VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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ユニーククエストEX進行




奏でる歌よ、英雄の道を示せ(前編)

兎御殿にてキャッツェリアのアラミースと出会った後、ペッパーはアイトゥイル・ポポンガと共に、休憩室に移動してゲートを越え、サードレマの裏路地に転移していた。

 

「さぁて、ユニーククエストを進めていきましょう!」

 

アイトゥイルとポポンガの二人は、呪いの装備と化して外せない影法師の愉快合羽(グルナー・ト・シェミンコート)の中に隠している。夕方の時間帯であり、かつ名前隠しプレイが出来るにしても、昨日の気配も姿もない敵の襲撃も考えられる以上、サードレマに留まるのも危険だ。

 

(先ずは栄古斉衰(えいこせいすい)死火口湖(しかこうこ)を越えて、ファイヴァルに。其れからサードレマにカムバックして、神代(しんだい)鐵遺跡(くろがねいせき)に向かってシクセンベルト。

そして、千紫万紅(せんしばんこう)樹海窟(じゅかいくつ)を越えてフォスフォシエに向かう……!)

 

今日中に進められる所まで進めて、其れ以降は余裕を以て作戦や予定を立てていきたい。オーバドレス・ゴーレムを倒した事で、一応イレベンタルまで進めるものの、其れ以降は全くの未知のエリア。

 

現状フォスフォシエルートからフィフティシアへと向かう開拓者達に、最後に()(はだ)かるエリアが『無果落耀(むからくよう )古城骸(こじょうがい)』であり、wikiによると『最低レベル80以上無ければソロ踏破はオススメしない』やら『護衛系ミッションで通るなら壁タンク含めた3人以上のパーティープレイ推奨』等々、明らかに此方の不利に働く記載が多かった。

 

(イレベンタルにはエイドルトより良い防具が有るらしいし、早く行ってみたい所だが。クエストの兼ね合いも有るからなぁ………)

 

パーティーを組むにしても、出来るならクラン:旅狼のメンバーで固めて置きたい。他のプレイヤーやクランに頼めば、また面倒な事に成りかねないのは事実。作られたばかりのクランの、クランリーダーとしての威信にも関わるので、易々と決められる物ではないのだ。

 

(兎に角前に進もう…!)

 

当初の目的通り、先ずはファイヴァル到達を目指すと決め。ペッパーが足を踏み出した一歩目で、彼の足は昨日ファステイアの裏路地より旅立つ際に味わった、見えない力によって己の身体が、真下に引き摺り込まれる感覚。

 

「んおぁ!?マジ━━━━━━」

「ペッパーはん、ど━━━━━」

「こりゃ、まさかあ━━━━━」

 

そうしてペッパーと仲間達は、サードレマの裏路地より消える。ファステイアの時と同じように、忽然と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身体を襲う重力による落下。暗闇の中を落ちて、落ちて、落ちていき。軈て己の尻に衝撃が走る。しかしダメージは無く、見渡せば昨日振りに見た、薄暗いステージとスポットライトが焚かれ、己を照らし始めた。

 

そして見えるのは、やはり中世の劇場であり。前回見たフィールドと遜色無いようである。

 

「くっ……!」

「ペッパーはん、此処って……!」

「そうじゃの……昨日と同じ、誰が創りおったか解らんステージじゃな……」

 

トレンチロングコートから出て来たアイトゥイルとポポンガ。同時に一羽と一匹を見えない手が捕まえ、舞台から強制退場させていく。

 

「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「こりゃまたかぁ………!?」

「アイトゥイル、ポポンガさん!」

 

再び連れていかれた二人に声を上げたペッパーだったが、其の耳に聞こえたのは『あの時』と同じ『歌声』だった。

 

『ラ……ララ、ラ………♪ラ…ラララ…、…ラ━━━━━♪ラララ……ラ、ララ……ラ……♪』

 

歌声が聞こえる。其の歌はまるで『自分の為に』歌っているようで、されど悲しさが宿った歌声であり。

 

「ペッパーはん、大丈夫さ!?」

「ペッパーよ、ワシ等は無事じゃ!」

「アイトゥイル!ポポンガさん!良かった……!」

 

付き兎と護衛対象の小鬼が、前回と同じくVIP席に居る事を確認し安堵。しかし其の視線は直ぐに、己の足元に在る影を見詰めて。

 

『私は……貴方……。貴方は……私……』

 

