VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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ペッパー、ユニーククエストを進めるの巻

※エンハンス商会に修正します





到着と出逢い、依頼と絶望、それら総ては紙一重

沼渡りに備える街 セカンディル。

 

サードレマへと続く道を四駆八駆の沼荒野が沈め、其処で取れる潤沢な石材により発展した地域。沼地ならではの生態系や此処でしか採掘出来ない鉱物もあるため、上級開拓者になった後でも此処の資源を求めて、度々人が訪れる。

 

━━━━━━━シャンフロwikiより抜粋

 

 

「よっし、着いたァ!」

 

入口でガッツポーズを取りながら、ペッパーは其の足で早速宿屋へと赴く。道行くNPC達は、相変わらず此方を見ては避けてばかりで、他のプレイヤーもまた其の様子を見てはざわついている。

 

「……リュカオーンめ、此の借りは数百倍で返しちゃる……」

 

あの夜の出来事を思い出し、ガルルル…と犬のように喉を鳴らして復讐を誓いながら、彼は足を止めずにリスポーン地点更新の為、セカンディルの宿屋へ向かう。

 

 

 

 

 

「お、お客様様、ととと当宿屋を御利用、で、ででし、しょうか?」

 

受付のNPCが呪いにビビり散らかして、会話がバグみたいになってるんだけど、本当に大丈夫?と心配しつつも、106号室が利用出来る事になり、早速部屋に走り込む。

 

ベッドや家具等、一般的な下町の宿屋の質素な所だが、逆に其れが趣となって雰囲気をより際立たせている。

 

「よし、リスポーン更新完了っと。でだ、特殊クエストは『沼地に轟く覇音の一計』だったな。沼地だからセカンディルに関係有りそうだが……先ずは情報収集からだね」

 

ペッパーは早速、セカンディルの探索を開始。此の手の特殊クエストは、必ず関係ある地域でフラグが建っている筈なので、色々な場所を見回った。

 

だがやはり、行く先々でリュカオーンの呪いによるNPC達の逃げっぷりに振り回され、一向に情報を獲られない。

 

「……マジで、どーすりゃ良いのさ」

 

こうも進まないともなれば、街の裏街道にでも配置されているのだろうかと、ペッパーは一縷の望みを託して、街の一角に在る細道に足を踏み入れた。

 

建物と建物の間、空の青が綺麗に見え、人二人が往き来できるか否かの道を、彼は歩く。

 

「此処で戦闘が起きたりなんかしたら、其れこそ逃げられないんだよな……。オマケとばかりに滅茶苦茶強かったし」

 

街中、袋小路、イベント………此迄経験してきたゲーマーとしての勘が、ペッパーの左手にロックオンブレイカーを持たせ、周囲警戒を促させる。

 

角を曲がり、いよいよ本格的にヤバめな雰囲気が漂い始める中、彼の視線の先に居たのは、ボロボロのローブで小さな身を包み込み、俯いたままボソボソ声で呟き続ける老人が一人。

 

「………誰、ダ?」

 

と、此方の存在に気付いたのか、老人は声を掛けてきた。

 

「………其処に、イル…か?」

 

(…ん?居るか?)

 

ペッパーは先の声に『違和感』を感じた。普通ならば此方に気付いたなら、自分の方へと招き寄せるのが自然。だが、此の老人はまるで『見えていない』事のように話している。

 

「あの~……目が見えないのですか?」

 

武器を構え、慎重に近付きつつ、彼は老人の話を聞いてみることにする。

 

「…アァ。昔、戦いのサナカに、目を失ってナ…」

 

そう言った老人が顔を上げ、ペッパーは驚きに目を丸くする。

 

老人の正体は『老いたゴブリン』。長い鼻に顎は白い髭を蓄え、まるで幾億の叡知を納めたかのような、見る角度では大賢者にも見えはする。だが、其のゴブリンは『両目が在った場所が空洞のように空いたまま』の状態だったのだ。

 

「スマナイ…な。ミエナクなって、日々をイキルのも、精一杯デナ……」

 

ヨボヨボの声で元気のない老ゴブリンは、再び顔を俯ける。人もそうだが、今まで目が見えていた物が何らかの理由で見えなくなるというのは、私生活所か人格にさえも大きな影響が現れる。

 

「……あれ?目…?」

 

其の時だ。ペッパーは『何か』を思い出そうと、頭をグルグルと指先で押し、記憶を引っ張り出しては該当する事柄を片っ端から捻りだそうとする。

 

(確か、なんか有ったよな…!?何だったけ…えっと……!目…目…目………目玉!アレだ!)

