VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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会談はもう少し続く




依頼を終えて、勇者は産まれる

盾の勇者武器(ウィッシュド.ウェポン)聖盾(せいじゅん)イーディス。

 

耐久力を3000も引き上げるだけに留まらず、体力・MPのどちらかを消費して破壊状態からの再生、更には条件を充たしたならば復活確率が50:50に成る。

 

其の上ピンチになれば、どんなに強力な攻撃を受けてもカスダメにしてしまう可能性を持ち、タンク職プレイヤーが血涙を流して欲しがるだろう、とんでもなくヤバい武器だ。

 

正にユニークとは何たるか、其れを証明した武器と言える。

 

しかし、当の本人(ペッパー)が注目したのは『装備者にボーナス補正』を加えるという表記。恐らく此れは『装備が装備者に与えるバフ』と思われ、リュカオーンの呪い(マーキング)が付いている身では、対価の天秤に匹敵するレベルの力で無い限り、バフだろうがデバフだろうが問答無用で『弾いてしまう』。

 

つまり現時点での聖盾イーディスは、ペッパーが扱うとおよそ6~7割の性能しか引き出せない、そんな状態に在ると見て良い。其れでも復活能力と再生能力が使えるだけでも、十分過ぎる程の装備アドバンテージが有るが。

 

「SOHO-ZONEさん。此の装備はファイヴァルの鍛冶師にロックオンブレイカーの製作依頼を出してから、装備した方が良いでしょうか?一応、実際に見て貰った方が信憑性が増すかと思いまして」

「そうですね。其れで行き━━━━エッ其れなんですか?」

 

渡されたアイテムとマーニの袋を、左手首に装着して一体化している格納鍵(かくのうけん)インベントリアに収納していると、SOHO-ZONEが其れを見て声を上げた。

 

「どうしましたか?」

「ペッパー君、其の左手首に付いている『アクセサリー』………というよりは『腕輪』、みたいですね?其れは何でしょうか?」

 

ズズズイッと興味津々な様子で、ペッパーの左手首に装着された、格納鍵インベントリアを見るSOHO-ZONE。此れに関しての説明をすれば、また面倒な事になりそうだと考えつつも、アクセサリーの説明文を思い出して『オンリーワン』では無い事を踏まえつつ、彼はペンシルゴンをチラリと見て。

 

其の視線に何かを感じたのか、彼女もサムズアップでサインを送ったのを合図に、ペッパーは己の左手首をSOHO-ZONEに見せながら、簡潔に話をする。

 

「コレですか?コレは格納鍵インベントリア。ウェザエモンさんとの戦いに勝利して、旅狼(ヴォルフガング)のメンバー全員が獲得した報酬です。一言で表すなら『無限インベントリ』━━━ただインベントリア自体はユニークではなく『他にも有る』そうで、おそらく『此の世界の何処かに』存在しているかと」

 

他にも此のインベントリアには、ウェザエモンの遺産たるSFパワードスーツにロボット、武装達が収納されているが、無限インベントリというパワーワードが有れば十分だろう。

 

「無限インベントリ……!?エッ、マジで?……コレきっと『カローシスさん』が知ったら、絶対目を丸くして来そうだな……。あの人前々から、インベントリ重量をどうにかして増やしたいとか言ってたし…………」

 

ブツブツと独り言を呟き始めたSOHO-ZONE。ペッパーはクランリーダーとして気になり。彼に「カローシスさん?」と問い掛ける。

 

「カローシスさんとは、クランリーダーとしての付き合いでね。ペッパー君は『クラン:午後十字軍(ごごじゅうじぐん)』を知っていますか?」

「私は知ってるよ。ログイン時間が午後10時以降でログイン出来る面々で構成されてるクラン……だったよね?」

「はい。もっと言うと、夜間にしかログイン出来ないプレイヤーが集まる傾向にあるので、クランメンバーの総数ならば黒狼(ヴォルフシュバルツ)に負けず劣らず……だとか」

 