スポットライトに照らされ、くっきりと形を成した己の影が、独りでに蠢き始める。

 

『合羽は貴方の(かたち)を知った。影は揺らがぬ(たましい)を知った━━━。私は歌う……貴方は踊る……』

 

黒い影が動きて、自分の目の前で形を成していく。

 

『影は何時も貴方を見る━━━━』

 

そして何処からともなく現れる、影法師の愉快合羽が黒ペッパーに被さり、其のトレンチロングコートに黒ペッパーは袖を通す。

 

『さぁ、再び示して……貴方の光を。影が見つめる、貴方の輝きを。揺らぐ事無い、貴方の強さを……』

 

左手には『ギルフィードブレイカー』を。其の両脚には『甲皇帝戦脚(エクスパイド.ウォーレッグ)』を。装備し、装着し、黒ペッパーは其の身を構える。其の首には今は無き、致命魂(ヴォーパルだましい)の首輪が巻かれており、ペッパーは『何時の黒ペッパー』であるかを瞬時に理解する。

 

「今度は『ライブスタイド・デストロブスターの時の自分』が相手か!良いぜ、掛かって来いよ!」

『光と影は共に在り。形は揺るがず、動きは変わらず。けれど常に在り続け、共に歩み行く……!』

 

 

 

ペッパーを示す物語。協奏曲(コンチェルト):英雄の煌めき(ヒロイック・フラッシュ)

 

 

 

本場のムエタイ選手が如く脚を構え、同じく甲皇帝戦脚を。然れど改修を重ね、改五に到達した其れを装着したペッパーに、黒ペッパーはスキル『フルズシュート』を打ち放って。対するペッパーは連続踏み付け攻撃を行う脚撃スキルの『ジェスター・タロス』で対抗。

 

クアッドビートルの甲殻で作られた、堅牢な装甲が火花を散らし合う事で、戦闘開始のゴングが鳴り響いたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……………』

「なろっ…!」

 

戦闘開始から2分半、御互い初手は脚撃系スキルでぶつかり合った後、黒ペッパーは白磁(はくじ)短刀(たんとう)に切り替えて襲い掛かり、ペッパーは其れを回避しながらも、ヒット&アウェイ作戦で敵を伺いつつ、様子を見ていた。

 

『…………!』

「うおっ!?」

 

だが此処で黒ペッパーが、ボディパージとアクセルのバフスキルを重ね掛けて、白磁の短刀からギルフィードブレイカーに切り替え、ハイプレスを起動しながら振るってきた。

 

対するペッパーは、ヴァンラッシュブレイカーを取り出して、瞬刻視界(モーメントサイト)と敵との距離が近ければ近い程、至近距離である程に敏捷・筋力・器用に強化を加えるスキル『デッドユアセイブ』。

そして複数のスキルを重ねて発動した『一番最後』に発動する事で、発動したスキル達の熟達具合により『再使用時間(リキャストタイム)を短縮可能』になる『トルクチャージ』を起動。

 

スローモーションで流れる相手の鎚武器攻撃に、自身もまた鎚武器攻撃スキルのイグナイトブレイカーで対抗。凄まじいパワーでぶつかり、重い金属同士の激突。両者共に吹っ飛ばされる。

 

「っいてぇな!これでも食らえ!!」

『…………………』

 

御返しとばかりに、アゼルライトパウンドより進化し、前身と同じく高潔度と歴戦値を参照しながら、ダメージ補正が伸びた『エトラウンズパウンド』を叩き込もうとするが、黒ペッパーは其れをレペルカウンターで弾き(パリィ)。スキルの効果で追撃を噛ました。

 

「だぁっ!?」

 

パリィの反動か、クリティカルか。ヴァンラッシュブレイカーがペッパーの手より離れた。勝機有り。黒ペッパーが笑ったように見え、体勢を崩されたペッパーの首目掛けて、右手が真っ直ぐ伸びてくる。

 

此れで━━━━━「握撃、だろ?」

 

ガシリ、と。黒ペッパーの手首を掴んだペッパー。其の獰猛な笑みは、正に『待っていた』と言わんばかりの物であり。

 

「俺がお前なら、此処で必ず握撃を使うって………信じていたよ(・・・・・・)

 

直後、黒ペッパーの視界は反転し。まるで『巴投げ』の要領によって投げ飛ばされて、背中より地面に叩き付けられたのだった。

 

 

 






己を写す影を越えよ


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