 

アイテムインベントリの中身を確認。リアル過ぎた為に記憶の奥底に封印し、消し去っていたドロップアイテム━━━━━『ゴブリンの目玉』が、まさか此処で役立つとは、思いもしなかった。

 

「えっと、ゴブリン…で良いのか?もし良ければ、コレを」

 

アイテムインベントリから、シャンフロで初めて討伐し、最初手にしたレアアイテム『ゴブリンの目玉』を老ゴブリンに手渡す。

 

「お、オォ……スマナイ、な。コレは……目…か……?」

「あぁ。他のゴブリンを倒して手に入れた物だ。同族殺しをしたが、堪忍してくれ」

「……『アイツ等』も、自然ノ摂理にシタガッテ、思うままニ生きタ。ならば、ジブンの死も覚悟しとるサ…気に病む事じゃない」

 

老ゴブリンはペッパーから受け取った、ゴブリンの目玉を右目に入れ、右手は緑の光を放ちながら、何かを話している。

 

そして気のせいか、先程よりもずっと『声』に力が戻り始めていた。

 

「スマンな、助けてくれてよ」

 

そう言い、老ゴブリンは髭を指でほぐしながら、ゆっくりと立ち上がる。其の身長は130cm程なのだが、声がラスボスクラスの声優並に滅茶苦茶強く、雰囲気も相まって数倍以上大きく感じる。

 

「あ、いえ、御気になさらず……」

「そうかい。…………しかし驚いたな。懐かしい感じはしたが、お前さん『クロ助』に気に入られとったか」

 

右肩に掛けた旅人のマントから、僅かに覗くリュカオーンに刻まれた傷痕を見て、老ゴブリンが何処か懐かしそうに語ったのを、ペッパーは聞き逃さない。

 

「リュカオーンを……御存知で?」

「まぁな。お前さんの右手に付いた呪い(ソイツ)は、アイツが『自分の物だって』周りに言い振らしとるからの」

 

語り終えて、老ゴブリンはいきなり頭上に魔方陣を展開、其の中へと吸い込まれていく。

 

「え、ちょっ!?ナニソレ!?」

「ワシの名は『ポポンガ』。天と星が見ているように、お前さんを見守っとるよ」

 

そう言い残し、魔方陣の中へと消え、魔方陣本体も消えて、裏路地には静寂だけが残される。

 

「何だったんだ今の………」

 

壮大なフラグなのか、ただの演出なのか、ペッパーには分からない。しかし此の老ゴブリンこと、ポポンガとの邂逅は特殊クエスト、延いては『あるユニークシナリオ』にも大きく関わる事に、此の時の彼は知る由も無かったのである……

 

 

 

 

 

 

「結局、特殊クエストに関しての情報は得られず仕舞いかぁ………。はぁ、どうしよう………」

 

裏路地を出て街を歩くペッパーは、収穫一切無しのまま時間だけが過ぎていく現状に悩んでいた。このままいっそのこと、武器や防具を新調して次の街に進もうか…そう考え始めていたのである。

 

と、其の時。

 

「やや!!ややややややや!!!」と此方に猛ダッシュで走ってくる、其れなりの値が張りそうな衣服を纏った、恰幅の良い男性が1人。

 

ペッパーの左手に出したままのロックオンブレイカーを見て、目をキラキラと輝かせ、人目を憚らず喋り始めた。

 

「貴方様が其の手に握るのは!かのファステイアの鍛冶師が造り上げし名鎚、ロックオンブレイカーでは御座いませぬか!!」

「え!?」

「なんと!其れだけでなく、此の右手の傷痕もが!?」

 

人通りの在る場所で、大声でユニーク武器はおろかリュカオーンの事さえ喋ろうとした男を、ペッパーは慌てて口を塞ぎに掛かる。此処で色々喋られて、周りにバラされては洒落にならない事態が、確実に起きるのは明白だった。

 