曰く『メンバー全員が死んだ魚の目をしながら、際立った組織力を持つ』らしい。何が起きれば死んだ魚の目をしながら、そんな状態に至ってしまうのか……ペッパーは考えたくもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、ペッパーさん。久し振りねぇ」

「御久し振りです、御婆様」

 

ファイヴァルの宿屋を後にし、やって来たのはファイヴァルの武器屋。カウンターに座る、店主の老婆がペッパーの姿を見て微笑み掛けて、彼も小さく御辞儀をする。

 

「早速で悪いのですが、ロックオンブレイカーとマッドネスブレイカー、そして3つの成長派生形態の小鎚達を各々10本ずつ、製作依頼をしたいのですがよろしいですか?」

 

そう言って左手首のインベントリアを操作し、SOHO-ZONEから渡された製作の為の素材、及びマーニが入った袋を置く。

 

「おやおや、まぁまぁ……沢山在るわねぇ……」

「俺の友達がロックオンブレイカーの研究をしたいので、此方も協力しているんです。其れから製作に必須の秘伝書です」

「そうなのね……。作り方はフムフム……素材数とマーニも……大丈夫ねぇ。ただ量が多いから全部作るとなると、弟子の子達を総動員しても『2週間』は掛かっちゃうのだけど……其れでも良いかしら?」

 

ユニーク小鎚を各種10本、其れが5つ有って50本作るともなれば、秘伝書有りとは言えど相応の時間と労力は、必用不可欠という事だ。

 

「SOHO-ZONEさん、其れでも良いかな?」

「えぇ、勿論。よろしくお願いします」

「との事です。御婆様、よろしくお願い致します」

「えぇ…承りました」

 

パチンと老婆が指を鳴らすと、店の奥から屈強な男達が出て来て、マーニと素材が入った袋を軽々と抱え、店奥へ引っ込んでいった。

 

「………と、こんな感じなのですが。どうでしたか?」

「えぇ、えぇ。しっかり見届けさせていただきました。ああやって依頼するんだなって……」

 

ぽわぽわと、ホクホクと。大満足と言った表情でSOHO-ZONEは、2週間後に出来上がるユニーク小鎚達に想いを馳せ。

 

約束を果たしたペッパーは、インベントリに納めていた盾の勇者武器・聖盾イーディスを左手に装備。其の瞬間、彼の目の前に『勇者限定の新たな要素』が追加されたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『勇者誕生!盾の勇者武器(ウィッシュド.ウェポン)聖盾(せいじゅん)イーディスが、PN:ペッパー【天津気(アマツキ)】に装備されました』

『サブ職業(ジョブ)に職業:勇者を追加します』

『ユニークシナリオ【勇ましの試練】を開始しますか?【YES】or【NO】』

 

 

 

 

 

 

 

(えっマジで?勇者武器って、装備するとユニークシナリオ発生するの?じゃあペンシルゴンも、同様のシナリオを受注してるのか?てか俺、ユニークシナリオ2つ持っちゃったよ…………ユニーククエストと合わせたら4つだよ…………。

 

神様や。アンタは俺に、一体何をさせたいんだ?藻掻き抗う姿を見て、コーラとポップコーンを御供に、鑑賞会でもやりたいのか?俺は見世物じゃないんだが……)

 

勇者武器装備で発生した、新たなユニークシナリオ【勇ましの試練】。

 

ユニーククエスト【インパクト・オブ・ザ・ワールド】。

ユニーククエストEX【七星の皇鎧よ、我が元に集え】。

ユニークシナリオEX【致命兎叙事詩(エピック.オブ.ヴォーパルバニー)】。

 

抱える物がまた増え、平穏なシャンフロライフは最早遠い存在となったペッパーは、一人頭を抱える事となり。

 

想い人が、自分と同じ勇者に成った(・・・・・・・・・・・)事を確認したペンシルゴンは、此の場に居た誰よりも幸せで、満面の笑顔を浮かべたのだった。

 

 

 






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