一日行軍、幕を開ける
ピピピピ……ピピピピ……ピピピピ……
スマフォを目覚まし機能が、午前7時30分のアラームを鳴らす。外では雨の音が、静寂の室内にアラームが鳴り、敷き布団でモゾモゾと五条 梓は目を覚まして起き上がる。
「ん……くぁあ~…。……時間は、まだ大丈夫か」
今日はトワと、アーサー・ペンシルゴンと共にシャンフロでフィフティシアを目指して行軍する日。新しく手にした
「朝食は何にしよう……。確か冷蔵庫に避難させた、食パンが何枚か残ってた筈……」
眠気眼を軽く擦り、冷蔵庫の中身を見ると確かに三枚の食パンが、冷え冷えで鎮座していた。湿気によりパン類が腐りやすくなる対策として、冷蔵庫の中に居れると良いと有った。実際に試してみたのだが、時間を置けば常温に戻っても、普通に美味しく食べられる。
「……よし、朝食は『アレ』にしよう」
顔を洗い、シャワーを浴びて。髪を乾かし、眠気覚まし完了。冷蔵庫から取り出すは、卵二個に食パン三枚、残りかけの牛乳パックに砂糖の袋。カレー皿に卵を割ってカラザを箸で取り除き、牛乳と砂糖を適量加えて掻き混ぜる。出来た元タレに食パンを押し付けるように浸して、其の間に手を洗い終えてコンロに火を着け、フライパンを熱して油を一匙。
冷たい状態時の食パンは、スポンジの特性に似るらしい(独自の研究だが)ので、こうする事によりタレが染み込みやすくなると知ってからは、一段と出来上がりが美味しくなったのに感動した。
タレに浸したパンを、油を敷いたフライパンに投入し、中火から強火で一気に焼き上げ、タイミングを見計らって引っくり返して、残りの面も同様に焼けば『サク…ジュワ…』の食感になる。此れを三回繰り返して包丁と俎で四等分にカット、皿に盛り付けて市販の蜂蜜を細口モードで、フランクフルトのケチャップの様に掛ければ。
「出来た……五条 梓特製、『余り食パンのフレンチトースト』……!」
コップに林檎ジュースを、朝食の御供にヨーグルトを一つ添えて、此処に朝食は完成。何時もの様に「いただきます」の合掌と共に、フォークを使って食す。
「パンに染み込んだタレと蜂蜜が、相性抜群で堪らん……!嗚呼、何時食べても美味しいなぁ……」
中身は程良くミディアムを目指して火を通したからか、やはり美味しく出来ている。数個食べてジュースで口直しをしてから、再び数個食す。今度はヨーグルトで口直しを行い、残りを食べ切る。
「ふぅ……御馳走様でした」
合掌そして洗浄と片付けを終えて、梓はトイレを済ませた後、窓をほんの少し開けて雨戸を調節。VR機材のチェックと、水分補給用の水を用意して準備完了。時刻は午前8時半。五条 梓は現実世界から、ペッパーとしてシャングリラ・フロンティアの世界へと降り立つのだった……。
「んんん…さぁて、フィフティシア目指して行動を始めようか!」
「おぉ、ペッパーや。良く眠れたかな?」
「ペッパーはん、おはようなのさ!」
兎の国ラビッツ・兎御殿の休憩室にて
「おはよう、アイトゥイル。ポポンガさん。此れからペンシルゴンと合流して、シクセンベルトに寄り道からのフィフティシアを目指すよ」
「ホホホ、一気に進める気じゃな?」
「久し振りに長距離移動なのさ」
「そう言う事だね」とペッパーは言い、アイトゥイルとポポンガとパーティーを結成し、一羽と一匹
「あ、ペッパーはん。そう言えばビィラック姉さんが……コホン。『ペッパーはんが兎御殿を出立するなら、その前に自分の鍛冶場に来るように』って言ってたのさ」
「ビィラックさんが?」
何かイベントを踏んだのか、そう思いつつもペッパーは足早にビィラックの鍛冶場へと向かう。
「おう、ペッパー。わりゃ昨日辺りから『神々しい
到着早々ビィラックはペッパーを見ながら、手招くようにそう言ってきた。神々しいともなれば、今持っている武器の中でも『一つ』しか無いだろう。彼女のオーダー通り、装備している勇者武器・聖盾イーディスを彼女へ見せる。
「おぉ……コレか!わりゃの周りに纏われとった、神々しい気配の正体は……!」
「武器に精通したクランのリーダーが、マッドネスブレイカーの製作依頼と情報を対価に、俺に譲渡してくれた勇者武器・聖盾イーディスです」
金と白の鏡面にうっとりしながら、イーディスを見ていたビィラックは、ペッパーに返すとこう言ってきた。
「ペッパー……勇者武器を手にする、其の意味が解るか?」
「えっと、勇者になるだけでなく……他にも何か『成し遂げなくてはならない』……と?」
コクリと無言で頷いたビィラック、おそらく其れが正解であり、そして彼女はイーディスと。持ち主となったペッパーを見て、
「イーディスに託された願いは━━━━『守護』じゃけ。四肢が朽ち落ちようと、其の身が砕けようとも、『弱き者を守り抜く』事じゃ。……ペッパーよ、わりゃに其の『覚悟』は在るか?」
勇者武器達は『原始的かつ根源的な願い』に答え、世界が鍛えて作られたという物である。クラン:ウェポニアのリーダーにして、武器狂いたるSOHO-ZONEはそう言った。武器とは何時の時代も目的の為に用いる物、其れを成せと願いを込めて作られる物。
「………はい!覚悟は出来ています」
「なら善し。其の盾を、確り『使い熟して』いくけぇ。其れと………わちは『
拳を出してきたビィラックに、ペッパーは微笑みながら拳を合わせて。彼と一羽と一匹を愉快合羽の内に隠して休憩室に戻り、アイトゥイルが開いたゲートを越えて、ファイヴァルの裏路地に向かうのだった……。
時刻は午前8時50分、ファイヴァルの裏路地に繋がるゲートを抜けて、到着したペッパー達は辺りに人が居ない事を確認しつつ、Eメールアプリでペンシルゴンに連絡を取る。
すると視界がいきなり真っ黒になって、ペッパーは「いきなり何だ!?」と驚いて身体はビクリと跳ね。そんな彼の右耳元にて、「あーくん♪」と聞き馴染んだ声が聞こえた。
視界が明るさを取り戻し、振り向いた先にはペンシルゴンが、悪戯成功と言わんばかりの笑顔で立っていた。
「お、おうトワか。はぁ、ビックリしたぞ……」
「んふふ……♪ちゃあんと来てくれたね、あーくん?」
「まぁな、待ったか?」
「んーん、丁度今来たんだ」
「そうか……それじゃあ予定を確認するよ」
軽く言葉を交わし合って。今日中にフィフティシアを最終目標地点とし、行ける所まで進む事に決め。
ペッパーはアイトゥイル・ポポンガを愉快合羽に隠し、ペンシルゴンと共にファイヴァルの門を越えて、栄古斉衰の死火口湖に向かう中、彼の目の前には『リザルト画面』が表示されたのだった。
『ユニーククエスト【想いの御手は、境界線を超えて】が進行しました』
『条件達成まで、残り━━━四つ』
旅立ちて、死火山へ