京極 対 最速走者
「さて、トップガン。家のクランリーダーが立ち会いに来てくれたけど、殺り合おうか?」
「ッ!」
嘴が刃の側面と交わり、火花を散らす。
(速い…!最速なんて、大層な名で呼ばれるだけあるか!)
あのブルックスランバーのアクションは、直角ターンと直線移動と突進による攻撃のみ、しかし其れ等も極めて窮めれば、立派な武器に成る。
(『私』の剣術と、どうにも『相性』がよろしくない…か)
京極、本名を
『切断力は有るが、攻撃を受け止めるにはよろしくない武器で、如何にして戦うのか』を突き詰め。
『敵の攻撃を紙一重で躱す立ち回り』と『相手の急所に最速最短で攻撃を叩き込む』事を極める、謂わば『後の先』に特化した剣。
そして『自分の身体を如何にして、最高効率で動かすか』を本質とする剣道こそが、龍宮院流の『強さ』であり、同時に『弱点』でもある。『初手の踏み込み』……其れを潰されると、龍宮院流の剣技は弱くなる。
あのブルックスランバーは、此方よりも『常に速く』動き回る事で、スピードによる勝負の世界に相手を『引き摺り込み』。相手を『防戦一方』に追いやって選択肢を奪い取り、最終的には『自分のペースを押し付け続けて』勝利する、謂わば『サンラク』に近しいタイプのモンスター。
サンラクと実際に便秘で50連組手を行ったペッパーは、最速走者という存在の『本質』に気付いた。
(さて、京極よ。此の暴れ鳥、君はどうやって攻略する?)
真っ直ぐ走り、凄まじく駆け、鋭角の刻む。バフスキルを点火しても尚速い最速走者のスピードに、京極は振り回され続けていた。
「だぁあ、もう!さっきから走り回って、全然攻撃出来ないんですけど!!ペッパー、どうやってコイツ倒したの!?」
鋭角ターンを狙いすまし、剣を振るえど悉く回避され、京極が怒号と共に叫ぶ一方。ペッパーはトップガンと京極の戦いに、通常種が入り込まぬよう外側で待機しつつ、様子を見続けている。
「普通に教えたらつまらないでしょ?自力で攻略してこそ、価値が有るんだからさ」
「其れ踏まえても、さっきから逆方向に走り回られて、攻撃の起点が作れないんだって!」
攻めあぐねる京極に、ペッパーは少し考え。夕日が地平線に沈んでいく中で、トップガンが走り回った跡を観察、そして彼女へ言った。
「なら、攻略のヒントを一つ………。キーワードは『フーコーの振り子』。其れをよく考えれば、自ずと答えは見えてくる」
「フーコーの振り子?は、何其れぇ!?」
走り抜けるトップガン、振り回される京極。されど京極は冷静に、ペッパーから教えられたヒントを元にし、敵の情報を整理し始める。
(フーコーの振り子……確か昔、何処かの情報で見た覚えがある。えぇっと………確か『自転軸』を測る装置、だったっけ?其れで何が…………!)
疾走し続ける巨体を刀の側面で受け流し、彼女はひたすらトップガンを観察し続け。夕焼けが沈み行く中で、照らされて地面に刻まれた、トップガンの『走行跡』を発見。そして見つめた先の『答え』に辿り着いた。
「………そう言う事か!」
彼女は『ある場所』を目指して走り、刀を鞘へ納刀。ありったけのバフスキルを積み重ねて、勝負を仕掛ける。対するトップガンもまた中腰姿勢を崩す事無く、真っ直ぐに京極へ突進し。
されど、幾度も走った走行跡が交わる『中心点』に京極が居た事で、巨体でありながら其の両脚で軽々と彼女の頭上を跳躍する。
「やっと隙を見せたね、トップガン!」
裂傷と帯電のデバフと共に、深く刻まれた斬撃がトップガンの胸部より、赤いポリゴンを撒き散らして、此処まで散々此方を苦しめてきた其の動きが鈍った。
「もう、そっちに手番は渡さないっ!」
スキル:
『ギョエエエエエエエ!!!!』
「っくぅ!」
雄叫び、片足跳躍、そして蹴り。嘴の突っ突きに、両翼を用いたインファイト。其の戦う姿たるや、童話『かたあしだちょうのエルク』そのものに等しく。
「ッ!負けるかぁ!」
嘴を刀の側面で会心のタイミングで受け流し、碧千風と切空で刻んだ裂傷箇所に向けて渾身の力を込めながら、スキル:『
『ギュギィィィィ…………!』
赤いポリゴンが血飛沫となって放出し。しかし、ブルックスランバー"最速走者"は、眼より血涙を溢しつつも、片足で立っており。だが、京極が与えたダメージは確かに、気高き王鳥の魂の火を絶ち斬ってみせたのである。
其れでも………其の身が地に伏せる事は、最期の一瞬まで在らず。ポリゴンの爆発と共に散らばった、ドロップアイテムと京極が求める続けた成果が、リザルト画面として表示されたのだった。
『モンスター
『討伐対象:ブルックスランバー"
『エクゾーディナリーモンスターが撃破されました』
『称号【
『称号【
『
「はぁ………疲れたぁ」
「御見事、ヒントとしては解りやすかったかな?」
激戦を終えた京極は、刀を鞘に納めて山肌に座ると、ペッパーが声を掛けてくる。
「そうだね。けどペッパーが通常種を捌けてくれてなかったら、今頃また火口に放り込まれてたよ」
「そりゃ良かった。念願の不世出の奥義獲得おめでとう、京極」
「……其の言葉、素直に受け取っておくよ」
フッと微笑み、ブルックスランバー"窮速走破"のドロップアイテムを拾い上げて、インベントリアに収納。そして残った『
「此れは通常種を捌けてくれた、君に対する僕からの御礼。受け取ってペッパー」
「いや、其れはトドメを刺した京極の物だよ。俺も持ってるしな」
そう言って取り出したのは、嘗て此のエリアで京極と同じくトップガンを討伐した時に手にし、今も記念の品として保管している三色羽。
「そうなんだ……あ、ペッパーは此れからファイヴァルに行くんだっけ?」
「まぁな。其れから一度サードレマに戻ってからシクセンベルトを目指す感じ。京極はどうするの?」
「僕は一度ファイヴァルに戻るつもり。一緒に来る?」
『京極からのパーティー申請が来ました。パーティーを承認しますか?【YES】or【NO】』
「じゃあ頼む」と即断即決で承認し、二人と愉快合羽に隠した一羽と一匹を連れて、死火山を下り始めたのだった。
「昨日振りですね、アーサー・ペンシルゴンさん」
「やぁやぁ、SOHO-ZONE君。此方から呼び出しちゃって悪いねぇ」
そして其の頃、ペッパーと京極が向かうファイヴァルでは、クラン:
獲得、不世出の奥義