帰るまでが遠足だ
ゲームのボスとの戦いが終わる瞬間は、どんな時だろうと達成感に満ち溢れ、そして寂しい時である。
「はぁぁぁぁ~………いやぁ絶景だわぁ………」
目の前に広がるは金色……そう、金晶独蠍討伐の報酬たるドロップアイテム達だ。数時間に渡る激闘を乗り越えて、単独での討伐を成し遂げたからか。はたまた幸運値200越えによる、神乱数を引いたからか。
何にせよ━━━━だ。水晶の大地に広がり、彩る、黄金の美しい輝きは、最高の報酬と言っても差し支えない素晴らしい物だった。
「甲殻、鋏に、針と脚。尻尾と……クックック!コイツは絶対に『最高レア』のアイテムだろ……!」
ドロップアイテムをインベントリアに収納しながら、サンラクは『其れ』を手に取り、獰猛な笑顔を浮かべる。其の名を『
モンスターから生成されるドロップアイテムの中でも『魂』や『逆鱗』、更には『核』と言ったアイテムは狩りゲーに置いて、最高の素材の立ち位置を持つ。其れも今回は何と『二個』。そう二個もドロップしており、金晶独蠍を一匹か其れ以上狩らなくては出ないだろう、最高レアのアイテムがもう一つ手に入ったのだ。
「幸運値が200越えてたからか、もしくは神乱数を引いたのか……まぁ何にせよ、俺の勝ちって奴だな」
オーバーヒートの効果が切れ、重く気だるさが全身を襲い、満ちる。其れでもサンラクは周りに転がる、
そして爆土の偶像の衝撃からか、遠くより出現する水晶群蠍達の姿を目撃する。更に其の奥には『尻尾のサイズだけで金晶独蠍の十倍強のサイズの水晶』が、ゆらりゆらりと動きながら此方へとやって来るのを見た。
「大親分の御出座しってか。上等だ、生きて帰る為にも泥臭く足掻いてやろーじゃねぇの!」
水晶群蠍の残骸や採掘ポイントは未だ在れど、エムルと約束した手前、死に戻りでもしようものなら格好が付かない。一応インベントリアエスケープは使えるものの、流石に此れ以上戦ったら深夜を越えて一夜漬け不可避。
おまけにサンラク……
「うぉおおおおおおおお!!絶対死んで堪るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「はぁぁぁぁ………あ"~クッッッッソ疲れた……」
頭装備を
深夜帯なだけあり他プレイヤーの姿も多いが、皆サンラクの装備を見ては「変な装備だな」と言いたげな視線を送り、其のまま通り過ぎていく。
「明日の朝飯迄に起きられっかな……」
楽郎は以前、家族間で決めていた『約束事』を破ってしまった事があり、其れによってゲームを『強制終了』させられた経験を持っている。アレは割と『シャレ』にならない経験だった為、以後同じ過ちを繰り返さないよう、彼は心掛けているのだ。
「おーい、エムルー。居るかー」
「はいな!サンラクさん、此処に居ッ……?!」
目的地周辺に到着し、サンラクが呼ぶと近くの木箱に隠れて居たか、エムルが飛び出して。そしてサンラクの全身を見ながら叫んだ。
「サ、サンラクさん!?何かサンラクさんのヴォーパル魂が『ぎゅいんぎゅいんのずどどどどどど!』ってなってますわ!?」
ヴォーパル魂とは何ぞや?と聞かれたら、強敵に挑む心意気とペッパーは答えた。そして解った事は、水晶群蠍や金晶独蠍に戦いを挑んだり、討伐したりする事でヴォーパル魂とやらは急上昇すると言う事だ。
「ハハッ、何じゃそりゃ。だがまぁ『すんげぇ事』してきたからな、絶対驚くぜ?」
ゲートを越えて兎御殿に帰還しながら、サンラクは水晶巣崖での成果を思い出す。
討伐結果は水晶群蠍十数体に、レアエネミーの金晶独蠍。報酬は金晶独蠍の激レア素材と、金晶独蠍が狩った水晶群蠍の亡骸より採れた素材と、超希少な鉱石に宝石達多数。大戦果にして大勝利と断言して間違いないだろう。
(そして
ペッパーは言っていた。
自分達二人が今の限界点……即ちレベル99まで到達出来たなら、自分達の身体に刻まれた『
其れを
一時的とは言え、全身に装備を纏う事が出来るように成れば、
(問題はペッパーのレベルだが……アイツ確か『
こりゃ水晶巣崖に連行&マブダチ達の荒波に放り込んで、パワーレベリングさせるのも視野に入れよう
外道クソゲーマー・サンラク。レベルマウント+水晶群蠍と鉱石宝石で胡椒を釣り、水晶地雷元で育ててやろうと北叟笑む。
「サンラクさん……また何か企んでますわね?」
「ん?んん~何でもないぞー?」
スキルがある程度揃っていた自分ですら、討伐に数時間掛かった正真正銘の強敵。ならば自分以上にスキルの数が、自分以上にスキルの育成が、自分よりも高いステータスを持っている可能性が高い『ペッパー』が、金晶独蠍と戦ったならば一体どのような結果が出るのか?
