VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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京極 対 最速走者




刀一本剣技一筋、極めし者其れ即ち

「さて、トップガン。家のクランリーダーが立ち会いに来てくれたけど、殺り合おうか?」

 

風神刀(ふうじんとう)碧千風(そうせんふう)】を本物の剣士さながら、剣道家の構えを取る京極(キョウアルティメット)。対するブルックスランバー"最速走者(トップガン)"も臨戦態勢に入っており、言うが早いか京極が仕掛けて。然しトップガンは其れより速く、突進攻撃を仕掛けてきた。

 

「ッ!」

 

嘴が刃の側面と交わり、火花を散らす。

 

(速い…!最速なんて、大層な名で呼ばれるだけあるか!)

 

あのブルックスランバーのアクションは、直角ターンと直線移動と突進による攻撃のみ、しかし其れ等も極めて窮めれば、立派な武器に成る。

 

(『私』の剣術と、どうにも『相性』がよろしくない…か)

 

京極、本名を龍宮院(りゅうぐういん) 京極(きょうごく)。剣道の世界では知らぬ者が居ない、名門『龍宮院家』の長女。彼女の剣には『龍宮院流』という流派が流れている。

 

『切断力は有るが、攻撃を受け止めるにはよろしくない武器で、如何にして戦うのか』を突き詰め。

『敵の攻撃を紙一重で躱す立ち回り』と『相手の急所に最速最短で攻撃を叩き込む』事を極める、謂わば『後の先』に特化した剣。

 

そして『自分の身体を如何にして、最高効率で動かすか』を本質とする剣道こそが、龍宮院流の『強さ』であり、同時に『弱点』でもある。『初手の踏み込み』……其れを潰されると、龍宮院流の剣技は弱くなる。

 

あのブルックスランバーは、此方よりも『常に速く』動き回る事で、スピードによる勝負の世界に相手を『引き摺り込み』。相手を『防戦一方』に追いやって選択肢を奪い取り、最終的には『自分のペースを押し付け続けて』勝利する、謂わば『サンラク』に近しいタイプのモンスター。

 

サンラクと実際に便秘で50連組手を行ったペッパーは、最速走者という存在の『本質』に気付いた。

 

(さて、京極よ。此の暴れ鳥、君はどうやって攻略する?)

 

真っ直ぐ走り、凄まじく駆け、鋭角の刻む。バフスキルを点火しても尚速い最速走者のスピードに、京極は振り回され続けていた。

 

「だぁあ、もう!さっきから走り回って、全然攻撃出来ないんですけど!!ペッパー、どうやってコイツ倒したの!?」

 

鋭角ターンを狙いすまし、剣を振るえど悉く回避され、京極が怒号と共に叫ぶ一方。ペッパーはトップガンと京極の戦いに、通常種が入り込まぬよう外側で待機しつつ、様子を見続けている。

 

「普通に教えたらつまらないでしょ?自力で攻略してこそ、価値が有るんだからさ」

「其れ踏まえても、さっきから逆方向に走り回られて、攻撃の起点が作れないんだって!」

 

攻めあぐねる京極に、ペッパーは少し考え。夕日が地平線に沈んでいく中で、トップガンが走り回った跡を観察、そして彼女へ言った。

 

「なら、攻略のヒントを一つ………。キーワードは『フーコーの振り子』。其れをよく考えれば、自ずと答えは見えてくる」

「フーコーの振り子?は、何其れぇ!?」

 

走り抜けるトップガン、振り回される京極。されど京極は冷静に、ペッパーから教えられたヒントを元にし、敵の情報を整理し始める。

 

(フーコーの振り子……確か昔、何処かの情報で見た覚えがある。えぇっと………確か『自転軸』を測る装置、だったっけ?其れで何が…………!)

 

疾走し続ける巨体を刀の側面で受け流し、彼女はひたすらトップガンを観察し続け。夕焼けが沈み行く中で、照らされて地面に刻まれた、トップガンの『走行跡』を発見。そして見つめた先の『答え』に辿り着いた。

 

「………そう言う事か!」

 

彼女は『ある場所』を目指して走り、刀を鞘へ納刀。ありったけのバフスキルを積み重ねて、勝負を仕掛ける。対するトップガンもまた中腰姿勢を崩す事無く、真っ直ぐに京極へ突進し。

 

されど、幾度も走った走行跡が交わる『中心点』に京極が居た事で、巨体でありながら其の両脚で軽々と彼女の頭上を跳躍する。

 

「やっと隙を見せたね、トップガン!」

 

