一日行軍開始
そして其の力を用いたならば、本来は危険となる登山ルートによる踏破は、迷宮たる廃坑を越えるよりも遥かに簡単なルートとなるのだ。
『ギョエー!?ギョエー!?』
『ギョエー!?ギョエー!?』
「わぁ……私、あの悪辣駝鳥達がUターンして逃げ去って行くの、初めて見たよ……」
「トワの悪辣さに比べたら、可愛いもんだよ」
「んー?あーくん、其れは一体どーゆう意味かな~?」
「鏡見て、胸に手を当ててみれば解るんじゃない?」
「鏡には綺麗なトワおねーさんしか写ってないな~?」
コイツ無敵かよ……そう考えながら歩きつつも、ペッパーはペンシルゴンにちょっとした質問をしてみる事にした。
「なぁ、トワ。SOHO-ZONEさんが言ってた『聖槍カレドヴルッフ』ってのが、前に地底湖レベリングの時に言ってたメイン武器なんだよな?どうやって入手したの?」
「お、同じ勇者武器所持者として気になっちゃう?気になっちゃうのかな、あーくん?」
「興味は有るかな……」とだけ答える。そりゃ真横でニマニマと、其れは其れは良い笑顔をしていたので、余計な事を口に出したら、面倒な事になるのは目に見えている。
「まぁ簡潔に伝えると『カレドヴルッフ出現後に、同じ箇所に集まったプレイヤー達とPvPやって、最後まで生き残る事』だね。因みに私、15キル0デスの文句無しのMVP」
「………乱戦や策謀なら、トワの独壇場だからな。何と無く納得したわ」
「因みに他プレイヤーも、カレドヴルッフ参加他プレイヤーの情報で釣ったり、乱戦で漁夫の利してノーダメ勝利しました♪」
其の最後の一文が無ければ、素直に褒めてやっても良かったのになぁ………
「まぁつまり……シャンフロ版サバイバルFPSでの優勝賞品が、カレドヴルッフって訳か」
「そゆこと♪いやぁ、其の時のプレイヤー達も本当に強くてね。策略含めても勝てる見込みが薄かったプレイヤーが、確かあの時は『三人』程居たんだよね」
「………因みに其の三人の名前を聞いても?」
「うん、良いよー」
黒幕として策謀に長けたペンシルゴンが、己の十八番の領域に引き摺り込んでも、勝てる可能性が低かったと言う三人のプレイヤー達。興味が湧いたのでペッパーがペンシルゴンに問うと、彼女は素直に答えた。
「先ず始めに『
其の大会がどのくらいの規模かは解らないが、強豪八人の内に収まるプレイヤーともなれば、相当な強さを持っているだろう。
「次に『レガーティエ』。同じ魔槍使いでは有るんだけど、搦め手無しの単純なプレイヤースキルじゃ、私より『遥かに上』の実力持ちだね。輝羅に彼女、そしてあと一人が潰し合いしてなかったら、私はカレドヴルッフを入手出来なかったよ。因みに
カレドヴルッフ争奪戦とやらでは、ペンシルゴンの策謀に嵌まったとは言え、彼女が遥かに上と言い切る実力者。そして現役のPKともなれば、情報が漏れたならば此方を狙ってくる危険性も在る。
「最後の一人は『ムラクモ』。シャンフロの全プレイヤーの中でも最多回数の『レベルダウンビルド』を経験して、武器種一つに付き『少なくとも五つ以上』の強弱問わず、対応スキルを持ってるプレイヤー。数多有る
前衛後衛に対応出来ると言う事は片手武器は勿論、両手武器に重量武器、弓による遠距離武器すらも使いこなせると言う事を意味する。そして何より、
「輝羅、レガーティエ、ムラクモ……ねぇ。戦わなきゃならない以外は、其の輝羅とムラクモって人に『変わったスキル』の習得方法とか聞いてみたいな」
「まぁスキルは少なく取って磨き上げるか、多く取って多彩に仕上げるかは、プレイヤー各々だからねぇ……。因みにあーくん、今持ってるスキルって幾つなの?」
そして自然な流れで、此方の持ち札を聞きにきたペンシルゴン、マジペンシルゴンである。右手首に装着している『
「うーん……確か通常のレベルアップで獲得したのが32、合成スキルがざっと10と、秘伝書経由が8だな」
「へぇ~……結構手札持ってるんだね、あーくん。副職で汎用スキル獲得してたりするんだ?」
「まぁ、そうだね」
本当は様々な武器を用いて、致命魂の首輪と致命魂の腕輪によるレベルアップに支えられた結果だ。此処からは聖盾イーディスを用いたり、エイドルトやイレベンタルで『
「お、そろそろ山の中腹だねぇ」
「確かに。えっと、地図によると東方向に円周移動していけば、サードレマに入るゲートが在る……だな」
「うん、あーくんは早い所フィフティシアに向かいたいんだよね?」
「あぁ。出来る限り進めるだけ進んでおきたいって思ってる」
イレベンタル以降のエリアは、自分でも解らない事が多い。もし万が一にも何らかのアクシデントが発生して、エイドルトまでしか到達出来なかった場合は、もう一度ペンシルゴンに護衛を依頼する事も視野に入れつつ、彼は一つの決断をした。「トワ」と声を掛けて、両腕を前に出す。
「どうしたの、あーくん?」
「お姫様抱っこさせて」
「………?………!?……!!???」
突然の想い人の発言に、ペンシルゴンは思考が混線を起こし、顔が真っ赤になり始め。「ちょっと失礼」と答えを聞くまでも無く、解ってるだろうと言わんばかりに彼女の脚を払って、お姫様抱っこに持ち込み。
「確り掴まってて」と一言、同時に繰り出すは自身の持つスキルたる
地上を駆けるは黒の流星。ソニックアサルトによって出来た風の壁を纏いながら、聖なる盾を受け継いだ勇者は死した火山の山肌を走り抜けて。鞍馬天秘伝のスキル終了と、全進開速のスキル時間ギリギリでサードレマへ続くゲートを真正面に捉える位置に辿り着いた。
「はぁ…はぁ…。やっぱり、全進開速を使うと腹が減るんだな。携帯食糧食べて回復しないと……トワ、大丈夫だった?……トワ?」
そう言えば走っている最中は正面ばかり見ていて、彼女の顔を見ていなかったと思い出して、視線を下に向けると、顔を真っ赤な林檎の様に火照らせた、ペンシルゴンの姿が在って。彼女の潤んだ瞳と艶を含んだ唇に、ペッパー自身もドキッとさせられた。
「あ、えっと…あーくんスタミナ回復するんだったよね!?ごめんごめん、自分で降りれるから安心して!」
顔を隠すように後ろを向いたペンシルゴンに、ペッパーも少し気不味そうになりながらも、携帯食糧を食らってスタミナと空腹度の回復を行う。
(うう~……!いきなりお姫様抱っこするなんて……!あーくんって思った以上に、大胆な行動するんだ……意外だなぁ………)
(トワの奴、結構『軽かったな』……装備が軽戦士系列ってのもあるのか、自分の筋力がアイツの体重でも負けないだけの数値になってるからか……どっちだ?)
御互いにすれ違い、しかし御互いが少なからず相手を想いながら。ペッパーは携帯食糧でスタミナと空腹度の回復を終え、ペンシルゴンも漸く落ち着きを取り戻し、二人はサードレマのゲートを潜り抜けたのであった……。
サードレマへ到着