一人のゲーマーとして、些細な興味が有る。
(ペッパーの『思考深度』はカッツォ曰く『一般的プロゲーマーの一段から二段、下手したら三段近く深い』らしい。ディプスロに近しいタイプで、対戦相手やゲームシステムに対する理解度合いが深まる程、攻略難易度が『桁違い』に上がっていく。おまけに『勘』が鋭くて初見殺しに滅法強い……いや何だ此の『キメラ』は)
どんなに優れたゲーマーやプレイヤーでも、思いがけぬ初見殺しで殺られる事は多い。自分やカッツォ、ペンシルゴンもそうだ。しかしペッパーは其の初見殺しが殆ど効かず、あらゆる状況を思考に置いての『読み』と『後出し攻撃』が凄まじく強い。
数分の時間を与えれば、墓守のウェザエモン相手にスキルをフルスロットルで点火し、97秒間ノーダメージで乗り切る程の実力を持っている。
「何時か白黒着けてぇな………」
「サンラクさん、どうしたのですわ?」
「ん?あぁ、何でもねーぞ。エムル」
白布から何時もの鳥面に切り替えて、サンラクはビィラックの鍛冶場に向かう。
「お、おぉ……サンラクかぁ。もう少し待ってな……エーテルリアクター、もう少しで直せそうじゃあ……」
「おいおい大丈夫かよ……」
眠気と使命感の狭間に揺れる、ゾンビ状態の様なビィラックの姿に、サンラクは若干引き気味になり。彼女を正気に戻すべく、気付けの一発としてインベントリアから取り出すは、金蠍の針たる【金晶独蠍の煌弩晶針】と水晶蠍の針こと【水晶群蠍の剛強晶針】を、無骨な金床の上に乗せる。
「ん…?…んんん…!?んん!?んんん!?……は?金晶独蠍の針……!?しかも、水晶群蠍の針……?!サンラク、わりゃ、金晶独蠍を……倒した、のか??!!」
「応よ、まだまだ在るぜ?」
目の前に置かれた超希少なモンスターの素材に、ゾンビ状態から正常へと振り戻り、四度見からの唖然といった表情をするビィラック。サンラクは機を逃さず、インベントリアより金晶独蠍と水晶群蠍の素材達、更には鉱石と宝石達をまるで金銀財宝の宝の山の如く積み上げていく。
「し、しかも……命晶核まで……?おまけに……二個、じゃと……?」
「水晶群蠍を使いたいって言ってたけどよ、金晶独蠍の素材も使ってみねぇか?きっと『スゲェ』のが出来ると思うぜ?」
渾身のドヤ顔でサンラクはビィラックに頼んでいた、新造
サンラクがビィラックの気付けをしたり、エムルに水晶群蠍の排泄物を渡しておちょくったり、ビィラックが追加で『もう一つ遺機装』を作れると言ってきたので、サンラクは『ある武器種』をオーダーし。
彼は此の日のシャンフロを終えたのだった……。
最高で最大の成果