瞬刻視界(モーメントサイト)、敵の速度に合わせ居合、そして抜刀。技量・器用を参照としつつ、相手の敏捷が自身を上回っている場合に、ダメージ補正が大きく働く、居合(いあい)切燕(きりつばめ)】の上位スキル(・・・・・)たる居合(いあい)切空(きりそら)】で、トップガンの腹部から胸部に掛けて、風雷を籠りし翡翠の一閃が迸る。

 

裂傷と帯電のデバフと共に、深く刻まれた斬撃がトップガンの胸部より、赤いポリゴンを撒き散らして、此処まで散々此方を苦しめてきた其の動きが鈍った。

 

「もう、そっちに手番は渡さないっ!」

 

スキル:秘剣(ひけん)獅子斬(ししき)り】起動。トップガンの左足を斬り飛ばして、機動力を奪い取る。されど、トップガンは、片足を失おうとも倒れない。

 

『ギョエエエエエエエ!!!!』

「っくぅ!」

 

雄叫び、片足跳躍、そして蹴り。嘴の突っ突きに、両翼を用いたインファイト。其の戦う姿たるや、童話『かたあしだちょうのエルク』そのものに等しく。

 

「ッ!負けるかぁ!」

 

嘴を刀の側面で会心のタイミングで受け流し、碧千風と切空で刻んだ裂傷箇所に向けて渾身の力を込めながら、スキル:『刃王斬(ばおうざん)修羅(しゅら)】』で傷跡を撫でる様に切り裂き。走る斬り傷は胸部を越えて長い首をも深く、首全体の1/3にまで到達する致死レベルの傷口とダメージを、気高き王鳥に叩き付けた。

 

『ギュギィィィィ…………!』

 

赤いポリゴンが血飛沫となって放出し。しかし、ブルックスランバー"最速走者"は、眼より血涙を溢しつつも、片足で立っており。だが、京極が与えたダメージは確かに、気高き王鳥の魂の火を絶ち斬ってみせたのである。

 

其れでも………其の身が地に伏せる事は、最期の一瞬まで在らず。ポリゴンの爆発と共に散らばった、ドロップアイテムと京極が求める続けた成果が、リザルト画面として表示されたのだった。

 

 

 

『モンスター不世出(エクゾーディナリー)……解明(クリア)!』

『討伐対象:ブルックスランバー"最速走者(トップガン)"』

『エクゾーディナリーモンスターが撃破されました』

『称号【(キワ)(キワ)(キワ)マル(ハヤ)サ】を獲得しました』

『称号【疾走(シッソウ)()到達点(トウタツテン)】を獲得しました』

不世出の奥義(エクゾーディナリースキル)窮速走破(トップガン)】を習得しました』

 

 

 

 

「はぁ………疲れたぁ」

「御見事、ヒントとしては解りやすかったかな?」

 

激戦を終えた京極は、刀を鞘に納めて山肌に座ると、ペッパーが声を掛けてくる。

 

「そうだね。けどペッパーが通常種を捌けてくれてなかったら、今頃また火口に放り込まれてたよ」

「そりゃ良かった。念願の不世出の奥義獲得おめでとう、京極」

「……其の言葉、素直に受け取っておくよ」

 

フッと微笑み、ブルックスランバー"窮速走破"のドロップアイテムを拾い上げて、インベントリアに収納。そして残った『王駝鳥(おうだちょう)三色羽(みしきばね)』をペッパーに差し出した。

 

「此れは通常種を捌けてくれた、君に対する僕からの御礼。受け取ってペッパー」

「いや、其れはトドメを刺した京極の物だよ。俺も持ってるしな」

 

そう言って取り出したのは、嘗て此のエリアで京極と同じくトップガンを討伐した時に手にし、今も記念の品として保管している三色羽。

 

「そうなんだ……あ、ペッパーは此れからファイヴァルに行くんだっけ?」

「まぁな。其れから一度サードレマに戻ってからシクセンベルトを目指す感じ。京極はどうするの?」

「僕は一度ファイヴァルに戻るつもり。一緒に来る?」

 

 

 

『京極からのパーティー申請が来ました。パーティーを承認しますか?【YES】or【NO】』

 

 

 

「じゃあ頼む」と即断即決で承認し、二人と愉快合羽に隠した一羽と一匹を連れて、死火山を下り始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「昨日振りですね、アーサー・ペンシルゴンさん」

「やぁやぁ、SOHO-ZONE君。此方から呼び出しちゃって悪いねぇ」

 

そして其の頃、ペッパーと京極が向かうファイヴァルでは、クラン:旅狼(ヴォルフガング)のペンシルゴンと、クラン:ウェポニアのクランリーダーたるSOHO-ZONEが集合し、何かを始めようとしていたのであった………。

 

 

 

 

 

 

 






獲得、不世出の奥義


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