「静かにお願い出来ますか…!?」

「おっと、すみません…!何せ『小鎚を生み出したキーマン』となった御方が、『夜の帝王』にも認められていたことに、興奮が止まりませんでしたので…!」

 

おそらく此の男『リュカオーンの呪いを受けたプレイヤーはNPCとの会話に補正がかかります』に該当し、プラス方面に補正が働いているNPCの1人だろう。そうでなければ、今頃逃げ出している。

 

「コホン…興奮していて申し遅れました。私、レクスと申す者。エンハンス商会セカンディル支部の支部長に御座います。以後お見知り置きを」

「あ、はい。ペッパーと申します。よろしくお願い致します」

 

随分礼儀正しい頭の下げ方をしてきたレクスに、ペッパーもまた頭を下げる。

 

「実はペッパー様に、私から…延いてはエイドルトに在る商会本社の『会長』から、直々の依頼を賜っております。

詳しくはセカンディル支部にて、お話させていただきたく……御時間を戴けませんか?」

 

どうやら、クエスト進行のフラグが構築されたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

リュカオーンの呪いを恐れないNPC・レクスに連れられ、辿り着いたのは街の一角に陣取る、エンハンス商会セカンディル支部。岩を煉瓦状に切り出し、加工して建築された2階建ての立派な店である。

 

1階では様々な消耗品を売買し、中にはエンハンス商会でしか購入出来ない限定品もあり、NPCを含めたプレイヤーも利用していた。

 

其の商会の2階、商談室と吊るされた札がある部屋で、大理石と思われるテーブルを挟む形で椅子に腰掛けるペッパーは、レクスから『依頼』を受ける。

 

「新商品?」

「はい…我が商会は現在、『投擲する事で様々な能力を発揮する特殊な玉』の製作をしておりまして。内部の構造は既に完成しております。

 

問題なのは玉の外側に使う『外皮』で、他のモンスターの毛皮等を色々試してはみましたが、上手くいかず……。ですが『マッドフロッグの皮』で試してみた結果、衝撃で内部構造が機能し、玉は確りと機能致しました」

 

詰まる所、次のクエストは『採集型』である事が分かり、ペッパーは一安心する。しかし彼は『重大な』見落としをしていた。

 

「成程、其のマッドフロッグの皮が有れば、投擲玉の試作品が作れる…という訳ですね。幾つ必要になりますか?」

 

そう、ペッパーは採集クエストの類いで要求される素材数は、其処まで『多くない』と思っていた。其れこそが、彼にとっては一番のミスであり。

 

「おお!とても心強い!では、其のマッドフロッグの皮を――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

200枚集めて欲しいのです!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あのスイマセン、モウイチドイッテモラエマス?」

「200枚、どうか!よろしく!お願い致します!」

 

変わらない所か、先程以上の期待の眼差しを向けてきたレクスに、ペッパーは「アッハイワカリマシタ」とだけ答え、レクス自らが見送る形で、エンハンス商会セカンディル支部を出る。

 

そして彼はこう思ったのだ。

 

 

 

 

 

 

コレ詰んだわ――――と。

 




呪い身に課せられた、最悪の収集クエスト



ポポンガ:『本来』であれば【ユニーククエスト:インパクト・オブ・ザ・ワールド】の 第4段階(フォースフェイズ)にて、サードレマの下街エリア・裏路地に受注者が入った瞬間、確定でポップするユニークNPCモンスター。同時に第4段階では、クエスト進行の鍵を握る事になる。

其れ以外では、シャンフロの各街の裏路地にランダムで出現するが、受注者以外が話し掛けても反応しない。ユニークモンスターの1体、夜襲のリュカオーンとも関わりを持つようで━━━?



エンハンス商会:シャンフロ第8の街 エイドルトに拠点を構え、日々消費型アイテムを製作・新規開発に着手し、各地の道具屋へと卸しているNPC商会の1つ。

『特殊クエスト:沼地に轟く覇音の一計』では、『特殊クエスト:岩砕きの秘策』をクリアし、ユニーク武器・ロックオンブレイカーを装備した状態で、セカンディルを散策する事でイベントが発生。

エリシオン商会セカンディル支部へと案内され、其処で支部長のレクスから、マッドフロッグの皮を200枚納品する依頼を受ける事になる。

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