラミースさん」

 

蒼空を舞う勇者の友であり、ヴァイスアッシュの舎弟というワードに、アラミースの目はサンラクという一個人を見る目に変わり。

 

「…なれば、長靴銃士団副団長。吹き荒ぶ旋風の名に誓い、必ずや至高の逸品を仕立てて見せましょう」

 

ペコリと頭を下げ、ビィラックから宝石達を受け取り。転移魔法と思われるエフェクトの魔方陣に飛び込むや、其の姿は一瞬にして消えてしまった。

 

猫妖精(ケット・シー)の国・キャッツェリア……か。ビィラックさん、アラミースさんとの御関係とかって………」

「昔アイツの武器を作った、そんだけの関係じゃ」

「因みにアラミースって、滅茶苦茶強いのか?」

「あぁ。あんな風に見えるが、わちより強い」

「仮にも『あの』長靴銃士団副団長を務める剣聖なのさ。ワイやエムル、シー兄さん達が戦って勝てるかどうか……其れくらい強いのさ」

 

中々に色濃い黒猫騎士だったアラミース。そしてクラン:旅狼(ヴォルフガング)に、新たな手札として『猫妖精(ケット・シー)の国・キャッツェリア』、そして『宝石匠のダルニャータ』なる存在が加わり。同時にペッパーは、自分の名前が何処に在るかは解らない、キャッツェリアという国にも轟き、知れ渡っているという事実に、内心気が気でなくなった。

 

「で、サンラクは此れからどうするの?」

「俺は今から、エイドルト経由で去栄(きょえい)残骸遺道(ざんがいいどう)に行くんだ。何でも『ビィラック育成計画』で古匠(こしょう)に成るには、『マリョクウンヨーユニット』ってヤツが必須なんだと」

 

どうやら古匠という職業に就くには、専用のアイテムが必要らしい。そして其れが、嘗てペッパーがゴーレムハンティングで、石造りのフィギュアを乱獲しまくったエリアに存在しているのだとか。

 

「ペッパーは何かするのか?」

「俺は『自分のユニーク』を進めないといけなくてね。ちょっと急がないと、困った事になってる。あぁ、何か有ったら連絡くれな」

「おぅ、解った。しっかり道連れにしてやるよ」

「相談事には乗るって意味だよ!?……じゃ、御互い頑張ろうぜ。サンラク」

「あぁ、ペッパーもな」

 

拳をぶつけ、やるべき事を成すべく、二人の開拓者は各々の目的地へ向けて動き始め。出立前、ペッパーはエムルにラビッツの件を、エードワードに聞きに行った後、どうなったかを聞き。

 

エムルから、二週間程時間が欲しいとの解答を貰い、伝書鳥(メールバード)のハヤブサでAnimaliaへ『サンラクから聞いた話によると、二週間程時間が欲しいとの事です』と連絡を送ったのだった………。

 

 

 






アラミースが現れ、二人の名は知らされる


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